【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

国境攻防戦

--- アルノルト Side ---簡易的な砦から、帝国が陣を張っている場所を探していると、橋を渡ろうとしている集団が見える。
「侯爵閣下。迎撃しますが、どうされますか?」「橋のギリギリまで引き寄せましょう」「大丈夫ですか?」「なんとかなると思いますよ。それに、これを最後にしましょう」「はぁ・・・あっそれと、ご指示があった、上流の堰き止めは、どうしましょう?」「どのくらい・・・川を見れば、かなりの水量が溜まっていそうだな」「はぁでも、大丈夫なのでしょうか?」「大丈夫ですよ。後、堰き止めている場所の下流に、尖らせた木材も置いてありますよね?」「はい。数はそれほど準備出来ませんでしたが・・・。あれで何をするのですか?」
反対側の橋まで来ているようだ「まぁそろそろ、出ましょうかね。ヒルダ。状況確認は頼むな」「解りました」「マルティナも、ヒルダを頼むな」『任せて!』
「それじゃ隊長行きましょうか?」
そんな話をしている最中に、帝国兵は橋の中央程度まで来ている。そこで進軍速度を落とした。こちら側から、兵士が出てこない事で、罠でも警戒しているのだろうか?
半分の半分を超えた辺りで、こちらも慌て様子で橋に陣取る。これで、罠が無いと思ったのか、帝国軍が勢いづいた。
何やら叫んでいるが、あまり良く聞こえない。俺は、今、認識阻害の魔法を施して、水位が少なくなった川を渡っている。これから衝突する橋の下を移動している。服装は、以前に拿捕していた、帝国軍の服装だ。俺に従っているのは、4名の守備隊だが、全員帝国出身者を父か母に持っている。
橋の上では、戦闘が始まったようだ「少し急ぐよ」「はい!」
上の戦闘は、予想通りの展開になっている。やはり、本気で攻める気が無いのかも知れない。手土産もなしに引き返すとは思えない。何か状況を変化させなければ、動きを見ることが出来ない。
「侯爵閣下」「ん?なに?」「我ら・・・我らで良かったのですか?」「なんで?」「我らが・・・なんて呼ばれているのかご存知ですよね?」「いや、知らない。何か、聞いた気がするが、興味がない」「え・・・そうなのですか?」「あぁだって、君たち。俺を裏切らないでしょ?」「当然です」「それだけで十分だよ。それに、君たちの協力が、俺には必要だからね」
「ほら、対岸に着くよ。予定では、そろそろ、引き上げてくるだろうから、そうしたら、最後尾につけるからね。タイミングを逃さないようにね」「はい!」
ヒルダの魔法が炸裂したようだな。そろそろだろう。
『アルノルト様!』『ありがとう』
上から見ていた、ヒルダがタイミングを計ってくれている。橋の下から出て、帰ってくる、帝国軍の後ろに付けた。認識阻害をしたまま、付いていく。
低奥側が陣取っている場所に着いた。俺達は、そこには入らないで、少し離れた所に移動した。ここからが、本番だ。
「侯爵閣下」「あぁ頼む。でも、無理だけはしないでくれよ」「はい。心得ています。ノース街で、侯爵閣下におごってもらうまで死にませんよ」
彼らには、近隣の村に走ってもらう事になっている。そこで、内乱が発生したと、噂を広めてもらう手はずになっている。
俺は、ゲートの基点を作れる場所を探している。橋には、いくつかの魔法をすでに施している。時限式の魔法が作れないか、試行錯誤をしていたが、タイマの設定が出来ないので、諦めた。起動時のパラメータ指定で、タイマは動いているようには思えるが、起動式を読み込む時に、エラーになっているのか、魔法が発動しない。リモートデバッグの方法は、まだ確立出来ていない。開発ツール上のデバッグでは問題ない。リリースモードでの実行でも問題はない。実際の環境に置いた時に問題が発生してしまっている。今橋桁に置いた魔法は、魔核に配置した魔法だ。魔核を使い捨てにする方法だが、今はそれしか方法が見つからなかった。タイマ起動は、今後の課題にしておく。
トリガーを監視して、一定の魔法が放たれたら、それに連動して、魔法が発動する様になっている。ただ、いつまでもというわけではない、魔核の魔力がなくなるまでだ、起動に必要な魔力がなくなる前に、魔法が発動する様になっている。使っている魔核の質から、2日程度は持つと考えられている。彼らが変えてくるのが、半日後で予定している。
