喚んで、育てて、冒険しよう。

島地 雷夢

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 オフクス族の山村。それがキリリ山にある村の名前。 中腹辺りの平らな場所に存在しており、西洋ファンタジーな建物が建ち並ぶシンセの街とは違って和を感じさせる。建物は引き戸に茅葺きの屋根、壁は木の板や土壁を使用している。道も土を均して平らにしてあるだけで、舗装はされていないが石畳の上を歩くよりも柔らかい感じだ。 夜も暗い中で見て取れたのは炎が浮かんでいるからだ。比喩表現ではなく、本当に。ゆらゆらと淡い白の炎が揺らめいて暗闇を優しく照らしている。シンセの街は光る球体が浮かんでいたけど、この世界では外灯は存在しないのだろうか? まぁ、いいけどさ。 道行くNPCの服装も和服。重々しい着物とかではなく、よく時代劇とかでみる町民の服装だ。時折武士っぽい恰好のNPCも見るけど。履物も草履とかそんな類いだ。 で、ここにいるNPCは人間ではない。オフクス族という、所謂獣人と呼ばれる種族の一つだそうで、全員が狐耳と狐の尻尾を生やしている。「成程、オウカ君は山の内部から出て来てそこでばったりと出くわしてしまった、と。それは大変だったね」「御愁傷様です」 サモレッドとサモブルーの言葉からから俺への同情が窺える。 髑髏を撒いてから、俺達はオフクス族の山村へと向かった。向かう寸前にサモ緑が俺に【醒め薬】を使用してくれたので酔いから完全に醒め、自らの足で赴く事が出来た。「連絡つかなくなった時は焦った」「バグか何かかと思って運営に連絡しても『仕様です』って答えが返って来るだけだったしね」 と、アケビとカエデが軽く息を吐く。 アケビ達とはこの村に入って合流した。酔いから醒めた後もボイスチャットが繋がったままで、サモレンジャーと一緒にいる事を伝えて山村で合流しようという流れになってここまできた次第だ。 何でも俺達が落ちた穴が塞がっており、ボイスチャットもメッセージも送る事が出来なくて困惑と焦燥が入り混じっていたそうだ。リトシーにいたっては泣きじゃくってしまったそうで、リークが頑張ってあやしてくれてたとの事。現在リトシーは俺の膝の上に座って眠っている。泣き疲れたんだろうな。 俺達は現在、オフクス族の山村ではなくサモレンジャーの拠点にいる。山村は夜なのに(いや、夜だからこそか?)プレイヤーが多く、腰を降ろせる場所に空きが無かったので別の場所へ行こうと言う流れになり、招待された次第だ。 木々に囲まれたそこには朽ちた巨木が聳えており、その周りを小川が流れている。俺達の拠点との連動の効果が表れており、巨大な岩がでんと設置されなくてよかった、とちょっと安心した。 因みに、サモレンジャーの面々は自らの拠点でも特撮ヒーロー風の恰好のままだ。理由を訊いた所「休日じゃないからな」とサモレッドから答えを戴いた。……休日以外は絶対にその恰好なのか。まぁ、ツッコミはしないがそれは置いておくとしよう。 外に設置された二つの木製テーブルを囲うように座り、紅茶やコーヒーを啜っている。俺はアケビ、サモレッド、サモブルー、サモ緑と同じテーブルの席についている。テーブルの真ん中にランタンが置かれ、星が輝く夜空の下俺達を温かく照らしている。 パートナーモンスターと召喚獣たちもそれぞれの主であるプレイヤーの近くにいる。スビティーは死に戻りしたけど、ここに着た瞬間に復活して俺の顔面に張り付いてきた。涙溜めて。今では俺の頭の上に乗って寝ている。 ただ、リークはツバキの膝の上……ではなくサモイエローとサモマリンの間にちょこんと座っている。リークも彼女等のマスコットとなり、ツバキの許可を得て撫でたりしている。リークはリトシーと違って怯えたりせず、愛想よく振舞っている。サモイエローとサモマリンの召喚獣であるサンダーバードとジャック・フロストもリークに興味を持ち、それぞれがちょっかいを出している。「あと、そこってもしかしてボスみたいに強いエネミーとの連戦でも出来んのか?」「この村で訊いた話だとそうらしいよ。私としては是非ともやりたいね。腕試し兼特訓としてっ」 サモイエローがツバキの疑問に答え、軽く力瘤を作りそこに手を当てる。 