Q.最強の職業は何ですか? A.遊び人です

ノベルバユーザー225229

Q.最強の職業は何ですか? A.遊び人です

 現在、聖ゾディアック王国に恐怖を与えている魔王の幹部は十二人いる。 その幹部は、過去に世界征服をたくらみ、その時代の勇者により討伐された魔人、魔女などである。 現在の魔王が「魔王」であるのは、その強力な魔力によって、かつてのそれらを復活させたからである。 中には復活した時、魔王に戦いを挑んだものもいたようだが、あっけなく返り討ちに合い、魔王の軍門に下っているのだ。 しかし、太古の昔から活動し、魔王がその支配下に置けなかったものもある。 機動魔獣ラサラグェ――神話の時代より伝えられし、最悪の魔獣である。 伝承によるとラサラグェは、古代の魔法帝国が召喚したと言われており、その姿は巨大な双頭の竜であるとか、巨人であるとか言われているが、通った道には草一本残らないため、真実は闇の中である。 召喚した魔法帝国はというと、ラサラグェの覚醒と共に、真っ先に滅亡したとされている。 しかし、姿を見た者がいないことから、「ただの伝説」「噂話」とも言われている。 その古代の魔獣が、現代に覚醒したらどうなるのだろう。


 既に太陽が西へ落ち、辺りが暗くなり始めてから相当の時間が経過していた。 先日、思わぬことからパーティ内で恋愛フラグが立った真のパーティでは
「やっと終わった~」
 真とエリーヌの今日のクエストが終了し、いつものガル爺の店「猫の足音」で一杯飲もうとしていた。 バランスの悪かったパーティに、新しい仲間である、盗賊のリュートを迎え入れてまもなく一ヶ月が経過しようとしている。
「しかし、マコト殿は存外真面目なのだな」
「ん? 意外か?」
 まもなくパーティメンバーと約束した、一ヶ月間の無休クエストが終わりを迎えようとして、クエストの全てを嫌な顔一つせずにこなした真に、エリーヌが声を掛ける。
「正直なところ、かなり意外ではある。マコト殿の事だから、一日ぐらい休みをくれ、と言ってもおかしくはないと、そう思っていたのだが――――」
 今のメンバーとパーティを組んで、一ヶ月以上が経過し、徐々に真の性格も皆に知れ渡ったところである。 真は基本的には面倒なことが嫌いであり、女性関係にだらしなく、パーティメンバーとも様々な恋愛フラグを立てる、というかなり質の悪いキャラクターをしている。 しかし
「ん~~、まぁそれも考えなくはなかったんだが――――正直なところ、パーティメンバーの心象をこれ以上悪くしたくない――――ってのが本当の気持ちだ」
 顎に手を当てて考える仕草をし、エリーヌに向きなおってから、なぜ素直にクエストをこなしていたのかを告げる。
「本当にそれだけならば良いのだが――――まぁそれで、まもなくマコト殿に与えた罰が終了することになるが――――」
 エリーヌが最初に意味深な言葉を発したのには理由がある。 真は、魔王軍が攻めてきた時、リュートを仲間に加えた時、国王から報酬を手に入れた時など、様々なことを考慮していた。 それ故、何かしらの思惑があるのでは、と考えたが故だ。
「なんか棘のある言い方するな――――別に今は裏があるわけじゃないさ」
「そうか? では、その期間が終了したらマコト殿はどうするのだ?」
「どうするって?」
 エリーヌの質問に首を傾げて真が疑問を投げる。
「いや、私たちとの約束が終了した後、マコト殿はどうするのか? と聞いているのだが――――」
「ん? そりゃ、魔王討伐の旅に行こうと思ってるけど」
 今更何を言うのかと、そんな表情を浮かべる真である。
「その旅には、その――――私たちも連れて行ってくれるのか?」
 真は事あるごとに、「ポンコツパーティ」と言っていた。 そのポンコツパーティの一員である自分たちを見捨て、一人で旅に出てしまうのではないかと、エリーヌは不安に思ったのだ。 しかし
「ん? 逆についてきてくれないのか?」
「いや、まさか! 付いて行くに決まっているだろう!」
「それならこれからもよろしくな!」
 どうやら真には、そんな考えは全くないようである。
「う、うむ。だが、良いのか? マコト殿」
「何が?」
「その――――私たちで、足手まといにならないだろうか?」
 恐らくエリーヌは不安に感じているのだ。 ポンコツパーティなのは、自分達で自覚している。 そのポンコツである自分たちが、今後足手まといになり、見捨てられることもあるのではないだろうかと、そう思っているのだ。
「足手まといにならないか――――って、今更だろ!」
「――――そう、だろうな」
 真の返事を聞き、がっくりと膝に手を置いてうなだれるエリーヌ。 そのエリーヌの不安を正面から受け止め、いや、さらに傷口に塩を塗りまくるがごとく返す真であるが
「それに――――」
 真がゆっくりと口を開く。
「それに?」
 真の口が何を言うのか、更に不安になるエリーヌが真の顔を見上げる。 そのエリーヌが見た真の顔は、なぜだかいつもよりも明るく、爽やかに見えた。
「みんながついてきてくれなかったら、せっかくのハーレムが台無しになるじゃないか!」
「――――マコト殿」
 冷たく、鋭い視線が真を射抜く。
「ん? 何だ?」
 先ほどの爽やかな顔のままエリーヌに視線を移す。
「まさかその為だけに、私たちとパーティを組んでいるのだろうか?」
 エリーヌが表情のこもらない声色で真に尋ねる。
「そんなの、当然じゃないか!」
