ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
3章6話 ロイ、伝えられる。(2)
「その……率直に、大丈夫?」
「大丈夫……と、言いますと?」
マリアがおっとりした感じで訊いてくる。
「いや、違うんだ。前にも似たようなことを言ったけれど、ボクがみんなに、ボクが死ぬかもしれないって不安を与えているのに、みんなはボクに、みんなが死ぬかもしれないって不安を与えるな、って言いたいわけじゃない。試験に反対しているわけじゃない。っていうか、もう申し込み用紙を出しているわけだし」
「なら、なにが不安なのよ?」
イヴは可愛らしく小首を傾げて訊いてきた。
それに対してロイは――、
「まぁ、普通に教育機関の入試と同じような意味合いだよ。本当に受かるよね、って。模試でA判定よりもD判定の方が不安でしょ? それ以前に、何%で受かって何%で落ちるよ、っていうのが、わかるよりもわからない方が不安でしょ?」
「弟くんのそれは、不安というよりも心配という感じですね」
マリアがまとめてくれるが、ロイの心配は主に1人に集中していた。
シーリーンである。
アリスは学部で上位数%に入るぐらい座学も実技もできるし、イヴにいたっては正直、なんの心配もしていない。メンタルが揺れてしまうことは仕方がないにしても、特務十二星座部隊が認めた強さがあるなら、例え精神的に不調でも、圧倒的な才能の一言で、戦闘試験の相手を倒してしまうだろう。それに、マリアはすでに中等教育を終えて、高等教育の人間だ。イヴほどではないが、マリアだって充分に優秀なのである。
が、それでも、と、ロイは続ける。
「パンフレットを見る限りだと、試験は3つの要素で構築されていて、筆記テスト、別の受験者、あるいは試験官との戦闘テスト、そして面接」
「……ロイくん…………」
「面接は大丈夫だとしても、少し、筆記テストと戦闘テストは心配しちゃうよね……」
ロイに言われた瞬間、シーリーンは座ったまま、膝の上で両手をキュッ、と、握る。
もちろん、シーリーンだってロイの言っていることは理解していた。どこからどう考えても、自分は勉強もできないし、実技だって不登校だったから、まともに出席していなかった。
ロイの言っていることは事実だ。
しかも、ロイはお前には無理! と、突き放しているわけではなく、大丈夫? 試験当日にボクはいないんだよ? と、身を案じてくれているのだ。
だが――、
「ロイくん……」
「なにかな?」
「……、ロイくんがそんなふうに思っちゃうのは、当たり前だけど、シィの今までの人生が原因なんだよね?」
「それは……、まぁ……」
「ロイくんは言いづらいだろうから、自分で代弁するけれど、ほんの半年近く前まで、シィはイジメられっ子で、不登校で、成績も悪くて、あまりにも、優しいロイくんが反応しちゃう、手を差し伸べちゃう要素が揃っているもん」
「――――」
「でもね? 前にも、とあるシィと考え方が似ている相手に話して、そして肯定されたことがあるんだけど、好きな男の子がシィたちのために、今まで頑張ってきたんだもん。戦ってきたんだもん。そしてこれからもきっと頑張って、絶対戦ってくれるんだもん。その分だけ、シィたちも頑張って、そして戦わなきゃ」
「シィ……」
やろうとしたことは最低最悪だし、それを許す気なんてなかったが、少しだけ、ほんの1mmだけ、シーリーンは以前戦ったスライムに感謝する。
まったく同じ発言だけど、ロイに言うのとスライムに言ったのとでは、必要な覚悟の量が違った。
だが、スライムに告白したあとに、そのスライムを倒した経験が、今のシーリーンにはある。
ゆえに、それがロイを目の前にしても話すことができる、いわば自信に繋がったのだった。
「――うん、一方的な関係なんてまっぴらゴメン。なぜなら、それは片想いで、両想いじゃないから。一度両想いになったのに、今さらシィが片想いで満足するはずないでしょ♪」
言うと、シーリーンはロイに可愛らしくウィンクしてみせた。
あまりのいじらしさに、ロイはドキッ、と、してしまう。
「まぁまぁ、ご主人様。試験を受ける以上、合格した方が絶対にいい、っていうのは理解しておりますが、なにも落ちたらひどい目に遭う、というわけではございません。ここはどうぞ、シーリーンさまのことを応援して差し上げては?」
「うん――、そうだね」
すると、ロイは改めてシーリーンと向き直った。
一方で、シーリーンもロイから目を逸らさない。
「シィ、いや、シィだけじゃなくて、アリスも、イヴも、姉さんも、応援しているからね?」
「えへへ、ありがと、ロイくん」
「すぐに合格して、ロイと一緒の戦場に並んであげるわ」
「絶対に合格してみせるよ!」
「期待していてくださいね?」
ここで、ロイの質問タイムは終了を迎えた。
クリスティーナは恐らく、自分の主人の嫁と妹と姉が決意したことに口を挟まないだろう。
となると、ロイの次に質問しそうなのは――、
「それで? ヴィキーはなにかあるかな?」
すると、ヴィキーは一度、静かに目を伏せて、そしてゆっくり開くと――、
「――当たり前ですが、戦争に負けない限り、この城の中にいれば、この国で最上級の生活ができますわ」
「うん」
「そうね」
「それでも、ロイ様とみなさまの会話を聞いておりましたが、わたくしの方からも改めて訊かせていただきますが、みなさまは覚悟をしたのですわよね?」
「もちろんだよ!」
「当然ですね」
「なら、わたくしの方からなにも言うべきことはありませんわ。無論、友達だからといって、王女という身分を利用し、試験官に口添えするということはいたしません。そんなことをしたって、みなさまが喜ばないということは、重々承知しておりますもの。むしろ悲しまれる可能性さえある。だから――」
「「「「――――」」」」
「友達として、心から応援しておりますわ」
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ノベルバユーザー366207
シィのウインクにちょっとイラッてっきちゃった♪