【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

状況確認

--- アルノルト Side ---ザシャとディアナが死んだ。精霊神を呼んだが、答えない。当然だな。俺への罰なのだろう。
『お兄様』『アル様』『アル兄ィ』『アル』『ご主人様』
「ユリアンネ。ラウラ。カウラ。アン。ルト」『お兄様。いつまでそうしているのですか?』「ユリアンネ。俺は・・・」『疲れたなど、許しませんよ』「ユリアンネ・・・」『アルは、ヒルダを守るのですよね?』『ご主人様。ナーテを守ってくださるのですよね?』「もちろんだ」『それなら、ふさぎ込んでいる時ではないでしょ?』「アン・・・」『お兄様!』「ユリアンネ」『お兄様は、解って居られるのですよね?』「・・・何をだ?」『いえ、今ので解りました。お兄様。ノース街の神殿でお待ちしております』「・・・それよりも、王都の神殿の方が良くないか?」『そうですね。でも、あの場所は?』「なに?」『解りました。お兄様。王都の神殿でお会いしましょう』「わかった。それまで、会いに行けないけど、すまんな」『いえ、私達は、お兄様を感じられます。いつも、側にいます。いつも一緒です。これまでも・・・これからも・・・』
そうか、ユリアンネ。ラウラ。カウラ。アンネリーゼ。ルトラウト。そうだよな。
「ザシャ。ディアナ。悪い。やらなきゃならない事ができた」
いつまでもこうして居てはダメらしい。まずは、ザシャとディアナを殺した、クラーラを探して殺す。
扉を開ける前に、ザシャとディアナに一言話しかける。「ザシャ。ディアナ。ヴァルハラで待っていてくれ、俺は行けないかも知れないから、その時には、蜘蛛の糸で垂らして、俺を引き上げてくれ。頼む。多分、ううん。これから、多くの命を奪う事になるかもしれない。ヴァルハラには行けないだろう・・・からな」
扉を開けて外に出る。どのくらい時間が経っていたのだろう、感覚が麻痺してしまっている
ロルフとカルラが目に入る。「ロルフ。カルラ。悪かったな。話を聞きたい。いいか?」
ここにも、俺を心配していてくれた者達がいた。俺は、なんで、なんでも出来ると思ってしまったのだろうか?今回も、ロルフやマナベ商会ヘーゲルヒ支店やエルフ商会に、任せればよかったのではないか?

マナベ商会の執務室に入って、カルラにあずけていた書簡を受け取った。どうせ、苦情なのだろうと思っていた・・・
”アルノルト・フォン・ライムバッハ子爵殿”と、最低限の情報は収拾している事が見受けられる。
内容は、俺が想像していた物ではなかった。「デニス!」「はい!」「すまないが、少しヘーゲルヒ街の事を教えて欲しい。特に、魔物の襲撃があった辺りからだ」「かしこまりました」
デニスが、話した内容は、概ね、ヘーゲルヒ辺境伯が書いてきた内容と同じだ。信頼して良さそうだ。
「マナベ商会やエルフ商会の結界は、大丈夫だったようだね」「え?あっはい。旦那様の指示通りに致しました」「うん。それはいいよ。魔物の撃退とかはどうしたの?」「あっはい。指示の通りに、武器や魔道具を領民に貸し出しました」「戻ってきた?」「え?あぁはい。全部戻ってきました。あっそう言えば、最後の方は、魔道具や武器を持っている者が狙われやすいという報告が有りました」「そうか、解った。ありがとう」「いえ、また何か有りましたら、お尋ね下さい」「ありがとう。下がっていいよ」
デニスが部屋から出ていった。何かあれば、また呼べばいい。
「ライムバッハ卿。どうした?」「あぁロルフ。これを読んでみて」「いいのか?」「うん」
ヘーゲルヒ辺境伯からの手紙には、3つの事が書かれていた一つ目は、エルマール・フォン・ライムバッハの死に関して、知っている事が書かれていた。辺境伯は、ルネリート・フォン・ヘーゲルヒが妖精の涙フェアリーティアから奴隷を仕入れていた事を、黙認していた。その時に、ボニート・ルベルティやリーヌス・フォン・ルットマンの事を知ったと書かれていた。ライムバッハ伯爵家の襲撃を知っていて、知らせなかったと書かれていた。その事に関して、謝罪したい旨が書かれている。もし、受け入れられないのなら、"自分の首だけで許して欲しい"と、書かれていた。領民には一切手出しをしないで欲しいと書いてある。