それまで、俺はここで待機する事になっている。認識阻害をおこなって、待っている。
--- ヒルデガルド Side ---アルノルト様が、決められた作戦を実行するにあたっての心配はない。ただ1点、私が・・・僕が、一緒にいられない事だ。
確かに、僕しか出来ない事を頼まれたのは嬉しい。でも、一緒に居たかった。やっと、婚約者に認めてもらって、最近になって、女として見てもらえているという実感がある。妹を見る感じではなく、異性として接してくれているのは・・・嬉しいが、一歩も二歩もリードしているとはいえ、まだまだ敵が多い。僕もナーテの事は気に入っているからいいけど、フルールはダメ。あのおっぱいはダメだ。エヴァさんもイレーネさんもダメ。噂では、イレーネさんは、アルノルト様を諦めたと聞いている。エヴァさんは、まだ何かに付けて、ノース街に来たり、教会の仕事だといって、近づいてくる。
一番の敵だと思っていた、ユリアンネがあんな事になってしまったけど、まだ周りには、狙っている人が居るようだ。僕という者があるのに!でも、この世界は一夫多妻を認めている。そでも、あって妾でもいいと思っている雰囲気を漂わせているから、余計に頭にくる。
ユリアンネとアンネリーゼとラウラとカウラとルトラウトのお陰でなんとか丸く収まりそうなのだけど・・・。こんなくだらない事をさっさと終わらせて、結婚式を挙げないと・・・。
そろそろ僕の出番のようだな。
砦の一番高くなっている所に立つ。橋の上で小競り合いをしているのが解る。
「侯爵夫人!お願いします」
まだ夫人では無いのだけど、悪い気はしないから訂正はしない。アルノルト様も最近では訂正をしていない。
「わかった!誰を狙えばいい?」「あの、白い甲冑の男をお願いします」「わかった!少し離れていて」「はい!」
危険は無いのだが、ステータスシートを操作している所を見られたくない。アルノルト様から、まだ”オープンソース”にするつもりはないから、見られないように操作して欲しいと言われている。
兵士が離れていくのを確認してから、ステータスシートを開く。最近開発したと言っていたが、どうやったらこんな事が出来るのか教えてほしいのだが、"ウィジェット”機能と呼んでいたが、ステータスシートに特定の魔法を配置した時に、魔法の威力などの設定が入力できるようになっている。その後、魔法を唱えると、普通の魔法の様に使う事が出来る。一番不可解なのが、僕が持っていない加護の魔法も使える事だ。確かに制限はあるが、発動する。今回も僕が持っていない、火の加護を纏った、魔法矢マジックアローを使う事になっている。
魔法矢マジックアローのウィジェットをクリックする。加護を選ぶのだが、上位加護は持っている者だけになるが、下位の加護は使う事が出来る。火の加護を選択する。追跡トレイサーにチェックを入れる。対象の数を、1と入力する。威力は、よくわからないが10~100となっている。アルノルト様の指示で、20位にしておいて欲しいと言われたので、20と入力して、確定する。
ステータスシートを閉じて、『我、ヒルデガルドが命じる。火の精霊よ。敵を討ち果たす矢を作らん。』と詠唱する。詠唱は必要ないのだが、兵士がいるので、適当にそれらしい詠唱をするように言われている。すごく恥ずかしい。僕は、中二病患者ではない。確かに、少しかっこいいとは思うけど・・・さぁドイツ名とか好きだし・・・。
僕の魔力を使って、弓が生成される。これが、威力に関係するのだろう。
矢が一本生成される。複数の場合には、これが複数になってくる。加護が鏃に施される。
ロックオンしなければならないので、意識を白い甲冑の男に絞る。殺さないようにと言われているので、肩を狙う事にする。
ロックオンマークが着くので、『魔法矢マジックアロー』と詠唱する。これで、矢が吸い寄せられるように、白い甲冑の男の肩に命中する。
続けて第二射を用意する。今度は、見えにくいが足を狙う。『魔法矢マジックアロー
両方共、問題なく命中するのが解る。帝国兵が僕に視線を送るが、何をやったのか解るはずもない。こちらに弓矢を放つが届くわけもない。
