俺だけ初期ジョブが魔王だったんだが。

夜明

第2章 12話 「道化師の実力」

ブゥゥ....ン。ダイブマシンの起動音が響くとすぐに景色が色付いた。宿屋の部屋の椅子に腰掛けていたので立ち上がる。

「リリス!おーい、戻って来たぞ」

部屋にリリスが居ない。AIはログアウトしないし一体どこに行ったのだろうか。

と、そのときキィ、と音を立てて部屋のドアが開いた。

「あ!お帰りなさい!レンジさm...じゃなくてレンジ..君!」

そこに居たのはリリス、のはずだが一瞬誰か分からなかったのはそのビジュアルのせいだろう。

ツインテールで巻いていた赤髪は、綺麗なだいだい色に変わっていてストレートに肩まで伸ばされている。

「似合います?」

お得意の上目遣いでこちらを覗き込む。

「え、っと、い、いいと思う..」

不意打ちのコンボで思わず噛んでしまった。ゲームなのに耳から顔にかけて熱が伝達していくのが分かる。

「あー!赤くなってます!」

「うるせーよ!」

慌てて誤魔化したがリリスは見透かしたような目でこちらを見つめる。

「ねえねえ似合いますぅ?」

わざとらしく何度も聞いてくるリリスにチョップを食らわせ黙らせた。

「近くに美容室があったので行って参りました!目の色も変更出来るようでしたけど変えたくなったのでしませんでした。それでも良いです?」

「ああ、大丈夫だよ。前とは印象がすごい変わるから」

「良かった!ちなみに【トランストリックリング】で元に戻る時は赤髪ツインテに戻れるので便利でした!差別化出来るみたいです」

なるほどな、と頷いた後俺達は宿屋を一旦出て、新しい職業の試運転を試み<始まりの町>のすぐ近くの草原に来た。ここの魔物はレベルが特に低くて戦いやすいからである。

とりあえずステを開くか。

レンジ Lv.20 男職業:【道化師】HP:230/230 MP:540/540
STR:200(+50) VIT:200 AGI:750 (+100) DEX:800(+200) INT:500(+100)
頭:【チェックシルクハット:黒青】
顔:【無し】
胴体:【ストライプコート:黒青】
足:【サルエルパンツ:白赤】
左手:【トランプハンドガン】
右手:【無し】
靴:【アップロングブーツ:黒青】
装飾:【涙のペイント】【傷のペイント】【トランプホルダー】【ハンドガンホルダー】
パッシブスキル【白い鳩】Lv.1 【赤い鼻】Lv.1【ピエロのオーラ】Lv.2 

アクティブスキル【ウォーキングアクト】Lv.3【スカイスティルト】Lv.1【インカーネットパントマイム】Lv.1【スタチューアッシュミレーション】Lv.2

驚いたのは通常職はステータスの振り分けが自分で出来ないところだ。更に服にも特殊効果は付いてなく、ステータスに補正がかかるだけの物だった。【魔王】はつくづく恵まれていたんだなと実感した。

装備【トランプハンドガン】STR+50。1度に13枚セットできる。セットしたトランプが1発ずつ発砲される。オートマチック。

パッシブスキル【白い鳩】Lv.1ハット装備時に効果。一定時間が経過すると白い鳩を五匹出せる。
【赤い鼻】Lv.1一定時間が経過すると鼻に赤いボールが出現。
【ピエロのオーラ】Lv.2通常時、自分の事を60秒以上連続で視界に入れた者を抱腹状態にする。戦闘時、自分の事を10秒以上連続で視界に入れた者を抱腹状態にする。

アクティブスキル【ウォーキングアクト】Lv.3自分から半径50mに居る生命の注目を集める。
【スカイスティルト】Lv.1足が5m伸びる。一定ダメージを食らうか、30秒経つと元に戻る。
【インカーネットパントマイム】Lv.1パントマイムした物が具現化する。具現化した物の耐久値などは使用者のステータスに依存する。
【スタチューアッシュミレーション】Lv.2行動をフリーズさせることで風景に同化する。15秒経過するか、動いたり攻撃を受けたりすると元に戻る。

うーん。【魔王】よりは確実に弱いのは分かるけど普通の職業はこんなものなのか?特にパッシブスキルは酷すぎる。鳩もボールも要らねーよ。

そのとき数体の魔物が俺ら二人に接近してきた。

「とりあえず戦闘で試してみよう」

「了解です」

俺とリリスは魔物相手に構えた。アタックボアがこちらに突っ込んできた。

「さぁ、この銃はどうかな」

バシュンと飛び出したトランプは真っ直ぐにボアの方に...飛ばなかった。風でどこかに飛ばされてしまったのだ。

「はああ?!」

銃弾がトランプの時点で疑ってたけどこの銃は弱過ぎる!慌てて覚えたてのアクティブスキルを発動させた。

「【スカイスティルト】!」

そういうと足がぐんぐんと伸びて身長が6mを優に超えた。巨人にでもなった気分である。

「おお!これは使えるか?!」

そういった瞬間視界が急に揺れる。ぐらついて転倒。そのまま地面に強打した。少なからずダメージを食らう。スキルの効果は無くなってしまった。

「アタックボアにタックルされるだけで倒れるのかよ....」

「今治癒魔法をかけます!」

そういうとリリスは琴を引き出した。徐々にHPが減ってゆく。ん?

「ああ!間違えてデバフをかけてしまいました!」

おい!と、思いながら体制を取り直す。

「【スタチューアッシュミレーション】!」

お!体が段々風景と同化していった。魔物達はこちらを見失い、向かってくるのをやめた。これは使える!

「来るなぁ!おい!私はお前達より偉いんだぞ!」

方向転換した魔物はリリスの方に向かっており、必死に魔物を追い払おうとしていた。リリスは【吟遊詩人バード】なので攻撃手段がないのかもしれない。

「駄目だ。このスキルもリリスと相性が悪い」

急いでリリスの方へ向かい群がる3体の魔物の頭を思っきし素手で殴る。
ゼロ距離だと風で飛ばないので【トランプハンドガン】を打ち込む。
レベル差のゴリ押しでなんとか乗り切った。

ゲーム初心者がプレイしたような質の低すぎる戦闘を終えると心からこう思った。

「【道化師クラウン】って不遇職じゃね?」

そう呟いた後に鼻の頭に赤いボールがボンと生まれた。

「...はふっ」

リリスは口を抑えて肩を震わせた。

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