安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚

坂崎文明

天龍と地龍、時空の旅へ

(信長殿、天龍と地龍を召喚します)

 清明の声と共に巨大な白い天龍と漆黒の地龍が天空に現れた。
 その巨大さは<ブラックナイト>にも匹敵するほどで、白い天龍は翼をもつ龍に似せて作られた天駆ける船であった。

 しかし、地龍はただの黒く巨大な亀のようなに見えたのだが、気のせいだろうか。

(清明殿、当然、わしは天龍をもらっていいのだろう?)

 信長が一歩も譲らないという姿勢で清明を見た。

(それは当然です。私も地龍の方が気にいってるので、何の問題もないです)

 清明は冷静な声で対応した。

(地龍の方が結構、性能がいいとか?)

 信長は不審そうに尋ねた。

(兄弟艦でほぼ同じ性能ですし、まあ、デザインが好みなのです)

(そういうもんかのう)

(人、それぞれですな)

 清明は亀が好きということで納得した信長であった。

(では、清明殿は飛鳥時代に飛んでくれ。わしは少し時を下る。メガネたちを鍛えなくてはならないので、殿しんがりもわしらが勤めよう)

(頼みます。こちらは神沢優、月読波奈、安東要でこじんまりと行って参ります。波奈殿がいなくなるとオタクたちが淋しがるかも知れませんが、適当に誤魔化しておいて下さい。その代わりに式神を置いていきます。雛御前!)

 清明が命じると、雛人形のような十二単じゅうにひとえ姿の幼女が現れた。

「信長さま、私たち<式神衆>が清明さまの代わりにお仕え致します。何なりとお申しつけ下さい」

「何というか、美少女の式神はいないかのう」

 十二単じゅうにひとえ姿の幼女が美少女に変化した。

「おう、これはなかなか」

「御気に召してもらえたでしょうか?」

「とりあえずだな、<式神衆>で美少女軍団を結成してもらえると、上手く騙せそうじゃ」

「わかりました。そのように手配させて頂きます」

 雛御前は地龍に一瞬でテレポートして、総勢108名の美少女軍団を引き連れて戻ってきた。

「なるほど、これなら行けそうじゃわい。とりあえず、総選挙をして<式神7>を決めなくてはならないな。楽しみじゃわい」

 何だか自分の趣味に走ってるような信長だが、本当に大丈夫かいなとおもう清明であった。
   



     †



「雷神斬!」

 夜桜は雷属性の聖刀技でアリス・テスラのプラズマを抑えていた。
 時折、ハネケやメガネ隊の一斉攻撃を叩き込むのだが、全部の攻撃を凌がれていた。
 信長と清明が話をまとめてるうちに、メガネたちはアリス・テスラと激闘を繰り広げていた。

(夜桜! 信長さまから撤退命令が出た。あの白い船<天龍>で跳ぶ・・らしい)

 メガネからのテレパシー通信である。

(跳ぶ?)

 夜桜は疑問を投げかける。

(少し時代を下るらしい。清明さまは飛鳥時代に跳ぶらしい)

(了解です。だが、撤退することが最も難しいですよ)

(大丈夫、私が大技を叩き込むから、その隙に撤退して下さい)

 神沢優がそういうと、月読波奈も言葉を継いだ。

(波奈も時間を稼ぐ。大丈夫)

 月読波奈はモニター越しににっこり笑った。

(では、ここは二人にお任せします)

 夜桜機はハネケと共に後退して、神沢、月読機と交代した。

(五色龍の術! 龍神召喚!)

 神沢優の双眸が黄金の光を帯びる。
 巨大な黄金の龍神が現れて、アリス・テスラを圧倒した。

(ふっ、なかなかやるわね。だが、これはどうかしらね)

 アリス・ステラが左手でプラズマを弄びつつ、右手にもプラズマを生じさせた。

(消えてなくなってしまいなさい!)

 アリス・ステラはふたつプラズマをメガネたちに向けて投擲した。
 そして、ふたつのプラズマが衝突した時、そこにビックバンにも匹敵する爆発が生まれ、龍神もろともメガネたちを吹き飛ばすかに見えた。

(ここは波奈にお任せ! <時空眼>オーバードライブ!)

 その瞬間、月読波奈の銀色の瞳が輝き、アリス・ステラとプラズマ爆発の空間の時間が停止した。
 
(限定空間の時間停止か?)

 メガネが真相を言い当てた。

(波奈、凄いでしょう)

 メガネも言葉もなかった。
 天龍と地龍にメガネ隊と神沢隊が全機、収容された。
 
(では、清明殿、しばしの別れだ。波奈殿も達者でな!)

(のぶちん、天ちゃんも、またね。今度、会うのは関ヶ原かもね)

(おい! 波奈殿、そうなのか?)

 漆黒の地龍は空間に溶け込むように消えていった。

(信長さま、私どももそろそろ)

 雛御前が天龍をコントロールしてくれるらしい。

(分かった。では、高松城水攻めの戦場へ!) 

(また、戦場ですか?)

 メガネが驚く。

(いや、少しサルを驚かせてやりたいのじゃよ)

 信長は自分のいたずらにわくわくしているようだった。

(………それはちょっと悪趣味、いや、なかなか面白いですね)

 メガネは仕方ないなあと呆れつつも、ちょっと楽しみだった。
 天龍もまた、時の流れを下って、高松城水攻めの時空へと跳躍した。


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