少女は二度目の舞台で復讐を誓う
少々は呪詛を紡ぐ
「ふふっ」
思わず笑いが漏れる。
「あはっ、あはははっ……!」
笑いが止まらない。
「あははっ……あ~、最っ高……」
本当、最高だ。
過去に戻った理由は知らない。 ……でも、これで私の誓いを果たせる。
「くはっ、ハハハハハハッ!」
胸の奥からじんわりと滲み出る歓喜の熱が、私の体を浸食していく。
湧き上がる実感に、体が震える。
殺せるんだ。絶対に殺そうと誓った奴らを、この手で。
ああ、私は最悪に運がなくて、最高に運がいい。
「はぁ〜〜ぁ…………」
満足するまで笑った後、急激に脳が冷静さを取り戻す。
まずは何をしよう。何をしてやろう。
……いや、急ぐ必要はない。
これは夢ではなく、現実なのだから。 時間はたっぷりある。何でもできる。
「ゴンドル様っ! ご無事ですか!?」
バァン! と扉が開かれ、鎧を着た人達が部屋に入ってくる。 全員がすでに戦闘態勢。それなりの実力を持っているのも紛れていた。
ここには居ないけど、確実に『彼ら』もどこかに待機しているに違いない。
「チッ、いいところだったのに……」
死ぬ前の私だったら問題なく対処できた。 けれど、今の私はレベル1。たとえ経験で勝っていても、これでは分が悪い。
「ゴンドル……」
地面に座りこんでいる憎き男を一瞥する。
「絶対に殺す。必ず殺す。逃げようとしても無駄。地獄の果てまで追いかけてお前に絶望を与えてやる」
それは呪詛のようだった。
ゴンドルだけではなく、護衛や兵士たちすらも私の言葉に短い悲鳴をあげる。
「――待っててね」
素早く窓まで駆け寄り、身を乗り出す。
「っ、逃がすな!」
ゴンドルがそう叫ぶも、遅い。
「あはははっ!」
高らかに笑い、私は木々の中に落ちていった。
◆◇◆
「何なのだあいつは……!」
私は怒りを滲ませた拳で地面を叩く。
「ふざけるな!」
屈辱だ! この私が、伯爵であるゴンドル・バグがただの村娘に……!
『絶対に殺す。必ず殺す。逃げようとしても無駄。地獄の果てまで追いかけてお前に絶望を与えてやる』
長年、公爵家を継いできた私にはわかる。あれは――本物だった。
ブルリと体が震える。
…………恐怖? 私があんな小娘に恐怖を感じているだと!?
「――今すぐ奴を探し出せ! 殺しても構わん!」
兵士共はすぐに動こうとしない。それが私の機嫌を更に悪くさせる。
「さっさと行け!」
「は、はい!」
慌てた様子で部屋を出て行く。 最初からそれをやっていればいいものを、これだから金で雇った者は使えない。
「シャドウ……」
誰も居なくなった私の部屋に、どこからともなく湧き出た黒い影。
「お呼びでしょうか……」
奴らの先頭に立つ者が静かに、しかし鋭さを纏った声を発する。
影に忍ぶ者『シャドウ』は、諜報や暗殺、誘拐などをこなす闇のエキスパートであり、私の、そしてこの国の忠実な下僕だ。
「ノア・レイリアという娘を殺せ」
「承知……」
ふんっ、その冷静を保った態度が気に食わん。
「なるべく早く見つけ出すことだ。家族を殺されたくなければ、な」
「――ッ、わかっております」
いつもは感情を隠しているシャドウも、家族を引き合いに出せば面白い反応が返ってくる。
すでに家族は殺されているというのに、ご苦労なことだ。
「わかったら行け」
『ハッ!』
瞬時に視界から消えて居なくなるシャドウ。 相変わらずこいつらは不気味だが、金で雇った奴よりも使いやすく、確実だ。
数だけはある兵士と、暗殺に特化したシャドウ。 これであの女が死ぬのも時間の問題だろう。
「ノア・レイリア。私に歯向かったこと、後悔するがいい……!」
思わず笑いが漏れる。
