Q.最強の職業は何ですか? A.遊び人です

ノベルバユーザー225229

Q.クエストが難しいときはどうすれば良いですか? A.仲間を募集しましょう

 十二月を迎え、寒さがより一層厳しくなる馬小屋で、毛布にくるまって寒さを凌ぐ男女が二人いた。
「ねぇ――今日の寒さ危険じゃない?」
 今日の寒さは異常だと訴えるクリスと
「あぁ、何せもう十二月だからなぁ――やっぱりこの世界でも春夏秋冬ってあるんだなぁ」
 しみじみと語り、寒さに負けじと体を震わせる真である。 一昨日、寂れたギルド「猫の足音」の店主、ガル爺からクエストの紹介を受けた二人だが、急激に冷え込んだ気温の所為で、いつもよりも早く起床していた。
「うぅ――寒い~もう少しこっち来てよ! 毛布に隙間があると寒いでしょ!」
「動くと寒いから動きたくない」
 少しでも動くと、せっかく温めた場所が冷めてしまう。 それが嫌でクリスに近づくのを拒否した真だが
「そんなこと言って、本当は近づきたいくせに!」
 二日前の記憶は真の中で鮮明に記録されている。 アルコールの席とは言え、隣で毛布をかぶっている女性の気持ちを知ってしまったのだ。
「お前な、なんでそんなに普通なんだよ?」
 二日経ったとは言え、なぜ今までと同じように接することが出来るのか、真は不思議で仕方がない。
「普通じゃないよ。これでも緊張したんだから!」
 そんな真の言葉に、否とクリスが唱える。
「そんな風には見えなかったが――」
 反論したクリスに、真が更に反論で返す。
「どうして?」
 反論された言葉を聞き、何故そう感じたのかをクリスが尋ねると
「一昨日ここに戻ったあと、二秒で寝れるところとか、大股開いて寝てるところとか、昨日ガル爺のところでシャンパンをラッパ飲みするところとか――」
 以前にも感じた、女子力の無さを具体的にクリスに説明する真である。
「それはいきなり態度が変わったら変かな――って、そう言うマコトはどうだったの?」
「全く期待してなかったわけじゃないが――」
 クリスの言葉に、「もしかしたら」という期待を少しは持っていたと真が告げる。 その言葉を聞いて
「だから今こうして誘ってあげてるんじゃない!」
 満面の笑顔を真に向け、両手を広げて迎え入れる姿勢をとるクリスだが
「この寒さとこの場所じゃなければ――って話だな」
「――昨日もそうだけどマコトって、女の子に恥かかせるの得意でしょ?」
 自分の気持ちを伝えた翌日、アルコールの力を借りて真を誘ったクリスであるが、その結果はさんざんたるものだった。 酔い過ぎて胃の中のものを逆流させ、前に介抱してもらったのと同じ様に介抱されたのだ。 帰り道、お姫様抱っこしてもらっていたという、女の子には胸がときめくシチュエーションだったはずだが、当のクリス本人は酔っ払い過ぎてそれどころではなかった。 酔いが覚めて目を開けると隣で真が寝ており、こっそりと真の毛布に潜り込んだのだが
「お前を運んで疲れてるんだ。それに酔っ払いは相手にしない!」
 という厳しい一言で撃沈した。 僅か数時間で女としての誘いを二回断られ、苦言を呈すクリスに
「相手がお前だからだ」
「――――」
 更に追い打ちをかける真であった。


