喚んで、育てて、冒険しよう。

島地 雷夢

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 集落に戻り、何時もの如く俺の酔いを醒ましてから俺達は雑貨屋に赴いた。毎度毎度俺のこれの所為で時間を浪費してしまっているのは申し訳ないのだが、サクラもアケビも気にしてないと言ってくれるのが救いか。 俺は包丁を新たに買い直し、アケビも短剣を新たにもう一振り購入。そしてサクラも杖を新調する。緊急クエスト達成により買うアイテムの種類が多くなっているので昨日の時点よりも性能のいい武器が出回っているので、少しでも戦力強化の意味を込めて買った。所持金はかなり余っているビーワスの針やもう使っていた武器を売却して増やした。
『セイリー族の銀包丁:セイリー族の身の丈に合わせて作られた銀の包丁。魔力の伝達が少しだけよくなる。【小刀術】スキルがあれば武器として使用可能。筋力+4 器用+2 耐久度85/85』
『セイリー族の銀フライパン:セイリー族の身の丈に合わせて作られた銀のフライパン。魔力の伝達が少しだけよくなる。【小槌術】スキルがあれば武器として使用可能。筋力+6 耐久+5 耐久度115/115』
『セイリー族の白杖:セイリー族の身の丈に合わせて作られた白い杖。魔力の伝達がよくなる。筋力+2 魔力+12 耐久度72/72』
『セイリー族の黒短剣:セイリー族の身の丈に合わせて作られた黒い短剣。魔力の伝達が少しだけよくなる。筋力+4 器用+6 耐久度76/76』
 以前使用していた物よりも耐久度があり、また上昇する値も二倍くらいになっている。これでいくらか戦闘が楽になる筈だ。レベル1だと目に見えてステータスアップの恩恵があるし。 武器も新調し、ボボナの実を届けてポイントを無事にゲット。そして報酬として【セイリー族の銀ブーツ】を貰う。これは装備者の敏捷性を上げるもので、ヒットアンドウェイの攻撃をするアケビが履く事となった。「……私よりもオウカ君が履いた方が」 と言っていたが、問答無用で押し付けた。俺よりもアケビの方が必要性が高いからな。 その後、一度神殿へと赴いてフチにローブ、十晶石擬き、水晶玉について何か情報を得られたかどうかの確認をしてみた。 まず、十晶石擬きに関しては結構な情報が集まっているとの事。 何でも、森の中にいくつか転がっていたらしい。それを持ってきたプレイヤーに断りを入れてから【妖精の十晶石】の方へと持っていくと、【十晶石の力片】と同じように全ての属性の力が十晶石擬きに分け与えられたそうだ。 そして、これは【縮小化】の影響を受けなくなる【十晶石の力片】とは違い、ローブの男がやったように十属性もの魔法を一度ずつ放つ事が出来るらしい。【十晶石の力片】には攻撃性能は全くなく、十属性の力が入り込んでもそれらの魔力が全て溶け合って個別の属性の魔力が存在しなくなるそうだ。 因みに、冷蔵庫に使われている【十晶石の力片】には氷属性の魔力だけが、夜の灯光に使われているのには光属性の魔力だけが籠められているらしい。それ故に魔力が溶け合って属性が消える事も無く、魔力が尽きるまで効力を発揮する所謂電池のような役目を果たしているみたいだ。 が、十晶石擬きの構造は【妖精の十晶石】とも【十晶石の力片】とも違い、魔力が溶け合わないようになっているらしい。その御蔭でそれぞれの属性の魔法を使う事が出来る。一つの属性につき攻撃魔法か補助魔法のどちらかを自分の意思一つで発動する事が可能で、昨夜の戦闘の最後のように全てを同時に発動する攻撃も可能となっている。 ただ、威力そして補助効果が著しく低いそうだ。魔法職のプレイヤーが発動するもののよくて半分、最悪五分の一程度しか効力を発揮しないそうだ。そして、これは使い切りであるらしく、全部の属性魔法を使い終わったそれをもう一度【妖精の十晶石】の前に持って来ても力が流れ込まないそうだ。 力が流れ込むのは一回……いや、二回だけ。恐らく森に落ちているのはローブが使用し終えて捨てた奴だろう。そうでないとローブが使用した時のあの威力に説明がつかない。あれはレベル1になっているプレイヤーの魔法を軽く超えている。 もし使用済みを捨てていたとしたら、かなりの数十の晶石擬きを使っている事になるな。昨日は二つしか使っていなかったのだが。もしかしたら使わざるを得ない状況でもあったのか?  その十晶石擬きの名称はフチがプレイヤーの言葉を訊いた所【十晶石の幻片】と言うそうだ。 