End Cycle Story

島地 雷夢

第20話

 レガンクインビーは剣が届かない程高くまで飛び立つと直ぐに咢を開いて天へとガラスを引っ掻いた時に出るような音で鳴く。鳥肌が立ち、耳が痛くなって俺とキルリは堪らず両耳を押さえる。 音に呼応して、サイズが人間の胴体程の大きさの陶磁製の蜂が十匹桜の木の茂みから現れた。その十匹は大きさの他に違いがあり、頭上には王冠を模ったような突起は見当たらず、腹部の膨らみも抑え目で、顎も存在しない。代わりにレガンクインビーには見られなかった触覚が見受けられる。
『レガンビー』
 所謂働き蜂のポジションのレガンだろう。こいつ等を無視して親玉を集中的に潰すか、周りの子分から数を減らして安全に親玉をやるか。 って、別に考える必要はないな。ここは堅実に周りの奴等を消してからレガンクインビーを叩こう。その方が変な横槍を食らわずに済む。と言うよりも、今の状態のレガンクインビーは通常攻撃が届かない。狙うにしても『ファイアショット』や『刃波』、『スラッシュアッパー』を使わなければ当たらない。何が起こるか分からない状況で精神力を盛大に消費するのは得策ではないだろう。「なぁ、キルリ。先に小さい方の蜂から仕留めないか?」「そうね。私もその方がいいと思う」 キルリもどうやら俺と同じ考えをしたようだ。「二人で一匹を相手するか? それとも別々に一匹?」「最初は近くの奴を二人で仕留めよ? このレガンの実力が分からないから最初に一人でって言うのは危ないと思う」「分かった。『ウィンドヴェール』」 俺は頷き、『ウィンドヴェール』を発動させて敏捷力を上げる。
『精神力:50/60』
 本当はキルリにも『ウィンドヴェール』を掛けたいのだが、生憎と発動者にしか効果を発揮しない魔法だ。なのでキルリの敏捷力は上げられない。「準備は?」 キルリが剣を握り直し、横目で俺を見ながら尋ねてくる。「何時でも」 首を軽く回し、肩の力を抜く。「じゃあ……行くよ!」 キルリが一番近くにいるレガンビーへと駆け出す。俺も後に続く。 レガンビーが飛んで一旦腹部を後方へと引き、キルリへと針を突き出すように前方へと出す。キルリは半身をずらしてぎりぎりで避け、剣で針を切り落とす。キルリが針を切ったのは、唯一の攻撃箇所だと思い、後続の攻撃をする際に脅威を無くす為だ。 時間差で俺がレガンビーの前へと躍り出て、鉄の剣を振り下ろす。縦に切り付けるが、ひび割れ一つしない。俺が切り終えると即座にキルリが足が三対生えている胸部へと目掛けて剣を薙ぐ。これでもひび割れは起きず、倒れない。キルリの攻撃の後にすかさず俺は逆袈裟をお見舞いする。 三撃目でひびが漸く入る。キルリが最後にひびの中心へと切っ先を向けて突く。剣は吸い込まれるようにレガンビーの体へと突き立てられ、そのまま串刺しにする。 羽をばたつかせ、足をわしゃわしゃと動かすが、それも直ぐに動かなくなり、光となって空中に溶けた。 レガンビー一匹は四撃。いや、キルリが針を切り落としたのを加算すれば五撃か。そのくらいで倒せる。こちらに被害はない。最初の針攻撃をどうにかさえすれば、結構速くレガンビーは殲滅が出来そうだ。素早さもドギーノーデムに毛が生えた程度だし、飛ぶ高度も今の所は高くはないので普通に剣を当てられる。 それを鑑みるに、レガンビーは一人で一匹を倒していく方が効率的だと導き出す。 キルリにアイコンタクトを送る。キルリとは二週間前まで一緒になってレガンとノーデムを倒して回り、俺が門番見習いとして色々やっていた時には、時々組んで模擬試合をしていたりもしたので、この程度の意思の疎通は言葉を介さなくても平気だ。 俺とキルリは左右に分かれてレガンビーを倒しに掛かる。 レガンビーが針を突き出してくる前に鉄の剣で切り落とし、剣を突く。切っ先は蜂の顔面を捉えて体勢を崩させる。その隙に背面で羽ばたかせている羽に向けて剣を引き戻して振り抜く。羽は胴体よりも硬度が低いようで、たった一振りで砕け散った。 羽を失い、空中での均衡を保てなくなったレガンビーは為す術も無く地面へと落下し、体の左側を下にする。俺は落ちた蜂を滅多切りにする。抵抗出来なくなった相手にする事ではないだろうが、脅威を早く無くしたいが為に体がそうさせた。 身動きしなくなり、光の粒子となって消えるのを傍目に、二匹目へと攻撃を加える。二匹目は先程の奴を滅多切りにしている間に近くに寄ってきており、危うく針の一撃を食らう所だったが、寸での所で回避して羽を切り落とす。 こいつ等は羽を切り落としてからの方が安全に倒せるだろう。そこから針を砕けば更に安全度は上がる。地面を這って歩くような事もするんだろうが、そんな真似をさせる前にさっさと止めを刺す。 二匹目のレガンビーも針を切り取ってから滅多切りの刑に処し、三匹目と四匹目が同時に襲い掛かってきた。こいつ等も同様の手順で仕留めようとまず羽に視線を向ける。「いった……」 と、その時右腕に痛みが走った。
