未来国家建国記

ノベルバユーザー226196

007



医療カプセルの中には琥珀色の液体で満たされている。その中に入っている良は頭、首、肩甲骨の間、背中、お尻、両足首、その六ヶ所をカプセルの下とホースで繋がれている。


全裸である良は上に浮いてくることなく、中心で静かに液体に体を預けている。


良の四肢の傷は全て綺麗に治っており腕も普通のカプセルよりいいものなのか、治るのが通常のよりも圧倒的に早い。しかし、まだ体全体から泡が出ているので少しまだ治っている途中なのだろ。


首の所も首が飛んだと思わせないほど綺麗に繋がっており、1本赤い線がうっすらと入っているだけだ。顔も頬は綺麗にうっすらと赤みがあり、顔色も悪くない。むしろ恐ろしいぐらいにいい。


呼吸こそ分からないが、生きている、という確証をするには十分と言うほど体の色がいい。


ハズナはその確証を得ると、「良かった。」と呟いてそのカプセルの横に座り込む。自分でも無意識のうちに怖かったのか手がガクガクと震えている。


それに喝を入れるようにグッと手に力を入れて立ち上がろうとする。その時ちょうど目に入るのは良の首の裏側。


そこは、まだまだ治りきっておらず大量の泡が吹き出していた。まだ骨しかくっついていないのか、肉もえぐれていて、神経が少しずつ伸びているのが見える。その神経は、琥珀色の水の中でゆらゆらと揺れ動き、まるで自分の相方を自分で探してるかのようだ。


「ひっ!!」


ハズナの脳裏にはあの時の記憶がハッキリと蘇り少し持ち上げていた腰が地面に落ちる。少しだけ後ずさるが急に吐き気がこみ上げてきて急いで近くの薮にはいる。


すべて消化してしまっている胃は、何も出てきはしないが胃酸だけは喉を伝って出てくる。どんどんフラッシュバックする記憶は留まることを知らず、何度も何度も繰り返しあの場面が蘇る。


さらに気分が悪くなったハズナは膝をつき、丸まってしまう。


しばらく嘔吐したら少しはマシになり、腰につけているペットボトルの水を口に含み、ゆすぐとそこら辺に吐き出す。口の中が少しはマシになると、次は、ごくごくともうぬるくなった水を一気に飲み干す。


喉を通る水は、ハズナに自分は生きているということを感覚で伝え始める。ハズナは知覚の木を使いながら立ち上がると、カプセルを一瞥しただけで、その救命テントをあとにする。


生徒用のテントの近くに行くと実習を断念したり、引き返えさなくては行けない理由ができたのか、数人の生徒がテント前でワイワイとしていた。


グッとペットボトルを握りつぶすとハズナはそのカラをゴミ箱に投げ入れ、1人の人物を探すために職員テントの と軍人用のテントがある場所を目指す。




しかし、不幸なことに職員も軍人も慌ただしく動いており誰にも話しかけれそう雰囲気では無い。



会話を拾う限り、どうやら今年は棄権するものや怪我するものが想像以上に多いらしい。あんな役立たずの生徒をわざわざ実習なんかに連れてくるから、という考えまで至ったところであの結城と言う女の言ったことを思い出す。


あんなのは説教ではなく侮辱された、としか言いようがない。ギュッと拳を握りしめ今すぐ何かに殴りかかりたい衝動をかられるのを抑えつける。どうやら今日は心が情緒不安定なようだ。フラッシュバックすることが多すぎる。そろそろやばいかもしれない。そう思いながらハズナは握っていた拳をゆっくりと広げ額にあてる。


「ハズナ。」


名前を呼ばれ、後ろを向くと今は1番会いたくない人物がそこには立っていた。いや、声でもう既にわかっていた。この学校でハズナ。と呼ぶのはこの人しかいないと分かっているのに、それでも最後まで嘘であってほしいと、思うほど今日は心が衰退しているのか珍しくお願いをしてみるが当然人が変わるわけもなく思った通りの人が立っていた。


「リーシャ。」


その小さな親友は、何を考えてるか分からないほど澄ました顔をしており、いつもより少し名前を呼ぶのにトゲが入っているということ以外、幼少期から見ている親友の姿だった。


「ハズナ。私は軍人になって良を治したい。でもさっきハズナも一緒に聞いていた通り私一人じゃ軍人として受け付けられないの。だから一緒に結城さんに言いに行こう。」


そう、淡々と伝えられるがハズナの心はそっちではない方に傾いていたため少しだけリーシャから目線をそらす。たったそれだけの事で察しのいい親友は全てを感じたかのように目を見開く。


