生きる喜びを教えてくれたのは異世界に転生した君でした
57.闘技大会~再開~
中断となっていた闘技大会が一層の熱を帯びて再開すると、その後の大会は滞りなく進み、後半日程2日を終えたところでベスト8が決定した。
残りの2日のうちの1日で大会優勝者を決め、最終日に特別試合を行うという段取りになっている。
 
ベスト8の中にはユウを始めとした天翔ける竜メンバーは含まれていた。天翔ける竜は今大会でその名を知らしめた最有力パーティと言えるだろう。その一方でユウ達に啖呵を切っていた血塗る夕暮れのレベッカはいなかった。ベスト8を決めるところで敗退したらしい。
 
「マジで今回は調子悪かっただけだから大会終わったらお前ら闘技場に来いよな! 大会じゃなくてもお前らとやれればアタイは何でもいいんだ!」
自身の負けを認めたくないレベッカは、わざわざユウ達の宿泊する宿屋銀月に乗り込んで来てそう言い放ったのだった。
「見苦しくてすまないな。こいつの心の安寧のためにも、聞き届けてやってほしい」
レベッカが迷惑をかけないようにと共に訪れたダグラスが、レベッカの傍若無人な態度に代わって詫びる。
この2人の関係性がよく見えなかったが、ダグラスが保護者ということだけはわかった。
 
そして今、銀月のテーブルを囲むのは天翔ける竜とダグラスとレベッカの6人。血塗る夕暮れの他2人はレベッカのお守りから離れ、今は別行動とのことだった。
 
「あんの金髪ヤロー! ヘラヘラした面しておきながらとんだ食わせ者だぜっ!」
酒を煽りながらクダを巻くレベッカの怒りの対象はどうやらベスト8進出を決めた戦いの対戦相手のようだ。ユウ達はその場にはいなかったため、どのような戦いだったのかはわからない。しかしレベッカの反応からすると、その金髪の男というのは見た目に反して強かったということだろう。
「勝ち残った中に、名前を聞かなくなって久しい大地の鍛冶屋のドランもいただろう? パートナーのガランはいなかったが、エルフと人族と獣人と一緒にいた。あり得ない組み合わせなんだが ……もしやあれが種を超えし絆か? いや、だが、ドランが種を超えし絆にいる理由がわからんな」
「髭ありの方がドランか? アタイには髭でしか区別できねぇけど名前も似てるからどっちがどっちかわっかんねぇんだよアイツら。他のドワーフがいたとしたら、アタイにゃもうそれがドランかどうかもわかんねぇよ」
「……お前に聞いた俺がバカだったよ」
レベッカは進行役が呼び上げる選手の名前すらも聞いていなかったようだ。そんなレベッカにダグラスも呆れていた。
大地の鍛冶屋。その名は以前ネロから聞いていたベテラン冒険者のパーティ名だ。ダグラスとレベッカの発言からそのメンバーがドワーフであることがわかる。この世界に来て、竜族以外の種族との初のご対面となりそうだった。
そして新たに耳にするパーティ名「種を超えし絆」。こちらは最近、そのパーティ構成メンバーの異様さから名前が浸透してきているらしい。その異様さとは、パーティーメンバーが人族とそれ以外の他種族で構成されているということだ。
この世界の歴史においても種族間差別というものがあるらしい。特に人族は過去に他種族を虐殺したという歴史があって他の種族からよく思われていない。また、人族は未だに他種族を見ると好奇の視線と共に、中には蔑みの視線を向けるものもいる。人族にしてみれば自分達が直接経験していない過去の話であるにも関わらずだ。歴史の闇が、よくない形で今も継承されていた。
そしてエルフとドワーフはその歴史とはまた異なる歴史を背景に、決して相容れない種族として有名だった。
そのように種族間には種々の暗い歴史があったため、多種族で構成されるパーティというのはただそれだけで珍しく、人々の目に留まる。加えて、そのメンバー達の信頼関係が目に見えたことが彼らのパーティ名として浸透しているらしかった。
 
「素敵なパーティね」
 
種を超えし絆の話を聞いて、リズが頰を緩める。人の根幹に根付く差別意識に真っ向から対抗するかのようなそのパーティをいたく気に入ったようだ。しかし、それはユウも同じだった。
リズもユウも元の世界で一種の迫害を受けていたと言っても過言ではない経験をしてきていることもあって、そのパーティの存在に心打たれる要素は十二分に持ち合わせていたのだ。実際にこの世界の種族達が受けてきた迫害に比べれば些細な経験かもしれない。しかし、想いの方向性は同じだった。
 
「いつか、そのパーティの人達とも話してみたいね」
「ドランがもし種を超えし絆なら、少年達が望むことは実現されるんじゃないか? 8人のうち3人が天翔ける竜なのだから」
 
ダグラスのその言葉に、ユウもリズも明日の試合の組み合わせ発表が待ち遠しくなる。ドランという戦士が大地の鍛冶屋ではなく種を超えし絆にいる理由は気になるものもあるが、その名で呼ばれるパーティにいるということは、きっと崇高な信念があろうことは推測できた。
 
