Q.最強の職業は何ですか? A.遊び人です

ノベルバユーザー225229

Q.国を追い出される前は何しましょう? A.挨拶って大切ですよね

 聖ゾディアック王国、中央大陸にある王都の東西は砂漠と森林で覆われ、北部は山岳地帯、南部には草原が広がっている その草原地帯をひたすら南下する四人の男女がいた。
「それで、マコト殿。これからどうするのだ?」
 王国を追い出されて二時間後、真達のパーティは南に向かって草原を歩いていた。
「どうするって――――まぁとりあえず魔王軍に攻められているところに行くしかないよな(行くわけないけどな。でもまだ黙っておこう)」
「どこが攻められているかマコトは知ってるの?」
 エリーヌの問いに答える真だが、何の情報もなく追い出されしまった為、続くクリスの質問には首をひねってから舌を出す。
「まったく――思慮深いんだか何も考えてないんだか」
 その様子を見てクリスがため息混じりに呟く。 街を出る前にガル爺から魔王軍についての情報は得ている。しかし「面倒なことはやらない」がモットーの真である。 魔王軍のいるところになど向かうはずがない。
「兄さんはいつも通りですよ。でもリュートさんが来ないのはちょっと意外でした」
 テテが呟いた言葉に真が言葉を失う。 その様子に気付いたのか、テテが自分の口を手で塞ぐ。
「気にしなくても良いぞ。リュートは――あの街を守らないといけないからな。国王にもそう言ってあるし、逆にその方が俺も安心だ」
 リュートは真が追い出された街のハンターで、その中でもナンバーワンの地位についている。さすがに国王と言えどもそのハンターを手放すのには勇気がいるらしい。 リュートは街に残れるよう国王に進言すると、二つ返事で了承してくれたのが良い証拠だ。 真としてもその方が安心できるわけだからそのことに何も不満はない。しかし当のリュートは「君について行く」と言って、それを説得するのに大分苦労したわけであるが、続く国王の「それならたまにはこの国に戻ってくれば良い」との妥協案で納得したようである。
「しかしそうは言っても、リュート殿のあの取り乱し方は尋常ではなかったぞ。そう考えるとやはりマコト殿は罪を作るのが好きなようだ」
「やはりってなんだよ? 俺は別にパーティメンバーと恋愛フラグを立てる気はねぇよ!」
 今まで散々恋愛フラグを立ててきた男の言うセリフではない。恐らくパーティメンバー全員が同じことを思ったはずである。一斉に冷たい視線が真に突き刺さる。
「えっと――みんなどうした? 俺、何か変なこと言ったか?」
 しかし当の本人はその原因を自分が作ったという事に、どうやら気付いていない様である。
※ ※ ※ ※
 遡ること約二時間前、国王じきじきに追放を言い渡された真であるが、この国を出立するための準備をしていたわけではない。
「それじゃガル爺、世話になったな」
「小僧がいなくなると少し寂しくもなる――――などと言うとでも思ったか? これでまた静かな暮らしに戻れると思えば、せいせいするわい!」
 この街にいる間、公私ともに良くしてくれたガル爺に挨拶をしていた。
「素直じゃないなぁ、本当は寂しいのに」
「ふんっ! 寂しくなどないわ! じゃが世話になったしの――」
 真の言葉に否定の言葉を返すが、その表情から寂しいのは見てわかる。
「それなら何かくれても良いんだぜ! お金じゃなくてもアイテムや情報などなど――」
「調子に乗るな! じゃがまぁ、魔王についての情報は少し教えてやっても良いかの」
 そう言うとガル爺は、店の奥から大きな筒状の紙を持ってきてテーブル席に広げる。
「ガル爺これは――地図か?」
「そうじゃ! こうして小僧がこの世界の全体図を見るのは初めてじゃろう? 今儂らがいるのがここ、聖ゾディアック王国じゃ。儂の得た情報ではこの街が、魔王軍幹部『アルデバラン』の侵攻を受けていると聞いた」
聖ゾディアック王国の東、砂漠地帯を抜けた場所にある街をガル爺が指差し、そこがアルデバランという魔王軍の幹部に攻撃を受けているという。
「あとは西に行けばそれなりにレベルの高いモンスターがおる。優先度を上げるならここじゃな」
 その情報を聞いて真が次に行くところは決定した。
