家族に愛されすぎて困ってます!
34話 少女の写真
6月22日木曜日 朝 7:30
「下がらないなぁ」
 体温計を見た母さんがそんなことを言った。
「春ちゃん、今日も安静にね」
「うん......」
 今日で4日連続学校を休みになる。
「じゃ私は行くね」
「うん、行ってらっしゃい」
 母さんはパートへ行く。春鷹の為に3日休んで看病をしていたが、流石に4日も休むわけにはいかず、今日は行くみたいだ。
 母さんの足音は離れていき、やがて家を出た。
「......」
 春鷹は3日も風邪で寝込んでいたため上手く寝付けなかった。
 身体はだるいが気分転換の為にリビングへ足を運んだ。
「久しぶりにテレビでも観るか」
 ソファに座り、リモコンの電源ボタンを押す。
「おはようございます。6月22日木曜日、今週も残り2日です。今日も一日頑張りましょう」
 毎朝やっている報道エンタテイメント番組が朝の挨拶をする。
 その後、次々と昨日や早朝にあった出来事を報道している。
 例えば、昨日の夜に交通事故があっただとか、女子高生の間で話題になっているアプリの紹介とか、今ブレイク中の芸人の紹介とか、春鷹の知らなかった事を色々と話していた。
「次のニュースです」
 甘いマスクの男がニュースを読みあげる。
「来年度から、消費税が10%に増税することが昨日決まりました」
 マジか。
「コメンテーターの吉村さん、消費税の引き上げについて解説をお願いします」
 長机に座っている白髪の高齢が解説をする。
「現在の日本の社会は少子高齢化によって、現役世代が急激に減少し高齢者が増加しています。社会保険料、所得税や法人税の引き上げを行うことによって、現役世代の負担はより集中することになるでしょう。なので、現役世代に負担を集中するのではなく、国内全体で広く負担する消費税の方が高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいため、消費税の引き上げを行うと考えられています」
 なんだか難しい話だ。
「まぁ泉総理大臣が何を考えているかは知りませんが、大体こんな感じの根拠だと思います」
「なるほど」
 春鷹の国の総理大臣は、泉 信幸。
 春鷹が4歳ぐらいの時になったらしい。
「年末に色々と買い溜めしないとなぁ」
 春鷹は急にきた頭痛に耐えながら、そんなことを呟いた。
 高速道路の途中にあるサービスエリア。
 そこに、白を主体としたリムジンが止まっていた。貴族が乗るような長いやつだ。
 通りかかる人達は皆三度見し、汚れ一つないリムジンを見ていた。
 そんな中、車内にいる可憐な少女は周りの人には目もくれず、一枚の写真を眺めていた。
「あ〜お兄様♡やっと会えるのですね。10年の時を超え、やっと、やっと、会えます!待ってくださいね、お兄様♪♡」
 その少女が大事そうに持っている写真。
 それには、その少女の幼い頃だろうか、リボンのついた麦わら帽子を被った少女が、隣の幼い男の子のほっぺにキスをしていた。
 なんとも愛らしいその写真に何度も頬擦りをする。その頬はほのかに赤く染まり、目が故障しているかのようにクルクルしていた。
「今行きます、お兄様♪」
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