明日の参加者は天翔ける竜の3名、レベッカを倒した正体不明の金髪男、種を超えし絆のドランと思われるドワーフ、そして他3名。
 
優勝者を決める戦いが、始まる。
残りの2日のうちの1日で大会優勝者を決め、最終日に特別試合を行うという段取りになっている。
 
ベスト8の中にはユウを始めとした天翔ける竜メンバーは含まれていた。天翔ける竜は今大会でその名を知らしめた最有力パーティと言えるだろう。その一方でユウ達に啖呵を切っていた血塗る夕暮れのレベッカはいなかった。ベスト8を決めるところで敗退したらしい。
 
「マジで今回は調子悪かっただけだから大会終わったらお前ら闘技場に来いよな! 大会じゃなくてもお前らとやれればアタイは何でもいいんだ!」
自身の負けを認めたくないレベッカは、わざわざユウ達の宿泊する宿屋銀月に乗り込んで来てそう言い放ったのだった。
「見苦しくてすまないな。こいつの心の安寧のためにも、聞き届けてやってほしい」
レベッカが迷惑をかけないようにと共に訪れたダグラスが、レベッカの傍若無人な態度に代わって詫びる。
この2人の関係性がよく見えなかったが、ダグラスが保護者ということだけはわかった。
 
そして今、銀月のテーブルを囲むのは天翔ける竜とダグラスとレベッカの6人。血塗る夕暮れの他2人はレベッカのお守りから離れ、今は別行動とのことだった。
 
「あんの金髪ヤロー! ヘラヘラした面しておきながらとんだ食わせ者だぜっ!」
酒を煽りながらクダを巻くレベッカの怒りの対象はどうやらベスト8進出を決めた戦いの対戦相手のようだ。ユウ達はその場にはいなかったため、どのような戦いだったのかはわからない。しかしレベッカの反応からすると、その金髪の男というのは見た目に反して強かったということだろう。
「勝ち残った中に、名前を聞かなくなって久しい大地の鍛冶屋のドランもいただろう? パートナーのガランはいなかったが、エルフと人族と獣人と一緒にいた。あり得ない組み合わせなんだが ……もしやあれが種を超えし絆か? いや、だが、ドランが種を超えし絆にいる理由がわからんな」
「髭ありの方がドランか? アタイには髭でしか区別できねぇけど名前も似てるからどっちがどっちかわっかんねぇんだよアイツら。他のドワーフがいたとしたら、アタイにゃもうそれがドランかどうかもわかんねぇよ」
「……お前に聞いた俺がバカだったよ」
レベッカは進行役が呼び上げる選手の名前すらも聞いていなかったようだ。そんなレベッカにダグラスも呆れていた。
大地の鍛冶屋。その名は以前ネロから聞いていたベテラン冒険者のパーティ名だ。ダグラスとレベッカの発言からそのメンバーがドワーフであることがわかる。この世界に来て、竜族以外の種族との初のご対面となりそうだった。
そして新たに耳にするパーティ名「種を超えし絆」。こちらは最近、そのパーティ構成メンバーの異様さから名前が浸透してきているらしい。その異様さとは、パーティーメンバーが人族とそれ以外の他種族で構成されているということだ。
この世界の歴史においても種族間差別というものがあるらしい。特に人族は過去に他種族を虐殺したという歴史があって他の種族からよく思われていない。また、人族は未だに他種族を見ると好奇の視線と共に、中には蔑みの視線を向けるものもいる。人族にしてみれば自分達が直接経験していない過去の話であるにも関わらずだ。歴史の闇が、よくない形で今も継承されていた。
そしてエルフとドワーフはその歴史とはまた異なる歴史を背景に、決して相容れない種族として有名だった。
そのように種族間には種々の暗い歴史があったため、多種族で構成されるパーティというのはただそれだけで珍しく、人々の目に留まる。加えて、そのメンバー達の信頼関係が目に見えたことが彼らのパーティ名として浸透しているらしかった。
 
「素敵なパーティね」
 
種を超えし絆の話を聞いて、リズが頰を緩める。人の根幹に根付く差別意識に真っ向から対抗するかのようなそのパーティをいたく気に入ったようだ。しかし、それはユウも同じだった。
リズもユウも元の世界で一種の迫害を受けていたと言っても過言ではない経験をしてきていることもあって、そのパーティの存在に心打たれる要素は十二分に持ち合わせていたのだ。実際にこの世界の種族達が受けてきた迫害に比べれば些細な経験かもしれない。しかし、想いの方向性は同じだった。
 
「いつか、そのパーティの人達とも話してみたいね」
「ドランがもし種を超えし絆なら、少年達が望むことは実現されるんじゃないか? 8人のうち3人が天翔ける竜なのだから」
 
ダグラスのその言葉に、ユウもリズも明日の試合の組み合わせ発表が待ち遠しくなる。ドランという戦士が大地の鍛冶屋ではなく種を超えし絆にいる理由は気になるものもあるが、その名で呼ばれるパーティにいるということは、きっと崇高な信念があろうことは推測できた。
 
明日の参加者は天翔ける竜の3名、レベッカを倒した正体不明の金髪男、種を超えし絆のドランと思われるドワーフ、そして他3名。
 
優勝者を決める戦いが、始まる。
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