複垢調査官 飛騨亜礼

坂崎文明

ネット小説投稿サイト三国志

 ネット小説投稿サイト<作家でたまごごはん>が誕生したのは、今から10年ほど前である。
 学生たちのサークル的な個人サイトだったのだが、サイトの人気化、巨大化と共に5年前ぐらいに会社組織になった。
 仮想現実のゲーム内に閉じ込められるデスゲーム小説、中世風の世界観のファンタジー、異世界転生小説が大ヒットし、その後、ランキング上位の作家が次々と大手出版社にスカウトされて書籍化作家になっていくにつれ急成長していった。
 無数にあるネット小説投稿サイトにおいてナンバーワンの存在となっている。

 ネット小説出版社<メガロポリス>は、老舗出版社のネット事業部であった<メトロポリス>の敏腕編集者である鬼虎徹きとらとおる氏が独立して設立した出版社である。15年ほど前に設立され、当時はまだ、ブログではなく、自作、レンタルのHPサービスなどの小説作品を登録してランキング表示し、その中からアクセス、人気が高い小説を出版していった。

 特にネット小説投稿サイト<作家でたまごごはん>の作品の大ヒットによって、同社と提携を深めていって多くのネット小説家を発掘していった。
 作品の漫画化、テレビアニメ化なども展開、昨年、上場を果たした。同社の手法に大手出版社も追随し、業界では鬼虎徹きとらとおる社長の事は<メガロポリスの虎>と仇名されていた。何のひねりもないが。

 最近では上場で得た豊富な資金を元手に<メガロポリス>を<作家でたまごごはん>のようなネット小説投稿サイトへと変貌させようとしていて、投稿作家にアクセス数によるポイントを付与し、それを金券に交換できるシステムを構築したり、スマホアプリの開発を手掛けている。


 そして、昨年、この二大勢力にある謎の地方の巨大企業が割って入った。
 Y川県に本拠をおく、IMT.COMという会社である。

 アダルトビデオレンタル会社の経営者からいつのまにか、AV業界を統一し、その豊富なキャシュフローを基盤にして、ネットのDVD通販からネット動画の配信を立ち上げ、その後、FX、英会話、公営ギャンブル、太陽光発電、ロボット事業、格安携帯、3Dプリント、通販、婚活サイト、電子書籍、ネットゲームなど多種多様な事業を展開している。

 特に大手出版社のネットゲーム部門と組んで大ヒットした<刀剣ロボットバトルパラダイス>によってネットのオタクたちに知られるようになり、その流れでついに、ネット小説投稿サイト<ネット小説パラダイス>を立ち上げた。通称<ネットパラ>と呼ばれる。

 何故か花魁のコスプレをした竜ヶ峰雪乃丞社長率いるIMT.COMは、<作家でたまごごはん>の規約違反で削除になった小説家を拾い、<ネットパラ>の人気作家に育てるという手法で急成長し、徐々に勢力を広げていった。

 ネット作家たちは、彼らの事を<転生作家>と呼んだ。
 異世界転生小説にちなんだネット作家らしいネーミングである。

 この物語はそんなネット小説投稿サイトの三国志的なお話である。






(あとがき)

 次回『転生作家』ですが、何というか、はじめはいつもの感じのお話の予定です。

 まだ、方向性は書いてみないとわからない感じで、第二章の伏線を回収して、どういく展開になるか、という感じですね。

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