武士は食わねど高楊枝

一森 一輝

6話 決別Ⅹ

 何をすべきか、見失っていた。
 白羽をあれだけやり込めてしまったからには、今更ヴァンパイア・シスターズを追っても意味がない。だがグレゴリーに向かっていこうとは思えなかった。悔しさという一点で行動できるほど、ウッドは単純ではない。
 ウルフマンやハウンドを相手取れたのも、根底には白羽の『みんなに会いたい』という要望があったからだ。
「どうしたものか」
「エ?」
「ううん、独り言」
 また仙文、ヴィーとの三人で駄弁っていた。こうやって集まるようになること自体がおかしいのだと、気づいていながら他にすべきこともなかった。――いいや、ここに来ること自体、ウッドからすれば「すべきではない事」だ。それが、何もすることがないからといって為している。
 何かがおかしい。狂っている。総一郎はもう死んだはずなのに、総一郎の痕跡を歪めない様にこの体は動こうとしている。
 スイッチがある、と思うことがある。特定の相手に、特定の行為をされる限り、この体はそれを守ろうと行動するのだと。だからARFメンバーに対しては饒舌にウッドを演じられるし、総一郎の友人たる目の前の二人には総一郎らしい穏やかな話し方をする。
 そこまで考えて、躓いた。ウッドを“演じる”だと? 何を、世迷言を。俺がウッドでなくて、誰がウッドだというのか。
「……イッちゃん? 大丈夫?」
「え、あ、何が?」
「何かさっきから、ずっと俯いてるから。具合悪いのかしらと思って」
「ウン、具合悪いなラ、無理しない方がいいヨ。家に帰ったラ、あったかクして寝てネ」
「仙文心配だからって発音崩れすぎ」
「ウッ、と、ともかく! 大丈夫?」
「……そう、だね。じゃあ今日は帰るよ……」
 以前なら、こんなやり取りは煩わしくって、思わずこの二人を殺してしまったかもしれない。あるいは、アーリの様に認識すらできなかったか。だが、今はそうではなかった。ありがたいとは思わないにしろ、嫌気がさすという事もない。
 席を離れて、廊下を歩きながら考える。修羅とは何か。かつて総一郎が愛した少女と共に読んだ亜人辞典や、父の教え、あとは体感で得た知識のみで修羅を測っていたが、結局のところ何なのか。
 父の教えが、一番深い部分をついていたように感じる。細かいことはもうずっと前過ぎて覚えていないけれど、この文言だけは覚えていた。
「武士は食わねど、高楊枝……」
 どういう、教えだっただろう。覚えているのは、ひどく厳しい訓戒だったことだけだ。実現不可能だとすら思えた当時。しかし今、ある意味ではその達成に過去で最も近づけているような、そんな気がしている。
「……」
 それ以上考えることはなく、帰ろうと、ことさらに念じて歩き続けた。廊下を抜け、玄関を通り、正門へ――
「おい、イチ。待て」
 全身が、硬直した。聞き覚えのある声。殺されると直感した、数少ない相手。グレゴリーの声だ。
 だが、おかしいと思った。声色が、ウッドに向けるものとは全く違う。そうか。奴は総一郎とウッドが同一人物だと気付いていないのだ。
 カバラでそれを確かめながら、極めて平然を装いつつ「あれ、グレゴリー?」と振り向いた。奴は少々緊張した面持ちではあったが、その瞳は敵を眺めるそれでない。
 それが分かれば、十分だった。
「どうしたの? 君から話しかけてくるなんて珍しい」
「ああ……。オレもお前がいつも通り食堂で話していたら、話しかけなくていいと思っていたんだが」
 それから、視線を逸らして頬を掻く。不安がっている。こんなグレゴリーを見るのは初めてだ。しかし先日の事件が響いている様子もない。その二つの要素が、ウッドの根底を震わせ。
「なぁ、少し話に付き合ってもらっていいか。その……お前の姉について」
 演技派を自認するウッドに、動揺を隠せないほどの衝撃を与えた。
 しかし、僅かな時間だ。極めて短い、自分の事でいっぱいなグレゴリーには決して看破されないほどのそれ。
「――いいけど……何かあった?」
「ここで話す内容じゃない。食堂は、ダメだな。あいつらがいる。少し離れたところにカフェがあったはずだ。そちらへ行こう」
「仰せのままに」
 肩をすくめて、剽軽な振りを。その上で、何故と思う自分もいる。白羽の事などすでに見限ったのではないのか。奴の精神にとどめを刺して、ふさぎ込んだのを見てもう何もすることはないと。
 それなのに何故、強迫観念じみた恐ろしさを感じている。是が非でもグレゴリーの話を聞かねばと思っている。
