ダンジョンテストプレイヤー

島地 雷夢

03

「っと!」 ケイトは即座にミーネを抱えると高速移動でその場から離脱する。一つ目ゴーレムの光線が放たれ、間一髪逃れる事が出来た。「ミーネ、あれ倒すぞ」「う、うんっ」 ミーネを離したケイトは、高速移動でゴーレムの側面へと移動する。僅かに顔を赤らめるミーネは彼とは反対の方へと高速移動をする。その間、二人共魔法弾のチャージをし、威力を高める。 一つ目ゴーレムは頭をぐるぐる回し、目をケイトにミーネにと何度も向ける。「喰らえっ!」 まず、ケイトがチャージ弾を一つ目ゴーレムの胴体に当てる。今度は光線で掻き消されず、ぶち当たる。その後は連射をして少しでもダメージを与えて行く。「いっけぇ!」 ミーネは頭部へチャージ弾を放つも、ぐるりと顔を彼女に向けたゴーレムがまた光線を放って掻き消されてしまう。今度は直撃を貰わないよう、慌てずに高速移動を行って光線を回避する。 ミーネも連射に切り替え、胴体を狙っていく。 幾分か魔法弾が当たると、急にゴーレムが真上に跳ぶ。空中で体を丸め、地面へと落下する。「うおっ⁉」「わわっ⁉」 落下の衝撃で地面が揺らぎ、立っていられず尻餅をつくケイトとミーネ。その隙を逃さんとばかりに丸まり状態を解除した一つ目ゴーレムが腕を振るって二人を吹っ飛ばす。「ぐっ!」「きゃっ!」 壁に叩き付けられ、二人のライフゲージが削られる。怪我はしないとは言え、衝撃は身体を伝わるので完全に無事と言う訳にはいかない。「くっそ」 ケイトは痛む身体に鞭うち、魔法弾を連射しながら立ち上がる。「いたたた……」 ミーネは僅かにふらつくもチャージを開始し、チャージ弾を胴体に放つ。 一つ目ゴーレムは全ての攻撃を受けるも、微動だにしない。「ん?」 チャージ弾を当てたミーネは眉を寄せて首を傾ける。「どした?」「いやね、何で胴体に撃ったチャージ弾を掻き消さなかったんだろうなって思って」 そう言うとミーネはまたもやチャージ弾をゴーレムの胴体に向けて発射する。今度も一つ目ゴーレムは光線で掻き消さずその身で受ける。「ほら」「そう言えば、そうだな」 どうしてだ? と疑問に思うのと同時に一つ目ゴーレムが腕を二人に向けて振るってきたので高速移動で大きく避ける。 試しに、ケイトもチャージ弾を胴体に放つ。やはり光線で掻き消されない。 次に、ミーネが普通の魔法弾を頭部へと向けて放つ。すると、今度は一つ目ゴーレムの目から光線が放たれ、魔法弾を掻き消す。「頭部への攻撃だけ掻き消すのか」 うぅむ、と唸るケイトの肩をちょんちょんとミーネが叩く。「何?」「あのさ」 ミーネがひつ眼ゴーレムの頭を……と言うよりも目を指して一言。「あの目が弱点だから守ってるとか?」「…………かもな」 だとしたら、光線でわざわざ掻き消すのも頷ける。ただ、どうやってあの目に魔法弾を当てるかが問題だ。 まぁ、それは一人の場合は、だが。「ミーネ、同時にチャージ弾当てよう」「おっけー」 ケイトとミーネは頷き合い、互いに少し離れながらチャージを始める。先程と同じように二人が離れた事で一つ目ゴーレムが頭をぐるぐる回し始める。「おらぁ!」「シュート!」 二人同時にチャージ弾を発射する。ゴーレムはケイトのチャージ弾へと顔を向け、光線を放って掻き消す。その後直ぐにミーネの方へと顔を向ける。それと同時に、ミーネのチャージ弾が一つ目ゴーレムの目に直撃する。 直撃を受けた一つ目ゴーレムは動きを止め、前に倒れる。倒れたゴーレムの目はちかちかと点滅しているが、光線を乱射している訳ではない。 今がチャンスとばかりにケイトとミーネは高速移動で一気に近付き、ゴーレムの目に向けて魔法弾の連射をお見舞いする。 何度か当てると、目の点滅が収まり、急に起き上がって跳び上がる。地面を揺らす攻撃をしてくるのを予期して二人は部屋の端まで逃げる。身体を丸め、予想通りに地面を揺らしてきたが、今度は尻餅をつく事も無く、ゴーレムの腕に当たる事も無い。 逃げる際にチャージを始めており、ケイトは遠目でミーネに合図をし、彼女は頷いて答える。 同時にチャージ弾を放って、今度はケイトのチャージ弾が目にヒットする。 倒れて目が点滅する一つ目ゴーレムに近付き、ケイトは魔法弾を連射。「いっけぇ!」 ミーネはチャージ弾をぶち当てる。すると、ひときわ大きくゴーレムが動き、光となって消えていった。『中ボス撃破、おめでとうございます』 一つ目ゴーレムとの戦闘が始まってからずっと上空に逃げていたアオイは降りて来て二人に賛辞を向ける。『ではでは、倒した事ですし先へと進みましょう』「少しは休ませろ」 翼を次なる扉へ向けるアオイにケイトは苦言を漏らす。