「ねぇ、マコトぉ」
 昼が近づいて日が高く上り、徐々に気温が上昇したのをきっかけに、活動を始めたクリスが最初に取った行動は、今まで以上に積極的だった。 真の背中に抱き着き、耳元で甘く囁く。 どんなに鈍い男でも、こんな態度をされたら勘違いするのは間違いないだろう。 まして自分に対する気持ちを知ってしまった相手であれば、なおさらだ。
「――お前溜まってるの?」
 しかしそのクリスに対する真の言葉はなぜか冷たい。
「――ねぇ何で? 私がこんなに積極的に誘ってるのに、どうして? 昨日も何もなかったし、私そんなに魅力無い?」
 真の冷たく突き放す言葉を聞き、涙を浮かべてクリスが訴える。
「さっきも言ったが、場所を考えろ! 俺はところ構わず発情するほど節操なしじゃねぇよ!」
「じゃあちゃんとした場所なら良いの?」
 頬を膨らませて上目遣いをし、真に提案するが
「俺たちは無一文だぞ。ここ以外に宿泊する場所あるのかよ?」
 職がないという事はこういう事である。 どんなに寒くても、寝心地が悪くても、タダで泊まれるのはここしかない。 まさかこの世界に、男女の営みのための宿泊施設ががあるとも思えない。
「――うぇぇ」
「泣くな! 別にお前にそういう魅力が無いって訳じゃない」
「本当に? 例えばどんなところ?」
 真の返事に笑顔を作り、自分の胸を持ち上げながらクリスが問いかける。 しかし、そんなクリスの誘惑を横目で見た後、両肩に手を掛ける。
「――マコト――」
 一昨日食事した「猫の足音」での行動と同じように、瞼を半分ほど閉じて頬を紅潮させ、蒼い瞳を真に向ける。 そのクリスの誘いを、真が理解できないはずはないのだが
「お前の誘いは嬉しい――が、今はそれよりも――」
「それよりも?」
 真の「嬉しい」という言葉に一瞬表情が緩むが、その後に続いた反対を示す言葉に、閉じかけていた目を開いて聞き返す。
「今日のクエストの依頼人の場所に行く。そろそろ出ないと、時間に間に合わなくなるからな」
 そう言って外出する準備を整える真であった。
「――イジワル」
 最後に呟いたクリスの言葉は真には聞こえなかった。