 カフェは近かった。「今回はオレがおごる」と甘いフラペチーノだか何だかを渡される。席に着くと、早速奴は核心をさらけ出した。
「率直に言う。オレとお前の姉……シラハとの間を、取り持ってほしい」
 動揺を隠せ。計算すればそのやり方が分かるのが、カバラのいいところだ。
「取り持つ、というと」
「昨日、シラハはミヤの店に来た。悩んでいた。お前の事をだ」
「……そうだね。俺たちは今、大喧嘩中だ」
 対外的には、そうしてある。
「話を聞く限り、これはどこまでもシラハの問題だった。シラハが自分を許せない限り、お前には手の付けようがないと。ひとまず昨日は聞くだけにとどめたが、シラハがシラハなりの答えを出すまでには、まずその話を聞く相手がいる」
「その話し相手になろうって、そういうことかな」
「そうだ」
「俺にはノータッチ?」
「お前は、シラハの後だ。相手が許さないというそれ自体はありがちで単純なものだが、相手が自分自身を許せていないならどうしようもない」
「ふーん」
「ここで怒り出したり、不機嫌になったりしないのが、お前なんだろうな、イチ」
「まさか。ただグレゴリーとはやっぱり仲良くできそうにないなって思っただけだよ」
「相変わらず、どこまで本気か分からない物言いだ。全て率直に言ってしまうオレとは、確かに相いれないな」
 グレゴリーは小さく笑った。何を笑っているのだと詰ってやりたかったが、堪えた。
「っていうか、以前俺とグレゴリーは、白ねぇを話題にだいぶやり合った気がするんだけど」
「……若気の至りだ」
「便利な言葉だなぁ。ま、別にいいけどね。この通り喧嘩中だ。白ねぇが誰と仲よくしようが、俺とは関係ないよ」
「そうか、助かる」
「でも、何ていうかさ。……透けて見えるよね。昔から白ねぇ、色んな人から好かれる性質だったから」
「……何の事だ」
「あはは、グレゴリーって仕草の意味合いが分かると、結構分かりやすいよね」
「何処までも、シラハそっくりな奴だ。あいつもオレの仕草を一つ一つ見抜いていたようだった。読心術の得意な家系なのか?」
「人をよく見ざるを得ない環境だったんだよ、それぞれがね。それでほら、はっきり言っちゃいなよ。君はモノを率直に言う人なんだろ?」
「……分かった。認める。オレは――シラハに惚れた」
 聞いただけで、心臓が怯えた。
「へーえ? ふーん?」
「楽しそうな目でこっちを見るな……。だが、少し気が楽になるな。言いたくても我慢していたことを口に出すというのは、ああ、気が晴れる」
 グレゴリーは目を伏せながら、穏やかに微笑した。ウッドはそれを、しょうがない、というような表情でもって向かえる。自分でも、気味が悪いほどに嘘つきだ。
 ここまで聞き出してしまえば、それからのグレゴリーの口は立石に水という風だった。
「こう言っては何だが、シラハには神々しさがある。他の誰にもない、透明感というと違うが、そういう雰囲気が。オレもお前も幸か不幸か周りにはキレイどころが集まっているが、人間というものは白をして美しいと思うというのか、どうやったってシラハを前に男にならないでいられる奴も少ないだろう。
「だが、外見だけならオレだって惹かれることはなかった。実際モテているヴィーと付き合ったこともあったが、何もなく別れてしまったしな。あいつも外見じゃあ負けていないが、あいつを前にして恥ずかしくなるという事はなかった。そうだ。シラハを前に話していると、何だか恥ずかしくなってくるんだ。あいつが微笑むのを見ると、眩しくって、目を背けてしまう。
「シラハの魅力は、そういうところだ。目が眩むほどの温かさ、というのかな。短い時間で、アレだけ心の動かされた会話はなかった。恥ずかしさも、嬉しさも内包していて、帰り道に抱きしめる手を何度我慢したか分からない」
 机の下で、ズボンを握りしめる手をどうすればいいか分からなかった。この感情を何と名付ければいい。人間なら、嫉妬とでも呼べばよかった。だがウッドは修羅だ。
「あはは、ベタ惚れじゃないか」
「……オレだって、戸惑ってるんだ。自分で自分をどうすればいいのか分からない。ここまでで全部吐き出したと思うんだが、お前に仲介してもらって、その後どうすればいいか、……」
 思い悩んでいる、という顔だった。何よりも真剣な顔。ウッドは、自分に手も足も出させず圧勝したグレゴリーの顔と重ね合わせる。奴はあの時、絶対にこれほどの真剣さではなかった。
