複垢調査官 飛騨亜礼
侵攻作戦、龍虎相打つ
<刀剣ロボットバトルパラダイス>、通称<刀剣ロボパラ>の夏の決戦が始まろうとしていた。
<刀剣ロボパラ>で最強と謳われる≪YUKI no JYOU≫同盟200名に対して、≪メガロポリスの虎≫500名、≪飛礼≫同盟100名、≪悪役令嬢≫同盟150名、≪飛鳥≫同盟12名、計762名の連合軍が侵攻するという作戦であった。
侵攻の合図は≪YUKI no JYOU≫同盟と偽装同盟関係を結んだ≪メガロポリスの虎≫同盟の盟主である鬼虎徹社長率いる100名の社員の特殊部隊である。リアルの繋がりがあるメンバーなので、裏切ると会社を首になるので機密は万全である。
はずだったが、当日、ネット出版部の編集者のひとりが体調を崩して休んでしまったのはちょっとした誤算であった。重課金のなかなか凄いプレーヤーだったので戦力ダウンは否めない。
まあ、株式上場で得た豊富な資金を惜しげもなく投入してるのは株主には内緒だが、そんな訳で戦力の補充はどうにでもなるのは社員の中では公然の秘密だった。
最強≪YUKI no JYOU≫同盟の盟主であるIMT.COMの会長、竜ヶ峰雪乃丞氏はリアルでも花魁のコスプレ姿で「オネエ」だという噂が絶えないが、この日は草餅色の渋い着物に金の星を散らした着物に、文金高島田の髷を左右に広げて、松、琴柱の簪を左右に六本、さらに鼈甲の櫛を三枚、珊瑚大玉の簪を二本を挿した伊達兵庫という髪型に結い上げていた。
「雪乃丞さま、今日もお美しいです。そろそろ雑魚共を叩き潰す段取りが整いました」
IMT.COMの傘下の<ネット小説投稿パラダイス>CEO、坂本マリアがかしずきながら報告した。
今日も燃えるような紅色のビジネススーツ姿である。
碧い双眸が静かに星のように煌めいていた。
「そう。では、そろそろ、龍騎兵隊を差し向けるかな」
長い煙管をくゆらせながら、雪乃丞がマリアを一瞥した。
「イエス。マイ、マスター」
マリアは恍惚とした表情で雪乃丞を見返していた。
†
「鬼虎隊長、あれは何でしょうか?」
鬼虎隊の副隊長ハザマがぽかんとした表情で声を上げた。
坊主頭の飾り気のない男である。
彼の視線の先には、三つの首をもつ龍のような<ボトムウォーリアー>が30機ほどいた。
<ボトムウォーリアー>とは獣人型機体で、さまざまなタイプの特殊能力をもち、<刀剣ロボパラ>では滅多に見かけないレア機体である。
「うん、ありゃ、敵かもしれんなあ。まあ、まだ、味方だがな」
鬼虎徹はのんきな声で真相を言い当てた。
たくましい体躯に武骨な面構え、不敵な笑みを浮かべていた。
彼の部隊の<ボトムウォーリアー>はその名の通り、黄金の虎のような機体に鬼の角を二本、生やしていた。
彼の機体だけは特別製で太い一角獣のような角を備えていた。
「隊長、なかなか手ごわそうですが、面白そうな敵ですな」
副隊長ハザマがそんなことをいう。
「いや、まだ、敵ではない。味方のフリをしてくれ。あそこで同盟軍として合流する手はずになっている」
「了解」
といった次の瞬間、熱風が前衛の機体を薙ぎ払った。
それは熱風ではなく、高密度レーザーであった。
数機の機体が一瞬で蒸発してしまった。
「もう、気づかれてるか。戦闘開始だな」
鬼虎徹は驚きもせず、かえって喜んでいた。
「隊長、俺、一度、≪YUKI no JYOU≫同盟の龍騎兵とやってみたかったんですよ」
参謀のカザマが嬉しそうに話しかけてきた。
長髪メガネの地味な男である。
「おう、だが、参謀が突撃してもらっては困るな」
「まさか。500機の部隊を縦横に動かしたいだけですよ」
「では、いつものお手並み拝見といこうか」
「了解です」
参謀のカザマの指示で、鬼虎先遣隊90機は広域に分散展開した。
地形は森林地帯に突入し、敵の長距離レーザーを避けるようにジグザグの軌道を取っていた。
