喚んで、育てて、冒険しよう。

島地 雷夢

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 オフクス族の茶屋を探す事二分、それらしき店を発見。外装はよく時代劇とか出てきそうな茶屋そのもので、外に設置された背もたれの無い横長の椅子に座って団子と茶を食べているオフクス族やプレイヤーがちらほら。 で、鎧姿でないモミジちゃんとローズが仲良く並んで三色団子を食べ、お茶を啜っている。そんな二人は以前見た格好とは異なり、和装に身を包んでいる。軽く纏めた髪に簪を差し、モミジちゃんは紅葉柄の、ローズは水仙が描かれた着物を着ている。シンセの街とかセイリー族の集落とは違って、オフクス族の山村は和って感じのする場所だから、違和感がない。 にしても、STOでも着物ってあるんだな、と思いながら二人に近付く。「あ、オウカーっ!」 こちらを見付け、皿に盛られた団子を取ろうとしてたモミジちゃんが笑顔で手を振ってくる。ローズは湯呑を置いて立ち上がり、軽く会釈をしてくる。「ひっさしぶりーっ」「久しぶり。元気にしてたか?」「うんっ!」 モミジちゃんは笑顔のまま頷く。「お久しぶりです」「あぁ、久しぶり」 元気がいいモミジちゃんとは対称的にローズは物静かだ。「本日は急な申し出を受けて戴きありがとうございます」「いや、別に構わない。俺も久しぶりにモミジちゃんと遊びたかったからな」「そう言って頂けるなら幸いです」 ローズは軽く微笑み、モミジちゃんへと視線を向ける。俺もそちらを向くと、モミジちゃんがせっせと団子を頬張っている姿があった。多分、早く拠点に行きたいから急いで食べてるんだろうな。「団長、そんなに急いで食べると」「んぐっ⁉」「ほら、喉に詰まってしまいますよ」 胸の辺りを強く叩くモミジちゃんに飲み物を渡し、とんとんと背中を優しく叩き擦るローズ。「あ、ありがとう」「いえ」 危機を脱したモミジちゃんは少し弱い笑みでローズに礼を述べ、ローズは軽く息を吐く。「楽しみなのは分かりますが、また喉に詰まらせてしまうかもしれないので無理のないペースで食べなさい」「……はーい」 ローズの言葉にモミジちゃんは頷き、先程よりも少しゆっくりな速さで残りの団子を食べ始める。 何か、こう見てると二人は家族のように見えるな。親子じゃなくて、姉妹って感じだ。世話の掛かる妹と面倒見のいい姉。二人のやりとりを見てそう思った。 あぁ、だからローズは保護者ってハイドラに言われてるのか。納得だ。「……何か?」「いや、別に」 微笑ましく二人のやりとりを見ていたら、ローズが少し首を傾げて訪ねて来たので、言葉を濁す。「ん?」 モミジちゃんが俺の裾を軽く引っ張ってきた。「どうした?」「オウカも食べる? ここのお団子美味しいんだよー」 皿に盛られた三色団子の一つを俺に向けながら訊いてくる。そう言えば、STOではまだ団子とかの和菓子を食べていないな。おでんは食べたけど。 何か、この頃現実世界でも団子とかの和菓子食べてないから、少し食べたいって衝動に駆られる。「じゃあ、一つ貰っていいか?」「うんっ」 モミジちゃんから手渡された団子を一口。洋菓子とは違った柔らく、そしてすっきりとした甘味が噛むほどに広がり、程々の弾力を持ったもちもちとした心地よい食感が官能的だ。「旨いな」「でしょーっ」 俺の感想にモミジちゃんはにかっと笑い、自分も一口頬張る。ここの場所は覚えたし、今度来た時皆でこの茶屋で団子を食べよう。 急がず急かさず、団子を全部食べ終えて二人を俺達の拠点へと招待する。「ここがあなた達の拠点ですか」 初めて訪れたローズは首を回して洞窟の中を見回す。モミジちゃんは着物姿のままアケビ達のいる方へと駆けて行く。