すばらしき竜生!
第41話 呼び出し
今日は休日。学院も休み。 学生は思い思いの休日を楽しんでいるだろう。学生以外も休日という事でいつもよりは外も騒がしい。
「…………暇だ」
不意に出た一言。皆が休日をエンジョイしている中、ロードは休日を全くエンジョイ出来ていなかった。
シエルはロードが寝ている間にメイド四人と街にお出かけしてしまい、家にはロードしか居ない。どうせならロードも連れてって貰いたいと思うが、一応起こしてロードが一切起きなかったオチだろうと思う。
ガイ達に稽古でもしてやろうと思ったら冒険者学校は本日も登校日だったらしく、先程行ってきますの挨拶が来た。
「あー、何か問題でも起きねぇかな」
ロードが見た異世界転生ネタあるあるの一つ。"自らフラグを建設していく"を発動するがやはり何も起きない。
――ドンドンッ!
……と思っていたら、誰かが玄関の扉を叩く音が聞こえる。
いくら何でも早すぎるだろうと思いながらも気配探知で誰が来たのかを確認する。 出る前にこうするのは仮面の男対策の為だ。玄関の前に立った瞬間に扉ごと爆発されては直すのに金も時間も掛かるので嫌なのだ。
(玄関前に一人。後ろに九人居るな……少し多すぎないか?)
「あれぇ? 調べた住所ってここでいいんだよね? ――おーい、誰か居ませんかぁ?」「はいよっと……」
害は無さそうなので返事をして扉を開けると、そこには竜王国で最初に案内してくれた優男の兵士と完全武装の騎士達がずらりと並んでいた。
「……すいません。うちは新聞雇ってないんで……」
自分でフラグを建てておいて思ったよりも面倒事な予感がしたロードはソッと扉を閉める。
「いやいやいや待って、お願いだから閉めないで! ほら、僕だよライズロークだよ!」「……なんだよ、ライズロークさんかよ。ビックリしたぁ新聞屋かと思っちゃったぜ(棒)」「その口ぶりは絶対に知っててやってたよね!?」
ライズロークをイジるのが意外と楽しいと感じたロードだが、見るからに後ろの騎士達のイライラオーラをビンビンに感じるようになってきた。 このまま茶番をしていると掴みかかられそうだ。そうなったらライズロークの部下だろうと殺してしまうかもしれない。
「後ろのそいつらは?」「この人達は僕の部下だよ」
ロードが思った通りライズロークの部下だった。
「……お前、自分の事を兵士って言ってなかったか?」「兵士も騎士もほとんど変わらないでしょ?」
結構変わると思うのだがツッコんでも無駄だと悟る。
「……それで何の用だ?」「やっと話を聞いてくれるようになったね……コホンッ」
ライズロークはさっきまでとは違う真面目な雰囲気を纏い始めた。これが仕事モードのライズロークなのだろう、どこか上司になる貫禄がある。
「ロードさん。王様がお呼びです。我ら騎士団がロードさんを王城までお連れいたします」「帰れ」
とても面倒な事だったので思い切り扉を閉めてライズローク達を追い出す。 なんで王様が呼んでいるのか意味が分からない。確かにロードは暇過ぎて死にそうだったが、こんなイベントはおよびではない。
「うわぁぁあん! ロード君待って、僕が減給されちゃうから待ってぇええ! マジでお願いします!」
外側から扉を叩く音がする。本気で泣きそうになっていたので、少しだけ可哀想に……ならない。 他人の不幸より自分を優先するロードは知らんぷりを決め込む。
「いいの!? このままだとロード君の金貨五十枚も無くなるよ!?」「――何駄々こねてんださっさと王様のところに連れてけ」
金が絡むのなら話は別だ。 即用意を終わらせたロードは『少し王様のところ行ってくる』と書き置きして扉を開ける。
「ホントにいいの?」「ただし、俺の金貨五十枚が嘘だったら八つ裂きな」
あくまでもロードは自分の金を貰う為に行くのだ。もし、それが噓だったらロードの貴重な時間が無駄に削られる事になる。
「………はい……」
有無を言わせない迫力にライズロークは力無く返事をするしか無かった。
◆◇◆
「やっぱり帰りてぇ……」
王城について来賓室で待機させられているロードは帰りたい気持ちでいっぱいだった。
一番精神的に辛かったのが道中だ。 ロードの家から馬車を待機させている場所は少し歩くので、騎士達に囲まれる形で歩いていた。 なんとも警察に連行される気分になり、そう周囲からの目が痛く突き刺さって周囲ごと消し去りたかった。
それから馬車に乗っての道は楽だった。王様が手配したというのもあって乗り心地は最高、移り変わる景色をひたすらボーっと眺めていると眠たくなってしまう。実際に王城に着くまでにロードは寝ていた。
