【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

王都監視体制

--- アルノルト Side ---昨晩、ナーテとギルがヘーゲルヒ街にやってきた。俺の予想よりも、2日以上も速い計算になる。話を聞くと、ナーテのゴーレムの最終形態である。飛行体を使ってきたと話していた。
確かに、全力で飛んできたら、半日で到着するだろうが、無茶な事をすると思ってしまう。ギルもナーテも疲れていると思うので、今日はそのまま休んでもらう事になった。
ノース街や王都の様子を聞く前に、持ってきた書類だけは受け取った。頼んでいた物は全部あるようだ。総大将への要請依頼とか、破り捨てて見なかった事にしてしまおうかと思ったが、依頼と同時に、全軍への命令許可まで付随している。確かにこれがなければ、諸侯連合軍に命令する事ができなくなる。
まずは、ロルフとヘーゲルヒ辺境伯を呼んで話しをする事にした
「辺境伯。これで、大丈夫か?」「大丈夫でしょう。さすがは宰相というところでしょうか?”過不足無く”と、いう感じでしょうか」「そうか、それならいい。ロルフ。これを渡しておく」「これは?」「エルフ族への協力要請だ。後、その報酬として、ノース森に住む限り、王国民と同じ権利を与える旨が書かれている。納税の義務は無いが、ノース街との商取引での税だけは、課せられる事になる。らしい」「それで、ライムバッハ卿はいいのか?領主なのだろう?」「問題ない・・・ってよりも、ノース街の文官が、それで大丈夫と言っているのだから、大丈夫なのだろう」「まぁいい。俺達にとったら、得な事は有っても、損にはなりそうに無いからな」
「ライムバッハ卿。総大将は、貴方なのは解ったが、私が、ライムバッハ卿付きの軍監になっていますが・・・いいのですか?」「なんだ?辺境伯は、裏切るのか?」「そんな事は・・・勝ち馬から降りるような事はしません」「なら、役職なんてどうでもいいだろう?やりたい事が出来る権限があれば、問題ないだろう?」「まぁそうですが・・・宰相が居て、これを許可したのですか?」「そうだろうな。宰相の名前で、書かれているのを、ユリウスが承認したのだろう?」「そうですね。これだけ、私や貴方の権限が強くて、内乱の終結後に揉める事になりませんか?」「どうだろうな。辺境伯、一つ聞きたいが、俺が、その時の軍功を、放棄ないし、それに類する行為をしたらどうなる?」「あぁそうですね。それなら、問題は解決しますね」
「あの・・・アル様?」「ん?カルラ。どうした?」「お話されている事についていけていないのですが・・・」
辺境伯が、カルラに説明を始める。それを、横で聞きながら、辺境伯の人となりを考えてみる。
火付け現場でもよく見かける。親族会社に多いのだが、社長派と専務派とかで別れている会社で・・・無能な上役に柵や学閥で抑えられていて、派閥維持に自分の能力の全てを使ってきていたが、無能な上役から抜け出して、派閥の維持に頭を使わなくて済むようになった途端に、会社全体に有益な事をしだす人。まさに、辺境伯はその古典的なタイプだったのだろう。役職が下の人間からの意見もしっかり聞けるようになっている上に、その下の者が行っているプロジェクトに、部下として加わる事も問題としていない。多分、辺境伯もとことん現場の人だったのだろう。それが、辺境伯という立場から、派閥の維持や、親の世代・・・もしかしたら、もっと前からの世代からの柵は、簡単には切れないのだろう。それが、こうも変わってしまったのは、やはり、子供を亡くしたのが原因なのか?それとも、何か大きな心変わりを行う事が有ったのか?