二つ目は、エルフの事や先日の奴隷商の問題だが、その事で、俺を恨んでいないと書かれていた。むしろ、本来なら、辺境伯がやらなければならなかった事を、俺がわかりにやった事への感謝の気持ちも書かれていた。できれば、ヘーゲルヒ辺境伯を潰したくないので、その口添えが欲しいらしい。ユリウスやクリスティーネにつなげれば、美味くやってくれるかも知れない。俺も、別に、ヘーゲルヒ辺境伯を恨んではいない。首をもらっても嬉しくない。それよりも、ユリウスの味方になってもらった方が、後々の事を考えると、いいかもしれない。5家の辺境伯のうち3家がユリウスに味方すれば、王国の運営も楽が出来るだろう。辺境伯は、自分が生きている間に、コンラートの子供が出来れば、その子にヘーゲルヒ辺境伯を継がせたいと思っているようだ。これは、俺が決める事ではないが、コンラートに口添え位は出来るだろう。
三つ目が、大事な事だ。ロルフに見せたのにも理由がある。
「ライムバッハ卿。貴殿は、どうされるのか?」「会いに行こうと思っている」「そうか・・・。俺も一緒でいいのか?」「そのつもりで読ませたのだが・・・来ないのか?」「いや、お前に着いていく」
早速に動く事にする。クリスからの情報は、たしかに携帯に届いていたが、文字化けして読めなかった。しょうがないので、ログインをして、情報を引き出す事になるが、すぐにはできそうにない。だから、まずは、クリスに一報を入れておく。その後、辺境伯との面談が終わってから、情報を読み解く事にする。
「カルラも一緒にいくだろう?」「はい!」「そうか・・・カルラ。お前にも関係ある事だからな。読んでおいた方がいいかもしれない」「え?あっはい。解りました」
「ライムバッハ卿。それで、どうするつもりだ?」「そうだね・・・」
首はいらない。ヘーゲルヒ街は、ノース街と違って、辺境にある。海にも面しているので、海洋進出も出来る。三つ目の要望にも関連してくるが、今回の魔物は、王弟派と言われている。ヘーゲルヒ辺境伯を覗く、二つの家が興した事で間違いないと思っているようだ。ヘーゲルヒ辺境伯にも誘いが来たようだが、ちょうど毒で弱っていて、面会も返事もしていなかったそうだ。それ以外の理由としては、バルリング辺境伯から以前に、”魔物を使役する魔道具”と”死者を操る魔道具”があると言われた、妖精の涙フェアリーティアから買ったと話していたようだ。それだけだが、証拠としては十分ではないが、攻撃する材料にはなるのだろう。そのやり取りの記憶があるので、見せてくれると書かれていた。後は、今までのデブレールやルネリートが行ってきた奴隷売買の売り先の情報や、仕入れの為に雇った連中の情報も全部渡すと書かれている。
それらを、持って、ヘーゲルヒ辺境伯の寄り子・・・領民・・は許して欲しいと書かれていた。そして、ヘーゲルヒ街や辺境伯の直轄領は、ライムバッハ子爵の裁量に任せると書かれていた。
「アル様・・・」「カルラ。どうする?お前も一緒に来るか?」「はい。ご一緒させて下さい」
3人で行くことにする
「あっその前に、クリスに連絡をしておく」「わかった。1階で待っている」「了解。カルラも、1階で待っていてくれ」「わかりました」
二人が部屋から出たのを確認して、先にヒルダに連絡をする事にした
「ヒルダ」『アルノルト様!』「すまん」『何を謝るのですか?アルノルト様が無事なら、私はこれ以上望む事はありません』「ありがとう。そっちの状況はどうだ?テディからの連絡は見ているけど、まだアクセスできていない」『そうなのですね。簡単に言います。今、玉座には豚が座っています』「・・・そうか、皇太子様は?」『・・・死にました。フォイルゲン辺境伯もモルトケ子爵も・・・です』「・・・そうか、ヒルダ。こんな時なのにすまんな」『いえ、ザシャ様やディアナ様のご葬儀は、そちらで行うのですか?』「・・・そうなると思う。でも、全部が片付いてからだ!」『はい。お父様が、お兄様を後継者に指名しています』「そうか、ユリウス陛下を誕生させないとな」『はい!』「わかった。ありがとう。ヒルダ。後で、クリスに連絡するけど、大丈夫か?」『ちょっと待ってください・・・大丈夫だという事です』「わかった。ありがとう」
電話を切った。すぐに、クリスにかける。こういうのは、少しでも躊躇したら、かけられなくなる。「クリス」『アルノルト様。ご連絡ありがとうございます』「あぁすまん。ザシャとディアナ・・・間に合わなかった」『・・・・アルノルト様。敢えて言います。ザシャとディアナは、本人たちの責任で死んだのです。アルノルト様が気に病むことはありません。それこそ、彼女たちの決断を蔑ろにする行為です』「わかっている。いや、解った・・・が、正解かな」『それなら・・・解りました。それで?』「そうだった、本題だけどな・・・」