 自信満々に答える真の表情に、悪気の色は一切ない。 むしろ一緒にパーティを組んでやっている、という表情である。
「私たちは、マコト殿の恋人でもなければ、愛人でもないのだが」
「以前のクエストの事、なかったことにしようとしてないか?」
 真の言う『以前のクエスト』とは、真に対するこの罰が始まってから約一週間後の事である。 あるクエストでエリーヌと組んだのだが、その時にエリーヌが真に対して、恋愛感情を抱いていることを仄めかしてきた。 そのことを言っているのだが
「マコト殿に対する気持ちは嘘ではない。だが、それとこれでは――――」
「話が違う」と言おうとした時
『緊急クエスト! 緊急クエスト! ハンターの皆さんは至急、ギルド「月光花」まで集合してください』
 大音量の放送が聞こえる。 声の主は、ギルド「月光花」のハンター案内係であるミオンのものだ。
「緊急クエストって月に一回あるのか?」
「本来ならこんなに多くはないはずだ。年に一度あるかないかといったところだが――――」
 この世界に徐々に慣れてきてはいるが、それでも真にはこの世界の常識がない。 それゆえ、緊急クエストの知らせを聞くのも、そんなに驚くことではないのだが
「以前のメサルティムの時もそうであったが、最近は多い。とりあえず、月光花に向かうとしよう。マコト殿!」
 どうやら緊急クエストはやはり緊急のようだ。 エリーヌの声色が一気に真剣さを帯び、真の名前を呼ぶ。
「えぇ~~。今クエスト一つ終わったばっかじゃん! 行かなくてもいいんじゃない?」
 やはり真は面倒なことが嫌いである。この緊急を告げる放送にも、いっこうに席を立とうとしない。 しかし
『勇者マコト様は必ず来てください!』
 続く放送で、自分の名前を呼ばれたことで、エリーヌと同じように真剣な表情となる。



 表通りにあるギルド「月光花」は、この国内で最大にして唯一のギルドである。 いや、正確には「猫の足音」もギルドなのだが、利用する者は真たちだけであるため、この国でギルドと言えば月光花なのである。 真たちがクエストの依頼を受けるのは、基本的にはガル爺の紹介であるため、月光花になじみは無い。 そのギルドの扉を開けると
「マコトよ! もうそなたしか頼れるものがおらん。どうかこの龍剣で国を救って欲しい」
 ガル爺と同じような白い髪と髭。水晶を施した杖。黄金の王冠。 この世界に来て二度目の対面となる、この国の国王である。
「この龍剣はかつての龍王が力を封じ込めたと言われている剣じゃ。どうか宜しく頼む」
「あの――――来たばかりで状況が飲み込めないんですが、どうしたんですか?」
 国王に差し出された剣は、柄頭に龍の頭が装飾され、ひと目で高価と分かる剣である。 その龍剣を見つめながら真が質問する。
「そなたは、ラサラグェというのを知っているか?」
「ラサラグェ?」
 聞きなれない単語に首をひねる真であるが、その答えは隣の騎士から返ってきた。
「ラサラグェとは、古代の魔法帝国が召喚した史上最悪の機動魔獣だ」
「きどうまじゅう?」
 エリーヌの答えに真が再び首をひねる。
「機動魔獣とは遥か昔、神話の時代にこの世界を破壊し尽くした兵器の事だ。ラサラグェによって破壊された世界は全てが暗黒に飲まれたと聞く」
 エリーヌがラサラグェについての説明をすると
「そして」
 真の後ろから新たな声がする。
「機動魔獣ラサラグェは、神々の兵器であるとも言われています。一説によると、その時代の賢者と勇者、そして龍王が協力して封印したとされています」
 そう話したのは真のパーティのアークメイジ、テテである。
「龍王って――誰だ?」
 今まで聞いたことのない名前を聞き、その人物について尋ねる真だが
「龍王は人じゃないよ」
 テテの後ろから新たな人物が現れてそう告げる。 真のパーティでは一番の新参者であるリュートだ。 リュートは真の前に到着すると続けて話をする。
「龍王リヴァイアサンは神話の時代、勇者アスクレピオス、賢者ケイロンと共に伝説の封印魔法、完封縛呪ア・カンプリーテ・セ・アゥルを発動させ、ラサラグェを次元の彼方に封印したらしいよ」
「それをその魔法帝国が召喚したってことか」
 リュートの解説に真が納得の意思を伝える。 神話の時代と言うからには、少なく見積もっても千年以上は前の話だろう。それ以上昔になると文明が発達していないと考えられ、当然勇者の存在もなかったと思われるからだ。
「しかし、なんだって魔法帝国はそんな奴召喚したんだ?」
 真の疑問は当然のことだろう。 そんなに危険なやつであれば、そもそも召喚などしないはずである。 それを召喚したという事は、それなりの理由が存在するはずだからだ。
「伝承によると魔法帝国は、ラサラグェの封印で力を使い果たして眠っていた、龍王リヴァイアサンの魔力抽出に成功したらしい。それで制御可能だと考えたんじゃないかな?」
 仮にその伝承が本当だとすれば、魔法帝国の奴らは大馬鹿の集まりである。 龍王の力の抽出に成功しても、ラサラグェは、当時の龍王と賢者と勇者の3人で封印したのだ。 それを龍王の力だけでラサラグェの制御しようとしたのだ。 単純計算で3倍の力が必要になるはずである。そんな計算もしないで召喚したからだ。
「それでそのラサラグェが、どうしたんですか?」
 ラサラグェについての知識を一通り聞き、そのラサラグェが今現在の王国に、どのような脅威をもたらそうとしているのかを真が聞くと
「明日、我が国に襲来すると考えられるのだ」