「アル様」「ん?どうした?」「うん。話しの流れはわかったけど、僕には、アル様のメリットが解らない」「メリット?まず、カルラ。俺が、ライムバッハ辺境伯の後継者を辞退しているのは、知っているよな?」「もちろんです。有名な話です」「その俺が、ユリウスや皇太子の策略で、子爵になってしまったのも理解しているな」「え・・・えぇ」「もし、権力が欲しければ、辺境伯の地位を辞退するのはおかしいよな?」「うん」「その上で・・・だ。俺の婚約者は、ヒルデガルドで間違っていないよな?」「うん」「今回の内乱で、ユリウスとクリスと宰相は、流れ的に、ノース街から出てこられないよな?」「うん」「となると、俺と辺境伯が、王都奪還を行う事になるよな?」「うん。さっき、辺境伯にそこまでは聞いて、それで、王都に入って、王城を解放するまでが、アル様と辺境伯の仕事だと聞いた」「うんうん。カルラ。純粋に考えてみてくれ、俺と辺境伯が手を組んで、王城を解放して、ヒルダを玉座に座らせる事が、出来ると思うか?」「え?・・・無理だと思うけど・・・あっ!アル様がその気なら、出来るって事ですね。今、玉座に座っている王弟と同じ頃が・・・」「そうだな。でも、俺も辺境伯もそんなつもりはない」「法的な根拠が、ユリウス陛下・・からの勅命である事も大事ですね」
辺境伯が補足を説明してくれる
「そう。でも、周りの貴族はそう思わないかも知れない」「うん」「それで、俺と辺境伯は、この内乱が集結したら、ユリウス陛下・・擁立を行い。その時に、俺は・・・そうだな。迷宮ダンジョンの全権利程度で、後は全部放棄かな」「儂は、コンラートの子供が、辺境伯になる為のお願いをする位で、領地を増やすなどの事は全部放棄するかな」
俺と宰相が多くを望まなければ、後から参加する日和っていた貴族が、ユリウスに強く出られない。国を更に割るような事があったら、大変だという思いもあるが、それ以上に、面倒事が増えない事が嬉しい。
「・・・でも、それじゃ」「あぁメリットだよな。カルラ。俺の”夢”は解るか?」「アル様の夢?」「あぁ」「・・・」「しらないよな。俺の目標は、何もしないで生活する事だ!」「・・・え?そんな事?偉そうに言われても困ってしまうのですが・・・」「まぁそうだよな。でも、ノース街ができて、迷宮ダンジョンも軌道に乗ってきている」「・・・はい」「そうなると、後は、周りが静かになってくれたらいい。そう思わないか?」「そんな・・・わからないですよ・・・」「まぁそうだな。でも、俺は、別にこれ以上出世なんてしたくないし、できれば、魔道具を作って生活が出来ればいいと、思っている位だからな」「・・・・わかったような・・・分からないような・・・でも、とりあえずは、王都を目指すのですよね?」「あぁそうなる」
いつの間に、ロルフは部屋から出ていっている。まぁエルフ族のまとめは、ロルフに任せればいいだろう。ドワーフ族や亜人族のまとめも、ロルフにやってもらおう。それがいい。そうしよう!
--- ギルベルト Side ---ナーテのゴーレムが特別仕様だという事は、理解できた。アルとテディが、思いつくままに機能を組み込んだのだろう。
さて、今日はゆっくりさせてもらおうかと思っている。ここには、風呂があるし、風呂に使って、美味いものを食べて、ゆっくり休む。なんか、ここの所、クリスの使い走りばかり、やらされているように、思えてならない。
それも、全部、アルが悪い。考えなしとは言わないが、行き当たりばったりで動いているのではないか?まぁ今回もそれで救われた感じがする。
アルが辺境伯との話をまとめてくれたから、ユリウス達が無駄に動く必要がない。それに、勝率が格段に上がっているのも間違いない事実だ。
ノース街から、ゴーレム隊で突っ込んでいけば、多分勝てるだろう。ナーテが率いる部隊ではなく、テディが編成したチームで、無条件に突っ込んでいけばいいだけだろう。でも、それでは、王都を奪還する事は出来るかも知れないが、その後で、うるさい、何もしなかった貴族から、文句を言われてしまうだろう。
でも、アルがヘーゲルヒ領に居たおかげで、大義名分を持たせる事が出来る。その上で、貴族に”協力”を求める事が出来るのだ。それが、今回の作戦の肝になる。王城に居る偽王の排除は当然だとしても、その後で、前と同じでは面白くない。できるだけ風通しがよくならなくてはならない。それに、内乱が終結した後・・・アルは、本来の仇を討ちに行くのではないかと思っている。
寝る前に、アルと少しだけ話がしたい。ゆっくり話す機会が、最近取れていない。それに、ザシャとディアナにも会っておきたい
「アル。少しいいか?」
アルは、まだ寝ていないと、カルラが言っていた。
