【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

ノース街の宿屋

--- ノースの宿屋 Side ---「なぁここが本当にそうなのか?」「えぇ間違いない・・・わ。指定された、数字と同じですわ」
そう言われても、不安になってしまう。儂たちが、物件を決め兼ねていると相談したら、担当してくれていた者が、"それなら、気になる物件を抑えますので、今日一日、見て回って下さい。"と、言ってくれた。一度に抑えられる物件は、3軒までと言われて、本命1軒と気になっていた物件2軒と合わせて、抑えてもらった。
担当官は、笑いながら、場所を教えてくれた。”いいですか、びっくりしないでくださいね”と、言っていた意味が、初めてわかった。家族で話して、決めた物件で、3軒とも予算内だ。全額は使わないで、半分よりも少し多めの予算で買える物件を選んだ。王都の物件の方が高いと言われていたので、”そのくらいでどうだろう”と、思ったのだ。見に行く物件も、本命を最後にした。一番安い物件から見ていく事にしたのだ。
そして、結果が今目の前にある”物件”と思われる物だ。一応、物件の案内や立地を見て、選んだつもりではあったが、想像の斜め上を行って貫いているような物が目の前にある。
1階は、たしかに食堂になっている。そういう物件を選んだのだから・・・当然だが、道路に面しているのは当然だが、”馬車止め”や、裏には、馬小屋も完備している。一番驚いたのが、”ガラス”と呼ばれている、それこそ教会や一部の貴族の屋敷にしか使われていない物が、使われている。
「あなた。中を見てみましょう」
そう言われて、中に入ってみる。1階の食事処は、一般的な広さで、10名位が座れる長テーブルと、4名が座れるテーブルが5個置かれていた。厨房はオープンになっているようで、受け渡しも楽にできそうだ。これなら、厨房仕事をしながら、客と話しができそうだ。
子供たちは、はしゃぎまくっている。嫁に注意されているが、それでも何かが楽しいのだろう。いろんな物を見ている。俺としては、備品を壊さないか不安でしょうがない。
気になっている厨房を見に行く。
「はぁ?」「あなた。どうし・・・た・・・え?」
嫁が後から着いてきて、先に入った儂の肩越しに厨房を覗き込む。外から見た感じでは解らなかったが、広い。この程度の食事処なら、一人か二人で賄うのが普通だと思うが、この厨房は、5人が作業してもぶつかる事は無いだろう。そして、驚いたのが、魔道具が設置されている事だ。
説明が書かれている。それを、嫁と見てみる。普通の食事処では、スープを作る竈と焼き物をする竈があるだけだ。営業が始まる前に、”火の精霊”の加護を持つ者が、火を着けに来てくれる。
「あなた。この魔道具って・・・まさか」「そうみたいだぞ」
使い方の説明を読んでみる。”コンロ”と書かれた魔道具だが、ボタンを押すと火が着くと書いてある。火がつく場所は3箇所あり、それぞれで調理が出来るようだ。横に大きめのコンロが、2つ置かれていて、そちらではスープを煮込む事が出来るようだ。上級貴族や王城に配置してあると言われている物だ。注意書きが書かれていた。”魔道具は、マナベ商会の商品を無期限で貸し出します。料金も不要です。マナベ商会が行う、月に1度の勉強会への参加が義務付けられます。また、宿屋に設置している魔道具は、魔核にて動作します。動かなくなったら、マナベ商会に連絡をして下さい。魔核の交換を行います”と、書かれていた。
「おい。これどう思う?」「どれ?」
嫁に、注意書きを渡す。
「マナベ商会って・・・ここの領主のアルノルト・フォン・ライムバッハ子爵がオーナの商会よね?いろんな魔道具を販売していると言われているわよ?」「あぁそうだな。考えても仕方がないか・・・」「そうね。後で、担当してくれた人に聞いてみるしか無いでしょうね」「あぁそうだな」