「それは、なんでわかるんですか?」
 龍剣を受け取りながら、国王に質問する。
「我が国には、神の言葉を聞く大神官がおる。その大神官の啓示じゃ。そなたの出現も、その大神官の啓示によるものであった」
 つまり、その大神官なる人物が聞く神の言葉は、この国においてかなりの支持を集めているという事である。 異世界の日本から、真が来ることも聞いていたというのだから、その力はほぼ確実なのだろう。
「ん? 神の言葉?」
 国王の話に疑問を抱く真。 それもそのはずである。真のパーティには自称・・女神がいるのだ。 しかも、この世界を管理していた張本人の、女神クリスがいるのだ。 そう思って周りを見回してみるが
「あれ? そう言えば、クリスは?」
 そのクリスの姿が見当たらない。
「クリスなら、先ほど宿で荷物をまとめてましたよ」
 真の質問にテテが答える。
「(さては、逃げたな)どこに行ったか分かるか?」
「う~ん、たぶんまだいると思いま――――」
「ちょっと出かけてくる」
 テテの返事を最後まで聞かず、自分達の宿泊している宿に向かって全力疾走する真であった。


「おいクリス! ラサラグェってどういうことだ?」
 室内に響き渡る真の大絶叫。 それに身を震わせているのは銀髪のアークビショップ、クリスである。
「いや、その」
 余程答えにくいことなのだろう、クリスの答えがしどろもどろになる。
「ちゃんと答えろ! この世界はお前が管理していたんだよな! 何でそんな奴がいるんだ? しかも、予言までしやがって」
「予言?」
 クリスはどうやらラサラグェの事は知っているが、大神官が受けた啓示の事は知らない様である。 それ自体が演技という事も考えられるのだが
「なに、予言って」
 どうやら本当に予言の事は知らないらしい。 しかし、今問題なのはそんなことではない。
「そしたらラサラグェってなんだ?」
 これが今一番重要なことである。 クリスの最終目的は、この世界を完璧な世界にすることである。 しかし、その妨げ以外の何者でもない魔獣と言うものが存在する。 それは矛盾と言うものではないだろうか。
「えっとね、結論から言うとラサラグェっていうのは、この世界が出来た時に使った兵器みたいなもので、私たちが干渉した残骸みたいなものよ。通常なら持って帰るんだけど」
「それがなぜ今も動いてるんだ?」
「えっと、私の――忘れ物――――かな」
 舌を出して自分が回収し忘れたことを口にする。
「ふっざけんな! この世界がうまくいかないのは、全部お前が悪いんじゃねぇか! 魔王が出現したのもそうだし、ラサラグェが召喚されたのもそうだし、全部お前の所為じゃねぇか!」
 真が怒りの炎を燃やしながらクリスの胸倉を掴み、罵倒しながら前後に激しく揺さぶる。 十数回その行動をしてから動きを止め
「んで、予言については何も知らないのか?」
 先ほどクリスが疑問に思ったことについて質問する。
「うん。予言って何のこと? さすがに私でも未来のことは分からないわよ」
 目を廻しながら答えるクリスに嘘を言っている様子はない。
「(これについては別に調査が必要かもしれないな)分かった。それならとりあえず、ラサラグェの討伐方法を教えろ!」
 この世界を管理していた張本人であり、今現在の災厄を生み出した原因でもあるクリスなら、ラサラグェの討伐方法を知っていると思って発した言葉であるが
「神々の兵器なのよ。そんなのあるわけないじゃない!」
 あろうことかクリスは、自分達の作った兵器なのだから討伐することなど不可能だ。 そんなことよりも早く逃げたほうが利口だ、と何の悪気もなく言ってのけた。 この衝撃の告白に、真の鉄拳制裁が来ると思って目を瞑ったクリスだが、
「マジか?」
 返ってきたのは絶望的な表情をした、真の真剣な声であった。
「――――うん。マジ」
 その真剣な声に、クリスも真剣な声で答える。
「戦うにしろ、逃げるにしろ、明日まで時間がある。ギルドに行って対策を立てよう」
「うん」
 そう言ってクリスの手を引き、月光花に向かって歩いて行く。


 時刻は既に深夜になり、空に満月が煌々と光っている。 その月明かりに照らされて、一つの巨大な影が王国に向かって進む。 ワニように首は長く口には鋭い牙があり、黒い体のところどころから蒸気が噴き出ている。 その巨体が一歩進むごとに地面が大きく揺れ、大地が割れる。
「ラサラグェがこの国に到着するまで、約5時間です」
 月光花の案内係である、ミオンの絶望を色濃く映した声がギルド内に響く。
「集まってくれた戦士たちよ、余は皆を誇りに思う。今聞いたように機動魔獣ラサラグェが、あと数時間でこの国に到着する。奴は神話の時代より恐れられてきた、最悪の兵器じゃ。そなたたちがこの国にとっての――――最後の砦。どうか、この国を救ってくれ!」
 国王が月光花に集まったハンターに懇願する。 一国の王が爵位も持たないハンターに、頭を下げるという事は本来あってはならない事である。 ここに他国の王がいたら「恥知らず」の烙印を押されるのは間違いないだろう。 だが、月光花に集まったハンターの数が少なかったのは、不幸中の幸いともいうのだろう。 以前メサルティムが進軍してきた時の約半分、いやそれ以下の十人しかいなかったのだ。
「(さて、集まったのは俺たちのパーティと)戦士が二人に弓使いが一人、魔法使いが一人と僧侶一人だけか」
 集まったハンターたちを見回し、真が呟く。
「国王陛下」