 臓腑が捩れるような気持ちの悪さが、腹の真ん中でうねっている。目の前のグレゴリーが不快だった。ならば殺せよ、と思うのに、体は動き出さない。今は総一郎を演じているから、と言えば聞こえはいいが、こんなもの、ただ恐れているだけだ。
 それなら、このままでいるのか。このまま白羽をグレゴリーに明け渡すと? 葛藤。白羽にはもう執着なんてなかったはずだったのに、奪われそうになって初めて危機感を抱くとは。
 浅ましい。自分さえ、敵に回したくなる。
 グレゴリーの話に耳を傾ける振りを続けながら、ウッドがウッドたるにふさわしい行動を模索し続けていた。グレゴリーへの反逆。白羽の防衛。違う。防衛などという言葉では正しくない。まるで自分が、白羽を大事にしているようではないか。
 そこで、思い至った。グレゴリーの心に衝撃を与えながら、白羽を蔑ろにしつつ、グレゴリーに奪われない方法を。
「ともかく、任せてよ。近いうちに君と白ねぇが会えるようにセッティングしておくから」
「本当か! ああ、いや、……任せた」
 ウッドは総一郎のふりをして、快活に笑い、そして心中で嗤った。お前がこんなことを言い出さなければ、少なくとも直接ウッドに打診などしなければ、こんなことにはならなかったのになぁ、と頭の中で仮面がケタケタと哄笑を上げる。
 気づけば長時間グレゴリーの話を聞いていたらしく、すでに外には闇が落ちていた。まばらな雪が降っていて「今年最後の雪かもしれないな」などとグレゴリーは言う。
「では、重ねて頼んだぞ」
「意外にグレゴリーって心配性?」
「そう、かもしれない。……人間というものは分からないものだな。あれだけのたった数時間が、オレを夢中にしてしまった。もともと恋などしないものと思っていたのに」
「じゃあ、初恋だ」
「そうなるな」
 グレゴリーの微笑。ウッドは盛大に嘲笑ってやりたかった。初恋が叶う訳もなかろうと。少なくともお前の初恋はこれから俺が潰すのだと。
 挨拶で互いに手を振りながら別れた。奴は総一郎が見えなくなるまで手を振っていた。馬鹿馬鹿しい、と家に進む足は軽い。グレゴリーに負けて以来、一番に気持ちが高ぶっている。
 家に着くと、図書たちが夕食を用意していた。ウッドは機嫌のいい総一郎の演技でその場を乗り切る。白羽はいなかった。そのことを図書に聞くと、多少持ち直したがまだ直接顔を見せられるほどではないのだと。
「お? 何だ総一郎。お前が白羽の事気にするなんて、珍しいこともあったもんだな」
「……その、今日ちょっと話してみようかなって。いくら何でも、俺だってこのままは嫌だし」
「おぉ! そうだよなそうだよな! おっしゃ了解。今日こそ姉弟水入らずで、仲良く話して来いよ。そんで明日の朝に二人で仲良く姿現すのを待ってるぜ」
「そう、なれたらいいけど」
「お前がそのつもりなら、そうなるって!」
 元気づける様に言う図書を嗤ってやりたかった。ウッドにそのつもりがないから、絶対にそんな未来は訪れないのだと。
 そうして、夜十時を回ったころに、ウッドは白羽の部屋をノックした。
「白ねぇ、入るよ?」
「……どう、ぞ」
 図書からあらかじめ言われていたのだろう。心の準備の途中、といった声音だった。不用心だ、と思う。お前はそれでも、ハウンドと共に俺を分析したのかと。――いいや、それでもこうやって希望的観測に身を任せてしまうのが、人間なのだろう。
 扉を開けると、ベッドの上に座って姿勢を正している白羽が居た。ウッドはドアを閉め、鍵をかけ、それから電気を消した。
「えっ、何、どうしたの?」
「……ブラック・ウィング、とはもう呼ばない。白羽、武士垣外白羽。俺はお前を、殺しに来たのだよ」
「殺、す……?」
「ああ、額面通りに受け取らないでもらいたいな。本当にただ殺すなら、こんなことは言わないよ。出会い頭にお前の首を刎ねて、おしまいだ。そうとも。そうとも……」
 ゆっくりと闇の中で近づくと、ベッドの上で白羽の影が警戒したように動いたのが分かった。ウッドは口端を歪めて、確認を取る。
「昨晩、俺に無断で外出をして、グレゴリーに相談をしたそうだな。ああ、お前は罪な女だよ白羽。あいつ、お前にベタ惚れだったぞ」
「えっ、いやその、私そんなつもりじゃ」
「いやいやいや、別にいいんだそんな事は。総一郎を殺しておいて調子のいい、などと言うつもりはない。だが問題は一つあってな。奴は――奴はラビットなんだ」
「……え? ラビッ、ト? グレゴリーが?」
