家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

31話 忘れられない夜



「もぉー春くんったら、斬新な嘘つくね」
「あは、あはは......」

 かまいたちがいると嘘をついてこの場を逃れようとしたが、脱衣所で姉さん達に捕まり、お風呂場へ戻された。

「ほら見て春ちゃん!大きいお風呂だよ!」

 大きいのはあんたの胸だろ。

「春。一緒に入る」
「たーくん!こっちこっち!」
「春お兄ちゃん、背中洗ってー」

 みんなやめて!俺は一人しかいないから!分身とか出来ないから!

「と、とりあえず!今は皆で大きいお風呂に入るか」
「春ちゃんがそう言うなら」
「春くんは私とお風呂に入りたいんだー」
「いいえ、私とよ」
「私に決まってるよ!」
「背中ー」
「誰と入りたいとか言ってないから!てか、真子はどんだけ背中洗いたいんだよ!」
「届かないよー」

 真子は洗い場にある灰色の風呂椅子に座り、一生懸命背中の中心に腕を伸ばしていた。
 なんとも可愛らしい。

「よーし真子、お兄ちゃんが背中洗っちゃうぞー」
「やったー!」

 母さん達は既に湯船に浸かり極楽していた。




「よしっ綺麗になったぞ」
「ありがとう!お兄ちゃん!」

 俺の妹は笑顔が似合うなぁ。
 その笑顔100万点!!

 真子の背中洗いも終わり、ようやく湯船に浸かる。
「ふぅ〜」
「気持ちぃねぇ」
「そうだねぇ」

 この温泉に含まれている成分は、ストレス解消や疲労回復に役立つという。

「疲れが吹っ飛ぶなぁ〜」



しばらくの間、春鷹達は温泉を満喫していた。







「ふぅ〜気持ちよかったねぇ〜」
「そうだね」

 温泉を充分に満喫した近衛家は、寝る準備をするため布団を敷いていた。

「春くんの隣確保ー!」
「うわぉ!」

 瑠美姉が自分の布団を担いだまま僕の隣にスライディングしてきた。

「瑠美。春ちゃんの隣はお母さんって生まれた時から決まってるの」
「そんなの知らなーい」
「瑠美。ここは譲れないわ」

 俺は一番端に布団を敷いたので隣はひとつしかないのだ。

「ま、私は大丈夫だもん。秘策があるから」
「ひ、秘策?」

 里姉は大きい胸を張りながらトコトコと俺の布団に近づき、自分の枕を俺の枕の隣に置いて、布団に潜り込んで寝始めた。
 つまり、俺の真横で寝るようだ。

「はい。たーくんの隣確保ー」
「そ、その手があったか......」
「これはやられたわね」
「名案」

 え、えーっと、この場合、俺はどうすれば......?






 俺は仕方なく里姉が寝ている布団の横に入り、毛布をかける。女性特有の甘い匂いと肩から里姉の体温が直接伝わり、なんだか変な気分になる。
 だが、俺はそんな理性を気合いで吹っ飛ばして、眠りにーー


「つけるわけないだろ!!」


 深夜2時の夜景に向かって、俺はそんな言葉を発した。

「あの状況で眠れる気がしないよ......」
「んん............ん?どうしたぁの春くん?」
「あ!ご、ごめん!起こしちゃった?」

 さっきので起こしてしまったようだ。

「こんな所で何してるの春くん?」
「まぁ、なんというか、寝れなくて......」
「......ふーん」

 瑠美姉の視線は部屋のデッキから見える夜景に向いた。俺も一緒に夜景に視線を移し、横目で瑠美姉を見る。
 いつもはフリフリのシュシュで結ばれているポニーテールも今は結ばれておらず、水平線から吹く夜風が綺麗な黒髪をサラリと流した。それを右手で抑えながら彼女の視点は夜景のままで、髪で隠れていた首筋がなんだか大人っぽく感じた。この光景を見た男は、心底彼女に惚れるだろう。

「何見てるの?」
「え!?い、いや別に」
「ふーん」

 いつもの柔らかい口調とは少し違って、真面目な瑠美姉だった。
 そして、彼女の口がゆっくりと動いたーー


「ーーねぇ春くん、キス............してみない?」
「ぇ..................え!?!?な、何で?」
「好きだから」


 あまりにも直球、あまりにもストレートな発言に、俺は少し戸惑った。

「俺達、兄弟だろ」
「でも......好きなの」
「......っ」
「好きだから、キスとか色々してみたいって思うの」

 いつも色んな事を言われているけど、こう真面目に言われると少しドキッとする。
 瑠美の心臓と同様、春鷹の心臓もバックバクだった。
 姉だとしても、美人の人にこう言われるのは少し嬉しかった。

「してみない?」
「............」
「......春くんーー......」
「ーーっ!」

 自分の名前が呼ばれた瞬間、俺の視界は真っ暗になった。

 しかし、目の前にはうっすらと見える瑠美姉の顔、頬が少し赤くて、目をつぶっている。

 唇には柔らかい感触、今まで感じた事の無い感触。

「......っ......!」






この日の夜、俺は瑠美姉にファーストキスを奪われた。




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コメント

  • ハジメ

    続きが早く読みたいです!
    更新されるのを待ってます
    頑張ってください

    3
  • ハジメ

    面白かったので次回も期待しています
    更新されるのを待ってます
    投稿頑張ってください!

    3
  • ペンギン

    続いが見たい〜!!!!!!!!
    てか、春くんはいつ血は繋がっていないって教えられるのだろう...知らなかったら、意識が違う気がするのだけど...いいのかな...?

    2
  • ハジメ

    面白いので早く続きが読みたいです!
    更新待ってます 投稿頑張ってください

    4
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