鬼虎隊の<ボトムウォーリアー>は二基のホバータイプの推進器を備えている。
地面からわずかに浮上しながら軽快に進撃していた。
突然、先行していた数機が爆発に巻き込まれて大破した。
≪YUKI no JYOU≫同盟が仕掛けた地雷であるのは明らか。
おそらく、接触式ではなく、熱源感知式の地雷だろう。
「全機、フライングユニット起動、地雷原を全速で駆け抜けろ! ただし、高度を高く取るな! 長距離レーザーに狙い撃ちされるぞ!」
参謀のカザマが的確な指示を出す。
鬼虎先遣隊全機が二枚の銀色の翼を開いて、森林のちょうど中間辺りの高度を取って飛行をはじめた。
高く飛びすぎると、そこには空中機雷があって、大破して地雷原に落ちて炎上する機体が続出した。
中間地点の絶妙な高度を保てた機体だけが生き残っていった。
「まったく、地獄だな。≪YUKI no JYOU≫同盟の奴ら、ここまでするか!」
副隊長ハザマは舌打ちして、悔しさのあまり歯噛みしていた。
「たぶん、この高度で森を抜けた所を狙い撃ちでしょうね。俺が先頭で出ますね」
「おう、頼むわ」
カザマ隊が先頭になって、縦長の盾のイージスシステムを起動する。
金色のエネルギー波が盾を黄金に変える。
森をでたとたんに、高密度レーザーが参謀カザマの黄金の盾に直撃した。
衝撃波で吹っ飛びそうになるが、腰の長剣を大地に突き差して耐える。
カザマ隊の隊員もそれに倣って、黄金の盾が横一列に並んで他の部隊を護っていた。
黄金の盾の隙間から、長大な槍を装備した≪YUKI no JYOU≫同盟の龍に騎乗した龍騎兵が見えた。
「さて、反撃開始と行きますか」
鬼虎がつぶやいた。
最強の盾、イージスシステムを備える<黄金の虎>と、最強の攻撃力を誇る≪龍槍≫をもつ<龍騎兵>がついに激突する時を迎えようとしていた。
(あとがき)
久々の更新ですが、何とか早めに完結で来たらと思います。
2015年いっぱいかかりそうですが。
<刀剣ロボパラ>で最強と謳われる≪YUKI no JYOU≫同盟200名に対して、≪メガロポリスの虎≫500名、≪飛礼≫同盟100名、≪悪役令嬢≫同盟150名、≪飛鳥≫同盟12名、計762名の連合軍が侵攻するという作戦であった。
侵攻の合図は≪YUKI no JYOU≫同盟と偽装同盟関係を結んだ≪メガロポリスの虎≫同盟の盟主である鬼虎徹社長率いる100名の社員の特殊部隊である。リアルの繋がりがあるメンバーなので、裏切ると会社を首になるので機密は万全である。
はずだったが、当日、ネット出版部の編集者のひとりが体調を崩して休んでしまったのはちょっとした誤算であった。重課金のなかなか凄いプレーヤーだったので戦力ダウンは否めない。
まあ、株式上場で得た豊富な資金を惜しげもなく投入してるのは株主には内緒だが、そんな訳で戦力の補充はどうにでもなるのは社員の中では公然の秘密だった。
最強≪YUKI no JYOU≫同盟の盟主であるIMT.COMの会長、竜ヶ峰雪乃丞氏はリアルでも花魁のコスプレ姿で「オネエ」だという噂が絶えないが、この日は草餅色の渋い着物に金の星を散らした着物に、文金高島田の髷を左右に広げて、松、琴柱の簪を左右に六本、さらに鼈甲の櫛を三枚、珊瑚大玉の簪を二本を挿した伊達兵庫という髪型に結い上げていた。
「雪乃丞さま、今日もお美しいです。そろそろ雑魚共を叩き潰す段取りが整いました」
IMT.COMの傘下の<ネット小説投稿パラダイス>CEO、坂本マリアがかしずきながら報告した。
今日も燃えるような紅色のビジネススーツ姿である。
碧い双眸が静かに星のように煌めいていた。
「そう。では、そろそろ、龍騎兵隊を差し向けるかな」
長い煙管をくゆらせながら、雪乃丞がマリアを一瞥した。
「イエス。マイ、マスター」