寝ぼけ眼で来賓室に連れ去られて三十分が経つけど、変わらずに放置プレイをされ続けている。 ライズローク達とも来る途中に別れてしまったので、話し相手が居ない。
本当に何もやる事が無いので無駄に大きいソファでゴロゴロするしか無い。出された紅茶は普通に美味しいので、紅茶だけは満足している。
「ロード様。準備が整いましたのでご同行願います」
本当に帰ってやろうかと思った頃に係の人が呼びに来てくれた。こんなに待たせてつまらない話だったら暴れてやろうかなと危ない事を思ってしまう。 なにせ、この場には対ロードツッコミ役のシエルが居ないのでロードのやりたい放題に出来る。
「それではこちらへ……」「また歩くのか? 王城ってのは無駄にでかいねぇ」「我らが竜王国の要ですからね。やはり一番目立たないと示しがつかないのです」
こう聞くと人間というのはこんな物でしか威厳を保てないのだから面倒臭い生き物だと思う。ロード達の家は他よりも少し大きいだけで、そこまで変わりはなかった。 それでも皆からの信頼は勝ち取っていたし、何の不自由も無かった。
それに、この王城をもう少し小さくするだけでいったいどれくらいの戦力強化が出来るのだろうか。 元人間のロードでも、人類は金の使い方を間違っていると思う。
(元人間でも、俺は竜なんだよな)
多分、不可能だろうけど元の世界に戻れると言われても、竜として生きてきたロードは人として生きる事は出来ないだろう。
そう考えているうちにドデカイ扉の前についた。 中には大勢の人の反応がある。中には人ではない反応もあるが、気にしなくても問題は無いだろうと判断出来る。
「それでは、どうぞ……」
門番の二人が扉をゆっくりと開けて徐々に中が見えてくる。 周りには豪華な服とアクセサリーを身に纏った人達が大勢。その人達の後側には騎士達が待機していて、ライズロークの姿も見られる。 ライズロークは仕事モードらしくて、いつものふざけた態度ではなくキリッとした佇まいでいる。
そして奥には王座に座っている初老、あれが竜王国の王様なのだろう。 王様の後ろに並んでいるのが側近らしく、実力としては申し分ないのが見ただけで分かる。
「貴君がロード殿かな?」「王様自ら話しかけてくれるとは嬉しいっすね。確かに俺がロードだが? 俺が名乗ったんだから王様も名乗ってくれない?」
相手が王様だろうと話し口調は変わらないロードに対して周りは苛立ちを隠せていない。
「おおっ、これはすまない。私は竜王国の王――エルド・ライズ・ドラコーンだ」「……ふーん」「――おいお前! 流石に我慢出来ん!」
ロードが王様の顔をまじまじと見ているとデブに怒られた。横の列から凄い剣幕でロードの前に立ち塞がる。分厚い肉壁のせいで王様が見えなくなった。
「……邪魔なんすけど」「貴様は王と話す資格など無い。今すぐ立ち去れ」「そっちから呼び出ししておいて帰れってのは酷いんじゃないか?」「――マルバル、下がれ。王の命令だ」
ここで側近の一人から助け舟が飛んでくる。意外なところからの助けに少しだけ驚くロード。
「……うっ、ぐ…………」(無駄な労力乙でーす)
王の命令と言われては流石に逆らえないのだろう。デブはロードを睨みながら元いた配置に戻る。 そんな男を心の中で馬鹿にしながら、言葉をかけてくれた側近の一人に目配せして礼をしておく。
「それで私の顔をジッと見ていたが、何かあったのか? 一応、部下におかしなところが無いか確認したのだが……」「いや、王様の玉座は図体の割に狭そうだなぁって思ってな」
ロードの言葉に側近全員が息を呑む。
「――ふふっ、フハハハハッ! ……面白い。ロード殿、私達についてきて貰えますかな?」「……分かった」
更に面倒な事になってしまうと悟り、大きなため息をつくしか無かった。
(…………帰りたい)
「…………暇だ」
不意に出た一言。皆が休日をエンジョイしている中、ロードは休日を全くエンジョイ出来ていなかった。
シエルはロードが寝ている間にメイド四人と街にお出かけしてしまい、家にはロードしか居ない。どうせならロードも連れてって貰いたいと思うが、一応起こしてロードが一切起きなかったオチだろうと思う。
ガイ達に稽古でもしてやろうと思ったら冒険者学校は本日も登校日だったらしく、先程行ってきますの挨拶が来た。
「あー、何か問題でも起きねぇかな」
ロードが見た異世界転生ネタあるあるの一つ。"自らフラグを建設していく"を発動するがやはり何も起きない。
――ドンドンッ!