『生命力:589/600』
 右腕に視線を向けると、前腕部に切り傷が出来ていた。何があった? 目の前にいる二匹の攻撃ではない事は確かだ。どうして切り傷が出来た? 鎌鼬でも発生した? いや、それにしては傷口が綺麗じゃない。鎌鼬ならすっぱりと綺麗に切れるらしいし、少し抉られたような切り口はそれではないと俺に知らせてくる。「ソウマ、上っ!」 俺と同様に二匹のレガンビーを相手取るキルリが叫ぶ。俺は反射的に視線を上へと向け彷徨わせる。 すると。「うわっ!」 視界の端を何かが飛来し、俺の方へと向かってきた。このまま動かない場合は胸へと吸い込まれるであろう軌道だったので慌てて後退する。「……針?」 後ろに下がる際に垣間見えた飛来する物体は腕程の径のある円錐形の白い針だった。針が飛来してきた方向を見ると、レガンクインビーが羽を羽ばたかせてこちらを見ていた。どうやら、女王蜂は針を飛ばして攻撃してくるようだ。 しかも、これが通常攻撃の一つらしい。もし特殊技ならばウィンドウが現れて表示される。リザーダーノーデムの時がそうだったので間違いない。 と言う事は、俺とキルリは上からの攻撃にも注意しながらも働き蜂を殲滅しなければならなくなった。幸いにも俺はもう二体倒し、キルリも同数倒しているので半分にまで数が減っているのが――。「あぐっ」 左肩に鈍い痛みが走る。何かに鷲掴まれたような痛みの後に、細長い異物が骨を貫通し、背面から刺されたそれは鎖骨の下から前面へと出る。白い突起だ。それが俺の血と肉を纏わり付かせている。
『生命力:512/600』
 肩の方へと振り返れば、一匹のレガンビーが俺の左肩にしがみ付き、針を俺に突き刺していた。畜生、上に注意を向けてたから相手してた奴の事を視界から外してしまっていた。これがそのつけか。ついでに言えば、『ウィンドヴェール』の効果も消えてしまった。俺は右手に持っている剣を左肩に佇んでいるレガンビーに力一杯突きを入れる。 が、どういう訳かあまり力が入らず、剣はふらつきレガンビーに当たりはするが退かせる程ではなかった。力が入らないだけじゃない。目の前がほんの僅かだが霞み始め、体ががくがくと震えてくる。真冬の外にいるかのように寒い。いや、体が熱い? 頭が風邪を引いた時のようにぼぉっとする。寒いような暑いようなどっちつかずの状態。一体どうしたんだ?
『生命力:498/600 状態異常:毒     』
 ウィンドウが毒を食らっていると俺に知らせてくる。 毒。そうか、この状態は毒を食らったが故なのか。レガンビーの針には毒があるようだ。そりゃそうだよな。なんせ蜂だもん。針に毒があるかもしれないってどうして思わなかったんだろう? 普通は警戒するよな? この世界に来てから如何にも毒の状態異常攻撃をしてくる奴がいると知らしめている毒消し草を拾っていたのにな。 ……言い訳がましいけど、俺が警戒しなかったのは今まで相手をしてきたレガンとノーデムは状態異常が付随した攻撃をしてこなかったからだろう。レガンドールにレガンパペット、ドギーノーデムにキャシーノーデム。それにリザーダーノーデムの攻撃を食らっても状態異常にはならなかった。一ヶ月も戦ってそれに慣れきってしまっていたんだろう。
『生命力:459/600 状態異常:毒     』
 と、心の中で愚痴っている暇はないな。毒の状態異常は生命力がどんどんと削られていくようだ。時間進行と共に視界が悪くなっていき、寒さと暑さが増してくる。早く毒消し草を呑まないと……。 俺が背負っている道具袋に手を伸ばそうとすると、左太腿にも左肩と同じような痛みが走る。どうやら相手をしていたもう一体も俺に針を突き刺したようだ。
『生命力:375/600 状態異常:毒     』
 不味い。このまま行くと生命力が半分を切ってしまう。焦りが生じ、一刻も早く毒を消し去ってこいつ等を退かさないと……。「ぐぅ!」 あぁ、またやっちまった。目の前の状態しか見ていないから、レガンクインビーが放った針を背中に受けてしまった。針は貫きこそしなかったが、背中に突き刺さっている。貫かれなかったのは、運がいいのか悪いのか、背負っている道具袋が盾になってくれたからだ。がちゃんと割れる音がしたので、道具袋に入っていた瓶に入った回復薬が針の威力を削いでくれたのだろう。そうでなければ貫通していただろう。回復薬の入っている瓶はちょっとやそっとの衝撃では壊れない程に強固なので、道具袋に乱雑に入れていても大丈夫なんだよな。まさか回復薬に回復以外で助けられるとは思わなかった。
