クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!

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225話 約束

「それにしてもまた一人減ってしまいましたね。どうしますか?」

「どうしますかね。」

今はリリアも消えてしまい、二人と一匹だけだ。
やることもないな。

「そう言えばこの面子で居るのは、メリスタのダンジョンで探索したとき以来ですね。思い返せばあの時美月さんは結局実力を隠していたんですね?酷いです。二人で同盟を結んだのに。」

エミリアさんがわざとらしい嘘泣きをする。
そう言えばダンジョンで二日目の時はエミリアさんと二人でダンジョン探索したなぁ。
それでその時ニキスと出会ったんだったな。

「そうは言いますがあの頃はせいぜい人よりちょっとスキルが多かったくらいでそこまで実力は無かったですからね。許してくださいよ。それに魔人族何て言ったら殺すかも知れなかったですし。」

「まあ、許しましょう。」

まあ、理解はしてくれてるらしい。

「それで、エミリアさんは何かしたいことはないんですか?趣味とか?」

「趣味ですか……。ないですね。元王女ですし、基本的に教養を高めるか・公務以外のことはほとんどやったことが無いですから……。逆に美月さんは趣味とかないんですか?」

うわぁ~王女って大変そう。
それにしても僕の趣味か…。
ないわけじゃない。むしろ僕はオタクの名に恥じない程度には多趣味だ。
アニメに漫画・ライトノベル・ゲームだが考えてほしい。このどれもがこの世界には無い。
実は僕の[アイテムボックス]の中には、ゲーム機とスマートフォンが入っててオフラインでできるゲームがいくつかあるし、電子書籍も何百作品かくらいは入ってる。
しかし、如何せん電源を充電する方法がない。
まだ電源は残っており動くのに、動かせないというジレンマがあるのだ。
インドアな趣味ができないとなると僕の趣味はなくなってしまう。

「よし!今から趣味を見つけるぞ!どうせラズリも食べること以外興味ないだろう?ラズリも付いてこい。」

「ムギ?」

まずは古本屋巡りだ。
大人で落ち着いたような女性や渋くてダンディなお爺ちゃんがやってる気がする。
それにライトノベルを読んでたし、文字列を読むのは得意だ。
早速来ました古本屋。

「あっこれうちの図書室にありましたね。[ジュゼッテルンの魔法工学基礎]。」

「あぁ~どう見ても難しそうなので手が出なかったですよ。逆にこちらの[ゴブリンでも分かる初級魔法知識(分からない人は魔法のセンス無いから諦めな)]や[環境が魔物に影響を及ぼすか、否か]とかは見ましたね。勉強にはなりました。」

「その魔法知識本、私も読みましたよ子供のころ。内容は分かりやすいですが文章の節々で読者のことを馬鹿にしてくるので本当に腹が経ちました。内容がまともでなければ速攻で焼き捨ててやりたかったんですが、悔しいことにとてもうまく解説してあった捨てることが出来ませんでしたよ。」

「あぁ~僕もこの作者一回顔面殴りたいです。勉強にはなりましたし、感謝はしてますけど。」

「…………それよりもうやめませんか?」

「そうですね。」

今は古本屋に来て本を物色中だ。
だがこの趣味僕らがするには幾つかの問題があった。
まずは値段。
この世界ではまだ活版印刷はおろか洋紙大量生産さえまともに始まっておらず紙はかなり高価なものだ。
おまけに識字率も日本ほどはなく、義務教育もないので本を書けるほどの学がある人間が少ない。
当然一冊一冊作者の手書きだし、部数も少なく、種類も少ない。
値段もそれに応じたものになるため、高価すぎて当然立ち読みなんて行いは許されていない。
そしてもう一つの問題。
それはもうすでに読んだ本が多いということだ。
この世界に来てすぐに情報を得るために僕は城の図書館でたくさんの本を読んでいたからだ。
エミリアさんは王族教育としてあの図書館あった本は、ほぼ全て読み終わっていたそうだ。
僕で2割、エミリアさんに至っては7割近い本は既読済みだ。
僕も読んだことはなくとも図書館で見たことあるタイトルの連発に新鮮味がなく飽きてきてしまっていた。
という事で次の趣味に行こう!

「次は食べ歩き!」

次にやってきたのは広場の屋台エリア!
ラズリがうずうずしている気配を感じる。

「最近は慣れてきましたが、まだ違和感というか罪悪感を感じます。こんな立って食事をするなんて……マナーがなってないと怒られそうな気がして……。」

「エミリアさん急にどうしたんですか?まるでどこかの貴族とか王族みたいな発言じゃないですか?」

「元王女ですよ?私!さっきまでその話してたのに何で急に忘れるんですか!………………からかわないでくださいよ。……私そういうの得意じゃないんですから!」

僕のボケに対して恥ずかしがりながらのツッコミ。
結構エミリアさんもかわいいとこあるな。

「すいません姫様。姫を不快にさせないように不肖ながら私、美月輝夜全力で万進していく所存です!。」

「ほら~!またするじゃないですか!もういいです。私は焼き鳥を食べます。」

「すいませんつい…………。もうやりませんよ。じゃあぼくはぁ~…………このホットドッグで。」

「…………美味しい…ですけど、リリアや美月さんが作ったものの方がおいしいような?」

「確かに………このホットドッグもソーセージはパリッとしてて触感いいけど、味付けが…………。」

この世界、料理の幅が狭い上に調味料が少なすぎる。
基本は保存剤としての塩味やちょっとした香辛料がメインだからだ。
そんな中、素人ながらも胡椒や鳥ガラなどの出汁を使ったり、沢山の食材を使って一つの料理を作ったりしていた。
それを食べてしまうと味がワンパターンだったり、味がなかったりする料理は食べれないだろう。
因みに鬼灯亭の料理はかなりの腕前で僕の知らない料理・食材・調味料が使われていることもありとてもとても美味しい。リリアは料理を習っているくらいだしな。

その後何件か屋台を巡るが特別美味しい料理はなかった。

「帰りますか…………?」

エミリアさんは手に持っていた味の薄いブヨブヨの肉の薄焼きをラズリの体内に皿ごとねじ込みそう告げた。
皿と肉はラズリの体内で瞬く間にきえていった消えていった。

「すいません。折角の休日無駄にしてしまって。」

空を見上げるとオレンジ色になっていて今日という日が終わりを迎えようとしてしている。

「………………別に楽しくなかった訳じゃありませんでしたよ。王女をやめてから………いいえ生まれてから初めてですかね?…ここまでゆったりと生活したのは…………。昔の私が見たら「時間がもったいない!時間は有限なのよ!」と怒ってきそうです。ですが今日美月さんと過ごした意味のない時間、不思議と嫌な気分ではありません。むしろ心地よかった位。……………………なので………また私の趣味探し手伝ってくださいね?………約束ですよ。」

夕陽を背後にして、そう言い微笑みながら振り返るエミリアさんの姿はついうっかり見惚れてしまう程に美しかった。

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