ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章6話 姉妹開示のアンサー(2)



「はい、あります。ボクが前世で死ぬよりも前、すでにその段階で脳細胞はフォトンを生み出しているのではないか、という研究がありましたし、恐らく、アリシアさんの固有魔術の能力は――別の世界線、パラレルワールドの自分から魔術の演算能力を借りる能力、ですよね?」

 瞬間、アリシアは絶望のあまり顔を両手で覆った。
 自分の魔術の正体をロイが一発で見抜いたことに怒っているわけではない。むしろそれはいいことだ。自分の部下が優秀であることの証明なのだから。

 ではなぜ、アリシアが悶えているのかというと――、

「恥ずかしいです……。明らかに知識自慢が始まりそうな雰囲気を漂わせていましたのに、まさかロイさんがそれを知っていただなんて……」
「ほら、アリシア、復活しろ。上官のお前がそんな調子でどうする」

「あの、イヴちゃん……」
「なに、お姉ちゃん?」

「もしかして弟くんの知識量って、前世の子供が基準でも……」
「うん、だいぶ多いよ。っていうか、脳細胞からフォトンが生み出されるなんて、ほとんどの大人でさえ知らないはずだよ。まぁ、お兄ちゃん、前世では生き急いでいたから」

「オイ、イヴ。それだとロイが、まるで現世では生き急いでいないように聞こえちまうぞ?」

 と、ここでアリシアが復活する。

「コホン、やはりここを会議室にして正解だったようです。ロイさんと王女殿下のプライバシー保護という名目で、一時的にではなく永続的に防音魔術が発動しておりますので。仮に会議を行っていたのが七星団本部の会議室だとしても、実際に今会議しているここにしても、普段はキャストしていない防音魔術を、なぜか今日だけキャストする、ということになった場合、もしかしたらどなたかに違和感を持たれてしまいますし」
「七星団本部の会議室だと、例のアイツに情報が渡ってしまう可能性が高くなりますものね」

 王女として完璧な笑みを浮かべているのに、ヴィクトリアの目は笑っていなかった。

「それで話を戻しますが、私は現在、【無限遠点、至るべき無尽の幻想奇跡】を少ししか使えません。で、その少しというのが、先ほどの話に繋がりますが、一時的な封印の解除です」

「アリシア、封印解除の時間制限は確か――」
「――最長で、元の姿に戻るだけならまる1日、殺し合いをする場合なら6時間。前者の場合、次回の使用までに封印解除した時間の約5倍の長さのインターバルが、後者の場合、封印解除した時間の約30倍の長さのインターバルが必要になってきます。もちろん、究極的には封印を解除していた際に、なにをどのぐらい激しくしていたのかに左右されますが」

「アリシア本人ではなく、オレ、第三者からの意見だが、幼女状態のアリシアが互角に戦える敵は魔王軍の上級幹部までだ。特級幹部と最上層部の連中が相手の場合、アリシアでも慎重に、その上で大幅にセーフティを確保しながらヒット・アンド・アウェイ戦法、そして相手が苛立った隙に撤退するのが限界だろうな。しかもその撤退にしても、どの程度のセーフティを確保していようと、結局はリスクが伴うという形で」
「ひとまず、以上が私が幼女になった事情と、それに伴う戦力の減少の説明です」

 区切ると、アリシアはクリスティーナが淹れてくれたコーヒー、そのカップに唇を付ける。
 外見は幼女でも中身は大人の女性なので、妙にその何気ない所作ですら色っぽかった。

 優雅に喉を潤すアリシア。
 そしてコーヒーカップをソーサーに置き直すと――、

「この際です。会議を始めるのに各々、不安要素を抱え続けるべきではないでしょう。不安なこと、わからないこと、この場で全て解消しておいてください」
「――――」

「そう思いませんか、マリアさん?」
「そう、ですね……」

 アリシア、つまり上官、司会に名指しされたマリア。
 全員の視線が彼女に集まる。

 が、むしろ本人はアリシアに感謝していた。
 これで、明らかにしておきたかったことを明らかにできる、と。

「――イヴ、ちゃん」
「ぅん? わたし?」

「――――あなたは、わたしが知っているわたしの妹の、イヴちゃんですか? それとも、逢坂あいさか、聖理さん……、ですか?」

 希望半分、怯え半分。
 マリアはすがるようにイヴに真実を訊く。

 瞬間、名状しがたい緊張感が全員に感染する。
 特にシーリーン、アリス、ヴィクトリアは固唾さえ飲み込んだ。目の前にコーヒーが出ているのに、自分の唾液で喉の渇きを誤魔化すような有様である。

「――お姉ちゃんが確認したいのは、わたしが二重人格だった場合、あるいは2つ存在していて然るべきなのに、残っている人格が1つだった場合、メインの人格はどっち? ってことだよね?」
「……っ、はい」

「なら、安心していいよ、お姉ちゃん。そもそも、その前提は成り立たないんだよ」
「――――、えっ?」


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品