『生命力:243/600 状態異常:毒     』
 割れて液体が服に滲みているであろう状況だが、生命力は回復されない。それはそうだ。回復薬は飲まなければ効力を発揮しない。なので、傷口に回復薬が掛かったとしても回復はされない。くそ、何か勿体ない。 いや、勿体ないじゃない。今更ながらに道具袋が盾になったと言う事は、割れた瓶の破片が同じ袋に入っていた薬草や毒消し草へと飛散した事を意味していないか? もしそうなると、そのまま直接草を食べるのは危険が伴う。最悪、食べて効力を発揮する前に胃を傷つけられて吐き出すと言う洒落にならない事態にもなりかねない。 つまり、どういう事かと言うと、俺の手持ちだけでは毒を消せないと言う事だ。『ヒール』では例え重ね掛けをしたとしても状態異常までは回復させられる保証は何処にも無い。仮に重ね掛けを試したとしても、五回しか出来ず、更にはそれで精神力が尽きて今度は虚脱の状態異常も付加されてしまう。それでは本末転倒だ。虚脱は体が言う事を訊かない程に力が入らない。例え毒を消せたとしても直ぐ様レガンクインビーとレガンビーの針攻撃を食らって毒を振り返すのが関の山だ。 直立では立ってられなくなり、膝を地面につける。呼吸が荒くなり、針が突き刺されて傷付いた肺から血液がポンプのように押し上げられて口から零れる。人体ってこんな構造をしているのか? それとも異世界ではこれが正しいのか? あぁ、そんな事に疑問を覚えている場合じゃない。 兎にも角にも、まずは俺に針を刺しているレガンビー二匹をどうにかしよう。『ライ、トス……フィア』 俺は光属性の魔法を発動させる。魔法名を言い終えると、俺の周りに光の球体が出現して包み込んでくる。
『生命力:204/600 精神力:10/60 状態異常:毒     』
 消費する精神力が馬鹿にならないが、効果は強力だ。『ライトスフィア』は俺の周りに展開され、俺以外が触れるとダメージを与える。当然、俺の左肩と左太腿に引っ付いているレガンビーも例外ではない。ついでに言えば、背中に刺さっている針もだ。 そいつ等は『ライトスフィア』が発動してから十秒後に光となって消えた。流石にスーネルの『ライトスフィア』のような高威力は持ち合わせていないけど、持続ダメージで倒す事が出来た。背中の針は発動と同時に消えた。 さて、これで鬱陶しい蜂と針は消えたが、このままでは俺は助からない。毒消し草を呑もうにも、前述した通りの危険がある。それに『ヒール』の重ね掛けも出来ない精神力になってしまっている。精神草を呑もうにも、毒消し草と同じ状態になってしまっているだろう。 少なくとも、俺一人ではこの状況は打破出来ない。もう一度重ねて言うと、俺一人では打破出来ない。 そう、俺一人なら。 二十秒が経過して、俺を包む『ライトスフィア』が無くなると、口に草を入れられ、液体を流し込まれる。味は……薬草と同じでない。やっぱりそれが怖い。草っぽい何かでも食べてるんじゃないかと毎回不安になる。 草を緩慢な口の動きで咀嚼し、液体と共に呑み込む。すると視界が元に戻り、寒さも暑さもなくなり、頭もすっきりした。更に、体に開いた孔も膜が張って塞がった。
『生命力:476/600』
 ウィンドウに毒の状態異常が表示されない。口に入れられた毒消し草によって無事に解毒されたようだ。生命力も回復薬によって300回復した。 まぁ、要するに、だ。一人では死んでいたがこの場には俺以外にキルリもいる。レガンビーを倒し尽くしたであろうキルリが持っていた毒消し草によって俺は毒から回復した次第だ。取り敢えず、肺と口に溜まった血を吐いて楽になっておこう。 本当、ここに吸い込まれたのが俺一人じゃなくてよかったよ。「あだっ」 安心している所に頭頂部を叩かれて衝撃を受ける。生命力が減らない程度の衝撃だが、何分叩いてきた相手が相手だけに直視したくないなぁ。「…………ソウマ」 地の底から這いずり出てきた軍団が発しそうな程におどろおどろしい声音が耳に響く。時折剣を振るう音が聞こえるのはレガンクインビーが放っている針を打ち落としてるからなんだろうと思いたい。「ソウマ」「はい」 二回目は有無を言わさずの迫力があったので、ついとキルリの方へと顔を向ける。「……もっと集中しないと駄目」 キルリは怒ってはいなかった。キルリは瞳を震わせ、不安に駆られているかのように顔を歪めていた。「死んじゃうんじゃないかって、心配したんだから……」「……悪かったよ」 そうだった。キルリは異空間で両親が殺される所を目の当たりにしたんだった。だから、特にこの空間で俺が死にそうになった事に対してその光景がフラッシュバックされてしまったのだろ。だから不安そうな顔をしてるんだ。 やっちゃったな。これは俺の不注意で陥ったんだから、攻められると思っていたのに、逆に心配をさせてしまった。「ソウマ、もう一個回復薬呑んで」「あぁ、ありがとう」 キルリから回復薬を手渡されて一気に飲み干す。幕が張られた部分の肉が盛り上がって、完全に元の状態へと戻った。こう、ここまで一気に治癒がされるとファンタジーな世界なんだなと思ってしまう。
