ドラゴン転生 龍帝誕生記(休載)

鈴木颯手

第拾玖話 侵略2

イガル山脈に隣接する所に領地を持つスクラ・マッカーラーは自身の居城のテラスで優美に紅茶を飲んでいた。
スクラの居城は城下町が一望できる小高い山に築かれている。
「ん~、やはり午後の紅茶は良いものですね~」
スクラは日課である午後の紅茶を楽しむ。辺境領主のスクラだが多忙の毎日を送っているためこの時間帯はとても有意義なひとときである。
「百年龍の討伐に失敗してからは王国は傾いていますが私にはどうでもいいことですね~」
スクラは野心家ではない。そのため自領の安全を確保するにとどまっている。
「カウスマン帝国も攻めてきませんし多忙でなければとても素晴らしいのでしょうが」
スクラはイガル山脈に領地を接しているためカウスマン帝国の侵攻を防ぐ役割があったがその役割をこなしてはいなかった。
イガル山脈は百年龍抜きでも危険な土地ゆえに越えるのは無理だと判断していた。そのため防衛に使う費用をほかのことにもちいていた。
「どうせ攻めてこない奴なんかのために費用を用いるなんて無駄なことはできませんよ。そんなことする必よ「領主様!」…何ですか?」
スクラはとても大切な午後の紅茶の時間に邪魔されることを嫌う。以前午後の紅茶の時間を邪魔したために死罪となったものがいるほどだ。
「領主様!大変です!」
「何ですか?もし小さいことだったりしたら…」
「カ、カウスマン帝国がイガル山脈を越えて侵攻してきました!既にイガル山脈付近の都市や村は占領されています」
予想外のことにスクラは固まった。


















辺境都市サンダはスクラ領の中でもそれなりの規模の都市である。そのサンダの至るところにカウスマン帝国の国旗がはためいていた。
「既にイガル山脈を越えて侵攻してからかなりの時が過ぎているがマグサ王国はなにもしてこないな」
マグサ王国侵攻部隊の総司令であるカールス中将は怪訝に思う。カールス中将率いる侵攻部隊はイガル山脈を越えてから休まずに近隣へと偵察を行ってから侵攻した。
しかしどこの都市や村も抵抗らしい抵抗はなかった。カールス中将はそれを罠だと思っていたがそこへ参謀のゼルガ名誉中将が話しかけてきた。
「単純に攻めてこないと思っていたから兵を配置してなかっただけだとおもいますよ?見た感じマグサ王国の傾きようは想像以上なので」
ゼルガの言う通りイガル山脈によって陸からマグサ王国のことは何一つ入ってこないためマグサ王国の情報が極端に遅かった。そのため百年龍との戦いで疲弊したという情報も最近手に入ったのだ。
そのためカウスマン帝国の想像よりマグサ王国の傾きようは激しかったのだ。
ゼルガは続ける。
「このまま攻め混んでも大丈夫だと思いますよ?」
その言葉にカールス中将は不機嫌そうな顔になる。
「貴様の話すことは信用できん。百年龍にそこまでやられるとは思えん。しかしこの状況は確かにチャンスでもある。…よし、全軍に通達。"次の都市を落とせ"」
「はっ!」
カールス中将のその様子にゼルガは肩をすくめる。 
「やれやれ、あんなんでよく総司令なんて務めることが出来るな。自国を基準にするのは構わないけど他国の戦力はちゃんと把握しておこうよ」
ま、そのために僕が派遣されてきた訳なんだけどもね、と誰に言うでもなくゼルガは呟いた。
「おっと、僕も準備に移らないと。カールス中将に遅いと言われるのは嫌だからな~」


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