【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

王都開放.2

--- ユリウス Side ---アルとクリスが言っている事もわかるが、俺が、アルの心配をするのがそんなに駄目な事なのか?俺が、友を作っては駄目なのだろうか?
多分、そういう事を言っているのではない事はわかっている。アルの為に、俺が何かをしようとしても、それが正当な手順を踏んで、正当な範疇だとしても、アルを優遇していると見られてしまうのだろう。そういう事に注意したほうがいいと言っているのだろう。そんな事は、わかっているが、俺がアルや仲間達を按ずるのは当然の事ではないのか?
「ユリウス様」「ん?」
目の前に、クリスが来て、俺に問いかけている。
「ユリウス様。王城に向かいますが、よろしいですか?」「あぁ問題ない。偽王は、逃げ出していないのだな?」「・・・そうですわね。まだ逃げ出してはいないと思いますが、生きている保証もないです」「それはしょうがない。自分の命くらいは、自分で守ってもらおう」「そうですわね」
「そうだ。それで、正面以外の場所は防いだのか?」「ナーテリンデが、ゴーレム隊を動かしていますわ。私が知っている抜け道も合わせて、防いでいます」「そうか、それなら問題ないだろうな。それで、ヒルダとナーテはどうしている」「ユリウス様の覚悟待ちですわ」
覚悟はできている。叔父上を倒して、俺が玉座に座る。それだけの事だ。それ以上の事は・・・。
そうか、クリスが言いたいのは、そういう事なのだろう。王国を背負う覚悟ができたのかという事だろう。そんな物は、産まれた時からやっている。俺以外にこの荷物を持つ者はいない。そう考えている。
「大丈夫だ!王国を全部抱えながら笑っていてやる」「・・・わかりました。それでは行きましょう」
「あぁギード。ハンス。クリスを守れ」「はっ」「はい!」
俺たちは、抵抗も受けずに、中央から、王城に足を踏み入れた
--- ナーテリンデ Side ---にいちゃんから頼まれたのは、ヒルダ姉ちゃんを守って欲しいという事だった。その話をしている時に、クリス姉ちゃんから、ゴーレム隊への依頼があった。
王城の抜け道を防ぐという役目だ。ユリウス兄ちゃんとヒルダ姉ちゃんと、ヒルダ姉ちゃんが、王城に入ると、それを見て逃げ出す者の捕縛が、おいら達の役目になる。でも、おいらには、ヒルダ姉ちゃんを守るという役割がある。そのことを、クリス姉ちゃんにも説明した。おいらじゃなくても、ゴーレム隊で抜け道から逃げてくる奴らを捕まえればいいという事だ。全員捕まえる必要は無いが、捕まえられるのなら、全員捕まえて欲しいという事だった
準備を行って、クリス姉ちゃんが言っていた場所に、二人一組のゴーレム使いを配置した。それらが終わった事を、クリス姉ちゃんに伝えたら、そのまま待っていてほしいと言われた。
ヒルダ姉ちゃんと待っていると、ユリウス兄ちゃんが来て、揃って王城に行く事になったことを告げられた。にいちゃんも言っていたけど、本当なら、ヒルダ姉ちゃんには行って欲しくない。でも、ヒルダ姉ちゃんは、ここから始めないと駄目と言っている。よくわからないが、やるべき事なのだろう。
中央の門が開けられている。そこから、ユリウス兄ちゃん達と中に入る。
誰かが襲ってくるのかと思って、気配を探っていたが、誰も居るようには思えない。
ハンス兄ちゃんやギード兄ちゃんも同じ意見のようで、ユリウス兄ちゃんに、伝えている。
おいら達は、そのまま、まっすぐに歩いて行く、扉が壊されているところを、ユリウス兄ちゃんとヒルダ姉ちゃんが、すごく悲しそうな目で見ていたのが、すごく印象的だ。
それから、玉座という場所を覗いたが、誰もいなかった。
「なぁクリス姉ちゃん。もう逃げちゃったのかな?」「そんな事はないと思いますよ」
そうだよな。おいら達もだけど、カルラ姉ちゃん達も、監視していたはずだし、テディにも手伝ってもらっていると話を聞いた。
ユリウス様が、携帯電話を取り出した「ユリウス様!」「クリス。わかっているが、こんなところで・・・」「だからこそです。だからこそ、私達だけで解決しなければ意味が無いのではないですか?」
「お兄様!隠し部屋がありましたわよね?」「・・・そうだな。ヒルダ。場所は覚えているか?」「もちろんです」
歩きながら、ヒルダ姉ちゃんが話してくれたのは、玉座の間からつながる部屋には、隠し部屋があって、そこは、何かあった時に隠れる事ができる場所になっていて、20名くらいなら隠れられると話してくれた。それだけではなく、魔道具で”気配”や”音”を遮断するので、よほどの事がなければ、見つからない場所なのだ
そこに、目的の人たちが全員いれば・・・・。