「パパ。ママ。この部屋冷たいよ!」「お姉ちゃん。ずるい!僕が見つけたのに!」
子供たちが、壁についていた取っ手を引っ張ったら、そこが開いたと話していた。そして、中から冷たい空気が出てきたと話している。そんな事があるかと思ったが、これも魔道具の様だ。聞いた事がある。食材を冷たい部屋に入れておくと、長持ちする。そして、魔道具で、それを実現しているらしいと・・・。大手食堂には備え付けられているらしいが、高くて手が出ない。
嫁と恐る恐る見に行くと、”冷蔵庫”と”冷凍庫”と”温蔵庫”と書かれていた部屋が3つあった。それぞれが、儂の身長よりも少し高いくらいで、幅は、儂と嫁が並んだ程度はある。取っ手を開くと、扉が開くようになっていた。
”冷蔵庫”は、寒いくらいになる魔道具のようだ。”冷凍庫”は、水が凍ると書かれている。実際に、”氷”が中に置かれていた。”温蔵庫”は、逆に少し暑い位に設定されている。
これらの魔道具も好きに使って良いらしい。他にも、”蛇口”と書かれた魔道具からは、水が出て来る。水も、冷たい水と暖かい水が出て来るらしい。
考えられない位の設備が整っている。
「あなた・・・」「あぁわかっている。儂も・・・騙されているのではないかと思っているが・・・」
「あのぉすみません!」「え?」「え?」
「はい!」
食堂に出てみると、さっき担当してくれた人と、もう一人若い人が居た「あぁやっぱり・・・前の人もそうだったから・・・確認しに来て正解でした」
若い人がそう言って笑っている。担当してくれた人は、苦笑を浮かべている。若い女性は、カトリナと名乗った。元々は、商人ギルドの受付だったが、ノース街ができた時に、思い切って、マナベ商会専属になったと話していた。
「それでどうですか?多分、まだ一軒目のそれも厨房だけですよね?」「え?あぁそうです・・・」「うん。かなりぶっ飛んでいるので、驚かれていると思いますが、この街では、これが普通よりもちょっと上という位のグレードですからね」「え?あ・・・そうなのですか?」「えぇそれとお気づきかわかりませんが、さっき担当官と話してから、もう3時間が経過しているのですよ?」「え?」「うそ?」
「あぁやっぱり!珍しいものばかりですからね。全部見る前に、時間が経過してしまいますからね。それで、私が来たのです」
そう言って、カトリナさんは、説明してくれた。なんでも、前に決めた3組の人たちも最初の宿屋を見るだけで終わってしまって、そこに決めてしまった”らしい”。儂達もそうなるのではないかと思って、説明出来る人間を付ける事にした”らしい”
魔道具の説明もだが、部屋の事やなども説明してくれた。一軒目は、部屋には風呂が付いていない、王都でもよくあるタイプの宿屋だ。食事処の設備には驚いたが、宿屋としては普通だ。二軒目は、一軒目の厨房が付いていて、大浴場と書かれた、数人が同時に入れるような浴場が3つあって、男湯と女湯と家族風呂となっている。家族風呂は、貸し切りが出来るようになっていて、鍵がかけられるようになっていると説明された。そして、一番驚いたのは、”ぽすれじ”と説明を受けた魔道具だ。これは、宿屋と食事処の会計計算をしてくれる魔道具で、宿の部屋番号を、入力して泊数と、食事の有無を入力すれば、合計金額が表示される。また食事処でも、最初に登録した食事を入力すれば、合計金額が出される。食事の種類が増えたり、金額が変わったりした時には、魔道具の調整が必要になると話していたが、その時には、マナベ商会に言ってもらえれば、調整しますと説明を受けた。
「あなた・・・ここでも」「・・・そうだな」「旦那様。奥様。後1軒を見てからにして下さい。次は、本当におすすめです」
「あっそうだな。最初は、3軒目が本命と考えていたからな」