『生命力:600/600』
「因みにさ、キルリの持ってる在庫訊いていい? 俺のはもう使い物にならなそうだから」 確認をしてみると、道具袋の中はもう悲惨な状態で、どれもこれも使用出来ない状態だった。俺自身の回復手段はもうない。「回復薬が二つに、毒消し草が二つ。それに精神薬が三つ」 キルリがそう言いながら精神薬の入った瓶を俺に差し出してくる。「これも飲んで。『ライトスフィア』を使ってたから、もうそろそろしんどくなってきたんじゃない?」「……助かる」 精神薬を呑んで、精神力も回復させる。これで暫くは虚脱の異常状態になる心配はないかな。
『精神力:50/60』
「さて、本当にありがとうなキルリ。御蔭で助かった」 改めて、俺はキルリに礼を言う。「その言葉は、全部終わってから受け取るよ」 キルリは首を横に振り、顔を引き締めて飛来してくる針を打ち落とす。「小さい蜂はもう全滅したから、あとはあの大きな蜂だけだよ」 羽を震わせ、上空で静止しているレガンクインビーへと視線を向ける。奴は降りてくる様子が見られない。ゲームだと配下が倒し尽くされると降りてくるらしいのだが、こいつは降りてこない。これじゃ真面に攻撃が当てられないな。「あのくらい高いと、私じゃ攻撃届かない」「確かにな。『スラッシュアッパー』でもあそこまでは届かない」 キルリは遠距離攻撃を持っていない。魔法は『ヒール』しか覚えていないし、特殊技の中で遠距離攻撃の出来る『刃波』を習得していない。上空にいるので『スラッシュアッパー』が有効そうに見えるが、レガンクインビーは『スラッシュアッパー』の射程範囲外にいる。もし放ったとしても、空振りするのが目に見えている。なら、俺がどうにかするしかないな。「ファイアショット!」 俺目掛けて放たれた針をステップを踏んで避け、女王蜂目掛けて火球を放つ。火球は真っ直ぐとレガンクインビーが佇む空中へと向かうが、一歩手前でレガンクインビーが横にずれ、回避をする。
『精神力:45/60』
「避けやがった」「そりゃ、黙ってる訳じゃないからね」 『ファイアショット』は結構速いから、距離が離れていても当たるだろうと踏んでいた。が、まさか避けられるとは。レガンクインビーが回避する所を見ると、『ファイアショット』よりも速い事が分かった。このまま『ファイアショット』を続けて放っても避けらるのが目に見えてる。 なら、魔法じゃなくて特殊技を使うか。 俺は剣を横に構える。それと同時にレガンクインビーが針を射出してきた。「刃波!」 俺はレガンクインビーが重なる軌道で剣を振り抜く。振り抜かれた剣から鉄色の刃が生じ、女王蜂が放った針を粉砕しながら迫っていく。
『精神力:43/60』
 遠距離系の特殊技『刃波』。消費する精神力は2で、攻撃力は通常攻撃よりも劣る。が、『ファイアショット』の三倍の速度で放たれるので動きの速い相手だと『ファイアショット』よりも被弾させる確率が上がってダメージ効率はよくなる――と俺は踏んでいる。 実際に、『ファイアショット』を避けたレガンクインビーは『刃波』を避けきれずにその身で鉄色の刃を受けた。少しよろめいたが、高度を下げるに至らなかった。 通常攻撃よりも低い威力なので仕方がない。だから、数で威力を底上げし、圧倒する事にする。「刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波刃波!」 計二十一回『刃波』を絶え間なく放つ。一薙ぎ毎に生じ、空中を撫でる刃がよろめくレガンクインビーへと当たっていく。
『精神力:1/60』
 虚脱の状態異常になるぎりぎりまで放った。数打ちゃ当たる戦法も含んでいたが、まさか全部当たるとは思っても見なかった。しかも、『刃波』の四、五撃はレガンクインビーの羽に当たり、損傷させた。 羽に傷を負い、飛翔する事が困難になったらしく、段々と高度を下げていく。「ソウマ」 キルリから精神薬を渡されたので一気に煽る。精神力が1だと虚脱にはならないけど、魔法も特殊技も使えなくなるから不便だ。
『精神力:41/60』
