精霊使いと冠位の10人
2色の炎
黒色と橙色の炎が入り乱れる。
炎の中心では康太とヴォイドの剣戟が繰り広げられている。
既にカトレアと謎の精霊との戦いで魔力をだいぶ消費していたが、今康太が剣に纏わせている炎はリーシャの魔力によるものだ。
精霊は魔力の塊であるが故、その力を自在に使うことができる。
しかし、無尽蔵に使えるわけではない。
魔力が尽きれば精霊にとってそれは死と同義だ。
だからこそ康太はリーシャやハイネの魔力には極力頼らないようにしている。
康太にしてみれば苦肉の策ではあるのだが、実際問題、そんな簡単に精霊の魔力が尽きる事などあり得ない。
精霊の持つ魔力量は普通の人間の100万倍と言われている。
それに加えて、魔力の回復力も人間のそれとは比べ物にならない。
一方的に魔力を放出し続けない限りは精霊が魔力の枯渇で死ぬということはない。
「だから言ってんだろ。その精霊さえ渡してくれれば、少年と戦う気は無いって」
「無理な相談っスね。俺この子に助けを求められたんで」
レーヴァテインを弾き、炎の斬撃を繰り出す。
「それに応えなきゃ男じゃ無いっしょ!」
ヴォイドは斬撃を防御型の魔法陣を展開して防ぐ。
しかし、威力が予想より強かったのか。
魔法陣に亀裂が走り、呆気なく砕け散る。
「うお!」
魔法陣を超えて来た斬撃を紙一重で避ける。
すぐさま斬りかかって来た康太の一閃をヴォイドはレーヴァテインで受け止めた。
ヴォイドは康太の後ろにいるハイネと謎の精霊の方に視線を向けて康太に問いかける。
「そっちのおチビちゃんもその子みたいに剣になんのか?」
「だから答える義理は無いっての!」
ヴォイドと距離を取り、康太は天高く剣を掲げる。
すると橙色の炎が康太の周りに集まりだす。
「リーシャ!一気に決めるぞ!」
(はい!最大火力で行きます!)
「そいつは俺にとっても嬉しいね。んじゃあ力比べと行こうか」
ヴォイドもそれに迎え撃つように槍を構える。レーヴァテインの矛先に黒煙が纏われ、徐々にその炎が勢いを増していく。
「ハイネ!奏さん!防御は各自でよろしくっス!」
それの指示に咄嗟にハイネは自分と精霊の周りを風の塊で包み込み、奏は氷の球体を作り上げ、その中に身を隠す。
二つの炎の熱が屋上の結界をつつみこみ、次第に陽炎が現れる。
一瞬の静寂の後、互いの炎が燃え盛り、一直線に炎が走り出す。
「(紅蓮鳳凰翼!)」
「レーヴァテインプロミネンス!」
二つの色の炎で結界の中が埋め尽くされる。
外からは結界の効果で見えないのは当たり前だが、中にいる人間ですら、炎で埋め尽くされた視界では、誰が無事かすらかもわからない。
炎は勢いが衰えるどころか、さらに勢いを増していく。
すると
パキン
と何かにヒビが入ったかのような音が結界の内外に響いた。
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