喚んで、育てて、冒険しよう。

島地 雷夢

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「ウンディーネ!」 サモブルーの言葉にウンディーネが俺達を守るように目の前に水の障壁を生み出す。火炎は障壁に当たり進行を食い止められているが水の中に次々と気泡が生み出されていき、湯気が生じていく。「行くよ!」「行きますわよ!」 サモイエローとサモマリンが同時に障壁の横を通り抜け、召喚獣を従えながらローブへと攻撃していく。サモレッド、サモブルー、サモ緑も動き出し、俺もローブを視認出来る場所へと移動する。それぞれの頭上に火の球がついて来ており、光源は確保されている。ただ、これによって闇夜に乗じて奇襲を仕掛ける事が出来なくなってしまっているが、十一対一の戦闘なので、数の暴力で訴えればいいだけだ。「むっ」 ローブは一歩後ろに後退する。サモイエローの拳が対象に当たる事も無くからぶるが、次の瞬間には拳を戻した状態でローブの懐まで接近しており、そのままボディーブローをかますが、腕を掴まれて防がれ、逆に腹を蹴り飛ばされる。「そこですわ!」 サモイエローの陰にいたサモマリンがレイピアの切っ先をローブの胸に向けて突き出していく。ローブはそれを屈んで避けると、サモマリンは即座に引き戻して避けた先へと再びレイピアを突き出す。 ローブは横に跳んで避けようとするが、他の二方向からも攻撃が来ている。一方は双剣による斬撃を繰り出しているサモレッド。もう一方は武器も持たずに突撃しているサモ緑だ。また、俺の横では弓弦を限界まで引いたサモブルーの姿があり、仮にローブが避けたとしてもそちら向けて即座に矢を放つ用意が出来ている。そして、サモイエローも受け身を取ってローブの男へと向かって挑んでいく。 召喚獣もそれぞれが様々な方位から仕掛けていく。イフリートは拳を振り被りながらサモレッドの隣りを抜け、ウンディーネはサモブルーの横で水の矢を幾重にも宙に待機させ、ジャック・フロストは氷の礫をローブの上空に振らせ、サンダーバードは電撃を放っていく。鎌鼬は何故か俺の隣りで腕を組んでいて何もしていないが。「無駄だ」 手にした十晶石擬きが光出す。今度の色は黄色で、そこから電撃が発生して畳みかけようとしていたサモレンジャーと召喚獣、そして俺を貫く。唯一直撃しなかったのはサンダーバードで、放った電撃と相殺される形で身を守った。「がっ」 生命力が三割も削れる。焼けるような痛みと痺れから膝から崩れ落ちそうになるが、堪える。サモレンジャーの面々も堪えているが、その隙にローブは十晶石擬きを緑色に光らせ、そこを中心に旋風を巻き起こして俺達を吹き飛ばす。巻き起こる風の中には風の刃も混ざっており、それが体を切り付けてくる。「うぐっ」 今度は一割の体力が削られ、背中を地面に打ち付ける。頭上の火の球が掻き消える。遠くに見える焚火の明かりがぼやけて視界に入って来るが、如何せん遠過ぎて灯光として頼る事は出来そうにない。「次、行くぞ」 ローブの言葉と共にある一点に水色の光が出現し、それと同時に底冷えする空気が雪崩れ込んでくる。避ける間もなく地面が凍り付く。上体を起こす事も出来ずにいたのでそのまま密着していた部分から全身へと凍って行き、芯から冷える冷気が襲い掛かってくる。 生命力が徐々に減って行き、半分を切る。このままだと何も出来ずに死に戻りをしてしまう。ここまで一方的にやられるのは……思い出したくもないが変態コート女以来だ。「炎よ、我が言葉により形を成し、炎の渦を逆巻かせよ!」 と、サモレッドが魔法の詠唱を始める。炎属性の魔法で一気に溶かそうというのだろうか? しかし、そうすると炎に焼かれる事になってしまう気がするが、このまま無様に何も出来ずにやられるよりは遥かにマシか。「……風よ、我が言葉により形を成し、旋風を巻き起こせ」 今度はサモ緑の言葉が耳に入ってくる。サモレッドをサポートする為の風魔法だろうか? 炎を広範囲に行き渡らせる為に風で広げていくとか、そんな感じだろう。 しかし、二人は肝心の魔法の名前を口にしていない。これでは詠唱が完了していても発動が出来ない。一体何が言うのを躊躇わせているのか?「「風よ炎よ、我が言葉により力を合わせ形を成し、熱風を吹き荒べよ! 【ヒートウェーブストーム】!」」 サモレッドとサモ緑の声が重なり、魔法を発動させる。灼熱の風が縦横無尽に吹き荒れ、全身を覆っていた氷膜が溶け出していく。 身動きが出来るようになり、即座に起き上がってローブを探す。それと同時に新たな火の球が熱風が止んだ空間に出現し、光源が確保される。「面白い技を使うな」 そうは言っているが、関心なぞ微塵も感じさせないローブの声が一気に気温が上昇した空間に響く。円形に囲んでいるようになっている俺とサモレンジャー、召喚獣の中心でローブは十晶石擬きを天高く掲げる。「そら、次だ」 黒く輝き出し、俺達全員に向けて黒い球体が射出されていく。 俺達は方々に避け、しかし迂闊には攻めない。一斉攻撃によって先程のような目にまた遭うかもしれないと言う危険があるからだ。「炎よ、我が言葉により形を成し、炎の塊で貫け! 【フレイムショット】!」「水よ、我が言葉により形を成し、彼の敵を撃ち抜け! 【ウォーターシュート】!」「……風よ、我が言葉により形を成し、風の刃を生み出せ。【エアカッター】」「氷よ、我が言葉により形を成し、氷柱を降らせよ! 