「(よし、南に行こう)そっか、サンキューガル爺。参考になった。それで、もう一つ相談があるんだが――――」
「――――テテの事か?」
 まるで真の心を読んだようにガル爺が口を開く。 いや、もしかしたら最初から分かっていたのかもしれない。真がこの店に足を運んだ理由はこの話をするためだという事が。
「あぁ――そうだ」
「ふむ、それはテテに聞いた方が良いじゃろ」
 真はきっと心配していたのだ。もし肉親であるテテを真が連れて行ってしまったら、ガル爺は一人になってしまう。 それとこれは別だとガル爺なら笑いそうなもんだが、万が一という事もあるわけであり、何よりテテがガル爺の元を離れるかどうかは不明なままである。
「いや、でもそれだと」
「テテだってもうそれなりに大人じゃ。これからの事はテテに聞いた方が良いじゃろう」
 その言葉に真が言葉を失う。大人と表現するにはまだ幼い気がするのだが、確かにハンターとして登録している以上、旅に出ることは覚悟しているはずである。
「あまり悩む必要はない。今日の夕方位にはどうせこの店に皆集まるんじゃろう? その時に話せばよい」
「分かった――って俺はそれまでどうすればいいんだ?」
 今はまだ朝方――と言うよりも昼に近いのだが、夕方までは時間がある。ありすぎる。 その空いた時間をどう有効活用するかをガル爺に聞く真だが
「そんなの儂が知ったこっちゃないわ! あいさつ回りにでも行けば時間ぐらい潰せるじゃろ!」
 冷たく突き放しながらも最後にはアドバイスをくれるあたり、ガル爺も真にはかなり甘いようである。 ガル爺の店を後にした真が向かったのは、この国の最大ギルド「月光花」である。その月光花のクエストを受理するカウンター越しに、真が話しかけているのは案内役のミオンである。
「――とまぁ、そんなこんなでこうしてあいさつ回りしてるってわけだ。お世話になりました。ミオンさん」
 振り返ってみれば、真が勇者として国王に任命されたのは、この月光花での依頼があったからである。
「そうですか――――マコトさんがいなくなるのは、やはり少し寂しくなりますね」
 短く呟き、決して短くない時間黙り込んでから頬に手を当て、本当に寂しそうな瞳で真を見てそう話す。 その様子を見て、真は短く嘆息するとゲスな笑みを浮かべながらミオンに詰め寄る。
「マジっすか? そしたらミオンさんも俺についてきますか? いやぁ、モテる勇者は辛いなぁ」
 努めて明るく、いつも通りを装って語るその様子は、久しぶりに見るチャラい真の姿である。
「はいはいそうですね――――でもどうしましょうか。これからマコトさんにお願いしようと思っていた依頼があるんですが――」
「内容によっては今から片づけてきますよ」
 街を出たらしばらく会う事はないだろう。その前にお世話になったギルドへ、せめてもの恩返しと思って提案した真であるが、
「いえ、さすがに申し訳ないと思いますので」
 ミオンの方から依頼を取り下げると伝えられる。
「全然かまいませんよ」
 ミオンの遠慮がちの態度に、真が依頼を受ける旨を話す。 しかし、ミオンは何故か困ったような笑みを浮かべ、眉をハの字に歪める。
「いえ――依頼主が女性なので、マコトさんに紹介してしまうと、後々厄介なことになりかねませんので、やはりお断りしますね」
 どうやらミオンが申し訳ないと言っているのは真にではなく、依頼主の方であったようだ。 ミオンの冷たい言葉と視線を受け、がっくりとうなだれる真であった。 真が月光花を出た後、
「全く、無理してるのがバレバレですわよ」
 そう呟いたミオンの声は、真に届くはずもなかった。
※ ※ ※ ※
 ギルド月光花を出て数分後、真はカジノの前にいた。これから遊ぼうというのではない。待ち合わせの相手がそこを指定してきたからだ。
「お待たせ~」
 その真の後ろから明るい声を発しながら一人の少女が駆け寄ってくる。
「待ったわ~。本当待った。待ち合わせ時間を指定しといて、遅刻するってどういうことだよ?」
「はぁ――あのねぇ君。そういう時は、『俺も今着いたところだから』って言うのがセオリーじゃないの?」
 大きく溜息をつき、大きなブラウンの瞳に呆れを滲ませ、同じくブラウンの髪をかき上げながら指を突き付けて辛辣な言葉を投げる少女、リュートである。
