ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章8話 決闘場で、学部最強の騎士と――(2)



「最初のアスカロンのスキルは、エクスカリバーの斬撃の四重奏の軌道を逸らしました。しかも1つにしか干渉していないのに、4つ全ての太刀筋を。この時点でボクは、アスカロンのスキルを物理的なモノではなく、現象的なモノだと確信しました。だって、物理的なスキルでしたら、1回の干渉で4つの刃の軌道を逸らすなんて不可能ですし」
「まっ、論理的に考えるならそうだろうなァ」

「2回目のアスカロンのスキルは、【聖なる光の障壁】を強化させました。ここで重要なのは、エクスカリバーの飛翔剣翼の威力が弱くなったのではなく、【聖なる光の障壁】の方が強くなった、硬くなったということ。なぜなら2つのうち、アスカロンが干渉したのは【聖なる光の障壁】の方だけだから」
「へぇ、感情的な剣士のくせに、戦い方は論理的じゃねぇか」

「そしてどのように【聖なる光の障壁】に干渉したかといえば、実際に見たからわかりますが、斬るという行動で干渉しました。さらに思い返すと、斬撃の四重奏の時にも、アスカロンはエクスカリバーに触れています。――つまり! アスカロンのスキルの発動条件は、1mmでもいいからアスカロンでスキルの対象にしたいモノを斬ること!」
「そこまで筋道を立てて説明することができるのか。イイね、イイね、最ッ高だねぇ!」

「そこまでわかれば簡単です。風の大砲がボクに当たる前、先輩はなにもない空間を斬りました。あれは適当に剣を振ったのではなく、大気を斬ったんですよね? 大気になんらかの現象を起こして、風の大砲を攻撃として成立させた」
「ハッ、そこまでバレてるんじゃ、否定してもしょうがねぇか」

「そして最後に――」
「まだあんのかよ」

「――アスカロンのスキルは、斬ったモノの『本質』に近いナニカを、強くしたり、弱くしたりするスキルですよね? 【聖なる光の障壁】を斬った時は、それが硬くなりましたし、大気を斬った時は、風で敵にダメージを与えられるぐらい勢いが強くなった。まぁ、斬ったモノを強化するスキルとも考えましたけど、それだと斬撃の四重奏の軌道を逸らされた意味がわかりませんし」
「――『本質』に近いナニカ、ねぇ。ハハハッハ! 惜しいなァ、オイ! それさえわかれば、グンと俺に勝ちやすくなるのによォ!」

 レナードは素直にロイに称賛を送る。それが当たり前で、率直な反応だからだ。
 しかし裏を返せば、まだロイに称賛を送る反応ができる余裕があるということ。
 騎士学部序列第1位は、伊達ではない。

「ところで、先輩はボクのことを論理的に戦う、と、評価しましたが……」
「それがなんだ?」

「――違いますよ?」
「アァ?」

「直感で大まかな予想を付けたことを、後付けの理屈で、根拠・説得力を持たせるために、いわば直感の補強工事したんです」

 ロイはこともなしに、そういうことを言う。
 その数秒後、決闘場にレナードの笑い声が響いた。

「なるほど! なるほどなァ! 俺とテメェは真逆のタイプの騎士だったのか!」
「真逆?」

「――俺はこんなクソみてぇな不良だが、敵とやり合う時は、常に論理的に敵をぶちのめす! それが一番効率いいからだ。手短にすんで、ジグソーパズルを完成させた時みたいにしっくり感に溢れるからだ。だが、テメェは違う! 感覚的な人間だ! 直感的な戦闘スタイルだ! バカ正直な剣の振り方だ!」
「それがなにか?」

 ロイは問う。
 それに、レナードは威風堂々と応えた。

「面白れぇ、って言いてぇんだよ。俺のテクニックとテメェのパワー、どっちが上か、白黒つけようじゃねぇか」

 …………
 ……、…………。

「さて、そろそろ再開しましょうか」
「――ハッ、異論はねぇ」

「では――ッ」
「……っっ!?」

 ロイが宣言したのと同時に、レナードの足場が崩れる。
 そう、ロイはアリシアと戦った時のように、先ほどからエクスカリバーをステージに突き立てていて、レナードの足元まで、地中を通してエクスカリバーの剣先を伸ばしたのだ。

 そして地面から咲き乱れる無数のエクスカリバーの切っ先。
 だが、レナードの顔に焦燥が浮かんだのは、ほんの一瞬だった。

「バカめ! 戦闘中に会話なんて切り出してきやがったんだ! 普通に考えて、時間稼ぎを疑うだろう!」
「――――っ」
「つまり! 想定内だ!」

 レナードは再び大気を斬る。方向は、自分の真下、足元、ステージの床。

 刹那、下方に吹き荒ぶ突風。
 その風がステージの床にぶつかった時の拡散された風に乗って、レナードは上空へと吹き飛んだ。高さにして、おおよそ5m。

 しかし、攻撃を回避されても、ロイはすぐに反応する。

「甘い! 無数に咲き乱れたエクスカリバーの切っ先、その全てを使い、飛翔剣翼!」

 上空に放り出されたレナード。彼を狙って無数の斬撃が飛ばされる。
 しかし、レナードは最初からそれを見越していた。
 例えば自分が上空に攻撃を回避したとして、もしレナード自身が敵の立場だったらどうするか? そう考えれば、直感的なロイの次の一手など、簡単に計算できる。
 ゆえに――、

「なっ!? 【聖なる光の障壁】の詠唱破棄!?」

 当然、次の瞬間にはレナードは、アスカロンで【聖なる光の障壁】を斬って、魔術障壁を絶対に壊れないようにした。
 そしてレナードは【聖なる光の障壁】が無数の飛翔剣翼を防いでいる間に、【聖なる光の障壁】を、言ってしまえば、空間に座標を固定された絶対に壊れない板の上を走る。
 その後、ロイの飛翔剣翼から充分に距離を取って、空中に浮く足場、【聖なる光の障壁】から飛び降りて着地した。

「そんな……【聖なる光の障壁】に、そんな使い方があるなんて……」


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品