エルブンガルドの事や、ヘーゲルヒ辺境泊からの申し出の事を、クリスに説明した。
「と、いうわけでだけど、どう思う?」『どう思うと言われましても・・・エルブンガルドの事は、ノース街で受け入れるのですよね?』「あぁそのつもりだ」『問題は、ヘーゲルヒ辺境伯の事ですね』「そうだな。話は、今から聞きに行こうと思っている。許すことができそうにないが、使い道はありそうだろう?」『そうですね。ユリウス陛下を支えるには、ライムバッハ辺境伯も、フォイルゲン辺境伯も若すぎますからね』「・・・そうだな。その問題もあったのだな。」『えぇロットナー子爵がいるので、守備隊は大丈夫でしょうが、それ以外の役職がボロボロですからね』「わかった。役職云々は、俺には解らない。それは、ユリウス陛下・・が決めればいい事だ。クリス。俺のミッションは、王都奪還でいいのか?それとも、ユリウス陛下・・誕生でいいのか?」『ほぼ、同じ事を言っていると思いますが、できれば、ユリウス陛下誕生まで付き合って下さい』「わかった。それじゃ辺境伯がどう考えているのか確認したら、また連絡する」『解りました。お待ちしています』
クリスとの話も概ね問題はなかった。目標は、王国の害獣を取り除くこと、さしあたっては、馬と猿と豚の排除をかんがえれば良さそうだ。ヘーゲルヒ辺境伯は、問題が無いようなら、王城に上がってもらって、貴族の抑え役になってもらおう。クリスが言うには、宰相は無事らしいので、宰相と二人ならなんとかなるのだろう。
そんな事を考えながら、1階に向かった。ロルフとカルラの準備は出てきて、どうやら、デニスが辺境伯の屋敷まで案内してくれるようだ。
デニスを先頭に、ヘーゲルヒ街を歩く。街の至る所に、戦闘跡がある。全員が無事という事にはならなかったのだろう。呆然と立ち尽くす者も居る。
「ここです」
立ち止まった場所は、門が壊されて、壁の至る所に、ダメージが入っているのが解る。門番はいないようだ。メイド服の女性が一人立っていた。
「アルノルト・フォン・ライムバッハ子爵でございますか?」「あっはい。そうです。辺境伯様はご在宅か?」「はい。先程、戻ってこられまして、マナベ商会の方から、先触れが来ましたので、私がここでお待ちしておりました」「そうなのですね。案内お願いします」「はい。かしこまりました。こちらになります」
メイドに案内されて、屋敷の中に入る。戦闘の跡があるが、人死は出ているようには思えない。
屋敷は無事なようだ。「どうぞ」
メイドが扉を開けてくれた。3人で中に入ると、そこは野戦病院の様になっている。
「すみません。近くの診療所は、領民の為に使えと言われて、守備隊は、ここで休ませています」「そうですか・・・辺境伯のご命令ですか?」「はい。そうです」「何人位ここには居るのですか?」「・・・わかりません。守備隊は、200名程でしたが、街中での戦いで・・・」「そうですか・・・」
ざっと見た感じ、廊下と開け広げられている扉から見ると、100名に届かない位だろうか?それを、メイド服の女性や執事風の男性が治療している様子が見える。
えぇぇい。交渉をやりやすくするためだ!「ちょっと待ってください」「どうされましたか?」
「ライムバッハ卿」「アル様」
配置している。聖竜を起動する。前回魔力の半分程度を込める。命令は、”癒せ”だ、部位欠損は諦めてもらおう。もしかしたら、治るかも知れないが・・・。
”あぁ・・・え?””治った””痛くない"
そんな声が聞こえてくる。
「さぁ行きましょう」
メイドに声をかける
「え?あっはい」
そのまま奥の部屋に通された。応接室の様だ
「アルノルト・フォン・ライムバッハ。お前がやったのか?」「何のこと?」
一応、とぼけてみる
「まぁいい」
暫く、無言の状態が続くが、5分位してから、扉が相手、初老の男性が入ってきた。護衛も連れていない。さっきのメイドと執事が一人付いてきているだけだ。
「待たせてしまったようだな。ライムバッハ子爵殿」「いえ、大丈夫です。ヘーゲルヒ辺境伯様」
「そちとは一度会って話をしなくては・・・と、思うて、おったのだ」「それは、どういう意味でしょうか?」
少しだけイラっと着ている。