【アイシクルフォール】!」「雷よ、我が言葉により形を成し、散り散りに解き放て! 【エレクトリックスプレッド】!」 ただ、接近戦を挑まないようにすればある程度は対処出来るかもしれないという考えが脳裏をかすめたようで、サモレンジャー全員が魔法による攻撃を行う。召喚獣もそれぞれの属性の遠距離攻撃を行う。俺も唯一の遠距離攻撃である【シュートハンマー】を発動させて援護射撃を行う。「無駄だ」 十晶石擬きが茶色に光ると、ローブの周りの土が盛り上がり、覆い隠してしまう。俺達の攻撃は全て土のドームが受け切り、ぼろぼろと崩れていく。「これは避けきれるか?」 完全に崩れ去った土のドームの中から無傷のローブが姿を現し、白く光った十晶石擬きをこちらに向けてくる。一筋の光が俺の胸を貫き、痛みが走る。その後、何度か光って俺と同じようにサモレンジャーの面々へと光の筋が打ち込まれる。これにより生命力が二割減らされ、残りは二割弱しかない。「さて、これで終わりか?」 次の色は灰色。十晶石擬きから光弾が発射されるも、それは先程のよりも格段に遅く、普通に避ける事が出来た。「ふむ、これは避けられるか。なら」 青色に光り輝き、圧縮された水が向かってくる。連続で発射され、休む間もなく避け続けていく。 今の所、これらの攻撃――恐らく魔法はこの場の全員に向けられているから誰かが囮になっている間に攻め込む、と言う真似が出来ずにいる。 黄緑色の光によって木の槍が地面から生えてくる。それから串刺しにならないように躱していく。ただ、ここまでかなりの動きで避け続けているので体力の減りが尋常ではない。あまり過激に動いてしまうと直ぐに底を尽いてしまうのでなるべく最小限の動きで躱していくが、何本かの槍の先が体を掠めて生命力を削り取っていく。「まさか、ここまで耐えるとはな。予想外だ」 その場から殆ど動いていないローブは忌々しそうに吐き捨てると、水晶玉の方へと視線を向ける。 初めに見た時は透明であった玉が、中に靄が発生していてくすんでいるように見える。「……もう少し、か」 と呟き声を耳が捉える。それと同時にローブは十晶石擬きをその場に捨てる。もしかして、あれは使い捨てのアイテムなのだろうか? なら、攻めるのなら今がチャンスだな。「オウカくん!」 対面にいるサモレッドが大きな声を上げて俺に呼びかけてくる。「悪いが、一撃で仕留める為に少しの間奴の気を引いててくれないか⁉」 そう言うのと同時に俺の生命力と体力が三割回復した。恐らく、サモレンジャーの誰かが回復アイテムを俺に使用したのだろう。と言うか、サモレッドは一撃って言ったか?「俺達と召喚獣全員で合体魔法を繰り出すから、発動まで時間を稼いでくれ!」 合体魔法? 訊いた事がないが、恐らくサモレッドとサモ緑が行ったあの魔法がそれなのだろう。それを全員で行うとなると、かなりの威力が期待出来るかもしれない。「分かった。どのくらい時間を稼げばいいんだ?」「三十秒くらい頼む!」 俺はサモレッドの言葉を訊くとそのままフライパンと包丁を握り締めてローブへと向かって行き、包丁で攻撃する。「……ちっ」 ローブは魔法を使う事もせずに俺の攻撃を避け、カウンターを放ってくるがフライパンでガードをする。こいつはあの消費アイテムらしきものがなければ魔法を使う事が出来ないようだ。 だが、所持数が一個とは限らない。下手をすると何処かに隠し持っていて、それを取り出されてしまうと一気に形勢が不利に戻ってしまう。それを暗示させるかのように、ローブの視線はポケットへと向けられている。恐らく、そこにもう一つの十晶石擬きが仕舞われているのかもしれない。 取り出させないようにと、俺は包丁による斬撃、フライパンによる打撃、蹴りを息吐く暇もなく繰り出していく。体力の減りが尋常ではないが、それでも構わずに攻撃の手を緩める事はしない。「炎よ、我が言葉と司りし者により形を成し、炎の塊で貫け!」「水よ、我が言葉と司りし者により形を成し、彼の敵を撃ち抜け!」「……風よ、我が言葉と司りし者により形を成し、風の刃を生み出せ」「氷よ、我が言葉と司りし者により形を成し、氷柱を降らせよ!」「雷よ、我が言葉と司りし者により形を成し、散り散りに解き放て!」 サモレンジャーの詠唱が連続する。「「「「「風よ水よ氷よ雷よ、そして炎よ、我が言葉と司りし者により力を合わせ形を成し、極光を生み出せ! 【オーロラブレイク】!」」」」」 詠唱が終了すると、五人と五匹からそれぞれ司る属性の色の光がローブの頭上に集まり、混ざり合う事も無くより合わさって回転を始める。 これは……ここにいたら巻き添えを喰らうな。俺はローブの腹目掛けて蹴りを入れると、そのまま全力で退避する。「この……っ!」 俺の相手をする必要が無くなったローブはポケットに手を突っ込むと、そこから新たな十晶石擬きを取り出して光に向かって掲げる。十色全ての光が同時に発生し、そのまま頭上で渦巻いている五色の光へと向かって放たれる。「「「「「ファイヤーッ!」」」」」 それに一瞬遅れる形で、五色の光もローブに向かって降り注がれる。 十色の光と五色の光は接触し、鬩ぎ合う事も無く五色の光が打ち勝ち、十色の光を呑み込んでローブへと向かう。「何っ⁉」 ローブは咄嗟に避けるのではなく、水晶玉だけを横に投げる。 光がローブを包み、消失させていく。


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