【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

作戦

--- エヴァンジェリーナ Side ---「ユリアンネ様。本当によろしいのですか?」「えぇもう決められている事です」「でも・・・アルノルト様にもお話になっていないのですよね?」「・・・それは、皆で決めた事です」「そうですか・・・私が何を言っても・・・」「そうですね。私だけではなく、ラウラとカウラも同じ気持ちです」「・・・」「あとは、お兄様が受け入れてくれるかだけです」「それは・・・でも、ヒルデガルド様とナーテリンデも、でしょ?」「そうね。でも、お兄様次第ではないかしら?」
話は終わりとばかりに、ユリアンネは立ち上がった。
「ユリアンネ様。どちらに?」「えぇお兄様との待ち合わせ場所が、王都の神殿ですので、そちらに移動します」「え?今、王都は?」「解っていますが、エヴァンジェリーナ様。私達を害する事が出来る者が居るとお考えですか?」「いえ、失礼しました。アルノルト様が、こちらに来られたら、そのように申し伝えます」「お願いします」
優雅に立ち去られた。ふぅ敵わないな。私、ヒルデガルド様やナーテリンデの立場に居たとして、ユリアンネ様達からの提案を受けられるのでしょうか?即座に答えられないでしょう。母の事もある。提案を受けたときに発生する事象を考えると、簡単には受けられない。やはり、私は覚悟が足りないのだろうか?ヒルデガルド様やナーテリンデはどうするのでしょう?
私が立ち会えば・・・いや、立ち会っても何も出来ない。それならば、3人が下す決断を受け入れるだけの存在の方がいい。私では、同じ所に立てそうにもない。
--- クリスティーネ Side ---「クリス。アルは無事なのか?」
本当に、この人はわかっているのでしょうか?
「ユリウス陛下・・。アルノルト・フォン・ライムバッハ子爵は、エルフ族のロルフ殿とゴーレム隊隊長のナーテリンデ・ブラントと共に戦っておられます」「・・・あぁわかっている。戦況はどうなのだ?」
ふぅまだ解っていないようですが・・・。
「少し前に来た連絡なので、現状はわかりませんが、ヘーゲルヒ領の近くに駐屯していた、シュヴァイガー隊に壊滅的なダメージを与えて、撤退に追い込んだようです。当初の計画通り、撤退する部隊に、スパイを紛れ込ませる事に成功して、橋頭堡にする為に、作った野営地に集結予定です」「そうか、死傷者は?」「けが人は多数出ているようですが、こちらには、死者は居ないと言うことです。シュヴァイガー隊の損害は、解っていません」「・・・そうか、相手に多数の犠牲者が出たのか・・・」
本当に・・・この人は・・・。
「陛下!」「そうだった。この勝利を、ノース街で宣伝してくれ、後、王都の北門に居る奴らにも教えてやって欲しい。”シュヴァイガー隊は、壊滅したぞ”とな」「わかりました」
コンラート殿にも連絡をして、ヘーゲルヒ街でも同じように宣伝してもらわないとならないでしょう。それでなくても、人心掌握が難しくなっているのですから・・・結局、今起こっている問題は、王族内での覇権争いに、辺境伯が絡んできているだけの、王国民にはまったく責任がない所で、戦いなのです。関係ない人に被害を出したくないのです・・・もう、王都民には、被害が出てしまいました。これからは、領民からの被害者が出ないようにしたい。できない事とは思うけど、少なく抑えられるようなら、抑えたい。
あと、フォイルゲン領でも、発生するであろう、難民対策をおこなってもらわないとならないだろう。ヘーゲルヒ街では、コンラート殿がすでに対策を始めていると話している。
フォイルゲン領に居る者達にお願いをしなければならないだろう。
--- ルステオ Side ---久しぶりに、アルノルト様から連絡が入った。クヌート様宛の連絡だったが、私が受けさせてもらった。
今、王都で発生している事や、これから発生するであろう事を含めて、説明があった。難民が発生する可能性があるらしいが、ライムバッハ領は、幸いな事に、難民が発生しそうな領地とは隣接していない。
アルノルト様もそれは重々承知で、先生に頼まれていたのは、ライムバッハ領で、守備隊を残しての軍隊を用意する事だ。勿論、兵站をしっかりとする事が前提だが、兵数はそれほど多くなくてもよいとは言っていたが、5,000程度は集められるようにしておきたい。他の領と違って、共和国の牽制もあるので、主要部隊を動かすわけにはいかない。新たに集め直す必要がある。期間も短いので、新兵を訓練して出すわけには行かない。共和国への牽制を行っている部隊を編成し直す必要がある。カール様の名前で、辞令を出し、実務は、クヌート様とイーヴァ様がやっていただける事になった。
