ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
3章7話 アリシア、そして魔術適性
「「――――ッッ」」
その答え合わせに、不覚にも、ロイとレナードは、絶望感でその身体を震わせる。
だが、それを見越していたのだろう。エルヴィスはとても落ち着きを払っている様子で、2人に「落ち着け、話はまだ終わっていない」と、言い聞かせた。
そしてアリシアもエルヴィスに賛同するように「そうですわね、エルヴィスさんの答えには、まだ続きがありますもの」と、嗜める感じに2人に言う。
「まず、すまないがオレの言葉が足りなかったな。『特務十二星座部隊レベルの魔術師はその中にいる』と、答え合わせしたが、無論、厳密には『特務十二星座部隊レベルの魔術師はその中に「も」いる』が、正しい」
「そ、そう、ですよね……」
ロイはなんとか肯定して、理解した体を装ったが、完璧に声は乾いていた。
レナードの方も似たような感じである。
「どちらにせよ、オレたちと同レベルの敵がいることには変わりないが、普通に考えるならば、そいつは外側にいるだろう」
「肯定です。特務十二星座部隊の中にスパイが紛れ込んでいる可能性があることと、本当に現実としてスパイが存在することは、必ずしも同義ではありませんもの。安心してください」
流石に、ロイもレナードも、この2人にここまで言われればそのように納得せざるを得ない。いや、納得できなかったとしても、そのようなことになっている、と、そのように一応しておくしかない。
自分たちよりも目の前の最強たちの方が、こういう時にどのような対応をしたらいいか、熟知しているのは自明である。
ここは自分たちが不用意に出しゃばるのは禁物で、アリシアとエルヴィスに任せるべきだ。
「さて――、今日はここらへんで解散としよう。ロイ、話してくれてありがとう。レナード、黙ってくれることを約束してもらい、感謝する」
「うふふ、では、おやすみなさいませ」
いつの間にか、ロイもレナードも、カレーを完食している。
これでもう、アリシアもエルヴィスも、特になにもなく、席をあとにできるはず。
事実、2人は席をあとにして、挨拶をしてからロイとレナードと別れた。
そして――、
七星団の要塞の廊下にて――、
「アリシア、まだ例の音響魔術はキャストしているか?」
「無論ですわ。加えて、たった今、人払いの魔術も発動させました」
「礼を言う。オレにはそういうのが無理だからな」
コツコツ、と、靴で硬質な床を鳴らして、2人は何気ない様子を装いつつ、廊下を進む。
目的地はアリシアの要塞内部の自室と、同じくエルヴィスの自室だが、そこまでの距離を計算して、2人は歩きながら話すことに。
「スパイがいるとしたら、誰が怪しい?」
と、仲間を、それも、国王が直々に称号を授けるレベルの仲間を疑うこと、それそのものの発言だというのに、エルヴィスは大胆にもそれを口にした。
それに対してのアリシアの返事は決まっていた。
「少なくとも私は、セシリアさんかイザベルさんのどちらかかなぁ、と」
「ほう?」
「ですが、あくまでもこれは現時点での話です」
「これから変わるかもしれないということか。それで、なぜ暫定的とはいえども、セシリアとイザベルなのだ?」
「彼女たちは円卓の間で、イヴさんが気付いたという事実に対して、特務十二星座部隊の中で一番、闇の魔術の残滓を感知できそうなものなのに、自分たちは気付けなかった、と、素直に認めました」
「なるほど、な」
エルヴィスは外見から間違われることが多いが、決して、頭の回転が遅いわけではない。
学ぶ魔術ではなく、鍛える剣術の道を歩んだとはいえ、彼の頭のよさは特務十二星座部隊に相応しいそれである。
結果、エルヴィスはアリシアの思考を汲んで、先回りして言葉を紡いだ。
「本当に気付いていなかったのではなく、気付いていないフリをした、ということか」
「そのとおりです」
なるほど、確かにそういう意見もあるだろう。
