精霊使いと冠位の10人

いなお

悩む少年




あれから1日が過ぎた。
ヴォイド達が消えた後、屋上を覆っていた結界が崩れた。
それを見るや否や、奏は「すぐに校舎から離れて私の家にその精霊を連れてってー」と康太に指示を出す。
結界の崩れる際にガラスの破片が大量に地面に落ちるような音がし目立ったため、たため、魔法省の人間に見つからないようにするための指示だろう。
それから奏の家で待っているが一向に奏が帰ってくる気配がない。

「やっぱ魔法省関係の仕事なんスかね?」

奏は魔法省の中でも特別な役職に就いていると以前聞いたことがある。
街中に魔獣が現れるなど魔法省からすれば失態以外の何物でもないのだ。
その対応に追われているのかもしれない。

「ハイネ、その子の様子どうっスか・・・って一緒に寝てるし」

黄色の髪色をした少女とハイネが同じ布団で寝ている。
ハイネはこの精霊の面倒を任せていたのだが、ハイネも疲れていたのだろう。
今はグースカと気持ちよさそうに寝ている。
リーシャは夕食の支度をしますといい、奏の家の台所を勝手に借りて、今料理の真っ最中だ。
リーシャの様子を見に康太は台所へ向かう。
康太の存在に気がついたリーシャは振り向いて笑顔を見せる。

「康太様、もう少しお待ちください。今日は肉じゃがですよ」
「悪いリーシャ。けどよかったんスかね。勝手に台所借りちゃって」
「戻ってこない赤松様が悪いです。まさかこんなに戻られないとは思ってませんでしたし」

リーシャは康太の様子を察したのか、不意に尋ねてきた。
「何かお悩みですか?」
「顔に出やすいっスか俺?」
「いえ、そういうわけではありませんよ。ただ何となく、精霊だからでしょうか?」

そう言って舌を出す仕草が可愛い。
しかし、普段大人しいリーシャにしては珍しい行動だ。
リーシャなりに康太を気遣っているんだろう。

「少し、昔の事を思い出してたんス」
「昔の事ですか?」
「そう、リーシャと会った時の事とかね」
「それはまた随分昔ですね。そういえば光一様からご連絡はありましたか?」
「いんや、全く。何をしてるのかねあの父親は」

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