……と思っていたら、誰かが玄関の扉を叩く音が聞こえる。
いくら何でも早すぎるだろうと思いながらも気配探知で誰が来たのかを確認する。 出る前にこうするのは仮面の男対策の為だ。玄関の前に立った瞬間に扉ごと爆発されては直すのに金も時間も掛かるので嫌なのだ。
(玄関前に一人。後ろに九人居るな……少し多すぎないか?)
「あれぇ? 調べた住所ってここでいいんだよね? ――おーい、誰か居ませんかぁ?」「はいよっと……」
害は無さそうなので返事をして扉を開けると、そこには竜王国で最初に案内してくれた優男の兵士と完全武装の騎士達がずらりと並んでいた。
「……すいません。うちは新聞雇ってないんで……」
自分でフラグを建てておいて思ったよりも面倒事な予感がしたロードはソッと扉を閉める。
「いやいやいや待って、お願いだから閉めないで! ほら、僕だよライズロークだよ!」「……なんだよ、ライズロークさんかよ。ビックリしたぁ新聞屋かと思っちゃったぜ(棒)」「その口ぶりは絶対に知っててやってたよね!?」
ライズロークをイジるのが意外と楽しいと感じたロードだが、見るからに後ろの騎士達のイライラオーラをビンビンに感じるようになってきた。 このまま茶番をしていると掴みかかられそうだ。そうなったらライズロークの部下だろうと殺してしまうかもしれない。
「後ろのそいつらは?」「この人達は僕の部下だよ」
ロードが思った通りライズロークの部下だった。
「……お前、自分の事を兵士って言ってなかったか?」「兵士も騎士もほとんど変わらないでしょ?」
結構変わると思うのだがツッコんでも無駄だと悟る。
「……それで何の用だ?」「やっと話を聞いてくれるようになったね……コホンッ」
ライズロークはさっきまでとは違う真面目な雰囲気を纏い始めた。これが仕事モードのライズロークなのだろう、どこか上司になる貫禄がある。
「ロードさん。王様がお呼びです。我ら騎士団がロードさんを王城までお連れいたします」「帰れ」
とても面倒な事だったので思い切り扉を閉めてライズローク達を追い出す。 なんで王様が呼んでいるのか意味が分からない。確かにロードは暇過ぎて死にそうだったが、こんなイベントはおよびではない。
「うわぁぁあん! ロード君待って、僕が減給されちゃうから待ってぇええ! マジでお願いします!」
外側から扉を叩く音がする。本気で泣きそうになっていたので、少しだけ可哀想に……ならない。 他人の不幸より自分を優先するロードは知らんぷりを決め込む。
「いいの!? このままだとロード君の金貨五十枚も無くなるよ!?」「――何駄々こねてんださっさと王様のところに連れてけ」
金が絡むのなら話は別だ。 即用意を終わらせたロードは『少し王様のところ行ってくる』と書き置きして扉を開ける。
「ホントにいいの?」「ただし、俺の金貨五十枚が嘘だったら八つ裂きな」
あくまでもロードは自分の金を貰う為に行くのだ。もし、それが噓だったらロードの貴重な時間が無駄に削られる事になる。
「………はい……」
有無を言わせない迫力にライズロークは力無く返事をするしか無かった。
◆◇◆
「やっぱり帰りてぇ……」
王城について来賓室で待機させられているロードは帰りたい気持ちでいっぱいだった。
一番精神的に辛かったのが道中だ。 ロードの家から馬車を待機させている場所は少し歩くので、騎士達に囲まれる形で歩いていた。 なんとも警察に連行される気分になり、そう周囲からの目が痛く突き刺さって周囲ごと消し去りたかった。
それから馬車に乗っての道は楽だった。王様が手配したというのもあって乗り心地は最高、移り変わる景色をひたすらボーっと眺めていると眠たくなってしまう。実際に王城に着くまでにロードは寝ていた。