 ガル爺のメモ書きには、指定した時間に「猫の足音」に来ることだけが書かれていた。 依頼人がどういう人なのか若干の不安を抱え、まだ開店前の寂れたギルドの前に到着する。 いつもなら夕方以降に訪れるため、あまりまじまじと見ることはなかったのだが、こうして改めて見てみると、意外におしゃれな建物であることに気付く。
「ねぇ、まだ開店してないけど入れるの?」
 準備中と書かれた札を指さして、クリスが不安の色を濃くして真に尋ねる。
「う~~ん、大丈夫だと思うけどなぁ――」
 クリスの質問に答える真も不安の色は隠せていない。 二人が店の前でどうするか迷っていると、扉が開き
「何をしとる! 早く入れ!」
 中からガル爺が顔を出して二人へ中に入るように怒鳴る。 ガル爺に促され、店内に入ると既に一人カウンターに座っているのが確認できる。恐らく依頼人だろう。 カウンターに両手剣を立てかけ、二人が店内に入ってきたのを確認すると立ち上がり、歩いて近づいてくる。
「あれ? 確かこの前」
「気付いたか? 二日前に君たちの隣で飲んでいたのだが――私が今回のクエストのクライアントだ」
 二人にそう話しかけたのは、クリスを初めてここに連れてきた時に、隣で飲んでいたあの女性客だった。 その時は気にもしなかったのだが、目の前に立つ女性は騎士であることに気付く。 黄金を溶かしたような長い金髪にブラウンの瞳。凹凸のはっきりした身体を、一目で高価と分かる全身鎧で包んでいる。 クリスの華奢な肢体が持つ魅力とは別に、しなやかな曲線美を持った魅力を持つ女騎士だ。 凛としたその佇まいは、いかにも大人の女性という雰囲気を醸し出している。
「失礼とは思ったが、依頼する相手の顔ぐらいは見ておきたくてね。先日は仕事終わりの君たちの先回りをして、ここで待っていたんだ。今日からよろしく頼む」
 女騎士はそう言うと真の前に手を差し出し、握手を求めてくる。 差し出された手を握り返して
「一条真です。未熟な盗賊ですが、こちらこそよろしくお願いします。えっと――」
「そう言えば自己紹介をしていなかったな。私の名はエリーヌ=シュバイツ。パラディンを生業としている」
 エリーヌ=シュバイツと名乗った女騎士は真と握手を交わすと、続けてクリスにも求めてくる。 差し出された手を、今度はクリスが握り
「アークビショップのクリスです。よろしくお願いしますシュバイツさん」
「エリーヌで構わないさ。立ち話もなんだから、座ってからクエスト内容の話をしようか」
 そう言うとエリーヌは、自分の座っていたカウンターに戻り、椅子に腰かけて二人に席に座るよう示す。 エリーヌの隣に二人が腰を下ろすと、ガル爺が気を利かせ、二人にホットミルクを出してくる。 湯気の立つミルクを一口飲み、冷え切った体に温かい液体が流れ込みんで、白い息を吐き出す二人。 その様子を見てからエリーヌもミルクを一口飲み、クエストの内容を話し出す。
「やってもらいたいことは、下水道に増殖するグリーンスライムの討伐だ。最近、私の借りている部屋の水道が、頻繁に詰まると思い調査を依頼したのだ。その結果、どうやらグリーンスライムが詰まっていることが原因だったようだ。それで調査現場にいた奴らを倒して改善したと思ったのだが、最近また詰まりだした。こうなってはキリがないと思い、根本を絶つことに決めたのだ。君たちにはその手伝いをしてもらいたい」
「分かりました。でも俺たち優先度1ですよ。討伐できますかね?」
 クエスト内容を把握し、了解を示す真である。 しかし、自分達のレベルを表す優先度が最低であることを思い出し、クエストを達成できるかどうかを真が口にする。
「それなら問題ない。私も討伐には同行するしな。ただ、モンスターを討伐するのにあたり、二人は武器の類を持っていない様に見受けられるが――」
「あ! 大丈夫ですよ。今寝泊まりしているところにアイアンウィップとメイスがあります。こいつはビショップだからメイスを持たせて、俺は鞭で戦いますから」
 クエスト内容が、モンスター討伐とは知らなかったため武器の類は持ってこなかったが、寝泊まりしている馬小屋にはおいてある。 転生した初日に入手した鞭とメイスだ。 一回も使われることなく馬小屋でほこりをかぶっているが、使用するには問題ないだろう。
「それでは一時間後、ここに再集合で良いかな?」
「はい、わかりました」
 そう言って三人が席を立ち、入口の方に歩いて行こうとすると
「一人100ルークじゃ」
「「「――――――」」」
 ガル爺がミルク代を請求してきたのである。


