貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

領地運営と戦争準備③

「伯爵殿、提案とはまた大きく出られましたな」
「なんだ、不満か? 」

 重くピリ着いた空気に、そばに控えていたシュプリーズの部下が生唾を飲む音が聞こえる。
 
それにしても、鎌を持っているネメスの後ろに6人、俺の両脇に2人、シュプリーズの横に2人。護衛にしては数が多すぎるだろ。
 モロに争う気満々でいらっしゃるようだ。

「では伯爵殿、貴殿の提案を聞かせてくれないか?」
「まぁ端的に言うとだな、お前ら邪魔だから隅に寄れ。って事だ」
「ハッハッハ、面白いご冗談を」

 作った方笑顔で、わざとらしく笑うシュプリーズ。
 
 これは盛大な駆け引きだ。俺としても、このスラム街の人間と敵対したいとは思はないし、邪険に扱うつもりも無い。
 どちらかと言えば、今後このスラム街には、スラム街の住人には俺の管轄内に入って、色々と働いて欲しいと思っている。

 その為にも、こちら側が舐められる訳には行かない。
 相手に勝てないと思わせるほど強気に強情に……。だが、反旗を起こさせない程度に優しく穏便に。
 この領地の運営に、スラムの住人は欠かせない。

「少しおふざけが過ぎたな」
「えぇ、そうですね。では、改めてお聞き致します。伯爵殿が我々にどのような提案を? 」
「スラムの縮小化だ」
「あまりふざけるのも御遠慮願いたい! 我々は、いつでも其方と争う準備は出来ているのですよ」

 冷静沈着を絵に書いたようなシュプリーズが、青筋を浮かべて声を荒らげる。

 それと同時に、ネメスが鎌に魔力を流した。

 所詮はスラムの首領という所か。本性を以下に隠し着飾ろうとも、中身は思ったより短気らしい。
 それに、部下の方も所詮はスラムの集め物か。ネメスの分かりやすい程の牽制に、まるで誰も気づいていない。

 これは、期待が外れたな。
 チャン侯爵の手を焼かせていた輩だからもう少しましな奴らだと思っていたが、全くの期待はずれだ。
 これならば、楽に終わらせられるだろう。

「争うか……。お前ら、死にたいのか? 」
「このクソガキが、少し下手に出ていれば図に乗りやがって……。あまり俺たちを舐めるなよ? 」
「おいおい、化けの皮が剥がれてるぞ。それに、図に乗っているのはどちらだ乞食共」
「言ってくれるじゃねぇか。お前ら! このガキに痛い目見せてやれ」

 シュプリーズが指示を出せば、腰に携えた剣を抜き放った部下共が斬り掛かってくる。

「このクソガキがァァァ! 」

 だが、所詮は狭い部屋の中。数が多すぎてまともに動けていない。
 それでも、少しはまともな奴らなのかコンビネーションを効かせ、左右から遅い剣筋の斬撃が襲いかかる。

 だがまぁ、所詮はスラムの人間と言おうか。

「ネメス、やれ」

 今か今かとうずうずとしているネメスに指示を出せば、鎌を大きく振り回し、次々シュプリーズの部下達を壁へと吹き飛ばす。
 流石はネメス、俺の意思を汲み取ってか誰一人として殺していない。

 そして、決着は本の数秒でついた。
 この部屋で意識を保っているのは、俺とネメス、そしてシュプリーズだけだ。

 その最後の生き残り、シュプリーズの首にネメスの鎌が静かに添えられる。
 身体を震わせたシュプリーズは、腰を抜かして椅子へと倒れるように座った。

「俺達とやるならドラゴンの群れでも引き連れてこい。それが無理なら、大人しく従え」
 


………………
………



 それから、少し話して大方のことは決まった。

 まず1つに、スラム街は規模の縮小。具体的には現在の5分の1の規模に縮小すること。
 スラムの人間は多いが、街の凡そ3分の1を占めるほどに大きかった為、突き詰めればそんなに敷地は必要無かった。
 チャン侯爵がいかに適当だったかが透けて見えた。

 というか、これは適当というレベルではないような。

 2つは、スラムの全面協力だ。
 今現状、どこの街にもあるスラムだが、その扱いはかなり酷い。差別が行われ、職が得られないからスラムがまた増える。
 その悪循環の繰り返しだ。

 ならば、その全国のスラムの住民をある程度集めることが出来れば、各街の負担もかなり減り、スラムの人々も俺の街に来ればある程度の生活を保証してやることが出来る。

 この領地の資金源は鉱山。その鉱山に人員をさくには、冒険者や兵士など管理業務を行うにしても、発掘作業を行うにしてもかなり勿体ない。
 そのような誰にでもできる作業は、誰かにさせておけばいいのだ。

 前任のチャン侯爵は、奴隷を安く買いしめ鉱山に回していたようだが、それは余りにも金がかかる。
 ならば、他所から来たスラムの人間を引き入れ、鉱山の仕事を与え、衣食住を提供し、ほぼ無賃金同然で働かせればいい。

 全国の街は綺麗になり、スラムの者達はちゃんとした職に付け、俺は経費を削減できる。
 一石三鳥の素晴らしいアイディアだ。

 その為にも、スラムの協力が必要なのだ。

 一先ずは、ロード領のスラムの人を別の街に送り込んで、この街のスラムのいい情報を流す必要がある。

 また、課題が増えてしまった……。

コメント

  • ノベルバユーザー355602

    次の話楽しみにしています。頑張って下さい

    0
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