俺とローズもモミジちゃんの後を追ってアケビ達の所へと向かう。「みんなーっ!」 モミジちゃんは転ぶ事無く、アケビ達の下に辿り着く。「モミジちゃん、久しぶり」「ひっさしぶりー!」「着物可愛いね」「ありがとっ」 アケビに元気よく挨拶し、ルーネ達へと顔を向ける。「初めて見る子がいっぱいだーっ」 モミジちゃんは目を輝かせ、名前はーっ? と尋ねてくる。 モミジちゃん達とは初対面の子らの紹介をし、ルーネの場合はリトシーからパルミーに成長した事を説明する。モミジちゃんは元気よく手を挙げて自己紹介をし、ローズは物静かに一礼をする。 で、折角なのでモミジちゃん達の召喚獣も拠点に喚んでもらい、紹介をして貰った。モミジちゃんの召喚獣はユニコーンのコー、カーバンクルのカー、エントのエン、ノームのムー、ジャックフロストのジャー。ユニコーンは純白の毛に額に立派な一本角を生やしている。エントは三メートル程の木に手と足、それに頭が生えた木の巨人で、ノームは帽子を被ったルーネ程の大きさの小柄な老人と言った感じだ。 ローズの召喚獣はサラマンダー、カーバンクル、ドッペルゲンガー、シルフ、コヨーテ、スノーマンだ。サラマンダーは炎の鬣を持った紅い蜥蜴で、大きさは二十センチほど。シルフは手の平サイズの妖精で、見た目はセイリー族に似ているが身体は半透明で向こうが透けて見える。コヨーテは現実世界に存在する奴そのものだが、やけに表情豊かで見てて飽きない。スノーマンはまんま雪だるまで、ローズと同じ高さの二頭身。赤いマフラーを巻いて人参の鼻が印象的だ。因みに、ローズは召喚獣にニックネームをつけていない。「ねぇ、サクラお姉ちゃんいないの?」「サクラちゃんは用事があって、さっき帰っちゃったんだ」「そっかー……」 モミジちゃんはアケビにサクラが帰ってしまった事を訊いて、残念そうに少し俯く。 それぞれの紹介も終わったのでさっそく遊ぶ事になった。着物姿から初めて会った時の服に着替えたモミジちゃんの発案で最初は鬼ごっこ。しかも鬼が増え続けて行くタイプだ。大人数だからより楽しく、そして多くの鬼に追われる恐怖感も演出される。 最初の鬼は本人の意思表明によりツバキとリークの一人と一匹。三十秒待って、俺達が程よくバラバラに逃げてから追い駆け始める。 ツバキは最初の標的をモミジちゃん達に、リークは果敢にもグラゥやウィングのいる方へと。因みに、モールンは調理台の上で眠っているので不参加だ。 鬼から全力で距離を取ったり、敢えて向かって言って紙一重で避けたりとしながら方々に逃げ回るが、段々と捕まり鬼の数も増えて行く。 そんな中、顔の無いドッペルゲンガー二人に追われるのは怖い。ホラー映画みたいで。キマイラやグリフォンに追われれば狩りと見紛うばかりの迫力だ。まぁ、本人達は血肉を求めてってより純粋に鬼ごっこを楽しんでいるんだよな。実際、モミジちゃんのようにうきうきとした雰囲気醸し出してるし。 因みに、スノーマンの移動の仕方は基本ジャンプで、急ぐ時は横に倒れて転がっていた。雪があったら、どんどん大きくなっていくんだろうなぁ、とコヨーテに追われるスノーマンを見て何となく思った。「オウカ、ターッチ!」 俺もモミジちゃんに捕まって鬼の仲間入りとなり、最後に残ったのはアケビだ。 全員で包囲網を作って、追い込み漁のように追い詰めるも間を縫って回避していくアケビには脱帽だ。が、流石に全員が相手では分が悪い事に変わりなく、コウにタッチされてアケビも鬼となる。全員が鬼になった事で鬼ごっこは終了だ。 鬼ごっこの後はだるまさんが転んだや大縄跳び、何故かローズが持っていた巨大トランプを二組も神経衰弱等をやった。因みに、巨大トランプの大きさはモミジちゃんと同じくらいだ。 