「ソウマ、回復薬と毒消し草渡しておくね」 更にキルリから回復薬と毒消し草を一つずつ渡される。「一応言っておくけど、解毒出来るのは二回までだから」「あぁ、分かってる」 そう、今使えるアイテムは回復薬二つに毒消し草二つ、精神薬が一つだ。キルリは、アイテムを等分してくれた。この場で貴重な回復アイテムを惜しげもなく俺に使ってくれた。それに対する礼は、行動で示していく事にする。 地面すれすれまで降りてきたレガンクインビーは、俺とキルリを一瞥するとそのまま羽をばたつかせて突進してくる。その際に針を二連射してくる。 俺とキルリは左右に分かれて針を躱し、横合いから攻撃を加える。「うっ」「硬っ」 振るった剣が跳ね返される。レガンビーと違い、レガンクインビーの外殻はまるで巨大な岩をバッドで叩き付けたような感触が握っている柄から伝わってくる。レガンクインビーは左右同時からだったので攻撃されても今度はよろめく事はせず、その場で大き目に円を描くように周り、俺とキルリを吹き飛ばす。「くっ!」「ぐっ!」 左肩に鈍痛が響く。治ったばかりなのに、またここに攻撃を食らってしまった。
『生命力:486/600』
 114のダメージ。結構大きいな。このまま同じように攻撃しても跳ね飛ばされるだけだ。やり方は同じでも、少しは工夫しないといけない。工夫と言っても、通常攻撃から特殊技に変更するだけだけど。 レガンクインビーが吹き飛ばしたキルリへと身体を方向転換させ、針を飛ばしながら突進していく。尻餅をついていたキルリは横に跳んでそれを回避し、回避際に剣で攻撃をしてみるも、やはり跳ね返されてしまった。 Uターンをして、今度は俺の方へと向かってくるレガンクインビー。針は二連射で、俺のこめかみと胸を狙った軌道であった。俺はそれが到達する前に避けると、突進してきたレガンクインビーは方向を転換して俺に直撃するコースに軌道を修正してきた。さっきまでは修正してなかったのに、学習してるのか?「スラッシュ!」 俺は避けきれないと判断して『スラッシュ』を放つ。『ウィンドヴェール』を発動させて敏捷力を上げて避けると言う選択肢も存在していたが、精神力の回復がもう出来ない状態で『ウィンドヴェール』を発動してしまうと、『ファイアショット』よりも威力のある攻撃の要となる『スラッシュ』と『スラッシュアッパー』を繰り出せる回数が一回分少なくなってしまう。 なので、俺は避けずに攻撃する事を選んだ。 鉄の剣がレガンクインビーに当たるのと、レガンクインビーが俺に当たるのはほぼ同時であり、レガンクインビーは先程よりも大きくよろめき、俺はくの字に曲がって吹き飛ばされる。「がっ!」 肺の空気が一気に押し出され、酸素を求めて体が勝手に呼吸をする。よかった。リザーダーノーデムの『テールスイング』を食らった時と同じように胸骨が折れるかもしれないとひやひやしたけど、杞憂に終わってくれたようだ。
『生命力:324/600 精神力:31/60  』
 だが、ダメージは地味にあるな。二撃食らっただけで生命力の約半分を失ってしまった。これは肉を切らせて骨を断つような戦法は危ないかもしれない。突進が追尾してくるようになったから、余計に気を配らないと。「スラッシュスラッシュ!」 大きくよろめいて隙が出来た女王蜂に、キルリも『スラッシュ』を二撃くらわせる。レガンクインビーはキルリの剣閃を受けると体をびくつかせ、バックステップで距離を取ろうとしていたキルリへと下腹部を突き出して針を刺す。「きゃっ!」 キルリは刺された左腕を押さえてふらつき、膝をついてしまう。顔色も何処か青く、かたかた震えだしている。もしかして、毒をくらった!? ヤバい。毒は虚脱よりも体は動くが、それでも行動を阻害されてしまい、格好の獲物になってしまう。更に毎秒ダメージが発生するから放っておくと危ない。 レガンクインビーが身動きの取れなくなったキルリへと更に針を突き出して追撃をしようとする。「こんにゃろっ!」 それを阻止する為に俺は女王蜂の下へと即潜り込み、両手で持った剣で下から切り上げて上空へと打ち出す。くそっ、硬いから一撃を放った腕が痺れる。が、それでもレガンクインビーを上体を無理矢理そらせた形で上空へと追いやり、少しだけだが時間が取れた。 直ぐ様俺はキルリに渡された毒消し草をキルリの口に押し込む。キルリはゆっくりとそれを咀嚼して呑み込み、顔色を元に戻して頭を振る。「御免、ソウマ。助かったよ」「互い様だって」 キルリは手早く道具袋から回復薬と精神薬を取り出して煽る。これで残る回復アイテムは俺に手渡してきた回復薬一つとキルリの持つ毒消し草だけだ。ここからはより慎重に行かないといけない。 