「あぁなんだ?夜這いなら、帰ってくれ。俺は、男に覆われる趣味はないし、抱く趣味もない」「俺にも無いわ!」「そうか、てっきり、ギルはそっち系の人間かと思ったぞ。それで・・・何か用か?」「・・・あぁ入っていいか?」「そうだな。話って言うのなら、執務室に行こう。ここは、話ができる状態ではない」「わかった。執務室で待っている」「あぁカルラもまだ起きているだろう。飲み物の用意をさせて欲しい」「わかった」
アルがドアを開けて話をしたが、たしかに、会話をするような雰囲気ではない。床一面に魔道具が散らばっているし、何に使うか分からないような物まで大量に置かれている。いろいろ気になって、話ができないのは間違いない。
執務室に入ると、カルラが待っていた。酒精がある物では、話ができなくなるかもしれないから、何か暖かいものを頼んだ。アルが来る旨を伝えると、”同じものでいいか?”と、聞かれたので、同じ物を頼んだ。
5分位してから、アルも入ってきた。同時に、紅茶が目の前に置かれた。
「それで?」「あぁいろいろあって、アルと話していなかったからな」「そうだな」
二人の間に沈黙が流れる
「それで、アル?」「なんだ・・・」「お前・・・」「だから、なんだよ」「えぇぇい。もういい。お前、ザシャの事好きだったのか?」「はぁ?ギル。お前・・・」「違うぞ。お前の落ち込み用があまりにも・・・なんだぁそうだったから・・・」「ハハハ。そうか、ありがとう。ギル。多分、俺は、ザシャじゃなくても、同じことになる。"ザシャの事が好きか?"と、聞かれたら、好きと答えるが、お前やユリウスの事を友達だと思う気持ちと同じだ。女として好きか?と、聞かれたら、違うと答える」「そうか・・・ヒルデガルド様の事を?」「それも違うな。多分、ヒルダは家族に対しての気持ちだろうな。女としては考えられないな」「そうか・・・ラウラやカウラか?」「ギル。何気にしつこいぞ。どうした?」「いや、単に気になっていな。お前と面合わせて話せる機会なんて、そんなに無いからな」「たしかに、普段は、ユリウスかだれかが居るからな」
急に、ギルは姿勢を正した
「そうだな。それで、アル。マナベ商会の事だけどな」「あぁ」「ナーテのゴーレムを売るつもりはないのか?」「無い!あれは、ノース街の学校を卒業した適正がある奴に渡す物だ。汎用型ゴーレム『馬』なら売ってもいいが、制御を間違えると大変な事になる。だから、今は制限ありで売っている」「そうだよな・・・すまん」「なぁにいいさ。それよりも、そんなにやばいのか?マナベ商会は?」「え?あぁそういうわけじゃない。最近、シュロート商会が儲かりすぎていて、いろんな商会からの突き上げが・・・な。だから、俺がマナベ商会に絡むのが難しくなってしまいそうなのだよ」「なんだ・・・それなら、カルラ?マナベ商会の番頭やるか?」
「へ?」「え?」「よし、そうしよう。ナーテでもいいけど、ナーテは、ゴーレム隊があるだろうし、ヒルダはダメだろう・・・そうなると、カルラがいいだろう。そうしたら、クリスが抱えている、カルラの同僚とかも、マナベ商会の社員として働いて、地方に行くとか、帝国や共和国に行く時の身分に困らないだろう?」
いきなり話が飛びすぎだ。どこからその発想になったのか教えて欲しい。
言われた、カルラが目を点にしている。それはそうだろう。いきなり、番頭をやれと言われても困ってしまうだろう。
「え・・と。アル様。それは、断る事が出来る事なのでしょうか?」「さぁね。カルラが断ってもいいよ。クリスに相談するだけだからね」
そりゃぁ断れないと言っているような物だろう
「はぁ解りました。内乱が終わってからでいいのですよね」「ギル。そう言っているけど、いつまで要られそうなのだ?」「え?あっそうだな。暫くは大丈夫だ。今も、俺は、ノース街に居る事になっているからな」「そうか、それなら、内乱終結してから、1年間はカルラにいろいろ教えて欲しい」「わかった」
それから、アルとカルラと話をする。マナベ商会だけではなく、俺が掴んでいる情報や共和国での話をアルに聞かせた。
最後に、アルに言って、ザシャとディアナに会ってきた。安らかに眠って欲しい。そして、早く、この内乱を終わらせる。二人、そう誓う事しか俺にはできなかった。
--- アルノルト Side ---昨晩は、ギルとカルラと有意義な時間を過ごせた。殆ど寝ていないが、朝の早い時間に、ヘーゲルヒ辺境伯とギルとナーテとカルラとロルフで、今後の事を相談した。俺は、一旦ノース街に戻る事にした。ゲートの魔法が発動出来るので、それで戻ってすぐに返ってくるつもりだ。その時に、戦力になりそうなシュトライトやエードルフを連れてくる。後、アヒム達も連れてくる。それを、俺が運用する。ナーテには、引き続き残ってもらって、各地に移動する時の手伝いをしてもらう。
大人数の移動には適さないが、ゴーレム馬車も用意して、辺境伯とシュトライト達の移動の手段とする。後は、現地での挙兵を行うだけだ。
これらの手順を確認して、俺は、ノース街に戻ってきた。