楽しい時間はあっという間に過ぎる物で、現時刻は五時を少し過ぎた辺りだ。本当はもっと遊びたいモミジちゃんなのだが、そろそろログアウトをしなければならない。親御さんにも五時にはやめるようにと言われているらしく、前回も俺達はモミジちゃんと五時くらいに別れた。 なので、ここでお開きにしようと言う流れになり、今度はサクラも一緒に遊ぼうとモミジちゃんと約束する。「じゃーねーっ!」 モミジちゃんがログアウトし、モミジちゃんの召喚獣達も一斉に消える。「で、ローズはどうする? もう帰るか?」「そうですね……」 特に親にとやかく言われない年代のローズは顎に手を当てて少し考える。「……では、折角ですのでPvPをしませんか? ここにいる四人で」「PvP、か」「はい。あなたがどれ程腕を上げたのか確かめたいと思いまして」 ローズは俺を見た後、アケビの方に目をやる。「そして、個人的にアケビさんの今の実力を見てみようと思いまして」 ローズは戦闘狂の気でもあるのだろうか? 以前俺とPvPした時も似たような動機だったし。 で、最後にツバキを見て一言。「ツバキは……どうでもいいです」「姉ちゃん、流石に俺でも傷つくよ?」「いえ、正直ツバキがどの程度力量を上げたかはおおよそ推測出来るので」「推測出来るんかい」「私とツバキの仲ですよ? 当然じゃないですか」「嬉しいけど、ちょっと怖ぇよ、姉ちゃん……」 そんな姉弟のコントを軽く繰り広げ、「どうでしょうか?」と尋ねてくる。「俺は別に構わない。アケビとツバキは?」「私もいいよ。PvPやるのは初めて」「俺もいいぜ。……ただ、前回のようになるのは簡便な」 ツバキの言う前回とは、多分実質一対二になったあの時の事を言ってるんだろうな。「大丈夫です。今回は二対二のタッグをやろうかと思いますから」「タッグ……なら、大丈夫か」 一対多になる運命は回避されたツバキは胸を撫で下ろし安堵の表情を浮かべる。 で、チーム分けだが裏表により、俺とアケビ、ツバキとローズのペアに別れる。
『ローズからプレイヤー:ツバキと共にPvPを申し込まれました。 ルール ・2vs2(パートナーモンスター、召喚獣の介入禁止)  ローズ&ツバキvsオウカ&アケビ ・アイテム使用禁止 ・制限時間:無限 勝利条件 ・最後まで生命力の残ったプレイヤーの勝利(PvPで生命力が0になった場合、死に戻りせずPvP終了後に全回復します) プレイヤー:ツバキ及びローズとPvPをしますか? はい いいえ                      』
 今回はパートナー達の力を借りず、自分達の力だけでの勝負となった。
『プレイヤー:ローズ及びツバキとPvPを開始します』
 全員が現れたウィンドウの『はい』をタップし開始を告げるウィンドウが表示される。
『Count 3』
「取り敢えず、俺達に出来るのは速攻だ。一度戦った事あるから、俺がローズの相手をする」 俺とアケビはそれぞれの武器を手に持ち、対面するツバキとローズに視線を向ける。
『Count 2』
「分かった。私はツバキ君の相手する」 あちらは正真正銘の姉弟で、互いの事を良く知っているだろうから足の引っ張り合いはしないと思う。それ以前に、何回かそれぞれのパーティーと混合でボスを倒しているらしいから、そんな心配はないか。
『Count 1』
「じゃあ、それで行くぞ」「オーケー」 ツバキは刀を構え、ローズはあの鎧を全身に纏っている。まだ【解放パージ】はされていない。
『Count 0 Start!  』
 合図と共に、俺とアケビは駆け出す。

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