ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章9話 決闘場で、学部最強の騎士と――(3)
「そんな……【聖なる光の障壁】に、そんな使い方があるなんて……」
「第5学年次にしては、なかなかいい反応じゃねぇか。だが、所詮は反応。予測していたわけじゃねぇ」
「なにが言いたいんですか?」
「直感的な反応じゃ、計算に基づく予測には勝てねぇ、って言いたいんだ」
「ぐ……っ」
「俺は地中から不意打ちしてくることを予測していた。だからすぐに上空に逃げることができた。対して、テメェは上空に逃げた俺を、あくまでも機転を利かせて追撃したんだ。事前に見越していたわけじゃねぇ。で、俺の予測はテメェの追撃も想定していた。だからこそ、【聖なる光の障壁】を予め詠唱破棄して脳内にストックしておいたし、空間に固定された板ということも利用して、逃走経路を確保できた」
「つまり……っ」
「身に染みてわかったんじゃねぇか? 反応も確かに大切だが、言ってしまえばその場凌ぎ。なにかが起こる前から準備しているのではなく、なにかが起きてから初めて行動を開始する! そんなんじゃ、常に10手ぐらい先を読んでいる予測には、10年経っても勝ち目はねぇなァ!? 反応は所詮、予測の手の平の上なんだよ!」
「…………ッゥ」
「サァ! 剣戟の続きとシャレこもうじゃねぇか!」
ゴッッ! と、ステージを砕く勢いで、レナードはステージを踏み込む。そして一気に加速して、疾走して、ロイを肉薄にしようとする。
彼我の距離は5m。騎士として身体を鍛えているレナードが走れば、ほんの数秒だ。
迷っている時間はない。
幸いにも、テクニックでは劣るがパワーはこちらが上。
なら、もう、最大火力の一撃をレナードに撃ち放つしかないではないか。
穿つは極光、狙うべくは学部最強の聖剣使い。
即ち、ロイが撃つべきは全身全霊、全力全開の、聖剣の波動しか他にない。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」
ロイは裂帛の気合いを吼える。
振りかざせ。
夕闇に瞬くのは純白の輝き。
聖剣を中心に渦巻くのは黄金の風。
いざ、解放しろ――、
真価を放たれる、彼の者の聖剣の名は――ッッ、
「エクス――ッッ、カリバアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
古竜、あるいは神竜が天高く飛翔するために、翼を羽ばたかせるような轟音が響く。
聖剣の波動の衝撃で、決闘場が建てられているエリア一帯が轟々と揺れた。
例え5%の出力が出ない分身の、さらに30%とはいえ、オーバーメイジ、特務十二星座部隊の星の序列第2位【金牛】の【絶滅の福音】を相殺させた、この渾身の一撃。
嗚呼――、
相殺できるものならば、相殺してみればいい。
耐えられるものならば、耐えてみればいい。
ロイは心の中で咆哮した。
この聖剣の波動は、その先を往く! と。
「俺を舐めるんじゃねエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
満天の星々のごとく煌々と瞬く極光がレナードに迫る。
ロイと同じように、レナードにも迷っている時間はない。
斬らなければ斬られる。大局的に考えられた自身の戦略が、このような攻撃力だけの戦術的な技に覆されてなるものか。
この極光、斬ったとしてもアスカロンのスキルの処理限界を超える?
そのような些末な問題、レナードの知ったことではない。
レナードは、何事も計算できるというだけであって、プライドがないわけではない。
ゆえに、レナードも吼える。
彼が振るう聖剣の名は――、
「 ぶった斬れ! アスカロン――ッッ! 」
聖剣から放出される紫電のごとき燐光と、古竜、あるいは神竜のブレスを彷彿させるような夜明け前の蒼さよりも蒼い炎。
そしてついに、聖剣のスキルと聖剣のスキルが真正面から拮抗し合う。
大気中の魔力が乱れ、灼熱で熔かすように消滅していく。
聖剣の波動は、そしてアスカロンのスキルの発動の余波は、ロイもレナードも関係なく、両者の肌をジリジリと焦がしていった。
エクスカリバーの切っ先から、止め処なく新しい極光が、次々にレナードに向かって奔出する。それを迎え撃つために、アスカロンは光の粒子を1つ1つ、高速で、精確にスキルで処理していく。
瞬くのは極光。迎えるのは別の聖剣。
聖剣の使い手に選ばれた英雄の雛、2人が、魂を灰になるまで燃やすように、互いの聖剣に魔力を込める。
眼前に広がるのは、天に輝く一等星が地上に降臨・顕現したかのような目を焼くような純白。
そして――、
「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」
弩々ッ、轟ッッ! と、その瞬間、観客席の方はともかく、決闘場のステージは全壊した。爆発のように土煙が舞う。聖剣と聖剣がぶつかり合った余波で、灰燼が竜巻のように天に昇った。
数秒後、土煙の中から立ち上がる男たち。
ロイは限界を超えた聖剣の波動を撃ったせいで、右腕がありえない方向に曲がっていた。
レナードも、多少はアスカロンのスキルで処理できたとはいえ、聖剣の波動を少しは受けてしまい、腹のあたりの制服が派手に破けて、脇腹の肉が抉れていた。
まさに、両者、満身創痍。
しかしロイは挑発するように笑って――、
「見破りましたよ、アスカロンのスキル!」
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