普通に考えて、一介の学生であるイヴが気付いているのに、セシリアとイザベルが気付かなかった、というのはおかしい、否、もっと遠慮なく言うならば異常な話だ。
あの2人が気付いていないなんて、常識的にありえない。
だというのに、なぜか彼女たちは、真偽はともかく、気付いていないと主張する。
これを合理的に解釈するならば、ほとんどの人は、アリシアと同じ答えに行きつくだろう。
(――だが、しかし――)
そう、だがしかし、エルヴィスは違った。
セシリアとイザベルが感知できなかったのと同じように、星の序列第1位のエドワード、そして序列第2位とはいえ、エドワードよりもオーバーメイジである分、魔術に詳しい隣を歩いているアリシア、その他にも、エクソシストのニコラスや、セシリアと同じくカーディナルのカレン、とにかく、件の2人がそうであるならば、同じことが特務十二星座部隊の全員に指摘できる。
まさに思考が振り出しに戻ったとはこのことか。
思考の袋小路に行きついてしまったエルヴィスは、一先ず、頭を切り替えて、反論の余地はあるもの、アリシアの意見を元にして議論してみることに。
「仮にだぞ? あくまでも仮に、その二者択一だったなら、オレはイザベルが怪しいと思う」
「あらあら、では、その理由は?」
「二者択一でこういうのがどうかと思うが、言ってしまえば消去法だ」
「なるほど、エルヴィスさんは、セシリアさんがカーディナル、つまり枢機卿だから、闇を司り悪を為す魔王軍には与しない、と?」
「当たり前だ。それも、3重の意味でセシリアが魔王軍とは思えない」
「? 3重の意味、とは?」
「まず、常識的に考えて、という意味だ。常識的に考えるならば、枢機卿が魔王軍の一員なんて、縁起でもないことを言うようだが、王国が魔王軍に敗北するぐらい信じられない話だ」
「そうですわね」
「次に、プライドを考慮して、という意味だ。仮にセシリアが魔王軍の一員だったとしても、彼女の実力が変動するわけではない。現時点での彼女の実力があれば、特務十二星座部隊の一員になれたのと同じように、魔王軍の中でも上級幹部、いや、特級幹部にもなれるだろう」
「つまり、そのぐらい魔王軍の中でも地位を確立しているのに、王国内部に潜入してカーディナルまで上り詰めるのは、セシリアさん本人のプライド、自尊心、矜持が自分で自分を許さない、ということで?」
「然り――そして最後の理由だが、これが一番現実的な理由だろう」
「ええ、彼女の魔術適性ですわよね?」
「ああ、セシリアの魔術適性は、ロイに自己紹介した時、自分で説明したように、無属性が6、種族の関係もあり、炎、水、風、雷、土が9、光も9、闇が0で、時と空は5ということになっている」
「闇属性0の魔王軍の上級、あるいは特級幹部なんて、聞いたことありませんものねぇ」
と、このタイミングでついに特務十二星座部隊の自室が用意されているエリアにアリシアとエルヴィスは到着した。
流石に特務十二星座部隊の自室といえども、男女の部屋の距離は多少とはいえ離れているので、アリシアとエルヴィスは廊下で就寝の挨拶を交わすことに。
「今の話を総括すると、当然だが、イザベルが魔王軍の一員と暫定的にといえど決めつけたわけではない。あくまでも、イザベルが怪しいということではなく、セシリアは外してもいいだろう、という意味だ」
「承知しておりますわ」
「それじゃあ、オレはもう行く」
「ええ、おやすみなさいませ」
「ああ、お休み。また翌日に」
そうして、エルヴィスはアリシアと別れる。
で、エルヴィスは自室に戻ったあと、記憶を思い返して呟いた。
「アリシア・エルフ・ル・ドーラ・オーセンティックシンフォニー、か――。確か彼女は、無属性が10、火も水も、風も雷も、そして土も10、時と空は7で、光が9、最後に、闇も光と同じく、9、だったな」
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