 一時間後、馬小屋に戻って武器を装備し、エリーヌを待つ二人がいる。
「ねぇマコトぉ――私たち、もう少し何かあっても良いと思うんだけど――」
 ほこりにまみれた鞭とメイスを冷水で洗い、苦悶の表情を浮かべた真の手を、クリスが両手で温める。 という一幕もあったのだが、二人の仲が特に進展したわけでもなく、そのことに不満を述べるクリスであった。
「分かった分かった。馬小屋暮らしから抜け出したらいずれ――な」
「――じゃあせめて、外出してる時に手を繋ぐぐらいしてくれてもいいじゃない!」
 不満を口にして頬を膨らませる様は、年相応の少女の反応に見える。
「(はぁ――こいつ面倒くさいな)――これで良いか?」
 そう言うと真が後ろからクリスを優しく抱きしめる。
「――――!!」
 突然の真の抱擁に言葉を失うが
「うん――でもさすがにちょっと恥ずかしい――かも」
 抱きしめている真の腕を、俯きながら指先で触れて答える。
「ったくどっちなんだよ!?」
 求められていた以上のことをしてあげたのに、それを恥ずかしいと言われれば誰でもその反応になるだろう。 しかし、そう発言したクリスの顔は赤く染まり、本当に嫌でないのは誰の目から見ても分かる。
「イチャついているところ悪いが、そろそろ出発しようか!」
 二人の世界に入っていたところに、後ろから凛とした女性の声がかかる。 その言葉に抱きしめていた腕を慌てて解き、後ろを振り返る。 振り返った真に、腕を組んで顎に手を当てたエリーヌが続けて言う。
「そういうのは人目につかないところでやるものだと思うが――」
「いや、そう言うわけじゃなくて、ただ、ちょっと寒いから――その――」
 言い訳がましくクリスがそう話すと
「確かに今日は冷えるな。それに君たちの格好ならなおさら寒いだろう?」
 エリーヌはそう言うと二人の服装を指さす。
「転生する前と同じ服装だからなぁ――」
 エリーヌに言われて自分達の服装を確認する。 クリスは女神の衣を着ているが、ノースリーブに近い格好だし、真は転生前のシャツ一枚だ。 季節が季節だけにさすがに寒いはずである。
「とはいえ、金がないからなぁ――今回のクエストの報酬で新しい防具でも買うかな――」
「そしたら私にも買って!」
 真がクエスト報酬の使い道を呟くと、クリスが自分も欲しいと真にねだる。
「は? その時に自分で買えよ! 報酬が入ったら山分けするんだから!」
「この甲斐性なし――」
 真の言葉にぼそりとクリスが呟く。
「うるさいビッチ!」
 いつもならばクリスの呟きは聞こえないのだが、なぜか今回ははっきりとマコトの耳に届いたようだ。 女性に対してはかなり酷い罵倒を投げつける真である。 その様子を見ていたエリーヌが
「二人は――恋仲じゃないのか?」
 二人の関係性を尋ねてくる。
「断じて違う!」
 そのエリーヌの質問に、速攻で否定の言葉を投げる真と
「そうなんですぅ」
 肯定するクリスがいた。 その二人の反応を見たエリーヌは、困惑の表情を隠しながら
「マコト殿、さすがにその発言はひどいと思うが――」
「気にする必要はないっすよ! さ! 行きましょうか!」
「――では向かうとしよう」
 一瞬の沈黙の後、クエストの開始場所である場所を目指し、歩き始めるエリーヌであった。


「ここだ」
 下水道と聞いていたが、実際に案内されて到着した場所は、汚物の類が全くない場所で、嫌な臭いも特にしない、どちらかというと用水路のような場所であった。 だが、エリーヌが話した通り、水の量が少ないように感じられる。
「えっと、それで問題のグリーンスライムはどこにいるの?」
 今回の原因になっているモンスターは、どこにいるのかを尋ねる真だが
「それは分からない。だから手分けして探そう。恐らくもう少し先にある分岐場所だと思うが――」
 下水道の先を指さしてエリーヌが答える。 どうやら依頼主であるエリーヌも、どこが詰まっているのか場所はわからないようだ。
「グリーンスライムを見つけたら一人で戦う事はせず、必ずみんなを呼ぶんだ。そんなに戦闘能力が高い奴らではないが、集団で囲まれると厄介だからな」
 二人にそう忠告し、エリーヌが水の流れる方向とは逆に歩き始める。 下水道を探索し始めて十分ほど経過し、流れる水の少ない方へと進んで歩いていたが
「困ったな。これではどちらに進めば良いのか判断できないな」
 ある分岐路を前に、エリーヌが進む方向を決めかねていた。 両方ともに流れている水の量がほとんど同じくらいだったからだ。 その様子を見て
「じゃあとりあえずここで一度別々に探すか?」
 真が手分けして探すよう提案する。
「――やむを得ん。そうしよう」
 腕を組んで数秒黙考した後、エリーヌが答える。
「それじゃ私はマコトと一緒の道ね!」
 そう言ってクリスが真の腕にしがみつく。 その様子を見てエリーヌが短く嘆息し
「では先ほど私が言ったことを忘れないように!」
 そう言って真達とは別の道を歩き出す。
「――俺たちも行くぞ!」
 エリーヌの背中を見送り、腕にしがみついているクリスに話しかける。
「――ねぇ、マコト」
 エリーヌの姿が闇に溶け、後ろ姿が確認できなくなった瞬間、クリスが甘えた声を出して真に蒼い瞳を潤わせて話しかける。 そのクリスの胸中を正確に読み取り、真がとった行動は
「てい! ――行くぞ!」
 軽くデコピンして、先を急ぐと伝える。 先を行く真をクリスが追いかけ
「せっかく二人きりになれたのに――」
 真に聞こえるようにぼそりと不満を呟くクリス。
「状況を考えろ! 今はそれどころじゃないだろ!」
 そのクリスにクエストクリアが先決だと真が伝える。 真の言葉に肩を落とし、俯きながらクリスが答える。
「――――わかった。でもこのクエストをクリアしたら――」
 自分の誘いに乗ってくれるのか? とクリスが言おうとした時
「いたぞ!」
 突然真が叫ぶ。 真の言葉に反応して顔を上げると、真の前方に粘着質の緑色の物体が、水路一杯に広がっているのを発見する。 緑色の物体は真の言葉に反応し、ゆっくりと距離を詰めてくる。 二人の前に現れたグリーンスライムは、二人の両手両足の数を足しても足らず、その数は百を超えるほどの大群だった。
「何て数だ!」
 自分の腰から鉄製の鞭を構え
「クリス! エリーヌを呼んできてくれ!」
 そう叫んで伝える。
「でも、それだとマコトが――」
「二人とも囲まれたらマズイ。早くしろ!」
 そう言うと、一番近くまで迫っていたグリーンスライムに鞭を一発叩きこむ。 鞭を食らったスライムが、その粘着質の体を液体に変化させ消滅する。 真の攻撃を受け、この世界のHPである耐久値が尽きたのだろう。優先度1の攻撃で倒せることから、一体一体はそんなに強くないのがわかる。 もしかしたら二人で協力すれば全滅を狙えるかもしれない。
「行け!」
 しかし、真の判断はクリスの戦闘参加ではなく、エリーヌを呼ぶことだった。
「すぐ戻ってくる! だから無理しないで!」
 そう言うとエリーヌを呼ぶため、来た道を全力で走って行く。 走っていくクリスの後ろ姿を見送り、再び前方を振り向いて
「てめえらには悪いが、ここから先は――行かせねぇ!」
 気合と共に叫び、数体のスライムに鞭を叩きこみ、その耐久値を根こそぎ奪う。