ツバキ達とサモレンジャーは今回が初対面と言う訳ではなく、以前にも面識があったそうだ。クルルの横穴のボスを倒す際に協力をした仲らしい。そう言えば、横穴にもボスがいるんだっけか。ウィキとやらに載っていた気がする。まぁ、詳細は見てないけど。 ついでに、折角なのでとツバキとカエデ、あとアケビはサモレンジャーの面々とフレンド登録を行った。サモレンジャーのプレイヤーネーム見て首を傾げていたのは言うに及ばず、か。サモなんちゃらではなく普通の名前だし。 取り敢えず、よかったなサモレンジャー。フレンドが増えて。これでリースよりも多くなったんじゃないか?「そうか、なら今度行ってみるかな。限界超えちゃったカンナギが完全復活したらだけど」 ツバキが椅子の背もたれに体を預け、手を後頭部に回しながら天を仰ぐ。流石にカンナギがいない間に行こうとはしないらしい。「そうね。でも、回復は結構先になると思うけど」 カエデはカエデでカンナギの容体を心配しているようで、「お見舞い行こうかしら」と呟いている。 皆と合流して直ぐに俺はカンナギとサクラが急にログアウトしてしまったんだが、とサモレンジャーの拠点に来る前に皆に尋ねた。一応バグではないとの回答が得られた。 曰く、カンナギはリアルの方の体が限界を迎えて、そのまま気絶するように寝落ち。サクラの方はゲーム内の状態異常ではない気絶をした為にして強制ログアウトしたんじゃないか? との事。 STOでは安全の為に現実世界の体に異常が生じた場合、またはSTO内で状態異常でない気絶をした場合に強制的にログアウトを実行する機能が備わっている。と言うのを皆から訊くまで忘れていた。そう言えば、説明書にそんな事書かれてたな。 イベントの時はVRアクセラレーターによって時間の流れが変わっていたからか、はたまた最初から強制ログアウト機能を一時的に封じていたのか分からないが気絶してもログアウトしなかったな。まぁ、恐らく後者か。そうでないと三日間不眠不休でイベントこなさなくちゃいけなくなっただろうし。 で、それを思わせるようなカンナギからのメッセージが拠点に着いて直ぐカエデに届いてた。
『げんかいこえt』
 と平仮名六文字と最後のアルファベットが如実に物語っている。やはり現実では声を出せない程の風邪だったから、興奮とか諸々で身体に負担が掛かってしまったんだろうな。もう治るまで安静にしてろ、と個人的にメッセージを送っておいた。 サクラから全く音沙汰が無いが……もしかしたら気絶したままか、はたまた独りで蹲っているのかもしれない。ボイスチャットはログアウト状態の相手には使えないので、こちらもメッセージで「大丈夫か?」と送っておいた。「あ、だったら私も一緒に行きたいな。腕試ししたいし」 サモイエローがツバキの言葉に反応して手を挙げる。「別にいいぞ」 ツバキは「いいよな」と遅れながらカエデに確認を取り、カエデは頷く。「やった。なら出来れば私の休日にチャレンジしたいんだけど」「休日って、土日?」「ううん。そうじゃなくて、私達サモレンジャーの休日」「「はい?」」 ツバキとカエデは同時に首を傾げる。「おっと、オウカ君には説明していたけど、ツバキ君達にはまだだったね。我々サモレンジャーの説明を」「そうでしたね」「なら、教えて差し上げましょう」 そして、お開きになるまでサモレンジャーの面々は俺に語ったのと全く同じ説明をツバキ、カエデ、そしてアケビにした。その間俺は眠っているリトシーとスビティーを起こさないように注意しながら席を立ち、暇になった召喚獣達と一緒に鬼ごっこをして仲を深めた。あと、何故か説明に参加しなかったサモ緑も一緒になって遊んだ。 サモレンジャーの説明が終わると、三人はげっそりと疲れた顔をしていた。 まぁ、普通そうなるよな。俺もそうなったし。「よしっ! 全部説明し終えたな!」「そうですね!」「やりましたわ!」「律儀に訊いてくれたのはオウカくん以来だね!」 と、サモレンジャー四人は上機嫌にハイタッチをしていたりもした。


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