今度は、耳を狙う。意識を集中させていけば、どこまでも小さな的でも当てる事が出来る。
第三射が命中した事で、敵は撤退を始めた。潮時と考えたのだろう。
帝国軍が、橋を渡りきる寸前で、アルノルト様に念話を送る
『アルノルト様!』『ありがとう』
それだけで念話は切れてしまったが、これで僕の役目は、しばらく無いことになる。アルノルト様が、ノース街ともゲートを繋いでくれているので、ノース街に戻って、兵站を持ってくる事にする。食糧事情が変われば、兵の忍耐力も変わってくるだろう。
予定通りに進めば、後3日程度で、帝国軍は引き上げる事になるだろう。そうしたら、僕がアルノルト様といられる時間が戻ってくる。
--- アルノルト Side ---潜入していた兵士達が戻ってきた。「よし、仕上げに動くか」「はい!」「準備はいいな」「はい。都合よく、砦に運び込まれる馬車を見つけて、侯爵閣下に渡された物を忍ばせました」「それはよかった。見つからなかった?」「はい。それで、砦の中の者たちが、村々で話していた事ですが・・・」「やっぱり、話していたか?」「はい。帝国銀貨を渡したら、教えてくれました」
潜入していた兵士達の話を総合すると、今来ている帝国軍は、尖兵の意味しかなく、本命は下流を渡って、王国に攻め込む事になっているようだ。今の時期ならどの辺りが渡河できるのかを聞かれていたようだ。それは、3日後になる予定で、それまでは、王国軍をここに縛り付ける意味で、小競り合いを続けているのだと言っているようだ。
そして、それ以上に重要な情報として、村の中には、商人として他の街に出向いていた者が居たが、3日程度の距離に、帝国軍は居なかったのに、どこから来るのだろうと、首を傾げていたと、話している。
そうか・・・一つの連動した動きだと思っていたからチグハグに見えたけど、これは、二つの動きが重なって出来たチグハグだったのかもしれない。
まずは、この国境の攻防戦を片付けて、情報収集を開始しよう。もう少ししたら、日も落ちて暗くなってくる。
「侯爵閣下」「あぁ大丈夫だ」
近くを、帝国兵が笑いながら通っていく。俺達には気が付かないようだ。認識阻害が上手く作動しているのだろう。
砦の火が辺りを照らし始める。
「それでは、頼む」「わかりました!」
兵士たちが、4方向に分かれる。
帝国訛りがある共通語で、『だれだ!橋に火を放ったのは!』『敵襲。敵襲。後ろからだ!』
帝国軍が少しだけ混乱する。馬車に仕込んだ、魔法が発動する。タイマではなく、暗くなってから、雑踏が聞こえたら、火が着くようになっている。馬車が燃えだしたのだろう。混乱に拍車がかかる。俺は、橋が見える場所まで、移動して、橋桁に向けて、光魔法の矢を放つ。これが、トリガーになって、橋桁に配置した魔法が発動する。
橋桁が燃え始める。これだけの魔法だが、混乱は拍車がかかる。王国側も、事情を知らないものたちが9割以上居る。従って、橋が燃えている事で、混乱し始める。それを見て、帝国兵も後ろからの敵襲が本当にあるのかと思い始める。
混乱に合わせて、砦に潜入した4人が兵糧に火を放つ。これは、遅延式の魔法式で組み込んだ、魔核を投げ込んでもらう。
火が放たれたら、4人は離脱するように言ってある。
4人を回収して、砦に戻った。
火が消えてきたら、帝国軍の砦に攻撃を仕掛ける。その為のゲートも作ってある。
これを、夜の度に繰り返す事になる。何日で根を上げるのだろうか、とりあえず、明日から食料はもう無いだろう。水を川も干やがっているから、渡河するのは簡単だけど、飲水を確保する事は出来ないだろう。もし、川に兵を進めたら、帝国軍の最後に鳴るのだろう。
それから、4日後に、帝国兵は砦を放棄するようだ。
さぁ次の段階に移行しよう。

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コメント

  • ノベルバユーザー301833

    話は面白いのですが、文が長くて読みにくいので1話ずつもう少し短くした方がいいと思います

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