「前のリュートの服装だったらそう言ったかもしれないが、今日はいたっていつも通り。俺がそこまで気を使った言葉を言う必要はない」
 そのリュートに、手を腰にふんぞり返りながらきっぱりと断言する。 待ち合わせたのが美少女ならばそう答えただろう。しかし今目の前にいるのは違う。美少女であっても今は魅力に欠けると、そう言い放ったのだ。
「それはさすがに君でも失礼じゃないかな?」
「俺がこういう性格なのは大体わかるだろ?」
 質問に質問で返されたリュートだったが、そのことは咎めずに「まぁね」と言って再びため息をつく。
「それでリュート、今日はどうしたんだ? その様子じゃデートってことは――ないだろうけど」
 服装もそうだがリュートの態度から読み取ったのだろう、真が今日呼び出された理由を聞く。
「えっと――君はいつ頃この街を出て行くのかな?」
 上目づかいで真の顔を覗き込むように見上げてそう質問する。
「ん? そうだな――今日の夕方ぐらいには出るつもりだけど」
「え! そんなに早く?」
 真の答えにリュートの声が大きくなる。周囲にいる人も何事かと二人を見ているのを気配で察する真だが、リュートは真の答えにだいぶショックを受けたようで、暗い表情のまま俯いてしまった。
「あ? あぁ。出来れば早い方が良いと思ってるんだが――どうした?」
「えっと――君、僕との約束、覚えてるよね?」
 リュートの言う約束・・とは、「二人でこの街を守る」という事に間違いないだろう。しかし、
「忘れたわけじゃない。けど、今は状況が状況だ。さすがにこの街にずっといるわけにもいかないだろ?」
 真の言葉はもっともなことである。もちろんその原因を作ったのも真であるのだが。
「それは――そうだけど」
 国王権限で真が出て行かなければならないのは揺るぎない事実である。しかしリュートとしても、この先魔王軍が攻めてきた場合、自分だけで守れるかという不安もあるのだろう。 いや、もしかしたらそれ以外の別の考えがある様にも見える。
「分かった。そしたら僕が国王に直談判する!」
 僅かな逡巡の後、リュートが勢いよく顔を上げる。何かを決心して行動しようとしている瞳で真を見ると、踵を返して国王のいる城に向かって歩き出した。
「直談判って――いやいや、それマズイだろ!」
 リュートの言った言葉を理解し終え、事の重大さに気付いてリュートの後を追って城に向かう真であった。
※ ※ ※ ※
「おいリュート! 少し冷静になれって!」
「うるさいな! 僕はいたって冷静だよ」
「それのどこが冷静なんだよ? 良いから一回立ち止まれってば」
 直談判すると言い出し、国王のいる城に乗り込んだマコトとリュートだが、抱えている感情は全く正反対であった。 リュートは真の国外追放をやめさせようとしており、真はリュートの直談判を阻止しようとしているのである。 城に乗り込む前に他のパーティメンバーに、何事かと言う目で見られたが、その説明すらする暇がなかったのは言うまでもない。
「だってこのままだと君、今日中に街からいなくなっちゃうんでしょ?」
「まぁそれは――そうだけど」
 はっきりしない口調で真が答える。真としても別にこの街から出て行きたいわけではない。 だが、国王の命令とあれば出て行かないわけにもいかない。
「(俺も――丸くなったのかなぁ?)確かに昔の俺なら出て行くのを拒否したかもしれない。でも今はそんなに嫌な気分はしない――むしろ嬉しいし、安心してるぐらいだ」
「安心? どうして?」
 そう言うリュートの瞳は僅かに涙がにじんでいた。恐らく真の言葉をただの気休めと受け止めたのだろう。 真がリュートに言った答えは気休めではなく本心だ。リュートの疑問を受け、真は指を一本本立てて口を開く。
「一つは危機感だな。俺はこういう性格だから、誰かにケツを叩かれないと動かない。今回みたいなことが無い限り、きっと俺はあの街にずっと居座ってたと思うぞ」
 確かにその通りだ。真は基本面倒なことはしない主義である。もしあのままずっと街にいたら、クリスからの依頼――真がこの世界に転生した意味がなくなってしまう。
「一つは――ってことは、まだあるってこと?」
 目に涙を貯めたまま、真の言葉の裏を読んだリュートが尋ね、それに真が指をもう一つ立てて話を続ける。