それから、数日後に、ギード様も来られて、編成された軍を率いてくださる事が決定しているようだ。そのまま、王都に向けて進軍を開始して、途中で、アルノルト様と合流する事になっているとおっしゃっていた。
--- アルノルト Side ---「閣下」「ん?」「やつらは、シュヴァイガーやバルリング領を素通りして、フォイルゲン領に向かっています」「え?愚策だな。ちょっとまってね」「はい。我らは、どういたしましょう」「ん?休んでいて」「はっ」
『アルノルト様』「クリス。ごめんね。こんな時間に?ユリウスと一緒?」『いえ、今、フォイルゲン家に、守備隊を残して、軍を編成するようにお願いして、難民対策を強化する様にお願いした所です』「そうか、ちょうどよかった」『なにか、有りましたか?』「あぁ・・・」
クリスに、忍び込ませた奴らからの報告を、”丸投げ”した。
『わかりました』「あぁ俺達も、今から追撃に入るけど、敵陣地を抜けていくから、もしかしたら、戦端が開かれるまでに間に合わないかも知れない」『それでしたら、ハンスを向かわせますわ。アルノルト様到着まで、えぇそれまで、守るだけに徹して居ればいいのですわよね?』「・・・そうだな。ゴーレム隊も少し残っているだろう?ハンスを遅らせれば、1~2日で到着するだろう?」『え?解りました。手配します』「ハンスにも携帯を持たせておいてくれよ。予備は、テディが持っていると思うからな」『ありがとうございます。ギードも、先程出立したので、数日中には、ライムバッハ領に到着出来ると思いますわ』「え?あぁ・・そうか、クリス。すまん。迷宮ダンジョン間移動を使えるようにしておけばよかったな」『・・・全くです』「まぁギードだから許してくれるだろう」『・・・まぁいいですわ』「あぁ反転攻勢に出られそうだな」『そうですわね。そうそう、ユリウス様が、アルは?アルは?と煩いので、一度連絡して挙げてくださりませんか?』「え?面倒だから、いいよ。心配なら、連絡してこいって言っておいてくれ」『・・・わかりましたわ。それでは、アルノルト様。お願いします』「あぁわかった。任せろとは、言わないけど、精一杯無理なく出来る範囲でやってみるよ」
これで、フォイルゲン領の方も一安心かな。魔物とアンデッドがいないから、多くても、8,000程度の軍隊だろう。フォイルゲンも小さな領ではないから、5,000程度は集められるだろう。元々の守備隊も居るだろう。シュヴァイガーの奴らが駐屯した場所も伝えたし、攻めようとしなければ大丈夫だろう。近隣の村や街は、上手く逃げてくれれば、良いのだけれども・・・。
--- ロルフ Side ---「ロルフ」「なんだ?」「頼みがある?」「だから、なんだ言ってみろよ」「うん。シュヴァイガー軍の生き残りを連れて、ヘーゲルヒ街に戻って欲しい」「なっなに?俺に、帰れと言うのか?」「あっ違う。ロルフの所の者達で送ってほしいって事だよ。ロルフは、シュヴァイガーの首を落としに行くのだろう?」「・・・あぁそのつもりだ!」「うん。一緒に行こう。奴らを、フォイルゲン軍を挟み撃ちにする」「詳しく話せ!」「もちろん!」
アルノルトから聞き出した内容は、驚くべきことだったが、納得出来る内容だ。紛れ込ませた奴らから、逐次情報を挙げさせて、だいたいの位置を把握しているという事だ。
その上で、フォイルゲン領の守備隊で足止めしている所を、俺達が後ろから強襲する。どうせ、シュヴァイガー辺境伯は、後ろでふんぞり返っているだろうから、後方から突撃すれば、簡単に事が運ぶだろうと説明された。
確かに、抜けは無いようだ。ただ、今度の戦いは、ゴーレムで守られながらの戦いでは無いので、本当の精鋭だけにして欲しいという事だ。アルノルトが連れて行くのは、兵士10名だけだ。ナーテリンデのゴーレム隊は置いていくと話していた。速度面から、途中までは送らせるが、戦闘には関わらせないつもりのようだ。それで、俺達も精鋭だけに絞って、残りは、捕虜をつれて、ヘーゲルヒ街に戻らせたいらしい。ただ、帰れと言われても、納得できない者も多いだろうが、捕虜の護送となれば、はなしは違ってくる。俺達の隊からは、死者は出ていないが、けが人は多数出ている。その者達を後方に下がらせるにもちょうどいいだろう。
あと、信頼出来る者に、頼み事があると言われた。”ヘーゲルヒ辺境伯やギルの呼びかけに応じた貴族が、兵をヘーゲルヒに送っているだろうから、コンラートに言ってまとめさせて欲しい”と、言うことだ。一応、すでに連絡は伝えているらしいが、もう一度はっきりと伝えて欲しいと言われた。