「そこは、私とナーテリンデで抑えます。出口を抑えておけば、いいのですわよね?」「あぁそうだ」
「ナーテリンデ行きますよ?」「うん。でも、いいの?おいら・・・」「大丈夫ですよ。二人だけで行かなければ意味がない場所ですからね」「ふぅ~ん。わかった」
おいらとクリス姉ちゃんと、ギード兄ちゃんとハンス兄ちゃんで、指定された部屋に入った。確かに、誰かが急いで移動したのだろう、部屋が一定方向に荒れていた。当たったようだ
「クリス姉ちゃん。あの壁壊せばいいの?」「そう・・・できそうですわよね。でも、まだいいわ。ユリウス様が来てから、開けられなかったら、そうしましょう」「うん。わかった!」
--- ヒルデガルド Side ---もぬけの殻のような状態の王城に入った。誰かが急いで逃げた様子はある。そうなると隠し部屋に逃げたのだろう。
そこは、クリス姉様が抑えてくれると言っている。
私とお兄様は、王族の義務として確認しなければならない事がある。お祖父様のご遺体と、お父様のご遺体の確認だ。お父様のご遺体に関しては、宰相の話から難しいだろう事はわかっている。でも、お祖父様のご遺体なら・・・そう思って、お祖父様が寝かされていた寝所に向かった。
「ひど・・・い」「あぁ少なくても、肉親の・・・兄にする所業ではないな・・・」
そこには、首を切られて、胴体から切り離されたお祖父様のご遺体だ。それだけではなく、手足を何かで焼かれた跡や切られた跡もある。もしかしたら、踏み絵にしたのかもしれない。
誰の考えなのか解らないが、このままにしておく事はできない。
「お兄様。私が・・・」「ヒルダ・・・そう・・・いや、お祖父様には申し訳ないけど、もう少しこのままで待っていてもらおう」「なに・・・を・・・」
びっくりして、お兄様の方を見る。今にも泣きそうな顔で、肩を震わせている。そして、握られた、手からは、血が滴り落ちている。私は、お父様に構われたが、お兄様は、お父様よりも、お祖父様に可愛がられたと聞いている。そのお祖父様を、なんでこのままにと思う気持ちがあるが、誰よりも、お兄様が、怒り、悲しみ、決めた事がある。私は、それに従う事にする
「わかりました。それで、今後は?」「宝物庫と、地下牢に行こう」「わかりました」
「(お祖父様。少しばかりお待ち下さい)」
私は、お祖父様に一礼して、部屋を出る。
「お兄様。手を・・・」
お兄様は自らが傷ついている事さえも忘れて、考えついた事だ。私がそれを尊重しないで、誰が尊重するのだろう。そして、肉体の傷を治す事にする。
「ヒルダ。ありがとう。それにしても、アルはすごいよな?」「え?今、その話ですか?」「あぁお前のその力も、アルの眷属化した事で得た力なのだろう?」「そう言っていましたが、いまいちわからないのですよね」「まぁいい・・・ヒルダ。すまん、宝物庫と地下牢に急ごう」「はい!」
宝物庫は、想像通り、あらされていた。アーティファクトは、手をつけられていなかったが、使い方が判明している魔道具や武器・防具は持ち去られている。これは想像していたとおりだ。
王家由来の物も、かなり持ち出されているようだが、私やお兄様では全容がわからないし、わかる者は、もしかしたら殺されてしまっているのかもしれない。
地下にある。牢に向かおうと思った息をするのも辛くなりそうな、腐敗臭が漂ってきている。たった数週間でここまでになってしまう理由は、一つしか無い。
私とお兄様の周りに結界を展開して、地下に降りる。そこには、おびただしい数の死体が放置されている。全裸の女性も数多く居る。中には、私よりも若い女の子も居るようだ
「ひどい・・・な」「えぇ・・・そうですわね」
直視したくないが、直視しなければならない。私達王家の者が起こした事なのだ。確かに、犯罪者として収監されていた者がほとんどだが、それでも、両手両足を切り落とされたり、自分の一物を口に押し込まれて、首をはねられる理由はない。
中には、私達が世話になっていた、メイドやその家族の姿もある。王城に残っていた者は、少しでも私達との関係が疑われたり、叛意有りと思われた者は、殺されたのだろう。
「・・・ヒルダ・・・おい、ヒルダ!」「え?あっお兄様なんでしょうか?」「あぁよかった。お前がいきなり、偽王とバルリングを殺しに行きそうな感じだったからな」「え?・・・・申し訳ありません。そのような事はいたしません。あいつらは、生きていた事を後悔しながら・・・殺してくれと言ってくるまで苦しませます」「・・・ヒルダ。お前、アルに毒されていないか?」「大丈夫ですわ。お兄様。それよりも、ここの人たちを弔ってあげないとなりませんわね」「そうだな。一旦、戻って、クリス達と相談するか?」「そうですね。偽王とバルリングにも聞こえるように・・・ですわよね?」「あぁそうだ。この者たちには、悪いが、偽王とバルリングの所業を、外や未だに抵抗する兵士達にも知らしめる為に、役に立ってもらおう。その後で、この国で一番いい場所で弔いの儀式を行おう」「わかりましたわ。この者たちには、不本意かもしれませんが、ノース街との街道沿いに用意致します。アルノルト様にも絶対に許可をもらいます。礎になってもらいましょう」「そうだな・・・俺たちが、間違った方向に進まない様に戒めにもなるだろう」「はい」