「ああ、その通りだよ。ニュースでも話題になっていただろう。ウッドと、ラビット。激戦だのと言われていたが……あれは真っ赤な嘘というものだ」
「嘘? 戦ったわけじゃないの?」
「いいや、戦ったさ。そして、相手にもならなかった。ラビットがじゃない。俺が、だ。俺がラビットの相手にもならなかった。俺じゃあ弱すぎた。奴が強すぎなどと言い訳をするつもりはない。俺が、奴と戦うには、弱すぎたッ!」
 絶叫。音魔法で防音しようとは思わなかった。どうせ、多少ウッドたちが騒いだところで図書は気遣って聞かなかった振りをするだろう。
「……総ちゃん」
 労わるような声で、白羽は立ち上がり、そして抱きしめて来た。ウッドは答えない。ただ彼女は言う。
「大丈夫だよ、強くなくたって、総ちゃんには私がいるでしょ? 大丈夫だから、大丈夫だから……」
「ああ、ああ、分かっている。グレゴリーがいくらお前を欲しがったって、今こうやってお前を手元に置いているのは俺だ」
 白羽の抱擁をそっと振り払った。静かな狼狽を示す白羽の目をまっすぐに見て、ウッドは告げる。
「幸運だった。お前がグレゴリーに出会って、惚れられてくれて。これで奴に対する攻撃の手段も、あろうというものだ」
「何、をッ?」
 鳩尾に拳を打ち込んだ。白羽よろめき交代するが、ウッドは頭を掴んで許さない。それから、ゆったりとした口調で語り掛けた。
「そ、総ちゃん……?」
「はは、お前はそうやって泣き総一郎の幻影に縋りついていればいい。だが俺はお前を通してラビットの心を殺すよ。そういえば聞き忘れていたが、白羽。お前は処女か?」
「……えっ」
「ははぁ、その反応はビンゴだな。なら、このまま進めよう」
 精神魔法。白羽の頭を掴む手が、静電気のはじける音を奏でた。「ッあ!」と白羽が短く悲鳴を上げ、それから必死になってウッドの掴む手を振り払う。自分で振り払っておきながら、まるで熱いものに触ったかのように手を離し、よろけてベッドに倒れ込み、魚のように跳ねた。
「なっ、ぅっ、何、痛い、けど、やだ、熱」
「お前の触覚、痛覚を、そのまま強化した。今は痛いばかりだろうが、熱いというからにはもう一つの感覚にも気づいているな?」
 うめき声を上げながら、恐怖に満ちた視線を向けてくる。これだ、と感じた。この感情こそ、ウッドがウッドたる所以だ。ケタケタと仮面なしに笑い、続けた。
「ざっくりと説明させてもらうなら、お前を盛大に壊して、それをグレゴリーに見せつけて反応を見ようというのが今回の企画だ。ただ壊すだけならハウンドと同じ精神魔法でも事足りるのだが、アレは存外簡単に解ける仕様でな。解呪の魔方式さえ見つかれば何とでもしようがあるのだ」
 触れる。それだけで白羽は痛みに顔を歪め、しかし同時に頬を紅潮させた。
「分かるか? お前にそれは生ぬるい。お前が総一郎を入念に殺したように、お前も入念に壊してやろう。痛みと快楽の間で板挟みにして、理性も知性も破壊する。精神魔法で治療しても、体がその恐怖と蜜を忘れず、すぐに壊れるようにする。喜べ、今からお前は輪廻巡りをするのだ。天国と地獄を、同時に見てもらう」
「や、やぁ、あっ、あぁぁあ!」
 服を力任せに破り捨て、ベッドの上に投げ出した。華奢な肢体が、夜の雪のように浮かび上がる。白くて豊かな髪が散らばった。体の痙攣に素直に呼応して、先端近くまで震えている。
 まずは撫でた。陶磁のような肌触りに、餅のような柔らかさ。それだけで白羽は痛みに歯を食いしばったし、同時に触れた箇所から走った熱に浮かされて、激しく呼吸を繰り返す。
「ぁ、やぁ。止めて総ちゃん。私が、私が悪かったから、もう、もう……!」
「あまりそう自分を卑下するなよ。俺はそういう卑屈な奴が大嫌いなんだ」
 嘯きながら、拳を振り下ろした。顔。普通にしていても苦痛に呻く部位への一撃は、白羽に呼吸を忘れさせた。
「おっと、痛いだけではダメだな。ほら、優しくなでてやる。それすら痛いだろうが、この程度の痛みは途中からマヒしてしまうさ」
「ぅ、ぐ、あっ、あぁ……!」
 天使の瞳は、暗闇の中でさえ健在だ。白羽がどんな表情をしているのか、彼女の全身に流れる汗は何なのか、見て取れれば、カバラに掛けられる。アナグラムがどうやって白羽を壊せばいいか教えてくれる。
 しばらくそうやっていると、白羽は激しい痙攣を数回起こした。ひとまず十回、とノルマを決めて白羽を可愛がり、快楽に酔いかけているところで殴打して地獄を見せた。
「ごめ、ごめんあさい、もうやだぁ……! だめなの、もうわたし、やだ、怖いよぉ……」