それにしても、遠話が出来る魔道具が使えるだけで、戦場がかなり有利に設定出来る。
「アルノルト・フォン・ライムバッハ!シュヴァイガー辺境伯や貴族共は、殺していいのか?」「できれば、腕や足を切り落としてもいいから、生かしておいてくれた方が嬉しいかな」「それは、変わらないのだな」「・・・そりゃぁそうだよ」「解った。善処する。誤って殺してしまっても文句は言うなよ」「言わないけど、ロルフが傷つきそうな時には、躊躇しなくていいからね。俺は、ザシャにヴァルハラで怒られたくないからな」「それなら大丈夫だ!」「そりゃぁよかったよ」「あ?俺が、大丈夫と言ったのは、確かにザシャはヴァルハラに居るだろうけど、お前は、ヴァルハラに行けないからな。怒られる心配は無いという意味だぞ!」「・・・そりゃぁそうか、そうなったら、ロルフ。お前の足を引っ張って、一緒に落ちてもらうからな」「わかった、そうならないためにも、生きて帰ってこないとな」「当然だ!」
なんだかんだ言って、俺は、この男を気に入っているのだろう。ザシャが惚れた相手だからだけじゃなく、俺もこのアルノルト・フォン・ライムバッハという奴が気に入ったのだろう。余裕な態度が憎たらしいとは思うけどな
--- ギード Side ---「ギード!」「なんでしょう?陛下・・」「お前まで・・・」「実際にそうでしょう。ユリウス様」「まぁいい。ギード。俺の護衛の任を解く。ライムバッハ領に向かえ。そこで、イーヴァがまとめている、ライムバッハ隊を率いて、ライムバッハ子爵の下に向かえ!」「ご命令ですか?」「そうだ!」「謹んでお受け致します。早速、ライムバッハ領に向かいます。ヒルデガルド様、申し訳ないが、ゴーレム馬車をお貸しいただけないでしょうか?」
ユリウス様が、ヒルデガルド様を見る。
「解りました。連続使用出来るようなタイプを用意させます」「ありがとうございます。代金は、王家につけておいて下さい」「解りました。お兄様。後ほど請求させていただきます」「おまっ・・・解った。クリスの所に持っていけ」「解りましたわ、クリス姉様には、お兄様の了承済みの書類だと言って渡します」
「(ククク)」「ギード何がおかしい?」「いえ、なんでもありません。それでは、私は準備に入ります。ユリウス様。ヒルデガルド様。御前失礼いたします」
一軍を率いて、王都に攻め入る。そんなところだろう。ライムバッハ領として、守備隊は残さなければならないだろう、どのくらいの兵が用意されているのか解らないが、アルの所に合流するのなら、この戦いもそれほど悲観すべき物ではなくなったかもしれない。あとは、どうやって勝つかだろうな。それを考えないと、この後で必ず問題になってしまうだろう。
俺は、武装を整えて、ゴーレム隊が居る場所に向かう事にした。
--- ハンス Side ---「ハンス」「はい。なんでしょうか?クリスティーネ王妃様!」「それは、まだ早いですよ・・・。そんな事を話したいわけじゃなくて、ハンス。フォイルゲンに行って欲しいのだけど、だめかしら?」「・・・俺は、ユリウス様の護衛です」「それは、心配しないで、ユリウス様は、この屋敷から一歩も外に出させないから・・・」「・・・それなら・・・。でも、なぜ俺なのですか?」
クリスティーネ様は、少しだけ困った顔をした。
「それは・・・いいですわ。全部説明します」
今、アルが何をしているかと、どういう状況になっているのかを説明された。
「わかったけど、俺が行って何になる?」「フォイルゲンを守るだけならいいのですけど、その後で、兵をまとめて、アルノルト様の下で、王都に攻め上がってくるのに、将が必要でしょ?」「それを、俺にやれと言うのか?」「えぇそうよ。ギードも、ライムバッハ領に向かったわよ」「あぁ聞いた」「それで、二人には、この戦いに”必ず生き残って”もらって、ユリウス陛下・・から、男爵をもらって欲しいのよ。いろんな意味でね。もっと上の爵位でもいいのですけどね」「え?それは?」「だって・・・ハンス。イレーネと結婚するには、最低でも男爵になる必要があるでしょ?」「え?なっそんな・・・あ・・・」
自分でも、顔が赤くなるのが解る。クリスティーネ様は、笑いながら、俺の肩を叩きながら、”と、言うことで、フォイルゲン領に向かってちょうだい。ゴーレムを用意してありますから、あっ陛下・・にも了承をもらってあります”と言われて、立ち去ってしまった。
途方にくれるような命令だが、命令がユリウス様も了承されているのなら、是非も無し。武装を整えて、ゴーレム隊が居る場所に向かった。

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