「もう一つはお前がいるからだリュート」
 そう言うと真は片目を閉じて微笑む。
「僕がいるから?」
 真の答えに首を傾げて問い返す。
「そ! リュートがいればこの街は安心だろ? そしたらこの街はリュートに任せ、俺は魔王を倒す。そんで魔王を倒したらまた帰って来ることが出来るだろ? あとは――たまに街の外で話すことぐらいは出来ると思うけどなぁ」
 真が言っているのはつまり、自分が魔王を倒した後、戻ってくる場所はここしかない。だが自分が離れた後、魔王軍が攻めてきたら――と思うとまともに旅も出来ない。 しかしリュートがこの街にいてくれれば安心して旅が出来る。そしてこの街に戻ってくる理由も出来ると言っているのだ。 リュートもその意味を正確に読み取ったのだろう、リュートが頷くと、瞳に溜めていた雫が頬を伝って城の床に落ちて消える。
「おいおい、泣くことないだろ! そんな風に泣かれたらどう反応したら良いかわからねぇから!」
 リュートの涙を直に見てしまい、あたふたと両手を振りながらリュートに近づく。
「ふぅ。全く――君ってやっぱり、罪作りな男。だよね? 僕がそんなことで納得すると思う?」
 瞳から止めどなく流れる涙を手で拭い、リュートが真に尋ねる。 リュートの言っていることに首を傾げた真だが、そのぐらいの女心が分からない真ではない。だがここで自分の心が動いてしまっては、この街を旅立つことが出来ないことも分かっている。 だから真は努めて分からない、と言った素振りを見せたのだろう。 何の答えも出せず、二人は城の中で立ち尽くし見つめ合う。どのくらいの時が流れたのだろうか、長いようで短い時間を見つめ合っていた二人に、
「貴様、まだこの国に居ったのか? 早く出て行かんか!」
 後ろから突然声が掛かり、二人同時に振り返る。
「「国王!」」
 振り返ると二人のすぐ目の前には、真に国外追放を言い渡した張本人、国王が立っていた。 その表情を見るに、未だ怒りが収まっていないのは明らかである。
「国王、さっきの発言を撤回していただけませんか?」
 だがその国王にリュートが詰め寄って腰に手を当て、顔を見上げる形で覗き込んで発言の撤回を要求する。 眉尻が上がっているから、かなり不機嫌なようだ。いやむしろリュートも怒り心頭と言ったところかもしれない。
「残念だが、それは出来ん。あれだけ多くの者達がいた前での発言だからな。それに、マコトの無礼極まる発言は、国王として許すわけにはいかない」
 だがそのリュートの要求を、国王はあっさりと拒否する。
「それじゃあ僕もマコト君の旅に同行するけど、それでも良いですよね?」
 どうやら国王に突き付けたのは、要求ではなく、真の国外追放を撤回しなければ、自分が出て行くという取引だったようだ。 リュートの事は国王も既に知っており、その実力がこの街にいるハンターで、ナンバーワンであることも知っているようだ。 リュートの発言に、さすがの国王も言葉を失っているようだ。もごもごと口の中で何かを言っているようだが、その言葉が口から出てくることは無かった。
「何もおっしゃらないという事は、僕の存在はこの街には不要という事で理解させてもらいます。それじゃ――君、行こ!」
 国王の態度にどうやら業を煮やしたのか、リュートは真の手を握り城の外に向かって歩いて行く。
「あ、いやちょっと待ってくれ!」
 城を出ようとする真とリュートを国王が慌てて呼び止める。
「何ですか? 僕は今更考えを帰る気はないんですけど」
「それならこうしたらどうだろうか? この街に拠点を置くのは認められないが、たまに帰ってくるのは認めよう。もちろんギルドのクエストも受けて良い」
 恐らく国王としては苦渋の決断だったのだろう。その証拠に表情が曇り、額に血管が浮き出ている。
「僕はマコト君にこの街に残って欲しい。そう言ったつもりなんだけどな」
 かなり棘のある言葉でリュートが国王の提案を拒否する。 そのことに国王が腕を組み、俯きながらどうしたものかと考え込んでいた時、
「まぁまぁリュート。ここは国王の提案に乗った方が良いと思うぞ」
 リュートをなだめる様に真が口を挟む。
「どうして?」
「さっきも話しただろ? 俺はあのままだとこの街を出て行かないだろうし、リュートがいてくれた方が帰って来る目的が出来る」
