ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章24話 情報活用のメドレー(2)



「とはいえ、今回の仕事はこちらの方から積極的に提案させていただいて、疑似的な採用試験ということで、実行を許容していただいたモノです。仕事を強制した、ということではありませんので、伯爵様はどうぞ、お気になさらずに」

「わかりました。一応、こちらにも立場というモノがありますので、基本的にはこちらが上になってしまいますが、よきビジネスパートナーとして、認めてあげます」
「ご配慮くださり、ありがとうございます」

 一応、国は違えどアリシアは侯爵家の長女で、明らかに伯爵家よりも偉いのだが、気にしたら負け、と、彼女は任務に集中することを改めて意識する。

「さて、試験のようなモノだったとはいえ、依頼は依頼。対価として、まずは情報を提供します」
「――吸血鬼の一族に接触を図る正確な理由」

「そう。こちらとしては、グランツ・フォン・クリーク伯爵が色仕掛けに屈して快楽堕ちしなかったとしても、その吸血鬼の遺伝子は持っておきたいの。……あっ、ちなみにアリーセ、この意味、わかる?」
「当然です」

 誤魔化しても仕方がないので、やはりアリシアは簡潔に答えた。
 が、あまりにも即答だったため、エロイことにやたら寛容なサキュバスのマルガレーテでさえ、わずかに戸惑い始める。

「……、赤ちゃんは鳥さんが運んでくるわけじゃないって……」
「僭越ながら、正しく理解しております。説明は不要です」

 生まれて初めてだった。
 サキュバスである自分が、この子、性的にヤバすぎる、なんて動揺したのは。

「そ、そう……。最近の女児は物知りなのね……。コホン! それで、吸血鬼の遺伝子を持っておきたい理由は2つ。自分たちの子孫、次の世代に、今の世代よりも優れた淫魔になってほしいから」
「優れた、淫魔……ですか?」

 任務中ということに対してさえ、少しだけ意識が途切れたように、アリシアは聞き返す。
 対して、マルガレーテは少しだけ寂しそうな表情《かお》で話を続ける。

「大半の話し相手には理解されませんが、これでも、私は子供に健やかに育ってほしいと願っています。そしていつか、親を超えてほしい、とも。人間や、吸血鬼や、エルフやドワーフ、オークやゴブリンと同じように」
「はい、子を持つ親として、素晴らしい感情だと、私も思います」

 肯定しながらアリシアは訝しむ。
 今の発言のどこに、理解されない要素があるのだろうか、と。

「親よりも稼いでほしい、強くなってほしい、頭が良くなってほしい、社会的に偉くなってほしい。そして、私たち淫魔はそれに加えて、親よりも、子供には淫魔として優れてほしい、そう願っているわけです」

「では、理解されないというのは……」

「子供の成長を願う価値観自体は理解されています。ただ、なぜそこから、子供に淫らになってほしいのだ、と、呆れられてしまうのです。むしろ私からすれば、なぜ既存の願いに、その願いを加えてはいけないのか、と、その無理解を理解できませんが」

 印象論になってしまうが、アリシアには、本気でマルガレーテが子供のことを真剣に考える母親として、瞳に映った。

「となると、吸血鬼の遺伝子を持っておく、というのはつまり――」
「――これに関しては至極単純で、淫魔と吸血鬼、2つの種族の特徴を受け継いだ子供が生まれたら、その本人の生涯も、未来のこの家も、豊かになると思わない?」

「確かに、今の世代にない物を与えようとしたら、そうなるのが必然かと」
「そして2つ目の理由、1つ目の理由が子供重視の理由であるのに対し、こちらは一族重視の理由です。あぁ、流石にこれは察するでしょう? なんだと思います?」

 ニコニコしながらマルガレーテがアリシアに問う。

「結婚するか否かはさておき、性的なことをする相手、候補の増加、でしょうか?」
「正解♪ 淫魔と吸血鬼のミックスが生まれて、その子が自分で選択した上で、その道を進んでくれるならば、その際、こちらに養子の提供を求める相手は、淫魔の他に吸血鬼の血筋も取り入れることになりますから」

 つまり、個人的な親としての感情と、全体的な当主としての利益、その2つを兼ね備えている、ということだ。

「確認させていただきたいことが、2つほどあります」

「かまいません、どうぞ」
「まず1つ、いわゆる、人身売買はしない、表にバレたら危険なことはしない、ということでよろしいでしょうか?」

「政治的な兼ね合いもあり、残念ながら、表にバレたら危険なことはしない、そう断言することはできません。しかし、その中でも人身売買だけは特にするつもりはありません」
「特に?」

 アリシアが気にしていたことを、マルガレーテはピンポイントで強調して、否定する。

「えぇ、私たち淫魔は殿方にありえないほど体液を吐き出していただき、他の種族よりもかなり妊娠、出産に対して融通が利きます。妊娠しても特に体調に変化はありませんし、出産なんて、痛いどころか気持ちいいです」
「はい、私も以前、聞いたことがあります」

「最初から赤子を養子にすると決めて産むこと。跡継ぎに恵まれない貴族に股と腹を貸すこと。あるいは単純に、恋愛結婚でも政略結婚でもどちらでもかまいませんが、その結果として妊娠すること。私たち淫魔にはいろいろな妊娠のパターンがありますが――」
「? なんでしょうか?」


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