室町幕府国取り物語

鈴木颯手

織田信長

1552年~尾張・那古野城~
    ここは尾張守護・斯波家の家臣である織田信秀の嫡男・織田信長の居城である。
    現在ここでは織田信長と幕府の使者が話し合っていた。
    「…つまり幕府は信長様に美濃を任せたいと?」
    驚愕の顔で聞き返しているのは信長の筆頭家老である平手政秀である。幼少の頃より教育係として信長を育ててきた。
    「はい、知っての通り現在の美濃は商人上がりの斎藤道三によって奪われています。この状態に将軍義輝様は大層お怒りになっております。直ぐに斎藤道三を打ち取り美濃を取り返すことを望んでおります。しかし、美濃守護の土岐家には美濃を納めさせないとおっしゃております。そこで義輝様直々に織田信長殿を守護にと進めております」
    信長は元服したときに将軍義輝に挨拶に訪れている。その際義輝は信長を大層気に入り自分の太刀を与えるほどであった。
    「しかし、まだ信長様は19と若すぎます」
    「その点は問題ありません。世の中にはもっと若い年齢で一国の守護を任せられているものはおります」
    実際何名か15~18の時に守護を任せられているものが存在していた。
    「それに主君を支えてこその家臣と言えるでしょう」
    つまりいざというときは家臣が支えろと言うことだ。
    「し、しかし!」
    「…美濃守護の件、慎んでお受けしましょう」
    「信長様!?」
    そこへ今まで黙っていた信長が了承の言葉をいった。
    その事に政秀は驚愕の表情だったが信長が諭すように言う。
    「確かに俺はまだ若い。そんな俺が美濃の大名となっても誰も従わないかもしれない。しかしまだなにもしていないのにそう決めつけるのは良くない。持てるすべてのちからを出しきってダメだったらそのときはそのときだ」
    信長は笑いながらいった。
    その様子に政秀ははあと、とため息をついていった。
    「信長様のことだから受けるとは思うておりましたが…。まあ、信長様が守護の件を受けるのであれば家臣である某は従うのみでございます」
   「…それでは斎藤道三の討伐は後日お伝えさせてもらいます」
    そう言って使者は下がっていった。
    その後斎藤道三の討伐令がだされたのは一週間後であった。












    美濃を奪った斎藤道三の討伐は大軍勢となった。
    総大将に将軍義輝の弟の足利義昭、その補佐に幕臣の細川藤孝、一色藤長等8000。
    他に尾張守護家斯波の家臣の織田信長率いる1000。飛騨姉小路家3000。近江守護の家臣である六角義賢7000。同じく家臣の浅井久政5000更に斎藤道三に従わない美濃の豪族など4000が集まり2万8000にまで及んだ。
    対する斎藤道三はまだ奪ってから日が浅く1万4000ほどしか集まらなかった。
    美濃奪還戦は連合軍有利で始まるのであった。

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