喚んで、育てて、冒険しよう。
before 06
「そう、あれは俺がSTOを始めたばかりの頃だった。あの時、俺は独りでSTOを始めてな。知人などおらず暫くはソロで楽しんでみるか、と装備を適当に買い、モンスターを倒しにクルル平原へと向かったものだ。ホッピーを倒している最中に召喚獣が現れて召喚具を手に入れ、次の戦闘で早速召喚獣を喚んでみよう、そう思ってクルルの森近くの平原を歩いている際に出逢ったのだ。いや、衝突したという言葉の方が正しいか。突如クルルの森から出て来て俺の横っ腹に突っ込んできたのだ。予想外の事だったので俺は受け身も取れずにそのまま横に倒れたさ、そして俺にぶつかってきたのはそう、団長だったのだ。団長の姿を見た瞬間、我を忘れそうになったさ。天使がいる、と錯覚したくらいさ。胸の高鳴りを抑え、平常心を保つのに最初は苦労したものだが、今では努力の甲斐あって苦も無く平常を装う事が可能となった。団長は丁度俺の上に乗るように転んだ御蔭で痛い思いをせずに済んだのだ。偶然とは言え、団長を護る事が出来たのはよかったと言えるな。で、だ。団長は『あ、す、すみません!』と急いで俺から離れると頭を下げて謝ったのだ。俺は当然気にする事はないと紳士的な対応を取ったさ。それに悪意あって跳び出した訳ではない事は一目瞭然だったのでな。そして保護者もといローズとも出逢った。どうやらローズは俺よりも早くに団長と逢い、パーティーを組んでいたようでな。団長を追い駆けて来たであろう彼女は森から走って出て来て、団長と俺を交互に見て状況を理解したみたいでな、『この子が迷惑を掛けたみたいですね、すみません』彼女も謝ってきた。そんな事はない、と俺は即座に返したさ。それから少し話し込んでな、その流れで俺もパーティーに入れて貰えることになったのだ。嬉しさのあまり感涙を零しそうになったが、大の男が人前で泣くのはみっともないと思い、ぐっと堪えたさ。で、それから俺は団長とローズと一緒にモンスターを倒したり街でクエストを受けたり、更にローズの友人もSTOに来たのでパーティーを組み、そしてSTOで偶然知り合ったあいつ等と六人でパーティーを結成した。因みに最初からと機甲鎧魔法騎士団機甲鎧魔法騎士団言うパーティー名にはしていなかったのだ。パーティー名は決めずに六人でプレイしている時、偶然とある職人が開発した鎧が変形して武器になる装備を目にしてな、それを見た団長が目をキラキラと輝かせ、ひまわりの如く笑顔で『格好いいっ!』と興味津々で駆け寄ってな。開発者の職人に許可を貰って実際に装備して変形を繰り返していたよ。それを見てからの俺達の行動は早かったな。団長には内緒で職人に団長専用の変形する装備を作って貰えるように交渉した。必要な素材は無論、俺達が団長に気付かれないよう秘密裏に血眼になって集め、資金もドロップ品等を振り払って溜めたさ。そして素材も資金も必要分集め終え、晴れて団長専用の変形装備を作って貰ったのだ。俺達も変形装備は使ってみたら面白そうだとも思ったが、団長専用装備を優先させてな、その時はまだ俺達の分は頼んですらいなかった。で、だ。俺達は団長へと変形装備をプレゼントし、団長は喜んだが、直ぐ様俺達にこう尋ねてきたのだ。『皆の分は?』とな。団長は自分だけではなく俺達の分も作っているのだと思っていたらしくてな。作っていないと言ったら『そう……』と悲しそうな顔で俯いてしまってな。即行で職人の所へと出向き、俺達全員分の装備を作って貰えるように頼み込んださ。団長の悲しむ顔なんて見たくもなかったからな。そこからは新装備を身に纏った団長と共に怒涛の勢いでモンスターを狩り、街でクエストを達成しまくり、全員分の変形装備を作って貰った次第だ。全員分の変形装備が揃い、団長が『折角だから皆の雰囲気に合ったパーティー名を決めない?』と提案してな、色々と議論を交わしてに決定したのだ。これが団長の出逢い、そして機甲鎧魔法騎士団機甲鎧魔法騎士団の誕生秘話なのだよオウカ君」
「……そうか」
「まぁ、今のは色々と掻い摘んで色々と端折りもしているがな、もう少し詳しく訊きたいかな?」
「……いや、それは次の機会にでもしてくれ」
「そうか。残念だが仕方ないな。それでは……俺達が如何に団長を愛でているか、団長の可憐さに可愛さに天使さ諸々を語ろうではないか」
「あ、いや別に」
「団長はな、本当に目が離せなかったんだ。駆け出しては何もない所で転んだり、自分で仕掛けた罠に掛かってしまったりとな、しかしそれでもめげずに頑張る姿が――」
「……そうか」
「まぁ、今のは色々と掻い摘んで色々と端折りもしているがな、もう少し詳しく訊きたいかな?」
「……いや、それは次の機会にでもしてくれ」
「そうか。残念だが仕方ないな。それでは……俺達が如何に団長を愛でているか、団長の可憐さに可愛さに天使さ諸々を語ろうではないか」
「あ、いや別に」
「団長はな、本当に目が離せなかったんだ。駆け出しては何もない所で転んだり、自分で仕掛けた罠に掛かってしまったりとな、しかしそれでもめげずに頑張る姿が――」
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