悪徳領主(商人)で快適生活

鈴木颯手

第三話 悪友

「まさか瑞樹も来ているなんて思わなかったぞ」
「俺もだ」
抱き合った俺たちは近くにある見えづらい場所で話し合っていた。しかし、いまだに信じられない。こいつも来ていることに。おかげで俺は何度もこいつの足を確認しまくった。そのせいでしばかれてしまったが。
「五歳の時に急に記憶が戻ってな。あの時はびっくりしたよ」
「お前もか?俺もいきなりで両親に取り繕うのが大変だったよ」
どうも瑞樹も同じく五歳の時に記憶が戻り前世で死んだ記憶はないみたいだな。まあ、今更死んだ時のことを気にするつもりはないが。そんな事よりもこれからの事だ。
「このまま行けば俺は辺境伯の地位を継ぐことになる。だが、それはお飾りになってしまうだろう。俺はそんなのはごめんだ」
「そうなのか。俺のところはそんな事は無いが確かに動きづらいな。俺の親父も保守的な考えだからな」
「…やはり殺してしまうのが一番いいかもな」
「だがどうするんだ?殺すって言ってもバレちゃったら意味ないだろ」
瑞樹の言うことは至極尤もな意見だ。だが、殺すと言ってもやり方がある。
「俺は金属中毒を起こさせようと思う。あれならバレないしじわじわと弱らせて病死なり老死なりを装うことが出来る」
「なるほど。それなら俺は事故を装うか。結構は何時にするんだ?」
「成人、15歳になってからにしよう。その方が動きやすい。こちらも成人して気が抜けた結果倒れたと世間に思わせることが出来るからな」
「それは良いな。俺も成人してからにするか」
取り合えず暗殺の話はここまででいいだろう。次はこの世界についてだ。
「この世界は中世ヨーロッパのような世界だ。形は違えどそこは変わらない。この世界でなら俺は夢をかなえられるかもしれない」
「とすると悪徳業者か?」
「ああ、俺の場合は悪徳領主だな。まずは奴隷の地位を引き上げる。この世界の奴隷の価値はかなり低すぎる。大体奴隷一体で銀貨一枚で売買されている。使い捨ての道具として扱われるから無教養、不衛生な環境にいる者が多いうえに解放されることは極めて低い」
「だがそれと悪徳領主と繋がらないではないか?普通に良い事だし」
「んなわけあるか。奴隷に教養を与え職人技を覚えさせてみろ。決して裏切らないが優秀な人材が完成するんだ。それを売買すれば何十倍、何百倍の値段で売ることが出来る。奴隷を使えば金で雇って働かせるものよりも安くて済むし何より奴隷から感謝され俺を裏切る事は無くなるだろう」
「成程な」
「それに加えてこれを辺境伯領など限られた場所で行う。これによって俺の所をうらやむ奴隷も現れるだろうし奴隷を売ってくる奴も現れる可能性がある。俺のもとに金がたくさん入って来るだろう」
そもそも人徳があるなら奴隷事態をなくそうとするだろう。だが、俺はそんなことをしない。奴隷は良い商品になる。態々商売のタネを潰すことはないだろう。
「まずは辺境伯領にいる全ての奴隷を一旦俺のもとに集める。集めた奴隷には教養を教え、技術を覚えこませて他の貴族に売りつける。それをするのは瑞樹、お前だよ」
「ほう、俺はお前の所から買い取り更に高値で別の奴に売りつけるのか。辺境伯領の奴隷は全てお前のもとに、そして売り物は俺を通りして他の貴族に。いいこと尽くしだな」
「そうだろ。その為にも今は準備をしていくしかない」
「俺も成人までに知識を蓄えて暗殺計画も改良していくよ」
「頼むぜ。…っと、そろそろ戻ろうぜ」
かなり話し込んでいたため既に一時間以上は経っているだろう。そろそろ戻らないと不味い。そんでなくても父にはあまり好かれていないのだ。暗殺するまでの間に間引かれる様なことは避けたい。
「そうだな。続きはまた会った時にでも」
「ああ」
俺と瑞樹アルフレッドはそう約束して応接間に戻った。どうやら丁度商談が終わったらしく父の手には商品と思われる物を持っていた。
「おお、丁度いいところに戻ってきたな。それではバルバストル様、今日はこの辺で失礼させていただきます」
「うむ、次回もいいものを頼むぞ」
「勿論でございますとも。行くよ、アルフレッド」
「はい、父様」
商人は瑞樹アルフレッドを連れて応接間を後にした。それを見送った父も応接間を出て書斎へと戻っていく。俺は準備のためにも再び読書付の毎日に戻るとするか。それに金属中毒を起こすための金属も入手しないとな。その為にはやはり領内に出るのがいいのだがこの6歳の体では父はともかく母が拒否しそうだしな。俺としても父はともかく母を困らせるような事はしたくない。病弱な母にこれ以上迷惑をかければ本当に死んでしまうかもしれなかった。
と言うわけで領内の視察は最低でも10歳になるまでは無理だろうな。そうなると知識を貯めたりいろいろなことを学んだりする事しか出来そうにないな。せめて瑞樹アルフレッドが定期的に来てくれるのを祈るだけか。

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