 真と別れたクリスはエリーヌと分かれた道を、戻ってきた道とは逆の方向に走っていた。
「はぁ、はぁ」
 肩で息を切らし、エリーヌが進んだはずの道を急ぐ。 クリスが曲がり角を曲がった瞬間
「――――」
 衝撃と共にクリスの視界が黒く染まる。
「う~ん――クリス!」
 二度三度頭を振り、今自分がぶつかったものを確認し、エリーヌが驚嘆の声を上げる。
「エリーヌ!」
 クリスも飛んでいた意識を呼び戻してエリーヌの名前を呼ぶ。 思わぬ再会を果たし、クリスが安堵の表情を浮かべる。
「どうしてここに?」
 しかし、そのクリスがなぜここにいるのかをエリーヌが問い掛ける。
「エリーヌこそ」
 もっと先に行っていると思っていたエリーヌとぶつかり、何故こんな近くまで戻っていたのかをクリスが問い返す。
「いや、この先は行き止まりになっていて、こちらではないと判断したからだ」 エリーヌの進んだ道は、どうやら行き止まりだったらしく、道を誤っていたことに気付いて引き返してきたと答える。
「それで、クリスはなぜ?」
「私たちの方に出たの! 急がないとマコトが!」
「何が」という説明を省略し、真が危険であると暗に答えるクリス。
「分かった! 急ごう!」
 クリスのただならぬ態度を察し、真のいる道を二人が走り出す。