 その中の戦士一人が一歩前に出て発言する。
「何じゃ?」
 国王が発言を許し、話の続きを促す。
「はい。恐れながら、今集まったこの戦力では、太刀打ちできないのは、陛下もお分かりいただいていると思います」
 戦士が容赦のない事実を国王に突き付ける。 その戦士の言葉に国王が言葉を失う。
「それならば、いっそ国を捨てて皆で逃げたほうが得策かと」
 国王が無言だったのを肯定と取ったのか、戦士は逃げることを提案する。
「それはだめだ。非難した国民の帰る場所がなくなってしまう」
 その戦士の言葉に弓使いが反論する。
「それではどうしろと言うのだ? 奴の周囲にある防御結界すら突破出来ず、戦う事すら出来ないのだぞ」
「しかし、それでも――――」
 戦士と弓使いの口論が徐々に激しくなる中
「拙者もそちらの戦士に賛成だ」
 もう一人の戦士が静かに口を開く。 顔を覆い隠す兜を装備していた為、今までは分からなかったが、声の高さから女戦士だと真は推測する。 そしてその真の推測を裏付けるように戦士が兜を脱いで続けて言う。
「拙者はリルと申します。放浪の戦士を生業としておりますが、ラサラグェの強大さは圧倒的です。いかに勇者であるマコト様であろうと、あれに打ち勝つのは難しいと考えます」
 そう言って振り向いた女戦士は、炎の様に逆立てた赤い髪と瞳を携え、凛と佇むその姿はエリーヌにも負けず劣らずの風格だ。
「それは、僕たちのリーダーが力不足だって言いたいのかな?」
 リルと名乗った女戦士の言葉が気に入らなかったのか、リュートが棘のある言葉で質問する。
「大変失礼だが、その通りだ。マコト様は戦闘能力に関しては、今いる中では中の下ではないだろうか? ラサラグェを討伐するのは、さすがに不可能と考えられます」
 リルが真に対して辛辣な評価を下す。 しかしこれは事実であり、優先度が上がったとはいえ、真の戦闘能力はハンター全体でみると中の下である。 この評価に対して真は特に思うところはないが
「私たちのリーダーが能力不足と言われたら、さすがに私も黙ってはいられないぞ」
 どうやらエリーヌはかなり気にしたようである。
「確かに兄さんは戦闘能力は低いかも知れません。でもなぜあたしたちが、兄さんをリーダーとしているか、分かりませんか?」
 テテも気に入らなかったようである。
「(ヤバい、これだと対立しかねない)まぁ、別にいいじゃないか。俺がどう思われていても。今重要なのは、ラサラグェの撃退だろ」
 真が話を切り替えるのと、話題がそれているのを修正しようと試みる。 しかし
「別に良くないぞ! マコト殿」
「別に良くないですよ! お兄さん」
「別に良くないよ! 君」
「別に良くないわよ! マコト」
 真のパーティはそうでもないらしい。 というよりも、かなりの重要ポイントの様である。
「(重要なポイントと論点がずれていく)――――はぁ、とりあえず今一番重要なのは、ラサラグェのこと、だろ?」
 真が再び話を修正する。 その真の言葉を受けて
「そのとおりじゃ。それで勇者真よ、何か策はあるのか?」
 国王が話を修正する。 そして、何か作戦があるのかを聞いてくる。
「――――ラサラグェは、俺たちのパーティがなんとかします。しかし、成功率はかなり低いです。皆さんはお逃げください」
 何か作戦があるのか、そう言うと真がパーティを連れて宿に戻って行く。 真のパーティが月光花を去ってから
「頼むぞマコトよ」
 国王が真に希望を託し、そう呟くのである。


「してマコト殿、どのような作戦があるのだろうか?」
 宿に戻り真の考えを聞こうとエリーヌが話しかけてくる。 しかし
「――――みんな、急いでここから逃げるんだ」
 真がパーティに逃げるように伝える。
「まさか君、何も考えてなかったの?」
 リュートが口を開き
「兄さん」
 テテが白い目を向けてくる。
 その二人の言葉に頭を掻いてから顔を上げ、舌を出す。
「マコト殿――」
 エリーヌも冷たい視線を真に向けてくるのを受けて
「何も考えてないわけじゃない。だが、確率が低いのは王様に伝えたとおりだ。やつは俺が何とかしてみる。だから、みんなは逃げてくれ」
 真は何か考えがあるらしい。 自分の考えは全ては語らず、ひとりで何とかすると話す。 しかし
「マコト! 前にも話したでしょ? メサルティムの時みたいなのは嫌だよ」
「そうだぞマコト殿」
「兄さんは何でも独りで抱え込み過ぎなんですよ」
「僕もさすがに今の君には賛成できないな。僕たちは、仲間なんじゃないのか?」
 パーティメンバーが、それぞれに嬉しい苦言を言う。 その言葉を受けて顔を上げる。 その顔には嬉しさと戸惑いが混ざって見える。
「悪い。ただ、色々と話を聞かないと作戦が立てられないのは事実だ。というわけでクリス! あいつのことについて教えてくれ。何か弱点はないのか?」
 元々クリスの怠惰が原因で今の状況となっている。 しかし、同時にクリスの知識がないと手も足も出ない。 先ほど討伐方法がないと聞いてはいる。 だが、真は何か考えがあるようである。
「う~~ん、さっきも言ったけど、弱点らしい弱点はないの。ラサラグェは神々が作った兵器なの。口から火を吐きあらゆるものを破壊する。近づく者は、やつが纏っている防御結界に阻まれて、まともに近づくことも出来ないわ」

「その防御結界ってのは?」
「あらゆる攻撃魔法を吸収する結界よ。地水火風雷光闇時空ちすいかふうらいこうあんじくうの属性全てが無効化されるわ」