「ハズナは!ハズナは良を見捨てる気!?ふざけないで!自分の力不足のせいで仲間が死んだのよ!それを、はいそうですか。って言って投げやってそのまま殺す気!?目の前に一般人が欲しくて欲しくてたまらないほどの蘇生の技術が転がっているのに!?」


今日のリーシャは本当によく喋って声を上げるな。そんなことを考えながらハズナはリーシャの言葉を聞く。


リーシャはこちらを睨みながら、目に涙を溜め込み小さい方を上下させている。


「リーシャ、ごめんね。」


なんて言ったらいいのか分からなくて、自分も泣きそうで、その涙をこらえるために下を向くが、涙腺は緩みきっておりいつ壊れてもおかしくないほど目の前が歪む。


「ふ、ふざけない!!ハズナが、アンタが近くにいたのに1番なんにも出来なかったんでしょ!!近くにいて、あなたの足ならまだ良を少しは守れたかもしれないのにらそれを捨てて自分が助かろうとしたんじゃない!!本当にふざけないで!私は、私は見とくことしかできなかったのに!!」


リーシャの言い分も最もだがハズナも不安で、怖くて、思い出したくないことを思い出してしまって心と体が一致しなくなる。


「ただ、ただ安全な場所にいて指示を出すだけの人が馬鹿なことを言わないで!!1人だけ安全な木の上で偉そうに指示ばっかだして、1回ぐらい目の前でエルメイを見てみなさいよ!たかが映像でしか見たことないくせに!!そんな大口たたかないで!」


これが探知者ソナーであるリーシャの仕事だと頭では理解してるのに、心の悲鳴を少し出すために口が動く。言いたくないはずなのに、リーシャを傷つけたくない筈なのに、心も体も頭も一致せずに声を枯らす。


「自分の判断力の無さをわたしのせいにしないでよ!しかも、私の指示を聞こうともしないあなたに言われたくない!前もそう!私は制しするのにあなたはいつも無責任に「行ける!」とか言ってすぐにそうやって突っ込もうとする。その尻拭いさせられる私の身にもなってよ!!」


ハズナ。とも呼ばなくなったリーシャを視界に入れてしまい涙腺が崩壊してしまう。それを悟られないように手を額にやり目を隠すが早く立ち去りたい衝動にかられる。


「そんなに嫌なら、そんなに私に身を預けられないならほかの守護者を探せばいいじゃない!私以上に信用できて、身を預けられて、探知者ソナーの判断にしたがう人を!!」


そこまで言ってしまってハッとする。スゥッと息を呑む音が目の前から聞こえてくる。リーシャの顔をまともに見るのが怖くて、自分の顔を見せるのが恐ろしくて、私は、リーシャに背を向けて生徒用のテントに向かって全力で走り出す。













軍人達は自分の大将の命令で、あるふたりを観察していた。その2人とは、我らが大将が助けた2人で、軍人たちは何気ない一喜一憂も見ていた。


自分たちの大将に助けてもらい、アフターケアだと言って気にして貰える。それだけでも軍人たちはその2人がいけ好かないとしか思わないのに、お互いを尊重しようとしないその姿勢のせいで軍人たちの中の2人は見限られそうになっていた。


軍人たちは大将以外が入っているポイントで作業をしながらお互いに話す。


『あーあ、あれはもう無理じゃね?』


『お互いのバランスを保ってたのがあの良って子でそのバランスが亡くなったんだね。』


『もー、期待するだけ無駄でしょ。結城さんも諦めればいいのに』


『まぁ、一応命令だから観察するけど。』


『『『いけ好かない。』』』


『(苦笑)そんなこと言うなって。あの子達は思春期なんだから仕方ないだろ。』


『ほら出た。冴島さえじまさんは甘いからそんなことが言えるんです〜』


『あれが後輩になるかもしれないと思うと、胃が痛いな。』


『あの様子じゃ本物の戦場に出たら最初の一撃で死んじゃうモブ役だね。』


『結城さん、ほんとにあの二人を入れる気か?』


『さぁ?まぁ、この関門をクリア出来たら、だろうね。』


『でも、もうお互いに背中を預けられないぐらい離れちゃってるよ。』


『ソレなら死ぬだけ。』


『まぁ、そーなるな。』


その姿を容易に想像出来てしまい、今まで調子に乗った新人たちの末路を知っている軍人たちは顔を見合わせ肩をくすませる。

この時代、自分の身を自分で守る能力を持っていないものだけしか助ける気がないのが、この結城をリーダーとするチームの心情であった。故に、このチームは最凶である。






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