ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章14話 判別不能のリアリティ(3)



 ともかく、そんな選ばれし血筋の者の中でも、さらに優等生の3人が一方的に倒された。
 追加情報として、3人は確かに怪我をしていたものの、それらは全て治癒魔術で完治できる負傷であり、後遺症もなく、なにより、現場には加害者の血が一滴も残されておらず、どこかから漏れた噂によると、犯人はたった1人で、しかも女性らしい。

 同じ話題が5分以上続くのにも頷ける情報だ。耳にしたら誰であろうと真っ先に、加害者の手加減、つまり圧倒的な実力を疑ってしまう。
 ルークだけが犯人=シャノン・ヴォルフガング・シュティルナーということを知っていたが、まさかそれを誰であろうと密告するわけがない。

 感情的な理由としては、大切な恩人だから。
 損得勘定で導き出した理由としては、自分が事件に関わっていることが発覚するから。

 と、その時――、
 ――始業の鐘が鳴り、担任の教師が入室してくる。

「わぁ! 綺麗!」「髪、サラサラ~」
「おぉおお!」「狙うか……」

(――――復学するって言っていたけど、同級生だったんですね……)

 そう、学院の女子制服を見事に着こなした清く淑やかな新しい学友を連れて。

「朝礼を始める前に、本日は諸君らに新しい同輩を紹介する。今後、良き友として、良きライバルとして、切磋琢磨するように。では――」

 40代後半の男性教師が促すと、その転入生――ではなく、ルークしか知らないだろうが復学生は軽く会釈したあと、ニコ、っと、可憐に微笑んでみせた。
 よほどの親に大切に、いっそのこと過保護に扱われているのか、両手には手袋をはめ、スカートはくるぶしに届きそうなほどのロング。外から見える素肌らしい素肌は顔にしかなかった。

 だが、ある意味ではそれがプラスに作用する。別に素肌を晒さない=なにか怪しい、というわけではない。穏やかで、けれど内気というわけではない端正な顔立ち、物腰が柔らかそうで、けれど全てを断れない性格というわけでもなさそうな、癒しさえ覚える雰囲気。そして表情は明るくて、朗らかで、親しみやすくて、理想の微笑みとはこれなんですよ、と、言外に伝えるような完璧さ。
 となると、素肌を隠すのは単純に、男性に見られるのに慣れていない、恥ずかしい、照れくさいだけか、と、男子学生の大半は思ってしまう。

 一方で女子学生の方も、ありえないぐらいサラサラの長髪に――、奇跡さえ連想するほど瑞々しい頬に――、嫉妬さえ覚えず羨望しか浮かばないパッチリ二重と長くて繊細な睫《まつげ》に――、自分の今まで使っていたルージュはなんだったのか! と嘆くほど艶やかで綺麗な薄桃色の唇に――、見つめて5秒で、うっとりと、熱っぽい吐息のような溜め息を吐いてしまう。

 ルークを除くそんなクラスメイト約40人の視線を一身に受け――、
 その復学生は――、
 事件の犯人は――、

「――――みなさん、初めまして。わたし、シャノン・ヴォルフガング・シュティルナーといいます。父は画家、祖父は彫刻家です。お家の都合でしばらく休学しておりましたが、本日、復学することになりました。お恥ずかしい話、実のところ留年しておりまして、わたしのことを知っている人は正直、いらっしゃらないと思います。ですから心機一転、いろんな方と様々な経験を積めたら、と、思います。みなさまの輪に慣れ、親しみ、認めてもらえるまで、時間がかかるかもしれませんが、これから、なにとぞよろしくお願いいたしますね♪」


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