けど、慎重になり過ぎて好機を逃すのだけは避けたい。好機はそう何度も訪れるものではないし、逃してしまえば次は何時来るか分からない。 また、長期戦もさけないといけない。回復手段が極僅かにしか残されていないので、長期戦になればなる程こちらが不利になる。せめてレガンクインビーの生命力が視覚化出来ればどのくらいのペースで戦えばいいのか分かるのだが、見えない以上、なるべく早めには削って行かないといけない。 なので、俺は短期戦を目指すが、危ない橋は渡らないように段々と高度を落としてこちらにやってくる奴の行動を阻害する事にする。「キルリ」「何?」「奴が降りてきたら、俺がまず攻撃して引き寄せるから、その間に羽を切り裂いてくれ。あいつの移動手段はどう見ても羽を主軸にしてるから、羽さえなければただ這いつくばって進むだけだと思う」「……分かった」 少しだけ反論したいような顔をされたが、了承してくれた。実際、素の状態ではキルリの方が速いので引き付け役はキルリがした方がいいのだろう。それを彼女自身も理解しているから物申したかったのだろうが、素早さと同じで、彼女の方が俺よりも攻撃力が上だ。仮に俺が羽を切り落とす役をしたとしても、攻撃力が足らずに切り落とせなかったら作戦は失敗し、互いに100を超えるダメージを受けてしまう。下手をすれば、毒もくらってしまうだろう。なので、ここは俺が引き付け役をしなければいけない。「じゃあ、行くぞ!」 レガンクインビーが先程と同じくらいの高度まで降りてくると、針を二連射――それぞれ俺とキルリに向けて放つ。キルリはそれを剣で払い落し、俺はステップで横にずれてそのままレガンクインビーへと突撃する。 レガンクインビーは動いた俺を標的と定め、今度は突撃なぞはせずに針をどんどん放ってくる。全部を避けきる事は叶わないので、何発かは鉄の剣で払って軌道を変えたり破壊をするが、それでも三発肉が抉れる程度に掠ってしまう。
『生命力:198/600』
 幸いなのは毒を食らわなかった事だろう。もし毒を食らっていれば避けきれずに連射を面白いように喰らってしまっていた事だろう。回復は即座にしたいが、ちょっと暇を見付けられない。いや、回復する暇を見付けるならば、その分近付いてキルリの攻撃を通しやすくした方が得策だ。なので、回復は後回しにする。 俺と女王蜂の距離が一メートルを切ると、ただの連射から軽く弾幕を張るように針を撃ち放つ。おいおい……さっきと行動が違うぞ? どうしてこんなに針を連射するようになってるんだよ? それに、回避がさっきよりもしにくい弾幕攻撃。しかも一メートルも無い距離での攻撃だ。とは言っても、目の前に十本程度が避ける隙間を与えないような軌道を描いてこちらに向かっているので、本来の弾幕よりも数が少ないとは思う。「サンダーフォール!」 けど、避ける必要はない。精神力を消費してしまうが、完全に避けられないと分かる場合は『サンダーフォール』で纏めて防御するに限る。
『精神力:26/60』
 雷の壁が目の前に降り下りて針の弾幕を全て防ぐ。『サンダーフォール』では『カウンターガード』が発動しないので攻撃を跳ね返してダメージを与える事はないが、針は電撃によって砕かれて無力化される。「ファイアショット!」 俺は『サンダーフォール』が消える前に先程避けられた『ファイアショット』をレガンビーに向けて放つ。先程避けられたのは速さの問題もあったが、距離の問題と軌道を見られていたのも起因するだろう。その点、今は至近距離且つ『サンダーフォール』がある意味で相手に行動を予知させないような視線を防ぐ効果もある。なので、今回は当たると確信している。
『精神力:21/60』
 放った炎弾は直ぐ様着弾し、煙を上げさせる。雷の壁が消えると、目の前には顔を焦がしたレガンクインビーが地面に落ちている。『ファイアショット』の被弾で衝撃を受けて羽をばたつかせるのをやめたらしい。が、直ぐ様体勢を整えようと動きを止めていた羽をはためかせる。 が、それは永久に敵わない。「スラッシュ!」 背後に回り込んでいたキルリが一閃する。『スラッシュ』の軌道は羽を掠めとり、根元からではないがその面積を半分程度まで消失させた。ここまで損傷すれば飛ぶ事も出来なくなり、跳び上がりかけた体は再び地面へと落ち着く。 俺はキルリが『スラッシュ』を発動したのを見て回復薬を呑んでおく。
『生命力:498/600』
