悪徳領主(商人)で快適生活

鈴木颯手

第四話 成人に向けて

悪友との再会から既に四年が経ち俺は10歳となった。俺が懸念していたことはなく瑞樹アルフレッドはちょくちょく来るようになった。何でも今住んでいる場所が館の近くにあるからお供付きでなら来ることが許されたらしい。全く、羨ましいが俺の場合は一応次期領主なのでそう簡単にはいかないだろう。俺も病弱な母に心配はかけたくないからな。
「そう言うわけで俺の方は全く進んでいない」
いつもの場所で俺と瑞樹アルフレッドは集まって計画を練っていた…のだが俺の方は全く進んでいない。理由は館から出られないからだ。館の中にいる間はずっと使用人が目を光らせていて心が休まるのは使用人も見てはいないこの時間のみだ。
「そうなのか。大変だな」
「他人事みたいに言わないでくれ。こっちだって大変なんだぞ」
「実際他人事だしな」
薄情な友人だな。
「まあいい。俺の方は大体決まってきた。両親は偶に夫婦だけで出かけるときがある。その時の行き先は大体決まっている。辺境伯領内にある火山のふもとの温泉施設だ」
「…温泉なんてあったんだな」
館にはそんなものはなく半身浴くらいしかなかった。元日本人としてはゆっくりとつかりたいものだ。これは成人した後の改革に含んでおくか。
「ここからその火山地帯に行くのには一本の道しか通っていない。そしてその場所には急カーブの道がある。普通なら問題なく通れるが車輪に少し細工をしておけばって寸法だ」
「なるほど。それなら怪しまれずにあくまで事故死として扱うことが出来る。その道を通ったと分かるなら死体の発見も容易だろうからな」
そうなれば少なくとも怪しい噂は経たないだろう。なかなかいいな。俺も早くいろいろと準備を怠らないようにしないと。
「…お?今日はここまでだな」
瑞樹アルフレッドはそう言ってくる。確かに誰かが近づいてくるようで足音が聞こえてくる。やがて一人の使用人が現れた。
「アルフレッド様、お時間となりました」
「分かった。それではまたなアベル」
「ああ、アルフレッド」
俺たちはすでに染み付いた此方の名前であいさつをする。既に五年は過ごしているからな。大体の事は慣れた。体が子供だから早く適合できたのかな?
取り合えず俺も館に戻るか。
と、そこへ父が俺のそばに来た。…珍しいな。ここ最近父は俺に構う事は無く同じ館に住んでいるはずなのに最後にあったのは一か月前かな。
「アベル、王都に向かうぞ」
「王都に?」
父が言うには王都で宴が行われるそうなので俺を連れて行くという事らしい。そこで俺を国王にお披露目と言う形をとるという事らしいのだがいくら何でもいきなりすぎるだろう。もう少し前に行ってほしいものだ。
そんなわけで俺は直ぐに着替えさせられ父とは違う馬車に乗せられて王都に向かわされることとなってしまった。とは言え宴にはまだ時間があるので辺境伯領と王領の境にある第二王都エッケルタに今日は止まる事となった。エッケルタは端とは言え王領の一部であり王国領の真ん中に位置しているためいろんな貴族に続く道が通っている。その為人の往来は王都よりも多く王国一番の賑わいを見せていた。
<a href="//17978.mitemin.net/i254944/" target="_blank"><img src="//17978.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i254944/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
俺は貴族が利用する宿屋に泊まった。勿論父とは別の部屋だ。とは言っても俺はその方がうれしいがな。部屋には窓があるためエッケルタの風景が良く見える。ただ、夜と言うこともあり人通りはまばらだ。出ているのは酔っ払いや今着いたばかりの人、露店を閉めている人に
「…奴隷か」
窓の外にはやせ細りながらも恐らく食料が入っていると思われる革袋を重そうに背負いながら歩く奴隷の姿があった。父が嫌っているため館に奴隷は一人もいなかったため初めて見ることが出来た。しかし、
「知るのと実際に見るのとでは全然違うな」
よく見れば奴隷と思われる者は結構見えた。路地裏で暴行を受けている奴隷、でっぷりと太った貴族のような男に引きづられるようについて行く奴隷、店の掃除をする奴隷などたくさんいたが共通してやせ細っていた。あれではすぐに使い物にならなくなってしまうだろう。成程、あれが奴隷が使い捨ての道具のように扱われる原因の一つか。確かにあんな状態では長持ちはしないだろうからな。まずは赤字覚悟で挑むしかなさそうだ。
そう思っていると最初に見つけた奴隷が力尽きたのか地面に倒れてしまう。そこへ奴隷の持ち主と思われる男が現れ罵声を浴びせ始めた。残念ながら距離や室内越しの為声は聞こえないが罵声を浴びせているのはここからでも分かった。
男は罵声を浴びせるのに飽きたのかそれともいつまでも起きない奴隷に起こったのかは分からないが奴隷を何度か蹴り始め奴隷の持っていた革袋を持つとその場を離れていった。奴隷はうつぶせの為状態は把握できないが俺でもその奴隷が死んでいることは理解できた。
「…見ていて楽しいものではないな」
俺はその奴隷に冥福を祈りつつ視界から消す為にカーテンを閉めた。だが、俺はしばらくその奴隷のことが脳裏から離れないのであった。

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