喚んで、育てて、冒険しよう。

島地 雷夢

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 パルミーのステータスを確認すると、リトシーの時よりも精神力、魔力、耐久、魔法耐久が上がっている。その他は成長前と特に変わりないように見える。 そして、成長した事により固有技が一つ増えた。【吸命の種】と言う名前で、種を植え付けた相手の生命力を一定時間吸い取るという一種のドレイン技。時間と吸収率は信頼度によって変化するそうだ。 耐久が高いから、持久戦に有利な固有技だなこれ。嫌がらせにも使えるし、パルミーの生命力回復も同時に行えるからその分死に戻りもしにくくなる。リトシーの時よりも防御を重視した成長を遂げたな。 で、リトシーはレベル40でパルミーに成長か。結構遅めだったな。スビティーの時は15で成長したけど。信頼度が足りてなかったのか? …………いや、実際どうなんだろう? パルミーには嫌われてなかったし、単純にレベルが足りなかっただけだろう。そう思う事にしよう。 そう言えば、ツバキのリークもまだ成長してなかったよな? パルミーよりレベルが上の筈なんだが……でもやっぱりツバキとリークの仲は悪いようには見えないし……やっぱりレベルじゃなくて信頼度か? …………深く考えるのは止めよう。何か胸に突き刺さって来るものがある。「れにー」「びー」「みー」「れにーっ」「びーっ」「みーっ」 で、スビティーとフレニアは成長したパルミーを祝福するかのようにパルミーの周りを飛んでフレニアが吹いた小さな火の粉をスビティーが風魔法で花火のように飛び散らせている。パルミーもスビティー達と同じように第一成長した事を喜んで俺の腕の中から飛び出してくるくる回ってる。それを受けてかスビティーとフレニアが火の粉で花火を多く作る。「仲いいよな、こいつら」「そうですね」「うん」 何時も一緒にいるからか。はたまた相性がいいのか。今の所、険悪な仲の奴等がいないのがパーティーにとって救いだな。キマイラだっていい子だし。ドッペルゲンガーは……頑張ってパルミー達と打ち解けて貰うしかないな。意地悪さえしなければパルミー達はきっと歩み寄ってくれるし。ドッペルゲンガーも仲良くしようと努力はしてたからな。俺は応援するぞ、ドッペルゲンガー。キマイラだってパルミー達と仲良く慣れたんだから、お前でも出来る。 っと、パルミーの成長は嬉しいけどあんまりここで止まってる訳にもいかないか。 今日の目的はフォレストワイアームを倒す事。今日こそぶっ倒してやりたいものだ。「さて、そろそろ行くか」「はい」「うん」 俺達は未だに祝っている二匹と祝われている一匹を連れて北の森を進んで行く。 ある程度進むと、巨大な蛇が奥の方に見えたが俺達が何かする前に光となって消えていった。「ん? アングールと誰か戦ってたのか」 巨大な蛇のモンスターであるアングールは北の森で低い確率で遭遇するが、一度も倒していない状態だと北の森の中頃まで進むと絶対に出現して先に進むのを阻止してくるらしい。所謂、中ボスのポジションみたいな感じだ。 俺達は一度倒してるからアングールと遭遇する確率は低い。マップで位置を確認すると大体森の中頃で、恐らく先でアングールと戦ってるのはまだ倒せてないプレイヤーだろう。「「「ヨッシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」」」 で、向こうから幾人かの勝利の雄叫びが木霊してくる。アングールを倒したのがそこまで嬉しい事だったのか。それはよかったよかった。 俺達はアングールを倒したパーティーを避けるように進路を変更して奥へと進み始める。別にパーティーと鉢合わせても俺やアケビは問題ないんだが、サクラがな。 以前に比べればマシになったとは思う。けど、基本的にサクラは人を避ける。苦手意識が未だ深く根付いているからか、俺やアケビの背に隠れたりする事もある。