 さて、ここからは一気に行かせて貰おう。這う事しか出来なくなったレガンクインビーは針を出したまま体を時計回りに回転させて抵抗をしてくる。出は速いが、攻撃の範囲が分かっているので俺とキルリは喰らわない。もう、無駄としか言いようがない抵抗だった。「スラッシュスラッシュ!」「スラッシュスラッシュスラッシュスラッシュ!」 俺が二撃、キルリが四撃、回転攻撃をしているレガンクインビーへと『スラッシュ』を出し惜しみも無く繰り出す。計六撃もの斬撃をその身に受けたレガンクインビーの全身には亀裂が生じたが、まだ光の粒子にはなっていない。
『精神力:1/60』
 だが、ここまで来ればもう後は通常攻撃だけでも大丈夫だ。ひび割れたのならば女王蜂の防御力は格段に低下している筈だ。その状態ならば、わざわざ特殊技を使う必要も無い。と言うか、もう精神力がほぼ底を尽いているので特殊技が使えないだけなんだけど。「はぁぁああああああああっ!」「やぁぁああああああああっ!」 俺とキルリは気合の叫びを上げながらひび割れた陶磁の蜂へと剣を振り下ろし、薙ぎ、切り上げる。一太刀毎にレガンクインビーの外殻は剥がれていき、中の空洞を顕わにしていく。 そして、外殻の四割が剥がれ落ちた時、レガンクインビーは光の粒子となって空へと消えた。「はぁ、はぁ、はぁ……」「お、終わ、った……?」 下手な行動をされまいと連続で剣を振るっていたので息が上がっているが、どうやらこれで一安心出来る。通常攻撃の雨霰をしている時は相手から攻撃を食らわなかったから別に回復薬を飲まなくてもよかったのかも。いや、それは結果論だ。何が起こるか分からない状況だと回復出来るうちに回復しておかないと命取りになる。俺はこの世界でそれを学んだ。「お、お疲れ、様。そして、今度こそ言うけど、ありがとう」 手の甲で額に浮かんでいる汗を拭い、解毒してくれた事に対して礼を述べる。「い、いえいえ、こちら、こそ、ありがとう」 キルリは剣を鞘に戻して頭を下げながら俺に礼を述べてくる。この礼は解毒に対してだろう。 暫し、俺とキルリは深く息を吸っては吐くを繰り返して呼吸を落ち着かせる。「……亀裂現れないな」 ボスを倒したと言うのに元の場所へと戻る為の亀裂が出現しない。「……多分、出現しないんじゃないかな」 キルリは首を傾けながらそんな事を言ってくる。「何で?」「だって、ここは異空間って訳じゃないからだよ。ここはエルソの中央広場。ただこのドームで隔離されてるだけだから、亀裂は現れない……と思う」「あ、成程」 それもそうだな。亀裂は異空間から元の場所へと戻る時に発生するんだ。異空間でない場所でレガンを倒しても亀裂なんて現れる訳がない。実際、エルソの町でレガンとノーデム共を倒していたけど、亀裂なんて一個も現れなかった。 ……ん? 待てよ?「と言う事は?」「スーネルちゃんがこの陶磁製のドームを壊してくれない限り、ここから出られないって事なんじゃないかな」 キルリがこの中央広場をぐるっと囲っているドームを指差す。 ま、マジですか……。まだこの閉鎖された空間にいなきゃならないのか。「兎に角、気長に待と?」「そうだな」 まぁ、疲れたし、丁度休憩くらいはしたいと思っていた所だ。それに、アクティブフィールドにレガンとノーデムが現れる場合はバトルフィールドへと繋がる亀裂が現れない筈だ。説明書にはそう書かれていたし、この世界でもそうであって欲しいと切に願う。 はぁ、緊張の糸が途切れるとどっと疲れが表層に出てくるな。手に持っている鉄の剣の重さが二倍になった感じがする。重い鉄の剣を肩に担いで、取り敢えず噴水の端にでも腰かけようと歩き出す。キルリも同様の考えを出したのか、俺の後に続いて、即座に横に並ぶ。あぁ、足がふらつくなぁ。 よろめくと、キルリが俺の腕を掴んで支えてくれる。自分も疲弊しているだろうに、俺を気遣ってくれるのは嬉しいのだが、如何せん恥ずかしい。この子は異性に対して距離が近過ぎやしないだろうか? このままだと悪い男にほいほい捕まってしまうのではないだろうか? と言う懸念が頭を過ぎる。
『ニードルスプレッド』
 その瞬間に、ウィンドウが現れる。「っ!?」 これは、特殊技!? レガンクインビーはもう倒したから、もう大丈夫な筈なのに! ……いや、これは懸念すべきだった事だ。ボスであるレガンクインビーを倒したのなら、レザルト画面がウィンドウで現れなければいけない。なのに、出なかった。それはまだレガンが潜んでいる事を意味していたんだ……! 俺は即座に振り返ると、そこには俺の腕の二倍はあるであろう針がこちらに向かって斜め上から飛んで来ている。しかも、見付けた時にはもう残り二メートルを切っており、避ける時間は無い。――自分へと向かってくる針に気付いていないキルリには。「キルリっ!」「えっ?」 俺は腕を掴んでいるキルリを離し、彼女の前へと即座に体を出して肩に担いだ剣で針を切り落とす。 すると。
 バシュシュシュシュシュシュッ!