「ああ、そろそろ欲しいんだな。――はは、涙を流す割りに、随分と欲しがっている。だが、先に言っておこうか。これは白羽、お前が想像を絶するほどに痛いし、気持ちがいいぞ」
「――ゃっ」
 貫くと、一瞬白羽は白目をむいた。今度は拳でなく、平手で彼女の頬を張る。彼女は息をのむように意識を取り戻し、それから苦し気に横隔膜を震えさせた。
「痛いか? 痛いだろう。この痛みはもう取れないし、これからもっと大きくなる。だが白羽、お前は最後には痛みを堪えてでも欲しがるよ。そうやってお前は、壊れていくんだ」
「ぁ、や、ぁ、ああ、ぁ」
 すでにまともな言葉を発せていない。その動物じみた動きを鼻で笑って、ウッドは動き始めた。白羽はまず息をのんで、酸欠になった金魚のように口をパクパクと開閉させ、それからか細くもよく通る悲鳴を上げた。流石にこれはいけない、と音魔法で部屋から向こうに音が漏れないようにする。
「やだ、やだ、たすけ、たすけて。だめ、わたしこのままじゃ、死んじゃっ」
「だから、言っただろう?」
 呼吸もままならない彼女の首を撫でる。優しく絞める。白羽はまた背中をのけ反らせて、締め付けて来た。
「俺は、お前を殺しに来たのさ」
 天使は怪人の真下で何度も体を暴れさせる。涎をたらし、涙をこぼし、声にならない叫びを漏らす。それは痛みの中に愉悦を見出したそれで、同時に快楽の向こうに苦痛を感じたそれだ。
「はは、ははは、ははははははははは! そら、壊れろ。もっと、もっと! 何だ!? 痛みが足りないか? それとももっと気持ちよくしてほしいのか!?」
 もはや白羽は言葉を紡げない。ただ震える手を伸ばしてくるばかりだ。それを握り返せば、痛みから離さざるを得ない。もう白羽はどうにもならない。
 なのに、気づけば白羽は、痛みを堪えてウッドの手を握っていた。
相当の時間が経った。ベッドは白羽のあらゆる体液でびしょ濡れになっていたが、いまだ彼女は瞳に光をともしている。時計を一瞥してから、ウッドは呆れた声で言った。
「お前は元気だな、白羽。これだけやっても、まだお前は息の根がある。もう三時間も経ったぞ。俺でさえお前が何度果てたのか分からないというのに」
「総ちゃん……、総、ちゃ……」
「何だ? 先に言っておくが、俺はもう人間でないからな。お前の中で果ててはやれないぞ。痛みも、快楽もない。お前とは真逆だ。ここでこうしているのも、お前を壊し切るという意地のようなもので――」
 自分で何を言っている、と口を閉ざした瞬間だった。白羽は手の痛みを堪えてウッドの肩を掴み、引き寄せた。まずい、と体を強張らせる。天使の種族魔法はまともに食らえばそのまま消されかねな――
 唇に、柔らかい感覚を得る。口づけ。キス。ゆっくりと離されていく中、呆然とした。白羽はだんだんと呼吸を整えて、息も絶え絶えながら、聞きとめる言葉でいう。
「……あは……隙あり、総ちゃん……」
「――――――――――」
 ゆっくりと、高く、高く腕が上がっていた。
 力任せに振り下ろす。悲鳴が上がる。ウッドはもう一度同じことをした。もう一度、もう一度。何度だって。
「ふざけるな、ふざけるなよ。お前は痛みと快楽に狂っていればいいんだ。こんな、こんなこと誰が許した。おい。聞いているのか!」
「ぁっ、ぐっ、ぅっ、ぅぐ……!」
 白羽は手で顔や胴体を守りながら、隙間から力強い微笑みを見え隠れさせた。ウッドは頭がカッと熱くなる。また何度も力任せに殴りつけながら、何故白羽を殺せないと焦りだす。
「何故、何故だ。おい、白羽! お前は何故笑えている! 弟に犯され、暴力を振るわれ、その挙句何度も果てておいて! お前は何故壊れない!」
「ぅっ、そっ、ぐ、そんなの、そんなの決まってる!」
 白羽の手が伸びてくる。ウッドの両手は掴まれ、彼女を直視するほかなくなった。ウッドは瞠目し、歯の根が噛みあわない感覚を覚える。まるで、グレゴリーに睨まれた時の様に。
「私が、私が総ちゃんを愛しているから! だから、何をされたって嬉しいの! だって、今日総ちゃんが私を襲いに来たのは、グレゴリーに嫉妬したからでしょ? そう思ったら、痛くたって、苦しくたって、それが総ちゃんに貰えたものだって、何にも辛くなかったよ!」
「や、止めろ。そんな薄っぺらい愛など、出まかせに決まっている」
「止めないし、私は何度だっていうよ。私は、総ちゃんを愛してる。私だけじゃないよ。この家にいるみんなは、ズッチーも清ちゃんも、ウー君もハウハウだって、みんなみんな総ちゃんを愛してるんだよ」