「アルノルト・フォン・ライムバッハ子爵。すまなかった。許してくれとは言わん。だが、儂だけで勘弁してもらえないか?その上で、図々しいお願いじゃが、ヘーゲルヒ家を頼みたい」「えぇ確かに図々しいお願いですね」「・・・」
頭を下げたままにしている初老の男性を、罵るような趣味はない。会社間でのよくある事だが、相手からの追求が語られる前に、先に謝ってしまうのは、最高の謝罪のタイミングだと思っている。その上で、次手を間違えなければだけど・・・。
「顔お上げ下さい。その上で、お聞きします。何に対して”すまなかった”なのでしょうか?」
辺境伯は、素直に頭を上げてくれる。これだけでも、いろいろ覚悟が決まっているのだろう。
「まずは、バカ息子二人がしでかした事の謝罪だ。儂も知らなかったと言って、済むようなレベルの事では無いのは、重々承知している。関係者を洗い出して、罰する事を約束する。そして、犠牲となられた人たちへの保証/補填を必ず行う」「それに関しては、解りました。罪は、二人のご子息が償っていると思います。それ以外の、間接的な加害者も居るでしょう。できましたら、それらの情報は、私達に渡していただける事が、補填になると思います」「・・・」「ご子息二人の事に関しては、辺境伯ご自身も被害者だと思っています。ですので、より直接的な被害者にあずけていただけませんか?」「・・・解りました。それがお望みなら、そういたしましょう」
執事が何枚かの紙を渡してきた
「これは?」「バカ息子達が、取引した、冒険者や裏世界の者達です。わかっているだけですが・・・」「そうですか、ありがとうございます。ロルフ殿。これで、エルフ族やドワーフ族。後、カルラの村を襲った奴らまで行き着くか?」「大丈夫だ。必ず行き着いて、報いをくれてやる」
「子爵殿。もう一つ、貴殿に謝罪したい事だ」「・・・」「お父上のエルマール・フォン・ライムバッハ辺境伯の事だが、儂は、襲撃を知っていながら、知らせなかった。それで・・・」「そうですね。父と母と乳母と妹を失いました」「・・・」「でも、それに付いては、謝罪の必要はありません。辺境伯に謝ってもらったとしても、父も母も乳母も妹も帰ってきません。ただ、”今後”この様な事が無いようにお願いしたい」「・・・わかりました」「それと、知り得る限りの、妖精の涙フェアリーティア情報提供をお願いしたい」「解りました。おい・・」
メイドの一人が、これも紙を持ってくる。妖精の涙フェアリーティアのやり取りが書かれている。知っている事だけではないようだ。今度、ゆっくり読む必要がありそうだ
「さて、辺境伯様。これだけでしょうか?」「これだけとおっしゃいますか?」「はい。私としては、今後の事を話したいと思っています」「・・・今後とは?」「今、起こっている事への対応です。探り合いもいいのですが、そんな事を言っていられる状況でも無いですよね?」「そうですね。子爵殿。私は、貴方ほど情報を持っているとは思えません。私が知っているのは、二人の辺境伯が、王弟の簒奪を手伝う事と、バルリング辺境伯が、怪しげな魔道具を持っていた事です。後の情勢は、ヘーゲルヒ領内の街や村を、魔物やアンデッドの集団が襲った事くらいです。数は、この街程ではなかったので、領内の他の街や村の被害は軽微です・・・が、私が確認した所、エルフ族の集落やドワーフ族の集落には、この街の数倍が襲っていたと・・・」
ロルフが身を乗り出す「ロルフ!」「すまん。ライムバッハ卿」「辺境様。率直に聞きます。なぜエルフやドワーフが狙われたと思いますか?」「・・・魔道具や武器を奪う為だと言っていました」
やはりな・・・・そうなると、この襲撃は、終わりではなくて、始まりなのだろうな。
「それは誰から?」「やはり、バルリング辺境伯が言っていた事です」
ロルフが立ち上がって「貴様!なぜ、それを、我らに通達しなかった、そうしたら・・・俺達も・・・」「・・・エルフの若者よ。すまない。謝れば済む事では無いことは解っているが、儂には謝る事しかできん」「・・・クソぉ!」
「ロルフ。解っているのだろう。ここで、辺境伯を問い詰めても何もならない。それよりも、今後の事を話そう」
ロルフを座らせて、メイドに頼んで、飲み物を持ってきてもらう事にした。カルラにも手伝いに出てもらう。
これから、長い長い交渉に入る事になる。

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