クリス姉様達が居る場所は、すでにわかっている。一応、私達がわかる範囲で抜け道や隠し部屋を確認して見たが、やはり誰もいなかった。辺りには、死体は腕や足だけがない死体や、乳房さけを切られた死体なども見つかっている。
「クリス!」「ユリウス様。どうでしたか?」
お兄様は、手の動きで、隠し部屋の方向を指差す。ナーテリンデが頷く。どうやら、ゴーレムの機能で中を覗いたようだ。指を丸くして、OKのサインを出している。アルノルト様がナーテリンデに教えたようだ。その後、指を2本出してから、指を丸くして、から、7本の指を出した、27名が中に隠れているようだ。その上で、猿真似と豚の真似をする。
偽王もバルリングも生きているようだ。それは嬉しい報告だ。
お兄様とクリス姉様は、筆記で何かを書きながら、偽王もバルリングが王城には、すでにいないようだと話している。そして、大量の死体が見つかったので、それを、運び出すために、ノース街から、兵士を呼んでくる事にしたと話している。そして、北門や西門や東門では、まだ抵抗が続いているけど、この死体を見れば、気もわかるだろうなどと適当な事を話している。
ギードさんとハンスさんは、それを聞いて、何やらメモを受け取って、部屋の外に出ていった。北門ではまだ兵士が健在で、戦っているのを偽装するためだ。
こえで準備が整った。逃げ出した偽王やバルリングを捕えればいい。罪人として・・・。
クリス姉様が、外に出て、アルノルト様に連絡をしている。聞こえてくる声からは、遺体の搬送や、埋葬の相談なのだろう。
戻ってきた、クリス姉様は、少しだけ笑みがこぼれている「クリス!」「申し訳ありません。あまりにも、アルノルト様の言葉が、場違いで・・・でも、今の状況を示していたので・・・」「アルはなんと?」「え・・あっまず、遺体の搬送ですが、アルノルト様が手配してくれるそうです。子爵家として、受けると言っていました」「わかった、報酬は?」「城塞街全てと、王家が認識している、迷宮の全ての権利・・・そして・・・」「なんだ、奴にしては欲張るな」「ライムバッハ家。ヘーゲルヒ家。わたくしの実家の3家を除く辺境伯の解体と、寄り子家の解体です。後、ゲートの権利を王家に譲るから、ヒルデガルドをライムバッハ子爵家に嫁によこせと言っています。どうしますか?」「お兄様!!!!」「ヒルダ。お前は黙っていろ。」「駄目です。初めて、アルノルト様が示してくれたのですよ。これを逃したら・・・」「わかった、いや、わかっているから、少し黙れ!」「クリス。アルは、そんな事を要求したのか?」「はい。それが叶えられないのなら、ヒルデガルドをさらって、共和国か帝国か、違う国に亡命すると言っていました」「あっ・・・アルノルト様。お兄様。それなら、私はどちらでもかまいません。お兄様におまかせします」「ヒルダ・・・お前な・・・ヒルダの件は了承しよう。貴族に関しては・・・・そうだな、反乱に参加した家は、私財没収で取り壊し」「当主達は?」「捕虜になっている者は、裁判の上死刑。それ以外は、裁判で決めよう。それでいいか?クリス」「はい。それでしたら、大丈夫でしょう。逃げられなければ、死刑が待っているということですね」
意味深なセリフだが、隠し部屋にいる者たちに、聞かせているセリフなのだろう。手元では、違う事が書かれている。アルノルト様が願ったのは、ゲートの魔法を王家に献上する見返りに、迷宮の情報が欲しいという事だ。城塞街に関しては、ハンスとギードとギルベルトに、守らせる事にして、取り壊しになった貴族の領地は、残った3家で分配する事になる。
「クリス。それで、アルは、他にも何か言っていたのだろう?」「はい。埋葬は、ノース街と王都の中間に用意すると言っていました。そこに神殿を作って、埋葬するそうです」「わかった。クリスとアルに任せる」「埋葬の義のときには、ユリウス様が主を努めてください」「当然だ。俺以外に、そんな事ができる者はいない」「そうですね・・・・」「あぁアルもそんな事を言っていたのか?」
「いえ・・・アルノルト様は『この頃、埋葬ばかりしている。自分が埋葬される側にはなりたくないが、埋葬もしたくないな』だそうです」「やつらしいな・・・」

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