寝ぼけ眼で来賓室に連れ去られて三十分が経つけど、変わらずに放置プレイをされ続けている。 ライズローク達とも来る途中に別れてしまったので、話し相手が居ない。
本当に何もやる事が無いので無駄に大きいソファでゴロゴロするしか無い。出された紅茶は普通に美味しいので、紅茶だけは満足している。
「ロード様。準備が整いましたのでご同行願います」
本当に帰ってやろうかと思った頃に係の人が呼びに来てくれた。こんなに待たせてつまらない話だったら暴れてやろうかなと危ない事を思ってしまう。 なにせ、この場には対ロードツッコミ役のシエルが居ないのでロードのやりたい放題に出来る。
「それではこちらへ……」「また歩くのか? 王城ってのは無駄にでかいねぇ」「我らが竜王国の要ですからね。やはり一番目立たないと示しがつかないのです」
こう聞くと人間というのはこんな物でしか威厳を保てないのだから面倒臭い生き物だと思う。ロード達の家は他よりも少し大きいだけで、そこまで変わりはなかった。 それでも皆からの信頼は勝ち取っていたし、何の不自由も無かった。
それに、この王城をもう少し小さくするだけでいったいどれくらいの戦力強化が出来るのだろうか。 元人間のロードでも、人類は金の使い方を間違っていると思う。
(元人間でも、俺は竜なんだよな)
多分、不可能だろうけど元の世界に戻れると言われても、竜として生きてきたロードは人として生きる事は出来ないだろう。
そう考えているうちにドデカイ扉の前についた。 中には大勢の人の反応がある。中には人ではない反応もあるが、気にしなくても問題は無いだろうと判断出来る。
「それでは、どうぞ……」
門番の二人が扉をゆっくりと開けて徐々に中が見えてくる。 周りには豪華な服とアクセサリーを身に纏った人達が大勢。その人達の後側には騎士達が待機していて、ライズロークの姿も見られる。 ライズロークは仕事モードらしくて、いつものふざけた態度ではなくキリッとした佇まいでいる。
そして奥には王座に座っている初老、あれが竜王国の王様なのだろう。 王様の後ろに並んでいるのが側近らしく、実力としては申し分ないのが見ただけで分かる。
「貴君がロード殿かな?」「王様自ら話しかけてくれるとは嬉しいっすね。確かに俺がロードだが? 俺が名乗ったんだから王様も名乗ってくれない?」
相手が王様だろうと話し口調は変わらないロードに対して周りは苛立ちを隠せていない。
「おおっ、これはすまない。私は竜王国の王――エルド・ライズ・ドラコーンだ」「……ふーん」「――おいお前! 流石に我慢出来ん!」
ロードが王様の顔をまじまじと見ているとデブに怒られた。横の列から凄い剣幕でロードの前に立ち塞がる。分厚い肉壁のせいで王様が見えなくなった。
「……邪魔なんすけど」「貴様は王と話す資格など無い。今すぐ立ち去れ」「そっちから呼び出ししておいて帰れってのは酷いんじゃないか?」「――マルバル、下がれ。王の命令だ」
ここで側近の一人から助け舟が飛んでくる。意外なところからの助けに少しだけ驚くロード。
「……うっ、ぐ…………」(無駄な労力乙でーす)
王の命令と言われては流石に逆らえないのだろう。デブはロードを睨みながら元いた配置に戻る。 そんな男を心の中で馬鹿にしながら、言葉をかけてくれた側近の一人に目配せして礼をしておく。
「それで私の顔をジッと見ていたが、何かあったのか? 一応、部下におかしなところが無いか確認したのだが……」「いや、王様の玉座は図体の割に狭そうだなぁって思ってな」
ロードの言葉に側近全員が息を呑む。
「――ふふっ、フハハハハッ! ……面白い。ロード殿、私達についてきて貰えますかな?」「……分かった」
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