NPC相手でも。今のサクラで大丈夫なのは俺達パーティーとカエデ、カンナギ、リーク。ツバキは未だに避けられてる。 あとは一昨日偶然会ったオフ状態のサモ緑にサモマリン、サモイエローとは初対面では隠れてたけど最後の方はいい感じに仲良くなってたな。基本的に男性よりも女性との方が打ち解けやすいな。同性だからか? まぁ、そんな訳で、俺達はサクラを気遣って街の外でもなるべく他のパーティーと鉢合わせないように注意を払ってる。俺達だけでフォレストワイアームを倒そうとしてるのはそれが理由だ。ツバキ達に頼めば一緒にやってくれそうだけど……一度クリアしたボス戦をもう一度させるのも気が引けるし、それにツバキ達はツバキ達で山の方の攻略を進めたいだろうから頼まないようにしてる。 まぁ、頼まなくてもきちんと対策を取れば倒せそうではあるしな。今日は新たに習得したスキル二つと、成長したパルミーの力で昨日よりもいい具合に戦えるだろうし。「ん?」 森の中を進んでいると、右の方から木や背の高い草を掻き分けてこちらに何かがやってくる音が聞こえる。 モンスターでも襲い掛かって来たのかと腰に佩いてるフライパンと包丁の柄に手を掛けて臨戦態勢を取る。アケビも短刀を抜き、サクラは持ってる杖を力強く握る。「ちゅー」「ぶっ」 勢いよく出てきた何かが俺の顔面目掛けて跳びついてきた。首を振っても落ちないので手で鷲掴んで無理矢理引き剥す。「って、カギネズミじゃねぇか」 俺に跳びついてきたのは敵モンスターではなく、パートナーモンスターのカギネズミだった。尻尾の先端が鍵の形をしていて、それが探知機のような役割を果たしている……とかそんな感じの能力を持ってる鼠だ。「ちゅー」 で、カギネズミは俺の顔を見ると前脚をばたつかせて俺の顔に触れようとする。俺に攻撃を加えようとしてる訳ではなさそうだけど、また顔にへばり付かれるのは勘弁なので手は離さない。「カギネズミ……ですか」「どうしてオウカ君に跳びついてきたの?」 サクラとアケビがカギネズミをまじまじと見る。二人も攻撃の意思がカギネズミにはないと分かったらしく、警戒はしない。パルミーも下からカギネズミを見上げ、フレニアとスビティーは俺達尾同じ目線で物珍しげに見ている。 で、未だにカギネズミが飛び出して来た方からがさがさと掻き分ける音が聞こえてくる。それがどんどんと近付いてくる。もしかして、カギネズミはプレイヤーと逸れてモンスターに追われてたのか? でも、それにしては焦ってる様子は見られないし、怖がっているようにも見えない。「ったく、何処に行ったんだよ……って、あれ? オウカじゃねぇか」 頭に疑問符を浮かべていると人の声が聞こえ、プレイヤーが三人出てきた。 全員が中世西洋の世界で見るような鈍い銀の甲冑に身を包み、顔もスリッドがある兜を被って完全防備。背にそれぞれ大剣、長槍、大斧が背負われており、重装兵って頭に浮かぶ。 俺達の前に現れたプレイヤー三人を見たサクラは直ぐにアケビの後ろへと隠れる。サクラを守るかのように、フレニアがサクラの傍らにつく。パルミーとスビティーも俺の後ろに隠れる。全身甲冑は威圧感が結構あるからな、怖かったんだろう。 って、ちょっと待て。全身甲冑の一人が俺の名前呼ばなかったか? 声の低さからして男だったけど。「よっ、久しぶりだな」 気さくに片手を挙げてこちらに歩み寄ってくる先頭の全身甲冑男。くぐもった声は何処かで訊いた事があるんだが……思い出せん。「えっと、誰だ?」 素直に誰かと問えば、全身甲冑男は「あぁ、これじゃ分からねぇか」と独りでに納得して兜に手を掛ける。「俺だよ俺。っと、ゴダイだ」 兜を取った顔は、確かにイベントの時に共闘した大剣使いゴダイだ。 あぁ、そう言えばゴダイのパートナーはカギネズミだったか。


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