移動は大体高速移動を使っていても嫌に疲れたケイト。ミーネも同様だ。なので、ここで小休止を挟む。 数分その場に座って体力を回復し、二人は先へと進む。 扉を抜けると、視界の右端に『チェックポイント』の文字が点滅する。そしてやはり広い一本道となっており、ゴーレムが徘徊している。白い壁に白い天井が印象的で結構先には壁が聳えている。 ゴーレムを倒して壁の前まで来ると、壁には等間隔に針が飛び出している。しかも、憎い事にその針を飛び越えようと大きく壁を蹴って行こうとしても無理な距離だ。 他に道はないものか? と辺りを見回すと壁の対面……つまり、二人が通って来た道の天井が途切れているのが確認出来た。途切れた場所から上に壁が伸びている。こちらの壁も等間隔に針が飛び出している。二つの壁は全く同じではなく、針が出ている箇所が異なる。「……これってあれか? 二つの壁の針の出てない所を交互に蹴って上に行けって事か?」「多分そうなんじゃない?」 とミーネは早速壁を蹴って向かいの壁に向かう。針に触れないよう注意して交互に壁を蹴っていく。「あ」 もう少しで上に辿り着く、と言う所で針に突っ込んでしまい、やられて光が弾ける。「いやぁ、あとちょっとだったのに。残念」 高速移動を連続で行って直ぐにケイトの近くまで戻ってくるミーネは唇を尖らせる。それから彼女は三回挑戦するも、針にぶつかってやられてしまう。四回目で、漸く上に辿り着く事が出来た。「ほらー、ケイトも早くおいでよー」 上から手をメガホンにしてケイトに声を掛けるミーネ。因みに、ケイトはミーネが挑戦している間ずっと彼女の壁蹴りを観察していた。ミーネの動きを参考にどの位置で、どのタイミングで壁を蹴れば無事に進めるかを頭の中でシミュレートする。 ある程度形が決まってから、ケイトは壁蹴りを開始する。シミュレートした甲斐があり、ケイトは一発で上に到達する事が出来た。「おぉ、ケイト一回で上った! 凄い凄い!」 ミーネはケイトの動きを称賛するが、ケイトとしては何度もやられたミーネの動きを参考にしたのでいたたまれない気持ちになる。彼としては、やられる事に恐怖を覚えず前向きに何度もチャレンジする彼女の方が手放しに凄いと思える。 その後も二人は道を進んで行く。上にも当然ゴーレムが下り、障害も存在する。大きな穴が開いており、下には嫌がらせ以外の何者でもない針がびっしり生えており、高速移動ジャンプを使っても向こう岸には届かない距離だ。 しかし、穴はかなり深いので、届かなくとも向こう岸側の穴の壁にさえ届けば壁蹴りを駆使して向こう岸へと着く事が出来るので、それ程難しくはなく二人はすんなりと超える事が出来た。 針穴を越えた先は壁で天井にも裕香にも穴は開いてない行き止まりだ。しかし、この壁だけ色が灰色となっていて他と異なっている。何故色が違うのだろう? とケイトが理由を考えているとミーネが壁に向けて魔法弾を放つ。何度か放つと壁は壊れて道が開かれたではないか。「よしっ。行こ行こ」 笑顔を浮かべるミーネの後に続いて、ケイトも壁の向こうへと進む。 その後もゴーレムを倒し、障害を潜り抜けて一つの扉の前へと辿り着く。今までの扉と違い、一回り大きく、装飾が凝っている。 扉を抜ければ短い一本道。奥にも今し方潜った扉と同様な物が。そして視界の右端に『チェックポイント』の文字が浮かぶ。『さてさて、次がいよいよこのステージのボスです。ボスを倒せば、テストプレイは終了となります』「ボスか~、一体どんなゴーレムなんだろ?」「さぁ? あの一つ目ゴーレムよりもデカかったりしてな」 なんて会話を挟んで奥の扉を抜ける。 扉を抜ければ、円形の広間。その中央には人が立っている。 否、人ではない。大きさと身体の形状は人間と大差ないが、立派なゴーレムだ。手には短い棒状の何かを持っており、顔の無い頭部には少し尖った兜が被されている。騎士のような鎧を身に纏い、赤くたなびくマントを翻している。
 WARNING! WARNING! WARNING!
 突如バイザーに警告をあらわす文字が浮かび上がり、同時に音声も流れる。 文字が消えると、中央の騎士ゴーレムが自らマントを剥ぎ取り、棒状の何かを片手で構えてケイトとミーネへと向ける。すると、棒の先端から光が伸び、刀身を作り上げる。『ではでは、ボス戦頑張って下さい』 アオイは直ぐに上に飛び立って闘いの邪魔にならないように退避する。 それと同時に、騎士ゴーレムが二人へと駆け出す。

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