「黙れッ! 都合のいい言葉を吐くな! お前など、お前など!」
「都合のいいこと言ってるのはウッド! あなたでしょう! あなたは総ちゃんに都合が悪くって、自分に、修羅にとって都合のいい情報ばかりを選び取って、この世界に絶望しているだけ! 私は総ちゃんを愛してる! 総ちゃんになら壊されたって、殺されたって良い!」
「う、あ、ああ、あああああああ!」
 手を振りほどく。それから、やたらやったらに殴りつける。何もかもが分からない。仮面が顔を覆っている。視界がゆがむ。闇に閉ざされていく――――











「―――――あれ?」
 “総一郎”は、そこにいた。深い汚泥の敷き詰められた広大な底なし沼の中心で、何も持たないまま突っ立っていた。
「……ここは、どこ……」
 周囲を見渡す。汚泥は水平線まで続いていて、空さえ灰に覆われたようにどす黒く淀んでいた。ここは何処だろう。そう足を踏み出そうとして、すぐに気付く。動いてはならない。自分は今、ほんの小さな足場の上で、辛うじてバランスを保っているのだと。
「え、えっと、これは、どうすれば……」
 逡巡。その困惑が体を震わせたか否か、小さな足場はバランスを崩し僅かながら下降を始めた。息が止まる。ダメだ、時間がない。
「だ、誰か」
 再び見回すも、こんな場所で誰かが見つかるはずもない。だが、遠くで煌く何かがあった。金に輝く数字。馬鹿丁寧な英語で喋る小柄な彼女。手を伸ばしかけて、ダメだと首を振る。彼女は自分から切り捨てたのだ。彼女に縋ることは、彼女を巻き込むことと同義だ。
 なら、他に手はないのか。背後を顧みて、汚泥の上に睡蓮の花が咲いていた。甘く香る愛らしい花。花に手を伸ばすことは、汚泥に沈むこと同じだ。彼女と道を共にするとしたら、それは死を覚悟したときと他ならない。
 もう、ダメなのか。沈む体はどうしようもない。足掻けば足掻くほどに飲まれる。上を見た。空はこんなに淀んでいるのに、たった一つ、真上にだけは小さな小さな太陽が輝いていた。
「……ぅ、あ」
 それが、あまりに眩しいそれが、総一郎には恐ろしかった。そこへ手を伸ばせば、イカロスの様に羽をもがれ焼き墜とされる。温かで、愛しているからこそ、手を伸ばせない。その光が、その炎があまりにも強烈だから。
 信じたい。信じられない。思いは交錯して、総一郎の体をさらに重くした。底なし沼に沈む速度が上がる。その冷たさに呼吸さえ苦しくなった。足元を見つめれば見つめるほど、沼が近くなっていく。
「嫌だ、誰か、誰もいないの? また誰も助けてくれないの?」
 幼児のように情けない弱音が口から漏れた。この人生で、結局頼れる人なんていなかった。厳しく鍛えてくれた人ならいたけれど、彼らは肝心なところで助けてくれなくて、結局は一人でどうにかするしかなかった。たった一人で、修羅の様に戦い抜くしか。
 また、そうなるのか。人間性を自分からかなぐり捨てて、自分の欲しいものが何かも分からないまま我武者羅に進む。総一郎は、顔を覆った。
「そんなのはもう嫌だ。何が欲しいかも分からないまま、死ぬのが怖くて戦い続けるのなんて、もうたくさんだ。命の為に殺し続けて、俺の命が何かを為さないなら、死んだほうがマシじゃないか」
 死んだほうがマシという考え方を、いつから持ち始めただろう。思い返せば返すほど、根深いことに気付かされる。きっとローレルと別れてからだ。ファーガスに殺され損ねてからずっと、よりよく自分を理解してくれる相手に殺されたがっていた。死に場所を求めていた。
 沼は腰のラインを越えて、とうとう肩までも呑み込もうとしていた。もはや猶予などない。汚泥は首までも覆い、総一郎は上を向く。視線の先には太陽。目を焼かれそうな、太陽がある。
「もう嫌だ。戦いたくなんてないんだ。殺すのも、殺されそうになるのも嫌なんだ。死んだ方がマシなんて思いたくない。生きていたい。生きていたいと思いたい。でも、一人じゃ無理なんだ。たった一人で、人間は生きていけないじゃないか」
 手を伸ばす。焼かれる、という恐怖さえもはや度外視していた。死を前にして、助けてくれないかもしれないなどと思う余力はない。だから手を伸ばし、一つの白い羽根を手にして、気づいた。
「―――助けて。助けてよ、白ねぇッ」
 『助けて』ほしかったのは、救って欲しかったのは、他の誰でもない、自分なのだと。


「……総、ちゃん……?」


 息をのんだ。我に返った。薄暗い部屋。ベッドの上。総一郎はそこにいた。そして下には白羽がいた。
