ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章15話 変態淫魔のバーレスク(1)



(トイレに行きたいんだけど……)

 七星団の団員だろうと、魔王軍の軍人だろうと、いくら努力しても身体の構造上、極めて克服しづらい現象はどうしても存在する。

 1週間以上の断食。3日以上連続の徹夜。
 ロイに知る由はなかったが、リタが以前、死霊術師に行ったような関節技。
 魔術を使わない前提なら毒薬や、根本的にはシンプルに病気さえも。

 そして――尿意。
 いくらロイでもトイレを長時間、我慢できるわけがない。

 むしろ、健康的にも戦闘的にも、すませられる時に早々にすませておいた方が賢明だ。
 しかし、目下、ロイは2つの問題に直面していた。

(……どうしよう。ボクは今、周りから女の子と認識されているから、個人的にどう思うかは置いておいて、スパイとして女子トイレに入らないといけない。本当はよくないことだけど、まぁ、本来、誰も使わない講義室から遠いトイレを使うことで、容易にクリアできる問題のはずだった)

 が――、

(尾行、されている。うん、かなり下手な尾行だけど……どうしよう? 尾行の実力から推測するに、十中八九、ボクでも倒せると思うけど、まだ学院内では目立つわけにはいかないし。とはいえ、このまま尾行を放置したら、エスカレートすると思うし)

 催す前、メリッサ、ツェツィーリア、アメリアの3人と別れたあと、ロイは適当に学内を散歩していた。
 校舎の構造を全て頭に叩き込んだあとに復学したが、いつ、どこを、どのような学生が主に通過するかを、大まかにでも把握しておこうとロイは考えたのだ。

 が、運が悪いことに、ちょうど催したタイミングで、ロイは誰かに尾行され始めた。
 あまりにもポンコツな尾行だったので彼は即行で気付いたが、微妙に対処に困ってしまう。

(トイレ単体、あるいは尾行単体なら上手く対処できたはずなのに! トイレを優先したらそれを見られて、尾行を優先したらトイレがヤバイ! いや、ボクは今、本当にただの散歩をしていただけだから、トイレを優先して尾行を空振りに終わらせればいいんだけど!)

 地味に焦り始めるロイ。
 このままでは周りからは純情可憐な美少女復学生が漏らした、と、噂されて。個人的には男の娘状態なのに人前で漏らした、と、恥ずかしくなって。要するに別の意味でロイの人生が終わってしまうだろう。

(こういう時の定番だけど、選択肢は2つ。待ち伏せるか、逃げるか)

 逃げること自体は簡単だった。
 今のロイなら魔術を使わなくても2階から飛び降りられるし、半人前とはいえ、パルクールの真似事さえできるようになったので、便利なスタート地点を選び手順を踏めば、4階からでも地上に辿り着けるだろう。

 しかし、逃げるということはその理由がある、と、相手に伝わってしまうということ。再三になるが、本当にただの散歩をしていただけなのに。
 となれば事実上、どこかで待ち伏せて対話に持ち込むしか選択肢はない。

(仮に相手がボクに話しかけてくるとしたら、人気のないところか、逆に人が多すぎて自分の存在が浮き彫りになりづらいところ。けど、現時点、人がそこそこいる廊下で話しかけてこないということは――)

 決定する。
 行き先は人気がないところで決定だ。

 しかしながら、完璧に誰もいないのは困る。相手が実力を意図的に低く晒している可能性もあり、自分が劣勢になった時に逆転しづらいからだ。
 理想としてはその特定の空間だけ誰もいないのに、少し進めば学生なり教授が普通に歩いているエリア。

(待って……、やっぱり女子トイレしか思い付かない)

 背に腹は代えられない。
 尾行してくる者の目的が殺し合い関連以外の可能性だって普通にあるが、なら放置します、なんてことが許される学生生活ではないのだ。

 覚悟を決めて、ロイは女子トイレの中へ。
 幸いにもどの個室も使用中ではなかったが、ロイが入った数秒後――、

「おっ」
「あら?」
「シャノンさん、御機嫌よう」

 3人の女子学生もやはり入ってきた。
 が、刹那、あの女の子からの人気が高いロイでさえ動揺してしまう。

 褐色肌に、空色と銀色を混ぜて水で薄めたような色彩のセミロング。身長は130cm台後半で、胸はどんなに過剰に大きく見積もってもBカップなサバサバ系ロリっ娘。
 尻尾と羽が印象的なサキュバスっ娘、エルゼ・ハーゼ・フォン・ミッターナハト伯爵家令嬢。

 金色の三つ編みを肩越しに下ろし、高身長で、爆乳桃尻、ムチムチな太ももと、ふっくらとした唇、そして常に熱っぽく潤んでいる瞳が印象的なおっとり系お姉さん。
 ヴィルデフラウ(美少女だけの種族で、子孫繫栄に協力してくれたら三食昼寝付きの生活を送らせてくれる淫魔)っ娘、ユリア・ヴァルト・フォン・ヴィルデフラウ伯爵家令嬢。

 胸が切なくなるような女の子の匂いが強い薄桃色のロングヘアー。牛の尻尾と耳、そして頭に行くべき栄養を全部注ぎ込んだような牛のような乳房。胸はFかGカップほどありそうなのに、身長は140cm台後半しかなかった。噂によると、普段はかなりしっかりしているのに、頭の中はかなりド淫乱で、アブノーマルな偽装しっかり系変態委員長。
 スクーグズヌフラ(任意で相手を腹上死させる淫魔)っ娘、ノーラ・クライノート・フォン・スクーグズヌフラ伯爵家令嬢。

(なんでやねん)


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