兎にも角にも、その情報がメッセージや口コミ(セイリー族を含む)でプレイヤーに拡散されていき、結構なプレイヤーが【十晶石の幻片】を探す為に森を駆けずり回っているらしい。魔法職でないプレイヤーでも魔法を使う事が出来るので、見付けたら拾って直ぐにここで力を蓄える人達がかれこれ五十人くらい来ているそうだ。フチの説明を訊いている際にも何人かのプレイヤーが持って来て力を溜めていたのを垣間見た。 …………そう言えば、ボボナの実を探している時に他のプレイヤーと遭遇した時、ずっと地面ばっかり見ていたので、あれは【十晶石の幻片】を探していたのか、と納得した。 その他、水晶玉の中に靄が溜まった理由を解明すべくスケアリーアングールが弔われていた場所を調べたプレイヤーもいたそうだが(フチ曰くちょっと変な五人組と言っていたので恐らくサモレンジャーだろう)、生憎と何も分からなかったそうで、今度はその周りを調べているらしい。 ローブに関しては目撃情報はあれど、遭遇はしていないそうだ。見付けたとしても次の瞬間には消えていて追いかける事も不可能らしい。ローブはクルルの森の他に集落にも出現しているそうで、セイリー族の中でもローブを見た者もいるみたいで、集落では見掛けても安易に後をついて行かないようにと注意がされているとの事。「オウっち達も何か少しでも気になる事があったら私に言って下さいね」 と説明を終えたフチがそう言ったので、俺達はボボナの実に群がるイワザルについて報告した。フチも訳が分からないそうで、まず大司祭――族長に報告してその後どうするか検討するそうだ。 神殿で訊く事、そして伝える事も終えたので俺達はフチにまた何かあったら来ると告げて神殿から出た。 その後、俺達は集落でこなせるクエストを受けて達成させていく。昨日と同じように二手に分かれた方が効率がよかったのだろうが、深夜の出来事があったのでパーティーメンバーは誰も首を縦に振らず、また犯人を護送するかのように俺を囲んで移動する事となった。 集落でこなすクエストの数と種類も昨日に比べると増えており、中には物の修理と言うのもあった。そこはサクラとアケビの持つ生産系のスキルが役に立った。しかも、これによりスキル経験値も溜まったらしく、サクラの【初級木工】が【中級木工】にスキルアップした。 俺のスキルが役に立ったのは【初級料理】だけで、しかも【魚の解体を任せたい】と言うクエストだった。北の森で仕入れた新鮮な魚(大きさは成人したセイリー族とほぼ同じ。現実世界で言えば黒鮪くらい)を解体するという内容。巨大魚の解体の経験はなかったが、尾頭付きの魚を三枚に下ろす作業は何度か経験したのでその要領で行った。一応、成功してクエストは達成された。その御蔭で俺の【初級料理】も【中級料理】にスキルアップ。 ある程度集落でこなした後はもう一度森へと向かってクエスト達成に必要なアイテムを収集する為に採取したりモンスターを狩ったりする。必要なアイテムの中にはクォールとダヴォルの素材があり、あまり遭遇出来ずに時間が掛かった。その代わりイワザルの素材アイテムはあの場所に行けば嫌と言う程遭えるので苦労はしなかった。 森を歩いている際に今プレイヤーの間で話題となっている【十晶石の幻片】を一つ見付ける。サクラは既に水属性の魔法を使う事が出来るので必要が無いと辞退し、アケビは【セイリー族の銀ブーツ】を貰ったからいいと断った。故に、消去法で俺が持つ事になった。 森の中で一度ローブを発見するが、他のプレイヤーと同様に接触する事は叶わず、直ぐに姿が掻き消えてしまった。見付けようと探すも無駄骨に終わる。 色々と森や集落を駆け巡り、必要数集め終って集落に戻り、クエストを達成させた。その後に神殿で【十晶石の幻片】に力を蓄えた。 慌ただしく時間が過ぎて行き二日目の夜を迎える。時刻はゲーム内時間で午後九時二十分。本日もフチの家に厄介になり、女性陣とリトシーが一緒になって風呂に入っている。昨日のように俺はソファに腰掛けて太腿に顎を乗せているきまいらと俺に寄りかかっているフレニアの頭を撫でながら先程届いたメッセージを見ている。
『送信者:Summoner&Tamer Online運営  件名:途中経過ランキング(第五回) 』
『※このメッセージはイベントに参加しているプレイヤーの皆様に一斉送信しております。
 ソロイベント、パーティーイベントの上位5位までの途中経過ランキングをお伝えします。