 剣の切っ先が針に触れると、針が二十を超える小さな針へと分裂し、扇状に広がって俺へと襲い掛かっってくる。「がぁぁあああああああっ!」 針の散弾を避ける事も防ぐ事も出来なかった俺は真面に受けてしまう幸い顔には受けなかったが胴体、腕、足に針が深々と刺さる。そして目が霞み、体が寒さと熱さで震えだしてくる。
『生命力:132/600 状態異常:毒     』
 一気に300以上もダメージを食らい、毒を受けてしまった。やっべ、スプレッドって英語で広がるって意味だったよな確か。こう拡散的に攻撃が出るって予想が出来ただろうに。緊張の糸が途切れた結果がこれかよ……。「ソウマっ!?」 キルリが倒れそうになる俺を支えてくれる。有り難い。有り難いが、ここは俺を支えるよりも剣を抜いて臨戦態勢を取って欲しい。 俺は針が飛んできた方向へと目を向けると、そこにはレガンクインビーよりも一回り大きく、冠のような突起が更に仰々しくなっているレガンがいた。
『レガンキングビー』
 頭上にはそう書かれている。知らない。俺は知らない。こんな奴知らない。 そんな……レガンクインビーがボスなんじゃないのかよ? こっちが本当のボス? ゲームの情報誌に載っていなかったじゃないか。 ……もしかして、いやもしかしなくても。ここがゲーム『E.C.S』の世界じゃないから、ボスの設定も異なってる? 今回のクエスト名がゲームと同じで、リザーダーノーデムと言う中ボスも同じだった。それに加えて本来のボスのレガンクインビーも出て来たので、ゲームと同じだと錯覚してしまっていた? ……違う。異なってない。 思い出した。レガンキングビーも確かにボスだ。『E.C.S』のハードモードでのみ、『エルソの災害』でレガンクインビーを倒すと現れるボス。 俺は『E.C.S』の初期設定でハードモードを選択した。俺がこの異世界に来た際のステータスと容姿はゲームの初期設定に遵守していた。ステータスと容姿だけでなく、難易度も設定通りになっていたとしたら? いや、なっていたらではない。なっていたんだ。だから、レガンキングビーが出現した。ただ、それだけの事。
『ニードルスプレッド』
 またもや特殊技の名前が現れ、それと同時にレガンキングビーから針が放たれる。この針は何かしらの衝撃を受けたら小さく分裂してしまう。なので、剣での防御は適さない。避けないといけない。なのだが、キルリは冷静さを欠いており、俺に直ぐ様毒消し草を呑ませようと道具袋を漁っている為針が放たれた事に気付いていない。このままだと、太い針が俺共々キルリをも貫通してしまうかもしれない。 そう思ってからの俺の行動は早かった。「えっ?」 俺は支えてくれているキルリを力の限り押してその場から退避させた。毒を受けている状態で、よくもまぁ女子一人を押せる力が出たものだと自分を褒めたい。「がっ…………」 太い針は俺の胸を貫き、地面へと突き刺さって小さく分裂したようで、小さな針達は跳弾して俺の背中へと突き刺さっていく。やば……これ、死んだかもしれない。変に目の霞が晴れ、痛みが引いている。が、視界が段々と暗くなっていく。「ソウマぁぁああああああああっ……!」 消えていく視界で、俺が見たものは涙を浮かべ、俺の名前を叫びながら手を伸ばしているキルリが、新たに射出された針に皮の胸当て毎、胸を貫かれると言う、見たくも無い光景だった。 視界が完全にブラックアウトし、俺かキルリか、はたまた両方が倒れる音を耳にしたのが最後で、俺の意識は途切れる。

『生命力:0/600 精神力:1/60 』




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