俺だけ初期ジョブが魔王だったんだが。

夜明

第2章 11話 「つかぬ間の休息」

<始まりの町>に到着するや否や、早速通りすがりのプレイヤーに笑われる。

「おい!そこのお前達!くすくす笑ってんじゃない!」

「お前が言うなよ...」

リリスの肩をバシッと叩くと今日は宿屋に向かう事にした。ゲーム内で寝る必要は無いがリリスを連れているし、セーフティーゾーン内といえど外で休むのはちょっとな。

そこらにある宿屋に適当に入ると、ルシフェルから多少の金を受け取っていたのでそれで支払った。

「えっと...同じ部屋でいいか?」

「もちろんでございます!」

食い気味に答えるリリス。いや、そういう事ではありません。

鍵を受け取り、部屋に着くなりリリスはシーツが綺麗に敷かれたベッドにダイブした。

「さぁ!レンジ様!私と共に熱い夜を!」

「うん。まあ普通に綺麗だな」

「ええ酷い!!」

俺は巫山戯ふざけるリリスをシカトして質素な部屋の内装を確認した。外に声が漏れない事を確認すると話を切り出した。

「リリス。【大司教】を探し出すに当たって守って欲しい約束があるんだ」

「約束、ですか?」

「ああ、これから俺の事は呼び捨てでいい。様、なんて付けてたら他の奴らに怪しがられるからな。そもそも歳は君の方が何歳か年上に見えると思うし。」

「そんなっ!位も歳も私めより数段高貴な方を呼び捨てだなんて!」

「え?俺の方が歳上なの?」

「ええ。四代目正当後継者魔王サタン様改め、レンジ様は御年230歳なので私とは98歳差ですよ」

「てことは...132歳なんだな」

「まだまだ未熟者ですがどうぞこれからも宜しくお願いしますねっ」

どうやら魔物は寿命が長いらしい。230歳って想像もつかないな。それはそうと何とか説得して俺とリリスは、二人でパーティーを組んでいる友達という設定にした。

「一般人を装うんだぞ。無闇矢鱈むやみやたらに人に噛み付くな。騒ぎなんか起こしちゃまた注目されるだけだ」

「..はい。仰せのままに」

ムスッとさせたリリスは頬を膨らませる。

「後な、リリスは顔を見られているから一応、髪色とか髪型を変えた方がいいかも知れない」

リリスのツインテールにしている赤い巻き髪を軽くつついた。

「そっ、そうですね。どんな髪型がいいでしょうか......?」

「えぇ〜...好きにしろよ。自分の好みだろ」

リリスはジト目でこちらを睨む。何だよ。

「はぁ...分かりました。明日から変えてみますね」

そう言うとリリスはそっぽ向いて布団に潜ってしまった。

「少し席を外すよ。後でまた来るからな」

リリスはこちらに振り返り、はいと答える。俺は一度ログアウトする事にした。



ーーーーーーーーー

目の前が暗くなったかと思うとすぐに明るくなって現実世界で目を覚ました。

「ふぅ...」

ヘッドギアを外すと思わず溜息がでた。フルダイブ型のゲームは体験したことがなかったので少し酔ったのかもしれない。まだ慣れていないしな。

ひとまず台所でコップに水道水を入れ、飲み干した。ソファーに座りテレビの電源をリモコンで操作する。テレビ台の上にホログラム映像が浮かび上がった。

「このテレビも発売当初は騒がれたんだけどな。最近はどのチャンネルもダイブマシン<サクセス>の事ばっかだ」

丁度点いていた番組はゲーム大好き芸人達がダイブマシンを語るという番組だった。

『このチェアー型は値段はどのダイブマシンより高いんですが座り心地が良くて体が痛くなりにくいんですよ!ダイブ専用で作られてますからやっぱりほかの椅子とは違いますね!』

『何言うてんねん!ヘッドギアタイプの方が安いしカラーも種類多くてええ感じやし!持ち運びも出来る優れモノや!』

『チェアー型もヘッドギアの部分は取り外し可能ですよ。どっちにしろパソも持ち歩かないと駄目ですけどね。あれは重くて敵いませんよほんと。』

ああ、あのヘッドギア外したりできるんだ。そう思っていると女性MCが口を開いた。

『ダイブマシンは持ち運びが難しい所に問題があるのですが、最近はネットカフェやカラオケなどにもダイブマシンの設置しているお店があり、来週にはダイブマシン専用のお店も各地に新設されるらしいです!』

『えぇー!じゃあ出張先でもふと少ししたくなったら店行ってダイブ出来るやないですか!』

『<サクセス>は脳波を読み取ることでログインするのでどのダイブマシンを使ってもログインできますしね!』

『実質ダイブマシンの購入をしなくても店で新規登録すれば通常通りプレイできるらしいです!』

『大変人気ですからお店の方は混むでしょうし、毎回料金がかかるのでゆっくりしたい人は購入がおすすめですね』

そうなのか。ということは新規プレイヤーはどんどん増えるだろう。高い値段を払わなくともゲームをプレイ出来るから気軽に遊べる。これから店舗はかなり増えると予想した。

母は仕事で忙しくあまり帰らない人なので、一人虚しく夜ご飯を食べると部屋に戻り再び仮想世界へ潜り込んだ。

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