ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章19話 胸中秘匿のイレギュラー(3)
意識したわけではなかった。
無意識のうちにルークは少し悲しげで、切なげな表情を浮かべ始めてしまう。
「…………やっぱり、知っていたんですね」
「はい、そもそもルークくんが転入した時、わたしはまだ休学していなかったので」
シャノンには謎が多いが、ルークだって今の発言を疑っているわけではない。
基本的にルークがレーヴァテインに選ばれた魔剣使いであることは、この学院の学生、教職員なら一般的な情報でさえあった。
となれば、ここで浮かぶ当然の疑問はたった1つ。
魔剣使いならば、貧民であろうと、一定以上の学生生活を送れるのではないか、という疑問である。
いや、むしろ貴族の子供が魔剣使いとして選ばれたなら、当然、ルークよりも熱狂的な人気を得るだろうが、反面、その魔剣使いの親をよく思っていない家の親、連動して子供からは、むしろ嫉妬や僻み、不快感、反発を示されることだって考えられる。
つまりルークの場合、本来は先刻のシャノンのようになって然るべきなのだ。
どこの勢力にも所属しておらず、さらに自分たちの友達として積極的に迎え入れたい理由がある。だから実践演習の講義の時、シャノンの周りにはたくさんの貴族がいた。
だが、現状はどうか。
明らかにルークは孤立している。
なのにルーク争奪戦は起きていない。
これがどういうことなのかというと――、
「使わないんですか? それとも、使えないんですか?」
「…………、…………、どっちも、ですね……」
「――――――」
「意図的に使わないのは、間違いありません。その……、殺傷能力が高すぎるんです……」
「それって……、どの程度の……」
「例え模擬戦だとしても、顕現させて、切っ先が引っ掛かっただけで基本、相手は死にます……」
「えぇ……」
「学院の講義を低く見ているわけじゃないですけど、本番でもないのに、誰かを殺すわけにはいきません……。それで……、えぇ、っと……、その重圧で、心理的にも使えない感じに……」
「あれ? でも、それっておかしくないですか……?」
「……と、いいますと?」
「そんなに強力な魔剣を持っているのに、あの3人はルークくんにあんな酷いことをしたんですか? かなり信じられません。昨夜はルークくんをご自宅に帰す気はなかったようですが、以前から暴力や強請は行われていたんですよね?」
「うっ……」
すると、ルークは微妙にシャノンから視線を逸らした。
が、すかさずシャノンはルークの顔を無垢な瞳で覗き込む。
最終的にほんの数秒後、ルークは観念して恥ずかしがりながら、レーヴァテインの弱点を答えた。
「…………うぅ……、その……、僕のレーヴァテイン、人体や物には絶大な破壊力を誇るんですけど、魔術に対してはほとんど効果がないので……。魔術防壁を展開すれば、簡単に防げるんです……」
「なるほど……」
「それと、僕は一度も対人戦でその能力を見せていないので、彼らが甘く見ている可能性も充分に……。要は、僕がひどい目に遭いたくないから、大袈裟に言っているんだ、って……」
「だとしても、だいぶアドバンテージになるはずですが……。少なくとも抑止力には絶対になりますし……」
「――、シャノンさん」
「はい?」
シャノンは可愛らしく、キョトンと小首を傾げる。
「今から僕が言うことを復唱してください」
「わ、わかりました! 頑張りますっ」
「雷は」
「雷は」
「普通」
「普通」
「躱せません」
「…………、躱せません?」
「心なしか、まるで同意を求めるように言わないでください……」
思わずルークは(この子、頭大丈夫かな……?)と、珍しく真面目に心配してしまう。
ちなみに当の本人の反応から推測するに、シャノンは雷撃=回避可能な攻撃、と、割と本気で考えているようだった。
「ふふっ」
「どうしましたか?」
「やっと、ルークくんから遠慮がなくなったような気がして」
「まぁ、とにかく、僕は彼らに対して反撃できません。これまでも、これからも。レーヴァテインで誰かを殺してしまえば、僕は死刑。そして魔剣の持ち主はまた選び直しです。あるいは僕の両腕を切断して、新しい誰かに接合すれば、任意の相手を後継者にできるかもしれませんが」
「なるほどです」
「で、となればあとは単純に魔術勝負なりますが、僕の魔術適性は平均以下。一方、向こうは学年上位の魔術師ですので、傷ひとつさえ負わせられないのが目に見えています。なら、最初から抗わない方が、結果的に負傷は少なくすむんです」
「世知辛いですね……」
「それは仕様だと思います、世界の」
シャノンは寂しそうにショボン……、と、落胆してみせた。
「それで、だいぶ僕が話してしまいましたけど、シャノンさんの方の用件は?」
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