「くそ! キリがねぇ!」
 悪態を付き、目の前に迫っているグリーンスライムの大群に鞭を叩き込み、敵の耐久値を奪う。 既に数十体のグリーンスライムを倒した真だが、その身体のところどころに痣があるのが分かる。 いかに戦闘能力低いグリーンスライムが相手でも、さすがに無傷とはいかなかったようである。僅かずつだが、確実に耐久値を減少させる真に対し、出現するグリーンスライムは無尽蔵に湧き出てくる。
「オラァ!」
 真が叫び、目の前のグリーンスライムを三体まとめて倒して膝を着く。 その真を狙ってグリーンスライムが一斉に襲い掛かる。
「マズイ!」
 そう判断した時は遅かった。 真の手足を粘着質の体で拘束し、真の口を塞ぐ。
「(クッ――息が)」
 スライムどもはそのまま窒息させるつもりだろう。次々と真の体を覆い、真の動きを拘束する。
「(ちっ、格好つけずに俺も逃げればよかったかな――やっぱり俺、運悪いな――)」
 ついにここまでか、と真が諦めて目を閉じた時
過剰回復魔法オーバーヒール!」
 真の口と体を覆っていたスライムが白い光に包まれる。 アークビショップの過剰回復魔法オーバーヒールが、耐久値を上限以上に回復させ、その効果に耐え切れなくなったスライムが、液体となって消滅する。
「マコト! 大丈夫? 生きてる?」
 過剰回復魔法オーバーヒールを発動させたアークビショップが、真に駆け寄って上半身を抱き起す。
「ク――リス。来るの遅えよ!」
 自分を助けてくれたアークビショップの名前を呟き、続けて嫌味を言う。 しかし、その口元は笑顔で歪んでいる。
「良かった――って助けてあげたのにそれ?」
 真の言葉にクリスが笑顔で答える。
「無事かマコト殿! よく一人で頑張った!」
 クリスに支えられた真の無事を確認し、健闘を称えるエリーヌであるが
「――何て数だ!」
 目の前に広がるグリーンスライムの大群を見て驚愕の表情を浮かべる。
「はは――あと1分遅かったら確実にあの世だったけどな。それで、全滅出来そうか?」 苦笑いを浮かべ、この場にいる最大戦力であるエリーヌに問いかける。
「いや、さすがに多勢に無勢。数で押されたら歯が立たない。広範囲を一度に攻撃出来なければ、逆にこちらが全滅する」
 しかしエリーヌの答えは難色を示した。
「それならさっきクリスが使った魔法で――」
「さっきマコトを助けた時に、干渉値を全部消費しちゃったわ。過剰回復魔法オーバーヒールはもう使えない」
「ここは一度退くぞ! 走れるかマコト殿」
 全滅させるのを一度諦め、エリーヌが撤退する決断をする。
「大丈夫だ!」
 エリーヌの質問に答え、クリスの腕から立ち上がる。
殿しんがりは私がする。走れ!」
 エリーヌが叫ぶと同時に振り返り、水路の入り口を目指して走り出す。



「「「――――」」」
 寂れたギルド「猫の足音」のテーブル席に沈鬱な空気が流れる。 珍しくカウンターではなく、テーブル席に三人は座っているのと、漂う空気を不思議に思ってガル爺が話しかける。
「何じゃ若いもんが! 揃いも揃って暗い顔しおって!」
「ガルシア殿――いや、依頼したクエストが思いのほか大変で――」
 先ほどの水路で見たグリーンスライムの数を思い出し、エリーヌの表情がより一層暗くなる。
「お前さんほどの騎士が――」
 そう呟くと腕を組み、考え込む。
「正直なところ、今の俺たちだけでは無理だと思う。ガル爺、何か良い方法ないか?」
「ふむ――儂の知り合いに一人、アークメイジがおるが――」
 アークメイジ――クリスのアークビショップと対となる職業だ。 アークビショップが回復や補助魔法に特化している僧侶の上級職に対し、攻撃や弱体魔法に特化している魔法使いの上級職だ。
「その人紹介してくれよ!」
「構わんが、ちょっと問題を抱えてるぞ」
「別にいいさ」
 ガル爺の気になる一言を軽く受け流す真。
「それなら明日の昼、またここに来い。連れてきてやる」
 真の返事を聞いて紹介することに決めたようだ。
「サンキューガル爺!」
 思わぬ人材紹介に喜々として感謝を伝える真と笑顔を浮かべる女性二人。 しかし、紹介されるアークメイジが予想以上の問題を抱えていることに、彼らが知る由もない。

「Q.最強の職業は何ですか? A.遊び人です」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く