ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章20話 情報利用のメドレー(1)



 3日後の夕方――、
 ロイはシャノンとして、グランツ・フォン・クリーク伯爵の屋敷に招待されていた。

 まるで絵に描いたかのような門扉と、庭園と、それらを抜けた先にある屋敷の入口。
 そして中にはまさに貴族の屋敷の手本のような豪華絢爛な内装が。

 シャンデリアや床一面に広がるフカフカな絨毯に、例え見慣れていても感動しながら、ロイは使用人に案内されてメリッサの自室へ進む。
 また、彼の隣を歩くツェツィーリアとアメリアも同様に。

「直進、23歩後、左折」
「はい」

「直進継続」
「はい」

「直進、34歩後、右折」
「はい」

「ドアの音、おおよそ2時方向に7歩、停止」
「はい」

「シャノンが着席したわ。そこが例の彼女の自室のようね」
「うん! 会心の出来! アーニャ、キチンと描けたよ♪」

 件の屋敷から割と離れた座標にある路地裏、その廃墟の一室、そこに用意したテーブルにて。
 席に着いて、シーリーンとアリスは向かい合いながら屋敷の見取り図を作っていた。

 その途中経過をアリスに見せるシーリーン。
 一方、アリスは少し安堵した微笑みを浮かべて、それを確認し終える。

「ふぅ、マリーさんが事前に調べてくれた建物の形に収まっているわね」
「あはは……、収まらなかったら大変だもん」

 わずかに緊張から解放されたため、シーリーンもアリスも持参した水筒に口を付ける。
 そして揃ってひと息吐く2人。

「それで、アーニャ、このあとって……」
「えぇ、シャノンがトイレを提案するまで待機なのよね……」

「トイレといえば、シャノンちゃん、普通の家だったらトイレって個室1個だけど……」
「えぇ……、学校では隣に女の子が入っている場合もあるのよね……」

「はぁ……」
「ふぅ……」

 今度は2人揃って落ち込んでしまうシーリーンとアリス。

「で、でも! シャノンちゃんって可愛いから、あの格好のまま、10回ぐらいイチャイチャしてみたいよね?」
「ゴメン、シェリー。でも、っていう接続詞が正常に使われていないような気もするし、それ以上に、10回もイチャイチャすることを、ぐらい、とは言わないわ……」

「あぅ! な、なら! アーニャはしたくないの!?」
「…………っ」

「アーニャ?」
「そ、っ、そんなことは一言も言っていないわ……」

 瞬間、アリスの顔が一気に赤らむ。
 そしてシーリーンはその親友の赤面っぷりをニヤニヤしながら無言で見続けた。

 そんなこんなで――、
 ロイの会話を盗聴しながら約10分後――、

「あっ、シェリー、シャノンがトイレに」
「うん、いつでも描けるよ」

「ドアの音、退室、右折」
「了解」

「直進継続」
「了解」

「直進、17歩後、停止」
「了解」

「シャノン、質問。回答、お手洗いは四角形のような屋敷のそれぞれの一辺、だいたいその中間にある。1~3階まで、1階の玄関を除き同様とのこと」
「了解」

「あっ、~~~~っっ」
「ど、どうしたの?」

「シャノンが本当にする時の合図を鳴らしたの……」
「ほぇ!?」

 シーリーンも先ほどのアリスのように赤面し始めて、アリスもアリスで、先ほどよりもさらに顔を赤らめていた。
 今の反応を鑑みるに、何度、好きで、好きで、大好きで、世界で一番愛している男の子と夜を過ごしても、どうやらこの2人がレスになることはないのだろう。

「……き、切っちゃう?」
「……ふ、風紀的にもよろしくないわ」

「……本当に、切っちゃう?」
「……親しき中にも礼儀あり、って」

「……興味、ない?」
「~~~~っっ♡♡」

「そ、その反応は……」
「ち、違うわよ!? いやらしい意味じゃなくて、生物学的に男女の違いについて、どうなっているのかなぁ、っていう、知的好奇心に基づく保健体育の勉強みたいな!」

「その言い訳にはとっても無理があると思う!」
「ならシェリーは知的好奇心が疼かないの!?」

「疼くよ! 思春期だもん!」 
「え、えぇ……」

 どっちもどっちな会話だったのに、なぜかアリスだけがシーリーンの返事に困惑する。

「コホン、でも、そうね。どんなに綺麗事で塗装した理屈で、時期尚早ということになっていても、私たちの年齢なら興味ある方が健全よ」
「うんうん、むしろ過剰に抑圧する方が不健全だと思う! あっ、でも……」

「? なにかしら?」
「これがバレて、シャノンちゃんに嫌われたら……」

「せい!」
「あっ」

 ブツ……ッ、と、アリスは即行で盗聴器の電源を切った。

「やっぱり盗聴っていけないことよね。今は戦時中だから敵にすることはあっても、仲間にするなんて」
「アーニャって、学院に通っていた頃は風紀、風紀、って言っていたけど、根っこのところはかなりエッチな女の子だよね……」

「し、っ、失敬ね! シェリーだってかなりエッチじゃない!」
「当然! 最愛の人が目の前にいたら、誰だってエッチになっちゃうのが自然の摂理だと思うの♡」

「こ、この子、開き直ったわ……ッッ」
「逆にアーニャは違うの?」

「違わないわよ! 私だって好きな人の前ではたくさんエッチになりたいわよ!」
「えぇ……、開き直り返し……?」

「だって、エッチな気持ちにならなかったらエッチできないでしょう?」
「えっと……、風紀の乱れは気にしなくていいの?」

「シェリー」
「なにかな?」

「夜の寝室は公共の場ではないからセーフよ」
「うん、その理屈はたぶん法的にも正しいんだろうし、すごくアーニャらしい答えだけど、凛々しく言うようなことでもないと思う」

「シェリーもかなり私に対してハッキリ言うようになったわね……」
「おっと、アーニャ、そろそろ1分経つよ」

 シーリーンに指摘されて、アリスは盗聴器の電源をオンにした。
 その瞬間、アリスの耳に飛び込んできたのは――、


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