「あはっ、あはははっ……!」
笑いが止まらない。
「あははっ……あ~、最っ高……」
本当、最高だ。
過去に戻った理由は知らない。 ……でも、これで私の誓いを果たせる。
「くはっ、ハハハハハハッ!」
胸の奥からじんわりと滲み出る歓喜の熱が、私の体を浸食していく。
湧き上がる実感に、体が震える。
殺せるんだ。絶対に殺そうと誓った奴らを、この手で。
ああ、私は最悪に運がなくて、最高に運がいい。
「はぁ〜〜ぁ…………」
満足するまで笑った後、急激に脳が冷静さを取り戻す。
まずは何をしよう。何をしてやろう。
……いや、急ぐ必要はない。
これは夢ではなく、現実なのだから。 時間はたっぷりある。何でもできる。
「ゴンドル様っ! ご無事ですか!?」
バァン! と扉が開かれ、鎧を着た人達が部屋に入ってくる。 全員がすでに戦闘態勢。それなりの実力を持っているのも紛れていた。
ここには居ないけど、確実に『彼ら』もどこかに待機しているに違いない。
「チッ、いいところだったのに……」
死ぬ前の私だったら問題なく対処できた。 けれど、今の私はレベル1。たとえ経験で勝っていても、これでは分が悪い。
「ゴンドル……」
地面に座りこんでいる憎き男を一瞥する。
「絶対に殺す。必ず殺す。逃げようとしても無駄。地獄の果てまで追いかけてお前に絶望を与えてやる」
それは呪詛のようだった。
ゴンドルだけではなく、護衛や兵士たちすらも私の言葉に短い悲鳴をあげる。
「――待っててね」
素早く窓まで駆け寄り、身を乗り出す。
「っ、逃がすな!」
ゴンドルがそう叫ぶも、遅い。
「あはははっ!」
高らかに笑い、私は木々の中に落ちていった。
◆◇◆
「何なのだあいつは……!」
私は怒りを滲ませた拳で地面を叩く。
「ふざけるな!」
屈辱だ! この私が、伯爵であるゴンドル・バグがただの村娘に……!
『絶対に殺す。必ず殺す。逃げようとしても無駄。地獄の果てまで追いかけてお前に絶望を与えてやる』
長年、公爵家を継いできた私にはわかる。あれは――本物だった。
ブルリと体が震える。
…………恐怖? 私があんな小娘に恐怖を感じているだと!?
「――今すぐ奴を探し出せ! 殺しても構わん!」
兵士共はすぐに動こうとしない。それが私の機嫌を更に悪くさせる。
「さっさと行け!」
「は、はい!」
慌てた様子で部屋を出て行く。 最初からそれをやっていればいいものを、これだから金で雇った者は使えない。
「シャドウ……」
誰も居なくなった私の部屋に、どこからともなく湧き出た黒い影。
「お呼びでしょうか……」
奴らの先頭に立つ者が静かに、しかし鋭さを纏った声を発する。
影に忍ぶ者『シャドウ』は、諜報や暗殺、誘拐などをこなす闇のエキスパートであり、私の、そしてこの国の忠実な下僕だ。
「ノア・レイリアという娘を殺せ」
「承知……」
ふんっ、その冷静を保った態度が気に食わん。
「なるべく早く見つけ出すことだ。家族を殺されたくなければ、な」
「――ッ、わかっております」
いつもは感情を隠しているシャドウも、家族を引き合いに出せば面白い反応が返ってくる。
すでに家族は殺されているというのに、ご苦労なことだ。
「わかったら行け」
『ハッ!』
瞬時に視界から消えて居なくなるシャドウ。 相変わらずこいつらは不気味だが、金で雇った奴よりも使いやすく、確実だ。
数だけはある兵士と、暗殺に特化したシャドウ。 これであの女が死ぬのも時間の問題だろう。
「ノア・レイリア。私に歯向かったこと、後悔するがいい……!」
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