 クリスが現在の絶望を、更に絶望に落とすことを語る。
「――――無効化されるのは、その属性だけか?」
 クリスの話を聞いて、少し考えてからそうクリスに聞く。
「え? 攻撃魔法の属性ってそれで全部よ。もっとも時属性と空属性は、使える人が今の時代には存在しないと思うけど」
 真の言葉に首を傾げてクリスが答える。
「それは知ってる。それで、その結界をなんとかすれば、通常の攻撃属性もなんとかなるのか?」
 しかし、真の考えは既に別のところにあるようだ。すでに結界を突破したあとのことを考えているようである。
「それはもちろんそうだと思うけど、でもどうするの?」
「――――回復魔法はどうだ?」
 ここで自分の考えの一部を口に出す真。
「え? どういうこと?」
 真の言葉に首をさらに捻るクリスだが
「お前の過剰回復魔法オーバーヒールならどうだ? と聞いてる」
「――――あ」
 続く真の言葉で、何かに気づいたようだ。
「通常の攻撃属性が無理ならその逆、回復魔法なら結界を破れるんじゃないのか?」
「いける――――かも」
 多分今まで誰も試したことはないのだろう。 普通に考えれば、結界を破壊するのは強力な攻撃魔法だったり、何かのアイテムで無効化するのがRPGのセオリーだ。
「確かに。今までは、攻撃属性で結界を破壊しようとしていた。だから誰も突破出来なかった。ならば」
 真の話を黙って聞いていたエリーヌが、裏付けを取るように口を開く。
「あぁ、押してダメなら引いてみろってことだ。それで結界が突破できたら、テテの番だ」
「あたしの――――ですか?」
 突然話を振られ、テテが驚いたような顔をする。
「結界を突破すれば、通常の魔法で攻撃できる。テテの魔法でやつにとどめをさすんだ」
 そのテテに真が自分の考えで補足する。
「でも、兄さんも知ってると思いますけど、あたしの魔法は――――」
 テテが自信なさげに真に話しかける。 自分の魔法は成功率が低い、そのことを思っているのだろう。 しかし
「テテは勇者真のパーティだ。大丈夫、必ず成功する!」
 成功率は低くても、真のパーティでの最大火力はテテの超絶魔法である。
「それにもし成功しなくても、俺がなんとかしてみせる」
 真の言葉は、自信を失っていたテテを安心させるとともに、一つの決心をさせた。 目を大きく見開いてから頷き
「わかりました」
 テテが笑顔で答えてから下を向いて
「でも、もし失敗したらお願いしますね」
 俯きながら、失敗したときのことを真に依頼する。 失敗しないのが一番良い。それはもちろん当然である。 しかし、生きていれば誰しも一回は失敗する。 それが当たり前であり、失敗を一度も経験した事がない人はいない。 人が失敗したとき、人は大きく成長する。 そしてまた、失敗をフォローしてくれる人が居る。それがどんなに嬉しいことか、真は恐らく知らないだろう。 だが
「ああ、万が一の時は」
 続く真の言葉は
「全部俺に任せろ!」
 今この場にいる全ての者に、勇気を与える言葉であった。


 地平線の彼方から太陽が昇り始め、空が徐々に明るくなり始める。 満月はすでに西の方に傾き、星々もその輝きが薄れかけてきたとき
「ラサラグェが到着するまで、あと30分です」
 聖ゾディアック王国に、一つの放送が流れる。 それが希望の歌声になるのか、それとも破滅の序曲となるのか、運命は一つのパーティに委ねられた。
「なぁ、確か全員に避難勧告は出してるんだよな?」
 そのパーティのリーダーである、国王に勇者の称号を与えられた異世界よりの転生者、真が何かを確認するように、誰に言うとでもなく聞く。
「もちろんだ。数時間前に、国王を始めとして、全ての国民に避難するよう指示を出しておいた」
 その質問に答えたのは、金髪の女騎士のエリーヌである。
「そしたら何でこんなに見物人がいるんだ?」
 ラサラグェが到着するまで、猶予は15分である。 もう逃げ出さないと間に合わなくなる。 だがなぜか今、真たちがラサラグェに立ち向かおうとしている場所には、10人前後の見物客がいる。 今から逃げ出したのではどう考えても間に合わない。 一緒に戦ってくれるのかと、少し期待をしていたのだが
「多分、勇者マコトの戦いを見たい、というのが殆どだろうな。記者たちが多いように見受けられる。見事マコト殿がラサラグェを倒した時には、明日の新聞の一面を飾ることだろう」
 どうやらそういう期待はしない方が良いらしい。 確かにハンターと思われる人は、先ほどのリルという戦士と僧侶しか見受けられない。
「ただの命知らずどもか――――さてと、クリス! 準備は良いか?」
「いつでもOKだよ」
 真の問いかけに、親指を立てて答えるクリス。
「あ! そうだ! 重要なこと忘れてた! マコト、ちょっと来て!」
 そのクリスが真の手を引き、人気のない裏通りに連れてくる。
「何だよ? もうあまり時間がないぞ」
「すぐ終わるから」
 そう言って振り返り、突然抱きしめてくる。
「クリス!」
「私のこと、好き?」
 抱きついたまま顔をうずめ、小さくつぶやいて真に尋ねる。
「あぁ」
「私のこと、愛してる?」
 再び呟き、自分のことを愛しているかを聞く。
「あぁ、愛してる」
「そしたら、ね」
 真の言葉を聞いて顔を上げ、首に手を回して目を瞑る。 どんなに鈍い男性でも、この状況から判断出来るのは一つだけだ。 真も当然それに気づいているだろう。しかし
「てい!」
 真はクリスの額を軽くデコピンする。
「何するのよ!」