 ソロイベント途中経過ランキング(第五回) 1位 カンナギ   Point 2423 2位 リース    Point 2411 3位 琥太郎    Point 2398 4位 KOTOHA Point 2254 5位 マーガレット Point 2198
 パーティーイベント途中経過ランキング(第五回) 1位 エール(PL)     Point 1121 2位 ギーグ(PL)     Point 1114 3位 召喚戦隊サモレンジャー Point 1101 4位 機甲鎧魔法騎士団アーマードマジカルナイツ    Point 1097 5位 オウカ(PL)     Point 1023
 ※パーティーネームを設定していないパーティーにつきましてはPL様のプレイヤーネームのみを表示しています。

 ご意見、ご質問等がございましたら、随時運営までご連絡下さい。』
 頑張ってクエストをこなしていき、ポイントが1000の大台に入っているが順位は本日の昼ごろに届いた第四回と変わらずに五位だ。そして、どうしてだか機甲鎧魔法騎士団アーマードマジカルナイツは更に順位を落として四位となっている。第四回では二位だったのに、一体どうしたのだろうか? まぁ、他人の心配をするよりも俺達の順位を頑張って三位に浮上させる為にどうするか考えるべきだな。 もう少しポイントを多く獲得し一旦二位とか一位になった方がいいか? その後に少しポイント獲得を緩めて順位の降下を狙えばある程度楽かもしれない。「オウっち~、フレっち~、きまっち~。お風呂空きましたよ~」 と、濡れた髪をタオルで拭っているフチを先頭にリトシーとサクラ、アケビが出て来る。程よく温まったようで頭から湯気が出ているな。そこまでVRは再現するのか。因みに、サクラもアケビも寝巻を着ているがこれはフチのを借りている。 女性陣が風呂に入る直前にフチに「オウっちも着ます? サイズ的には大丈夫だと思いますけど」って訊かれたので全力で首を横に振った。俺に女物の服を着る趣味も癖も無いんだから冗談でもそんな事は言わないで欲しいと思った。 俺が首を横に振る前ににサクラとアケビが何故か戸惑いと期待、そして背筋の冷えるような様々な何かが綯い交ぜになった視線を俺に向けていた。正直、どうして二人がそんな目で俺を見たのか未だに理解出来ていない。 兎にも角にも、今日の疲れを癒す為にも温かい風呂に入って安らぎたい。 と言うか、あれだ。俺は結局昨日は風呂に入っていない。水の中には入ったが。ウンディーネの作った水の壁に。あれは冷たかったので、せめて今日くらいは体の芯まで暖まるとするか。心身ともに疲れたし。「分かった。行くぞお前等」 俺はきまいらを抱き抱え、フレニアを脇に抱えて風呂へと向かう。「あ、タオルと着替えはそこに出てるの使って下さいね」 どうやら、わざわざ男物の着替えを用意してくれたようだ。何か、申し訳ないが折角用意してくれたものだから着ないと善意を無碍にしてしまう。「分かった。わざわざ済まない」「いえいえ~、気にしないで下さ~い」 俺は風呂場へと入り、脱衣所に出ているタオルと着替えを確認し、着替えは使わないと心に決める。 だって、ワンピースっぽい寝巻だったのだから。明らかに女物だ。 俺はそれを端に避け、別にゲームだから着替えなくてもいいかと思い、風呂に入る。 どうやら、風呂に入る時に限り全ての装備を解除すると下着姿になるのではなく、タオルが腰に巻かれた状態になる事が分かった。そしてどんな事があっても外れないようにきっちりとガードされる仕組みとなっているようで、自分で外す事も出来ないし、捲る事も出来ない。 流石に、STOの運営も全年齢対象ゲームで真っ裸にさせる事だけは禁止させたかと思いながら風呂に浸かる。
 

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