貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

国士騎士⑧

もくもくと煙が立ちあがり、程よい熱さの温度の湯が、疲れ切った身体に骨の髄まで染み渡る。

「主様、お湯加減はいかがでしょうか?」
「最高だ」
「左様でございますか。強化合宿、さぞお疲れになられたことでしょう。ごゆるりとおくつろぎ下さい。あとの始末は、我々が済ませておきますので」
「あぁ、頼んだ」

見事オーガ単独討伐を成した騎士隊員達は、疲れ果ててしまったようで。
あと、1泊の休息を取らせてから下山させることにした。

そちらの方は、全てスーリヤに任せてしまっている。

「そうだネメス、あの異様な大進行についてなにか分かったか? 」
「えぇ、すこしきな臭い話が……私の配下より耳に入れました」
「きな臭い? 」
「はい。ここより西に位置する帝国で、何やら1部の貴族が武具を買い集めているようでして」
「ふむ、武具か」

武具と言うことは、帝国内でどこか他国に攻め入る予定でもあるのだろうか。
いや、1部の貴族ならば内乱の可能性も捨てきれない。

早急に使いを忍ばせておいた方がいいだろうな。

「ネメス、監視に特質した物を付けられるか? 」
「勿論です。影猫を忍ばせましょう」
「頼んだ」

とりあえず、これで帝国貴族のきな臭い情報は耳に入る。
あとは、この事を国王陛下にお伝えしておかなければならないか。

「ネメス、これから陛下の元へ向かう。表に馬車の用意を」
「御意に」

そう言って、ネメスは浴室を立ち去った。

「さて、そろそろ休息は終わりか」

近くに置いてあったタオルを手に、浴室から退室する。

身体を拭き、礼服に着替える。もちろんの事ながら、キウンもだ。

<主よ、少しは休んだらどうだ? >
「あぁ、分かってるよ。陛下へのご報告が終われば直ぐに休息をとる」
<誠であるな? >
「うん」

自室へ帰り、髪の毛を整える。
陛下の御前に向かうのだ、最低限度の格好はしておかなければ不敬に値する。

時刻は10時頃。

俺は、馬車に乗り王宮へと向かった。


この異様なまでに設備の整っている騎士隊の待機所から王宮までは、馬車でそう時間はかからない。
物の10分程度で到着したアルト達は、応接室にて待機していた。

すると、突如姿を見せたネメスが切羽詰まったように言った。

「主様、取り急ぎでお耳に入れたいことが」
「なんだ? 」
「先程配置した影猫からの情報ですが、つい先程、帝都に向けて軍を進行した模様です」
「そ、それは本当か? 」

だとしたら、たいへん面倒なことになりかねない。

帝国は、そもそも好戦的な物が高位の地位に着くことが多い、
完全実力至上主義の国ならではの傾向だが、それ故に帝国は他国との戦争が絶えない国なのだ。

現国王の一族になってからは、その好戦的な一面が随分と丸くなった。
高ぶる熱を、王家の一族が鎮火し続けてきたのだ。

だが、最近となってその一族の力が弱まってきたのだろうか。

そうなれば、俺たちの国にも火の粉が飛んでくるだろう。

「急ぎ、国士騎士を帰還させろ」
「御意に」


♢♢♢


同刻、アジュの森山頂では。

「さぁ皆、起きなさい! 」

昨夜、隊員達はキングオーガとの単独対決で力尽き、倒れるように寝てしまった。
そのせいか、合宿が終わるという安堵からなのかいつもより4時間ほど遅くに目を覚ました。

と、言うよりもスーリヤによって叩き起された。

「貴方達、ご主人が居ないからといっていつまでで寝てるの! 」

ほら、ほらと。隊員たちの布団を捲り上げる。

「うぅ、スーリヤさん。まだ眠いですよ……」
「そうですよ、昨日あんなに……」

ムズムズと布団の中に顔をうずくめる隊員立ちに、スーリヤは。

「何を言ってるの、たかがキングオーガごときで……」

全く……。と、ため息をつくスーリヤであるが。
キングオーガを''ごとき''と軽くあしらえるのは、この世にそう居ないと気づいていないのだろうか。

「はぁ……分かりましたよ。起きますよ」

眠い目を擦り、ゆっくりと起き上がる皆に納得したのか。
スーリヤは笑顔で、その場から立ち去った。

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