ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章5話 姫、そして脱衣(1)
アリシアの衝撃的な告白のあと、当の本人はロイとヴィクトリアをプリンセスルームに残して、どこかへ行ってしまった。アリシア曰く「申し訳ございませんわ。少々、他にもすることがありますの」とのこと。
アリシアは再三になるが、特務十二星座部隊の一員で、王国七星団の中でも最上位に位置する役職の人間……ではなくエルフだ。誇張抜きに、彼女には他にいろいろすることがあり、本来ならば、むしろロイたちに割く時間すらなかったのかもしれない。
ゆえに、ロイはヴィクトリアと2人きりで多少困った表情を浮かべたが、それでも、アリシアが部屋を出ていくことを止めることはしなかった。
「これで2人きりですわね! ロイ様」
「まぁ、そういうことになるのかな?」
先刻、ロイとヴィクトリア、アリシアに紅茶を配ったメイドも、すでにこの部屋から退室している。
また、ロイが所属することになった第37騎士小隊以外にもヴィクトリアの護衛を務めている騎士小隊はあるらしいが、しかし、この部屋の中には誰もそれらしき人は入ってこない。
なので、ロイはなるべく何気ない感じで、ヴィクトリアに訊いてみた。
「えっ、と、ボク、これからなにをすればいいのかな?」
「ロイ様はわたくしのお友達ですわ。ならば! ロイ様がなすべきことは、ただ1つ!」
「それは……」
自覚なくロイはゴクリと生唾を呑んだ。
友人関係にあるとはいえ、仮にもヴィクトリアは一国の姫君。
そんな彼女がこうも改まって前置きをして言うのだから、ロイの反応もおかしくはない。
で、当のヴィクトリアは――、
「わたくしと遊んでくださいまし!」
…………。
……、…………。
一般的な常識として、友達と遊ぶということは、なにもおかしなことではないし、ましてや非難されるようなことでもない。それはヴィクトリアという王女が相手だとしても、彼女も血の通った1人の人間なのだから例外ではなく、ロイは自分の役目を『守ること』ではなく『支えること』を説明されたので、一瞬、目を丸くしたが――、
「わかった、時間いっぱい遊ぼうか」
――と、すぐに優しく好青年らしい笑顔を浮かべて、そのお願いを聞き届けることに。
で、まず2人が始めたのはトランプ、その中でも、いわゆるポーカーと呼ばれるゲームだった。
一先ず、ロイがデックをシャッフルしながら、友達との雑談そのもの、を、心掛けてヴィクトリアに尋ねてみる。
「なんで真っ先にポーカーをやろうとしたの?」
「チェスは当然やったことがありますし、ババ抜きや七並べ、大富豪もお父様とやったことがあるのですが、そのぉ……」
「ぅん?」
「騎士の方々がコッソリ、金銭を賭けてポーカーをしているのを目撃したことがありまして、無論、今回、金銭を賭ける気はありませんが、なんとなく、誰にもポーカーを一緒にしませんこと? と、誘うのが気に引けてしまいまして……」
「そっか――」
ロイはそれ以上、なにも続けるように言わなかった。
もしかしたら、今のヴィクトリアの発言に対して、感性が変わっている、どこかズレている、と、感想を抱く人もいるかもしれないが、ロイからしたら、それはあまりにも間違っている感想だった。
それほどまでに、ヴィクトリアには今まで、たかがポーカーを誘える『友達』がいなかったのだ、と、ロイは複雑そうに、そう察する。
百歩譲って、仮にヴィクトリアの感性が変わっていて、どこかズレているにしても、いいか悪いかは置いといて、それは彼女の置かれている特殊な環境が理由である。断じて、ヴィクトリアが望みそういう女の子になったのではない。
「じゃあ配るよ? わかっていると思うけど、自分の手札は見えないようにね?」
「もちろんですわ!」
「なら、何枚チェンジする? チェンジは……そうだなぁ、オーソドックスに1回まで、ってことで」
「むむむ……まずはロイ様からチェンジしてくださいまし」
「ボクの出方を見る、ってことかな? なら、ボクは1枚チェンジで」
「――――」
「ヴィキー?」
なぜか、ロイがチェンジした瞬間、ヴィクトリアが黙りこくった。
しかし、そうかと思った次の瞬間、ヴィクトリアは5枚のカードを全て伏せながらもテーブルの上に滑らせる。
「全部チェンジですわ!」
「……、マジか……」
「大マジですわ」
と、たゆん、と、揺らしながら大きな胸を張るヴィクトリア。
そしてショーダウン。結果、ロイが2ペアなのに対して、ヴィクトリアは1ペア。
むしろオールチェンジして役ナシにならなかっただけ、褒めるべきか、あるいは苦笑するべきか。
「あのさ、ヴィキーはポーカーするの初めてなんだよね?」
「ええ、先ほど申し上げたことから推測できるとおりですわ」
「そっか――なら、ポーカーについて少し教えてあげるよ。まぁ、ボクもギャンブラーってわけでもないし、本当に基礎中の基礎しか教えてあげられることはないかもしれないけど」
「本当ですの!?」
ロイが言い終えると同時に、食いつくようにヴィクトリアはテーブルに前のめりになって、興奮した様子で喜色満面の笑みを浮かべる。
ここまで嬉しそうな表情をされて、無下に断れる人間が、この世界にいるのだろうか。いや、いない。
ロイはヴィクトリアの宝石の輝きにも負けて劣らぬその笑みに対し「もちろん」と応えると、彼女にポーカーのことを教え始める。
それから数分後――、
ロイがヴィクトリアに、自分で理解していて他人に教えられる程度の技を、1つ1つ教えていく。その度に、ヴィクトリアは「すごいですわ!」とか、「ポーカーって、奥が深いのですわね」とか、「ロイ様は他人になにかを教えるのがお得意なのですわね」とか、「ロイ様の教え方が上手いから、すぐに覚えて実践できそうですわ」とか、まるで新しい発見をした子供のように、見ていて新鮮な反応を呈する。
「クス、ロイ様は随分と物知りですこと」
「そうかな? そう言ってもらえると、すごく嬉しいよ」
ロイのポーカー講座にひと段落が着くと、ヴィクトリアは楽しそうにクスクスと笑みを零す。姫としての貞淑さもあると同時に、年頃の女の子としての無邪気さも併せた、ヴィクトリアだけのオリジナルな笑顔。
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