ゲートカードも問題なく作動している。ギルが試したいと言ったので、俺ではなく、ギルに起動を頼んだ、ギルでも、辺境伯でも起動ができたし、移動もできた。ゲートはこれで大丈夫だろう。後、もう少し汎用性を持たせる事が出来れば、運用にも耐えられるだろう。
ギルと辺境伯にも、ヘーゲルヒに戻ってもらった。俺とカルラで、ノース街に戻ってきた。
まずは、テディの所に言って、作ったゲート魔法を渡して、デバッグを頼む。作った本人では気がつかないバグがないとも限らない。テディは、受け取りながら微妙な表情を浮かべている。
「アルノルト様!!!」
え?後ろから聞こえてきた声は、間違いなく、知っている人間の声だ。それも、かなり怒っているようだ。「アル様。私・・「カルラも一緒に来て下さい」」
「「はい!」」
なんでクリスが居るのだ?クリスの後ろで、ヒルダが笑いをこらえている。俺が帰ってきた事を、誰かから聞いて、ここに来たのだろう。途中でクリスに見つかったか、クリスを誘って来たのだろう・・・。
「クリス。ただいま。でも、すぐに戻らないとだからね」「えぇ解っています・・・・はぁ・・・まったく・・・カルラも、帰ってきたら、私の所に報告に来なさい」「え?あっはい。もうしわけありません」「まぁいいですよ。それよりも、アルノルト様。少し見て欲しい物があります」「え?なに?」「これです」
うぁ・・・ダメな・・・やつだったようだね。たった数日で、ここまでの事が出来るのだね。クリスがテディに言って流した映像は、ギードとハンスが王都に潜入したときの映像だと話していた。北門を閉じるのは当然だけど、他の門は適当だな。これじゃ攻めようと思えば簡単そうだし、何と言っても士気が低い。多分、練度も低いだろう。武器と防具は、そこそこ・・・あっそういう事か!
「クリス。この映像はいつの?」「え?3日程度前です」「それから、王都の監視はしているのか?」「え?どうやって、できませんわよね?」「テディ!」「え?あっ・・・忘れていました」
ふぅせっかくこういうときの為に作ったのに、だから、リアルタイムが重要だと言っていたのに、何しているのだよ。
「クリス。俺が悪かった」「だから、何がですか?わかりやすく説明して下さい」
クリスに、小型ゴーレムを王都に放って、そこから、情報を吸い上げる事を提案する。テディに確認したら、今リアルタイムで監視出来るのは、32体までだと言っている。AIが組み込まれてないので、だれかが遠隔で動かす必要がある。そういうことで、半分を予備にするとして、16人のゴーレム使いが必要になる。距離の関係で、操作のタイムラグが予想される。しかし、それでもやってみる価値はある。ゴーレムは、テディの努力で、小さく・・・小さくなって、今では小型の鼠程度の大きさになっている。16体を王都に放つ。16体を4交代で操作するとして、64人のゴーレム使いが集められた。今日一日は、練習を行って、明日には、ナーテのゴーレム隊に王都まで運ばせる。後は、ここのディスプレイに16体の監視ゴーレムが映し出している物を交代で監視してもらう事になった。
「アルノルト様。それはいいのですが?何を監視しますか?」「それは、任せるよ。兵の配置とかは、常に更新しておいたほうが、攻める時にやりやすいだろう?」「そうですね」「あっあと、それから、エルフ族とドワーフ族が襲われたのは連絡きているよな」「えぇ」「狙いがなんとなくわかったぞ」「え?」「エルフからは、魔道具を、ドワーフからは武器や防具を奪っていったようだ」「そうなのですか・・・」「あぁ状況証拠と、ヘーゲルヒ街での戦闘の様子を聞くとな」「・・・あっそういう事ですか?」「多分な。だから、あまり時間を相手に与えたくない。俺は、戻って、ヘーゲルヒ近くに居る奴らを探して、強襲する」「わかりました。お願いします」
そこからは、動きが早かった。俺は、ゲートですぐに、ヘーゲルヒに戻った。ナーテと同じ特別の個体に乗っているメンバーを3人連れてきて、飛行体で、ヘーゲルヒの近くに居る軍隊を探させる事にした。俺は、シュトライトとエードルフに、魔道具と武器・防具を与えて、辺境伯の所で、戦えそうな人間を50人程編成させてもらった。残りは、街の防御にあたってもらう。それと同時に、檄文を持った、ギルがアヒム達と一緒に各地に廻ってもらう事になった。それに、辺境伯も着いていく事になった。
そこで、ヘーゲルヒ街で指揮する人間が居なくなってしまうので、コンラートに一時的に戻ってきてもらって、マナベ商会ヘーゲルヒ支店で、状況確認と指揮をお願いする事になった。カルラは、俺に着いていく事になったが、クリスの所にいた、カルラの同僚たちが全員ゲートからヘーゲルヒに来て、コンラートの下で情報収集を行う事になった。
完全に戦争モードになっている。いつ戦闘が開始されてもいいような状態になってきている。

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