マリアは恍惚とした表情で雪乃丞を見返していた。
†
「鬼虎隊長、あれは何でしょうか?」
鬼虎隊の副隊長ハザマがぽかんとした表情で声を上げた。
坊主頭の飾り気のない男である。
彼の視線の先には、三つの首をもつ龍のような<ボトムウォーリアー>が30機ほどいた。
<ボトムウォーリアー>とは獣人型機体で、さまざまなタイプの特殊能力をもち、<刀剣ロボパラ>では滅多に見かけないレア機体である。
「うん、ありゃ、敵かもしれんなあ。まあ、まだ、味方だがな」
鬼虎徹はのんきな声で真相を言い当てた。
たくましい体躯に武骨な面構え、不敵な笑みを浮かべていた。
彼の部隊の<ボトムウォーリアー>はその名の通り、黄金の虎のような機体に鬼の角を二本、生やしていた。
彼の機体だけは特別製で太い一角獣のような角を備えていた。
「隊長、なかなか手ごわそうですが、面白そうな敵ですな」
副隊長ハザマがそんなことをいう。
「いや、まだ、敵ではない。味方のフリをしてくれ。あそこで同盟軍として合流する手はずになっている」
「了解」
といった次の瞬間、熱風が前衛の機体を薙ぎ払った。
それは熱風ではなく、高密度レーザーであった。
数機の機体が一瞬で蒸発してしまった。
「もう、気づかれてるか。戦闘開始だな」
鬼虎徹は驚きもせず、かえって喜んでいた。
「隊長、俺、一度、≪YUKI no JYOU≫同盟の龍騎兵とやってみたかったんですよ」
参謀のカザマが嬉しそうに話しかけてきた。
長髪メガネの地味な男である。
「おう、だが、参謀が突撃してもらっては困るな」
「まさか。500機の部隊を縦横に動かしたいだけですよ」
「では、いつものお手並み拝見といこうか」
「了解です」
参謀のカザマの指示で、鬼虎先遣隊90機は広域に分散展開した。
地形は森林地帯に突入し、敵の長距離レーザーを避けるようにジグザグの軌道を取っていた。
鬼虎隊の<ボトムウォーリアー>は二基のホバータイプの推進器を備えている。
地面からわずかに浮上しながら軽快に進撃していた。
突然、先行していた数機が爆発に巻き込まれて大破した。
≪YUKI no JYOU≫同盟が仕掛けた地雷であるのは明らか。
おそらく、接触式ではなく、熱源感知式の地雷だろう。
「全機、フライングユニット起動、地雷原を全速で駆け抜けろ! ただし、高度を高く取るな! 長距離レーザーに狙い撃ちされるぞ!」
参謀のカザマが的確な指示を出す。
鬼虎先遣隊全機が二枚の銀色の翼を開いて、森林のちょうど中間辺りの高度を取って飛行をはじめた。
高く飛びすぎると、そこには空中機雷があって、大破して地雷原に落ちて炎上する機体が続出した。
中間地点の絶妙な高度を保てた機体だけが生き残っていった。
「まったく、地獄だな。≪YUKI no JYOU≫同盟の奴ら、ここまでするか!」
副隊長ハザマは舌打ちして、悔しさのあまり歯噛みしていた。
「たぶん、この高度で森を抜けた所を狙い撃ちでしょうね。俺が先頭で出ますね」
「おう、頼むわ」
カザマ隊が先頭になって、縦長の盾のイージスシステムを起動する。
金色のエネルギー波が盾を黄金に変える。
森をでたとたんに、高密度レーザーが参謀カザマの黄金の盾に直撃した。
衝撃波で吹っ飛びそうになるが、腰の長剣を大地に突き差して耐える。
カザマ隊の隊員もそれに倣って、黄金の盾が横一列に並んで他の部隊を護っていた。
黄金の盾の隙間から、長大な槍を装備した≪YUKI no JYOU≫同盟の龍に騎乗した龍騎兵が見えた。
「さて、反撃開始と行きますか」
鬼虎がつぶやいた。
最強の盾、イージスシステムを備える<黄金の虎>と、最強の攻撃力を誇る≪龍槍≫をもつ<龍騎兵>がついに激突する時を迎えようとしていた。
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