 真にデコピンされたところを両手で押さえ、抗議の言葉を口する。 その口を真が、人差し指で触れて
「別れのキスはしないんだ。奴を倒した時の楽しみがなくなるだろう?」
「――――そしたら約束して! 絶対にラサラグェを倒して――――」
「そんなのは、言われるまでもない。クリスとテテにかかってるけどな」
 まだクリスが全てを言い切る前に遮り、今回の戦いのポイントは二人にかかっていると、真がそう告げる。
「行くぞ!」
「うん!」
 裏通りから二人が飛び出し、決戦の場所まで走る。 二人が裏通りから、元いた場所に到着した時に
『ラサラグェ到着まで、残り15分!』
 真が転生してきて以来、最大の戦いになるであろう時間が告げられる。 大地が揺れ、その戦いが行われるであろう場所から、鳥たちが一斉に飛び立つ。
「あれが」
 テテが呟く。 その視線の先、遠くに影が見える。
「ラサラグェ」
 エリーヌが確信を得てテテの言葉に肯定を示す。
「僕も見るのは初めてだけど、君、勝てるの?」
 リュートがパーティのリーダーである真に視線を送り、勝算の有無を確認する。
「そんなのはやってみないとわからないさ。それじゃ、先手必勝! クリス!」
 真がクリスの方を見て、手筈通りに過剰回復魔法オーバーヒールを発動するよう叫ぶ。
「行くわよ」
 そう言うと手を空に向けて詠唱を始める。
「慈愛に満ちたる天の光よ、光を遮る見えなき闇よ、光なくして闇は在らず、神の奇跡を以てを失われゆく救い給え――――」
 詠唱が終盤に差し掛かり、クリスの目の前に幾何学模様の魔方陣が浮かび上がる。 その数、実に10個。 上下左右に一つずつ、真ん中に一つ。さらにそれらの後ろに重なるように出現する。 その一つ一つから、温かいと表現するよりは、むしろ熱い程の光が漏れ出している。 転生してきてから、まともな魔法テテのしか見ていない真だが、今目の前でクリスが発動しようとしている魔法が、それまでと規模が違うのは明らかに分かる。 それほどまでに強大な魔法が行使されようとしている。
神極ゴッドネス――――」
 クリスが手を、迫り来るラサラグェに向けて、最後の詠唱を唱える。
「――――過剰回復魔法オーバーヒール!!」
 10個の魔方陣から、以前見た過剰回復魔法オーバーヒールの数十倍にもなるであろう巨大な光が、ラサラグェ目掛けて放たれる。 その強大すぎる力の奔流に、真たちが後ろに飛ばされそうになり、足を踏ん張って耐えているのが分かる。 野次馬に来ていた記者たちも必死に踏ん張るが、一人また一人と後ろに飛ばされていくのが見える。
「(ったく、こんな魔法あるなんて知らないってーの)クリスに対する評価を改め無いといけないな」
 真が呟いて前方に視線を送ると、クリスの魔法が一条の光となって、ラサラグェの防御結界に衝突し、第ちを揺るがすほどの轟音を上げる。 クリスの魔法で、ラサラグェの進行が一瞬だけ止まるが
「くそ! 止まらない。俺の見込み違いだったか?」
 進行速度が遅くなっただけで、徐々に距離を詰めてくる。
「だめだ。皆、急いでこの場から逃げるんだ! クリス!」
 討伐を諦めて退避するように真が叫ぶ。 しかし
「まだ――――まだぁ!」
 クリスが叫ぶと、巨大な光りが更にもう一回り大きくなり、更に魔法に威力が加わる。 威力が大きくなったクリスの魔法が、ラサラグェの防御結界に衝突し、溶けるようにその結界を打ち砕く。
「今だ! テテー!」
 結界の突破に成功したことを見て、テテに向かって真が叫ぶ。
「行きます!」
 真の合図を聞き、テテが魔法の詠唱に入る。
「神が統べる雷よ、汚れし魂を救い給え、黒き影をこがせ、悪しき魂を浄化せよ、天罰の名のもとに、全てのものに等しく神の鉄槌を下せ!」
 詠唱からテテが発動しようとしているのは雷系統の魔法、恐らく以前メサルティムを倒したときに発動した神雷降臨魔法ミョルニルだろう。 しかし
「(これは失敗だな。代わりに発動するのは――――)多分光属性の神槍召喚魔法グーングニルかな」
 激しい光と闇が渦巻き状にテテを包み込み、魔法が発動する。
神雷降臨魔法ミョルニル!」 
 メサルティムを討伐した時に放った、雷属性の魔法が発動――――しなかった。 代わりに発動したのは
「これは、極大消滅魔法ヴァニッシュだ!」
「皆伏せて!」
 エリーヌとリュートが同時に叫ぶ。 その鬼気迫る形相に、説明も聞かず真がその場に伏せる。 テテの魔法がラサラグェに衝突した瞬間、爆風が真たちを襲う。
「きゃあ!」
 その爆風を受けて、クリスが悲鳴を上げる。
「クリス!」
 既に全力の魔法を発動したクリスが、爆風の勢いに耐えられなくなり、真の横を飛んでいくのが見え、真が咄嗟に手を伸ばす。
「放すなよ!」
 クリスの手を握り、離さないように自分の方に引き寄せて抱きしめる。
「しっかり捕まってろよ」
「――――うん」
 顔を紅潮させてクリスが短く小さく呟く。 クリスの心臓の鼓動が、激しく高鳴っていることには、今の真には気づくことはできないようである。 しかし、それでも腕の中にいる少女のことを離さないよう、しっかりと抱きしめる。
「エリーヌ! 極大消滅魔法ヴァニッシュってどんな魔法なんだ?」
 テテの発動させた魔法がどういうものか、エリーヌに尋ねる。
極大消滅魔法ヴァニッシュは光属性と闇属性を同比率で混合させ、その反作用によって分子レベルにまで分解する魔法だ」
「あれならいくらラサラグェでも」