「ぇ、あ、え……?」
 困惑して、言葉も発せなくなる。何が起こっているのか分からない。白羽を見下ろすと裸で、それから自分を見て何をしていたのかを悟る。恐慌状態に陥る。有り得ない。有り得ていいはずがない。首を振る。こんなこと、自分には出来ない。総一郎はこんなことをしない。
「総ちゃん? 総ちゃんなの?」
 白羽の声色が喜色に染められていくことにも気づけず、総一郎はその確認の言葉にただただ震えを大きくした。動転が総一郎の認識能力を歪める。傷だらけの白羽を、痛みを訴える拳を捉えて、白羽そのものの表情を見て取れていない。
「違う」
 とっさに返した言葉だった。そしてその嘘を、総一郎自身が誰よりも深く信じ込んだ。そうだ、自分は総一郎ではないからこのような酷い真似ができるのだと。総一郎でないから白羽を犯し、あまつさえ暴力を振るう事が出来るのだと。
「嘘、嘘だよ。総ちゃん、ああ、総ちゃん、ずっと、ずっと会いたか、」
「違うと、言っている」
 言葉を遮ろうとした手は、左が口を押え、右は首を絞めるに至った。どうして口を押えるだけじゃないのだと、総一郎は疑問に思う。首を絞める右手。真っ先に修羅に染まった右手。そして逆上せあがった頭は、結論付けた。
「総、ちゃ、ん。何で、わた、私、だよ。お姉ちゃんの、白ね、ぇ、だよ……? よく見て、わ、たし、ぁ、総ちゃ……」
「違う。違う。俺は総一郎ではない。総一郎はこんな真似をしない。大切な白ねぇを犯すなんて真似、絶対にしない」
 必死だった。いつの間にか顔を覆う桃の木の仮面は顔面に癒着して、無表情の奥底で必死に言葉を紡ぐ少年を隠している。総一郎は口を押える手が機能していないことに気付き、その手さえ首に回した。白羽が苦し気に呻くのを見て、さらに苦しめなければという強迫観念にかられた。腰を振る。ねじ曲がった快楽が総一郎を苦しめる。
「やめ、止めて、苦しいよ、総ちゃん……! ぁぐ、私は、私は……!」
「俺は総一郎じゃないッ! 俺は、俺は」
 絞り出すように、総一郎は言う。
「俺は、ただの修羅だ……!」
 手に力が籠る。籠りすぎて、手ごたえが変わった。それにも気づかないまま、力を籠め続けた。白羽の首が折れていたことを知ったのは、果てた後の事だった。








 夜明け前、カーテンを閉め切ったリビングで、総一郎は椅子にもたれ掛かっていた。
 その様は虚ろだ。仮面さえ外していたものの、苦労したのだろう、癒着部分の多量についた仮面を持つ手は、一部爪がはがれかかって血が滲んでいる。
 どれだけそうしていたのかも分からなかった。呆然自失として、無我夢中に動いた後の白羽の目に生気がないことを理解して、気づけば椅子に座っていた。自分が殺したという実感すらない。
 けれど、きっとそうなのだろう。総一郎が殺したのだ。犯しながら首を折って、実の姉の命を手折った。
 結局死んだほうがマシだった。そう思う。だから日の出を待っていたのだ。ウッドだった時の記憶は何処か浮ついていたけれど、日光を浴びれば灰と散ることが出来る。
 白羽を道連れにすることだけが、いたたまれなかった。白羽は死ぬべき人間じゃない。死ぬべきは自分だけだったと。
 そう思っていたところで、リビングに現れる影があった。
 図書が、そこに立っていた。顔色は真っ青で、しかし眉根は深く寄せられ、口は一文字に結ばれている。その顔を見れば、白羽の惨状を見たのだと分かった。
「総一郎ッ、お前ェ!」
 走ってきて、殴られた。抵抗はしなかった。椅子ごと巻き込んで倒れて、馬乗りにされ何度も顔面を殴られた。このまま死ねたらと思う一方で、図書に余計な罪をかぶせたくないなと他人事のように考えた。
 だがどうせ殺せはしないだろう。案の定図書は途中で殴るのをやめた。拳からは血が垂れている。そんなに殴られたような気はしていなかったのに。
「何でッ、殴り返してこねぇんだよ! お前はそれでいいのかよ! 白羽をあんな、あんな風にして、総一郎、お前、お前は……!」
「いいんだ。殺されたって。ずっと死に場所を求めていた。白ねぇを殺してしまったからには、もうどうしようもないから。図書にぃに殺されるなら、俺はそれでもよかった」
「良くねぇよ! 何で俺が可愛い弟分を殺さなきゃならねぇんだよ! クソ……ッ! 俺の、俺の責任だ。俺が最初から取り持っていれば、少なくともこんな事には……!」