 別にリュートを見捨てるわけではない。ただこの街にはガル爺もいるし、場合によってはテテも残していかないといけない。 それならばリュートが残り、この街の安全を守ってくれた方が良い。 それに国王も妥協案を出したことにより、この街に立ち入ることは出来る。それなら暇な時や息抜きの時に戻っても来れる。真はそう思って発言したのだ。
「だからリュート。俺が魔王を倒したらリュートを迎えに来るさ!」
「それって――その、いわゆる――プ、プロ、プロ、プロポ」
 自分で言っていて恥ずかしくなったのか、リュートは顔を真っ赤に染め、頭から文字通り煙を上げて思考を止めてしまった。
「その答えはリュート自身で見つけなよ!」
 しかしリュートの言葉は最後まで紡がれることは無かった。どちらともとれる答えを返し、未だ顔を赤くさせながら湯気を上げているリュートをその場に残し、
「さてと、ちょっと長居し過ぎたな。んじゃまた! 失礼します国王!」
 真は片手を上げながら城の外へと走り去って行ってしまった。
「――はぁ、全く本当に――罪作りな男だよね。マコト君は」
 その走り去った真に向けて笑顔で呟くリュートであった。
※ ※ ※ ※
 城を出た真は腕を組み、次の目的地に向かって歩いていた。
「さてと、あとはテテか――やっぱりガル爺と一緒にいた方が――」
「あたしがどうかしたんですか?」
 その真の前方から声が掛かる。強い気持ちを秘めた少女の声、既に何度も聞いたことがある仲間のアークメイジ、テテの声だ。
「テテ! ちょうどよかった! これからお前のところに行こうとしてたんだ!」
「あたしのところに? それって今後についてですか?」
 今後について、という発言が出るならば知っているはずだ。真が国外追放を言い渡されたことを。 恐らくガル爺にでも聞いたのだろう。
「(まったく、今日の夕方に話すって言ったのに)まぁそうだ。それで、テテはどうするんだ?」
「何がですか?」
 真の質問に、本当に意味が分からないという表情で首を傾げ、尋ね返しながら真に近づいて行く。
「いや何がって――俺の考えなんだけどな。テテはやっぱりガル爺と一緒に――」
「付いて行きますよ! 当然」
 テテの質問に答えようとした真だったが、その言葉は眼前に迫ってくるテテによって遮られてしまった。
「良いのか? こう言ったらなんだが、テテはやっぱり――」
「付いて行きますよ!」
 再度確認しようとする真だったが、再びテテの言葉に遮られてしまった。 どうやら何があっても付いて行くと、固く決めているようだ。
「それに、今更おいて行かれたら――」
 下を向いてそう呟くテテの肩を真が軽く叩き、
「分かった。これからもよろしくな!」
 真が旅への同行を許可する。 テテも真には好意を抱いている。そのことは真自身も気づいている。だからテテの言おうとしていることは、そこまで聞ければ十分だったのだ。
「はい! それじゃ早速行きましょう!」
 テテが顔を上げてそう言うと、真の手を握って街の外へと向かって行く。
「待て待て! まだクリスとエリーヌに――」
 予定ではガル爺の店で夕方、話し合う予定だった。しかし、
「あ! マコト遅ーい!」
「女性を待たせるのは感心しないぞマコト殿」
 どうやらテテを含め、この女性陣は真の旅に同行することが決まっていたようである。
「はぁ――ったく。後悔しても知らねぇぞ!」
 ため息混じりそう言う真であったが、その顔は微笑んでいた。 今後起こりうるかもしれない様々な苦難も、この四人なら乗り越えていけるのではないか、とそう感じる真であった。

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コメント

  • ⁎*

    このすばに少し似てる

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  • 七瀬はやと

    毎回楽しませて貰っています!Qってのが個人的に好きで、ストーリーも読んでいて面白いのでこれからも頑張って下さい!

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