 エリーヌの説明に続き、リュートが期待を込めて真に伝える。 リュートの言葉に顔を上げ、テテが放った魔法の効果を確認する。 そこには
「マジか」
 真が絶望を前面に出した表情で、短く呟く。 クリスの神極過剰回復魔法ゴッドネスオーバーヒールにより、ラサラグェの防御結界は消滅し、テテの放った極大消滅魔法ヴァニッシュは確かにラサラグェに直撃した。 エリーヌの言葉通りならば、分子レベルまで分解されている筈である。 しかし真が目にした光景は
「効いてないのか?」
 鉄の装甲に覆われた、巨大な四足獣――機動魔獣ラサラグェの姿が僅か百メートル先にあった。 進行を止め、悠然と佇むその姿はいっそ壮大で、見る者全てを圧倒した。 そしてそれは同時に、絶望という物語を紡ぎ始めた。
「(――――あれは!)まだだ! まだ終わりじゃない!」
 真を除いては、の話である。
「しかしマコト殿、いくらなんでも。何か策があるのか?」
 その真の諦めない言葉を聞いて、エリーヌが真に問いかける。
「そんなもんねぇ! ただ、奴を倒さなかったら、このあとの楽しみがなくなる! そうだろクリス」
 真のいう楽しみとは、ほぼ間違いなくクリスとの約束事である。 目の前のラサラグェを討伐したら、その後は大人の関係でも築こうと考えているのだろうか。 真の言葉を聞いたクリスが
「――――バカ」
 顔を赤くして小さく呟く。 どうやらクリスもそのつもりのようであるが
「でも君、このままだと」
 リュートが真に話しかける。 今のままでは負けるのを待つだけである。 それは真自身、十分に理解しているはずなのだが
「テテの魔法で貫通した場所が見える。奴も無傷じゃないってことだ! だからとりあえずみんなは避難しろ!」
 真が言ったように、テテの極大消滅魔法ヴァニッシュで、ラサラグェの硬い装甲の一部が崩れているのが見える。 ラサラグェに与えたダメージがどの程度なのか、それは真にはわからない。 しかし、真がラサラグェを見たときに発見した僅かな綻び。 それを見て閃いた真の考えが、今、真を戦いに行かせる動機である
「しかし、それではマコト殿が」
 エリーヌが、真一人で立ち向かうのを止めるべく言葉をかける。
「言ったろ?」
 そのエリーヌの言葉を遮って真が口を開く。
「兄さん?」
 テテが心配するように真の顔を見上げる。 見上げた真の表情は、何かを確信したかのように明るく微笑んでいた。 そして親指で自分を差し、紡いだ言葉は
「全部俺に任せておけって」
 宿でパーティメンバーにかけた言葉と全く同じであった。
「何を考えているのか僕にはわからない。けど、運が悪ければ君もあの世行きだよ」
 リュートが心配そうな表情を真に向けてそう話す。
「大丈夫だ。俺はこう見えても運が良いらしいぞ!」
 リュートの肩に手を置き、目を見て安心させ、パーティメンバーと一通り視線を交わしてから
「行け!」
 街の方を指差し、避難するように命令する。 真の言葉を合図に、パーティメンバーが一斉に街へと走っていく。 その背中を見送ってから
「あれ?」
 首を傾げて真が呟く。なぜなら
「(1、2、3――――)一人足らなくね?」
 真のパーティはエリーヌ、テテ、リュート、クリス、真の五人の筈である。 それが真の目に映った背中の人数は三人であった。 誰が足りないのか、背中を見て名前を確認していると
「言ったでしょ? ずっと一緒だって」
 真の隣から声が聞こえる。 その声のした方を振り向くと
「クリス」
 クリスが腰に手を当てて立っていた。
「バカお前! 何でここにいるんだよ? 死にたいのか?」
「それはこっちのセリフよ! あんたこそ死ぬつもり?」
 お互いがお互いを心配しているのだろう、罵声を交わしてから二人とも笑顔になる。
「どういう作戦?」
「テテの魔法で消滅した場所に、気になるものが見える。どくろマークがある場所だ。あれはなんだ?」
 クリスの問い掛けに真が答え、更に質問する。 ラサラグェは神の兵器であり、その詳細を知っているのはクリスだからだ。
「あれは業務執行中に、重大な被害が及んだ時に発動する自爆装置よ」
「(やっぱりか)それならあれを破壊すれば」
「馬鹿じゃないの? 周囲百メートルは消し飛ぶわよ。本当に死ぬ気?」
 自爆装置を破壊したら、真を含めて爆発するとクリスが話す。 当然中心にいることになる真も、その爆発から逃れることが出来るはずもない。 しかし
「確かに俺一人なら死んで終わりだろうな。でも、今はお前が一緒にいるだろ?」
「――――何すればいいの? 言っとくけど、さっきの魔法でかなり干渉力を使っちゃったから、あまり高度な魔法は使えないわよ」
 どうやら先ほどクリスが使った魔法は、相当に干渉力を消費するらしい。 しかし
「そんなのは大体わかってる」
 真はその辺り織り込み済みのようである。
「気になってるのは、この龍剣だ。国王からコイツを預かって、それについてのフラグを全然回収してない。ってことはつまり、コイツには何かしらの特別な力がある、って考えてるんだけど、どうだ?」
 そう言うと国王から預かった龍剣をクリスに差し出す。
「――――これって!」
 真に差し出された剣に触れたクリスが、驚愕の表情を見せる。
「ん? どうなんだ?」
「これは運命星の欠片よ。私たち神々が運命を司るための道具。どうしてこんなところに」
 国王から預かった龍剣は、真がこの世界に来ることになった原因の一つでもある運命星、その欠片だとクリスが言う。
