少女は二度目の舞台で復讐を誓う
少女は復讐を誓う
気持ち悪い。
王族の上っ面だけの笑顔。 ニヤニヤと下卑た目で見てくる貴族。 正義を盾にした偽善者。 人を値踏みするような視線。 肉を斬る感触。 降り注ぐ血の雨。
全て、全てが気持ち悪い。
何度、私自身が嫌になったか。 何度、そんな自分に吐き気を催したか。
「――だったらやめるか?」
ある男が言った。 そいつは肥太った伯爵貴族だった。
「別にやめても構わんぞ。その代わり、お前の家族がどうなるか……わかっているんだろう?」
私は、この男に脅されている。 ここで逃げたら家族を殺される。
だから、やるしかない。
もう一度、あの幸せだった生活に戻るために……
◆◇◆
「なん、で……」
極限まで擦り切れた声が、私の口から溢れた。 私の視線の先、そこには見知った顔が四つ。首だけの状態で、テーブルの上に並べられていた。
「なんで、とはおかしな話だな」
座り込む私の横から、伯爵貴族の声がかけられる。
「お前が望んでいたのではないか。家族に会いたい、とな」
その首たちは、私の家族のものだった。
「……お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
もちろん、返事はない。 震える足を無理矢理動かして、家族だったものに近寄る。
「お父さん、お母さ――あぐっ!」
バランスを崩した私は、前のめりに倒れてテーブルにぶつかった。 ゴロン、と私の前に何かが転がる。
「おいおい、折角会えた家族なんだ。大切にしなければ可哀想だろう?」
嘲笑うように男が言う。
直視したくない現実を、無情にも突きつけられる。
「……ああ、あ、あぁああぁあっ!」
なんでこんなことに。 なんで、なんでなんでなんでどうして!
「ふんっ――死ね」
「ァああアああァ――ガッ! ……ァ?」
胸に感じた鋭い痛み。じんわりと熱を帯びて、すぐさま許容できない激痛が全身を支配する。 口内に鉄臭い液体がこみ上げてきて、上手く息ができない。
そこでようやく、胸を刺されたのだと理解する。
「なんで……どう、して……!」
「……ふむ、そうだな。ここまで頑張った褒美に教えてやろう。お前は邪魔になったのだよ」
それはとても単純で明解だった。
「……ふっ、よかったな。これで愛する家族の元に逝けるぞ」
胸から凶器が乱暴に抜かれ、体の支えを失った私は、地面に倒れる。 体から何かが抜けていく。意識を上手く保てない。
――ふと、薄れゆく視界に、お父さんの首が映った。
「……あ、あぁ……うぁ…………」
限界を迎えた体を必死に動かして、手を伸ばす。 首を掴んで、それを大切に抱きかかえる。
「……ごめ、ん……ね…………」
もし人生をやり直せるなら。 もし神様が私にチャンスをくれるなら。
――殺してやる。
皆殺しにしてやる。私の、私達の人生を狂わした奴らを、最も残酷な方法で、確実に殺す。
「うふっ、あはは――アハハ、ごふっ! ハハハッ!」
血を吐き出しながら、私は高らかに嗤う。
「なっ!? まだ生きているのか!」
憎き男が喚いている。 その声を聞くだけで、私の中に燻る復讐心が、憎悪の炎を巻き起こす。
「あぁ、皆、殺してやる――――」
こうして私の、ノア・レイリアの生涯は幕を閉じた。
王族の上っ面だけの笑顔。 ニヤニヤと下卑た目で見てくる貴族。 正義を盾にした偽善者。 人を値踏みするような視線。 肉を斬る感触。 降り注ぐ血の雨。
全て、全てが気持ち悪い。
何度、私自身が嫌になったか。 何度、そんな自分に吐き気を催したか。
「――だったらやめるか?」
ある男が言った。 そいつは肥太った伯爵貴族だった。
「別にやめても構わんぞ。その代わり、お前の家族がどうなるか……わかっているんだろう?」
私は、この男に脅されている。 ここで逃げたら家族を殺される。
だから、やるしかない。
もう一度、あの幸せだった生活に戻るために……
◆◇◆
「なん、で……」
極限まで擦り切れた声が、私の口から溢れた。 私の視線の先、そこには見知った顔が四つ。首だけの状態で、テーブルの上に並べられていた。
「なんで、とはおかしな話だな」
座り込む私の横から、伯爵貴族の声がかけられる。
「お前が望んでいたのではないか。家族に会いたい、とな」
その首たちは、私の家族のものだった。
「……お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
もちろん、返事はない。 震える足を無理矢理動かして、家族だったものに近寄る。
「お父さん、お母さ――あぐっ!」
バランスを崩した私は、前のめりに倒れてテーブルにぶつかった。 ゴロン、と私の前に何かが転がる。
「おいおい、折角会えた家族なんだ。大切にしなければ可哀想だろう?」
嘲笑うように男が言う。
直視したくない現実を、無情にも突きつけられる。
「……ああ、あ、あぁああぁあっ!」
なんでこんなことに。 なんで、なんでなんでなんでどうして!
「ふんっ――死ね」
「ァああアああァ――ガッ! ……ァ?」
胸に感じた鋭い痛み。じんわりと熱を帯びて、すぐさま許容できない激痛が全身を支配する。 口内に鉄臭い液体がこみ上げてきて、上手く息ができない。
そこでようやく、胸を刺されたのだと理解する。
「なんで……どう、して……!」
「……ふむ、そうだな。ここまで頑張った褒美に教えてやろう。お前は邪魔になったのだよ」
それはとても単純で明解だった。
「……ふっ、よかったな。これで愛する家族の元に逝けるぞ」
胸から凶器が乱暴に抜かれ、体の支えを失った私は、地面に倒れる。 体から何かが抜けていく。意識を上手く保てない。
――ふと、薄れゆく視界に、お父さんの首が映った。
「……あ、あぁ……うぁ…………」
限界を迎えた体を必死に動かして、手を伸ばす。 首を掴んで、それを大切に抱きかかえる。
「……ごめ、ん……ね…………」
もし人生をやり直せるなら。 もし神様が私にチャンスをくれるなら。
――殺してやる。
皆殺しにしてやる。私の、私達の人生を狂わした奴らを、最も残酷な方法で、確実に殺す。
「うふっ、あはは――アハハ、ごふっ! ハハハッ!」
血を吐き出しながら、私は高らかに嗤う。
「なっ!? まだ生きているのか!」
憎き男が喚いている。 その声を聞くだけで、私の中に燻る復讐心が、憎悪の炎を巻き起こす。
「あぁ、皆、殺してやる――――」
こうして私の、ノア・レイリアの生涯は幕を閉じた。
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