 その考え方は的外れだ。多くの人間が総一郎と白羽の間に立って、お膳立てをして、出来る限りを尽くした結果なのだ。やっぱりアメリカについた時点で手遅れだった。それが結論なのだろう。
 地面に転がったまま、総一郎はカーテンの隙間を見た。僅かに白くなり始めている。日の出に焼かれようと思った。アーカムの夜と共に去ろうと。
「あ、待て。待てよ、なぁ、総一郎!」
 図書の頬を伝うしずくを見て、この人には最後まで迷惑をかけ通しだったと目を伏せた。恩返しなんて欠片も出来ていない。「ごめん、図書にぃ。お世話になりました」とこんな時くらい礼儀正しく頭を下げた。
「なぁ、おい、嘘だろ。せめて、何があったのか教えてくれよ。俺にはお前が白羽を苦しめて殺すような奴には思えねぇよ! なぁ!」
「知らない方がいいことだってあるよ。俺は図書にぃの知らないところで、酷いことも、惨いこともいっぱいしたんだ。だから、出来れば忘れてほしい。その方がきっと苦しまずに済むから」
 カーテンを掴む。それだけで指先に痛みが走った。日はまだ出ていないのに、直射日光なんて浴びたらきっとすぐに消えることが出来る。
「総一郎!」
「ごめん、図書にぃ。俺は逝くよ」
 窓の向こうを正面に据える。カーテンを握る手は震えている。今まであれだけ拒んでいた死を迎えることは、ひどく、ひどく恐ろしかった。だがこのまま生きていくわけには行かない。白羽を一人になんて絶対にしない。白羽は堕天していて地獄に落ちざるを得ないだろうけれど、それは何人も殺した総一郎も同じだから。
 開けるぞ。腹に力を籠める。そしてカーテンを開け放つ。
 その寸前で、リビング前の廊下から足音が聞こえた。
 全身が跳ねるような驚愕が走った。無意識のうちに走らせたカバラが、足音から対象の体形まで一瞬で割り出した。年頃の少女のそれ。その時点で清やウルフマンは考慮から外れるし、アーリは総一郎以外が洗脳を解くならば半年以上の時間を要する。
 ならばあり得るのは一人だ。だが、その一人が一番有り得ないはずだった。
「え、あ、おま、お前」
 足音は図書の横を横切って、総一郎の背後に到った。兄貴分の間抜けな声が総一郎の予感の的中を示す。しかし、そんな。確かに死んでいたのだ。いや、そういう問題ではない。生きていたとして、総一郎には合わせる顔がない。
「こっち向いて」
「い……嫌だ」
 全身が震えている。顔が引きつって、足が震えて動けない。かつて拒絶された記憶がフラッシュバックする。お前なんて総ちゃんじゃないと言われたあの瞬間にまで精神が遡る。
「いいから、こっち向いて!」
 腕を掴まれる。このままカーテンを開ければ灰になって、顔を合わせずに済む。けれどその隙すら彼女にはなくて、引き倒されるように振り向かされた。
「あ……!」
 そして彼らは直面した。総一郎は目の当たりにする。成長した白羽の姿を。顔立ちは母によく似た、瞳だけが父のそれを受け継いだ、前世の彼女そっくりな愛らしい顔を。
「ご、ごめ、ごめんなさ」
「――そんな、そんな怯えた顔しないで。私、怒ってなんかないよ。それに、ごめんなさいっていうのはこっちの方。私が総ちゃんを傷つけたから。大丈夫だよ、大丈夫……」
 抱きしめられる。胸元に、深く。それさえ恐ろしくて、首を振って離れようとした。だが放してくれない。さらに強く腕が絡む。
「総ちゃんは、修羅なんかじゃないよ。人間。それは私が誰よりも知ってる。だって総ちゃんは、あの後ちゃんと私を助けてくれたもん。白ねぇ死なないでって、魔法で必死に私を治療してくれた」
「え……!」
 記憶にない。てっきり、殺してそのまま放置したのだと思っていた。だが違ったのか、いや、だとしても。
「でも、でも俺は白ねぇにあんな、あんなひどい真似を」
「だから言ったでしょ? 私、総ちゃんの事愛してるもの。愛する人に何されたって平気。殺されたって良い。むしろ私は、総ちゃんに求められて嬉しかったよ。っていうと、ちょっと違うっていうか、恥ずかしいけど」
 だからね、と白羽は至近距離まで顔を近づけて、悪戯をするように軽く口づけをして、からかうように微笑してから、挨拶をした。
「久しぶり、総ちゃん。会いたかったよ」
 その言葉に、再会に、総一郎は顔を皺くちゃにする。
「……俺も、俺も会いたかったよ、白ねぇ……!」
 人間は、天使のお告げを聞き入れる。それが心地よく都合がいいからと、何を疑うこともせず。

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