「よくわからないけど、その運命星って確か消えたんじゃないのか?」
 真を最後に運命星が消えたと、確かにクリスはそう話していた。 それが今どうしてここに、欠片とは言え存在するのか。 それを聞いた真だが
「さすがにそれはわからないわ。でも運命星の欠片の力を解放すれば」
 クリスも運命星の欠片がなぜここに存在しているのか、それはわからないらしい。 しかし、そのあとに続く言葉が、真に希望を持たせる言葉であった。
「いけるのか?」
 この龍剣にどんな力が秘められているのか、真はほぼ確信しているのかもしれない。
「運命星の欠片はその世界の運命を司る星。もし運命に沿わない事象が起きそうになったら、力付くで修正しようとするわ。この世界でも同じことが起きたはずだわ」
「(それが龍王リヴァイアサンってわけか)」
 クリスの言葉で繋がったことがある。 龍王リヴァイアサン自体が運命星の欠片であり、この世界にクリスが残してしまった、神々の兵器ラサラグェに対抗するための力であるということだ。 それを当時の勇者と賢者が使い、ラサラグェを封印したということだろう。 それならばこの龍剣の力を解放することが出来れば、再びラサラグェを封印することも可能である筈だ。
「具体的にはどうすればいい?」
 考えがまとまった真が、クリスに龍剣の力を解放する方法について尋ねる。
「私の力を注ぎ込んで、それをあいつに突き立てれば」
「いけるのか?」
「でももしあいつが、この街を破壊することが運命通りなら、何の意味もないけど」
「やってみないとわからないってことか」
「うん」
 この絶望的な状況を打破するための希望は、既に記述された運命に沿っているようである。 運命通りならば、真を含めて全てが消し飛ぶことになるが
「なら、多分大丈夫だろ」
 何故か真は自信があるようである。
「どうして?」
「俺がこの世界に来るとき、与えられたカードは?」
「――――わかった。その剣を貸して」
 真から剣を受け取り、クリスが祈りを捧げる。 剣が仄かに輝き、剣全体を優しい光で包み込む。 その剣をクリスの手から真が受け取り
「後は任せろ!」
 そう言うとラサラグェに向かって走っていく。 真がラサラグェに向かって走り出してから約二十秒後、ラサラグェを中心に眩い光が世界を埋め尽くし、強大な力が解放され
「マコトー! ってあれ?」
 なかった。 光がその後急速に収縮し、世界が元の色を取り戻す。 その光に目を焼かれ、視界がまだ回復していないクリスが、ようやく目を開けることに成功した時、目の前に現れたのは
「やっぱり俺は運が良いらしいな!」
 折れた龍剣を担いで戻って来る真であった。


「勇者マコトよ、そなたに礼を言う、ありがとう」
 ラサラグェを再び次元の彼方に封じ込めた後、結果を報告するため城を訪れた真に、国王が膝を折って真に頭を下げる。 避難していると思っていた国王が、城に残っているのに多少驚いた真であるが
「頭を上げてください国王。それよりも重要なことがあります」
「重要な、こと?」
 真の言葉に怪訝な表情を浮かべる国王である。 礼をいうよりも、もっと大切な事があると言う真が今、求めているものは
「報酬金は、おいくらですか?」
 これである。
「メサルティムとハマルの時は四億ルークでしたよね? 今回はこの国を救ったんですから、もっと多くの報酬になりますよね? こちらとしては十億ぐらいで手を打とうかと考えてるんですけど――――あ! もちろん分割はなしで! 一括払いをお願いしますね!」
 真の莫大な報酬金の請求に
「そなたを勇者とは認めん」
 国王が小さなボリュームで呟く。
「は?」
 よく聞き取れなかったのであろう、真が国王に聞き返す。
「そなたは――――」
 国王が震えている。 もちろん嬉しさからではなく
「国外追放じゃーーーーー!」
 怒りからであった。


「(まぁ当然といえば、当然だよな。しかしまぁ、ポンコツな奴らとの無茶なクエストの数々、それはもしかしたら、俺を成長させるためのものだったのかもな)まったく、長いチュートリアルだったぜ」
 国王から、国を出るよう言われた真が、呟きながら城から出てくると
「どのようにしてラサラグェを倒したのでしょうか?」「今のお気持ちを一言」「今後の方針を教えて下さい」「魔王討伐は出来そうですか?」
 王国中から真に話を聞こうと、記者たちが押し寄せてきた。 そのことに気分を良くしたのか、真が次々と答えていく。
「あのマコト様、やはりハンターたるもの、戦士や魔法使いよりも、やはり勇者という職業を目指すべきなのでしょうか?」
 そんな中、一人の記者が職業についての質問をしてくる。
「いえ、勇者という職業はありません。みなさんから認められた者が、『勇者』という称号を手に入れるのです」
「では、最強の職業は何ですか?」
「それはもちろん――――」
 そこで一度言葉を区切ってから自分を親指で差し
「遊び人です!」
 自信満々にそう答えるのであった。 記者たちの質問にひととおり答えた真の元へ
「まだこんなところにおったのか? さっさと出て行け!」
 国王が早くこの国から出て行けと怒鳴りつけるのであった。

「Q.最強の職業は何ですか? A.遊び人です」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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