それから、カトリナさんに案内されて、3軒目を見に行った。場所は、やはり通りに面していて、立地面では申し分ない。宿屋の横に、何か地下への入口があった。
「カトリナさん。あの、入口は?」「あぁ地下道への入口です」「地下道?」「あぁえ~と。旦那様や奥様は、ノース街に来られた時に、どうやって来ました?」「え?あぁ馬車で来ました。自動で動く馬車に乗ってです」「はい。ゴーレム馬車ですよね」「そうです。最初は、魔物が牽いているので怖かったですが、快適でした。それに、びっくりする位揺れなかったです。馬車の中で寝る事なんて考えられなかったですよ」「ですよね・・・あれだけでも、すごいって事を、子爵は認識して欲しいものですよね。あっごめんなさい。そのゴーレム馬車ですが、ノース街では、地上を走っていると邪魔になってしまうので、地下を走っているのです」「え?地下を?ですか?」「はい。そして、特定の場所にこうして、地上に出られる場所があるのです」
「あの?カトリナさん。その地下を走る馬車は、どこに行けるのですか?後料金は?」
嫁が恐る恐るという感じで、質問をした
「え~と待ってくださいね。私も、地下道の全部を把握していませんので・・・」「え?そんなに・・・」「あぁやっぱり、この入口から入った場所のゴーレム馬車は、急行と鈍行が止まりますね」「急行?鈍行?」「あっ子爵の命名なのですが、地下道は、東西南北に作られていて、後、城壁をぐるっと回るようになっているのですけど、二点が交わる場所にだけ止まるのが急行で、全部に止まるのが、鈍行と呼んでいます」
そう言って、持っていた薄くて綺麗な紙に、細長い物で、書いて説明してくれた。マナベ商会が売り出している、リバーシや将棋の盤の様だと言ったら、”碁盤の目”と、言うらしい事も説明してくれた。そして、この宿屋の横にある入口の番号も、その碁盤の目で命名されているらしい。どこに行くにしても、そこを目指せば行けるという。大きな商店が立ち並ぶ場所に行きたいと思ったら、まずは南北でも東西でもいいので、馬車に乗って、その記号か番号の場所まで移動してから、乗り換えて、移動すれば、行けると説明を受けた。理論的には、全ての場所に一度の乗り換えで全ての場所に行けるらしい。時間短縮は急行で行けばいいという事だ。ただ、急行は一人銅貨で一枚払う必要がある。鈍行は無料だと教えられた。その代わり、急行は椅子が有って、座って移動する事が出来る。鈍行は立って馬車に乗るらしい。
「こんな感じですが、実際にゴーレム馬車はすでに走っていますので、後で体験してみて下さい」「はぁ・・・」
そう答えるのがやっとだった。それから、宿屋の物件を見学させてもらった。一軒目と二軒目をあわせた位の広さを持っていた。設備もその分豪華になっている。厨房も、7~8人が同時に動いても大丈夫な広さで、魔道具の数も段違いに多い。当たり前のように、”ぽすれじ”が付いていた。そして、当たり前の様に、風呂が3つついている。2軒の風呂よりも、大きく一度に10人以上が入れそうだ。カトリナさんは、笑いながら、風呂だけを解放して、お金を取ってもいいそうですよ。と説明してくれた。確かに、それも一つの方法だろう。食事をしてもらう前に、汗を流したいとおもう人も多いだろう。
3軒目は、”せきゅりてぃ”もしっかりしていると説明された。宿屋と食事処には、扉が設置されていて、この扉は、決められた魔道具でないと開けられない仕組みになっていて、宿泊客にカードを渡して、そのカードに部屋番号と何泊かを”ぽすれじ”で登録して渡すという事だ。その魔道具が無いと、仕切りになっている扉が開かない上に、部屋の扉も開かないらしい。期間が過ぎたら、その魔道具では扉が開かなくなるので、そのまま持ち逃げされても困らないと説明を受けた。今日一日で、今までの常識が音を立てて崩れたが、この仕組は、もうお腹いっぱいの状態で詰め込むべき物ではなかった。嫁ももうパニックを通り越して、驚かなくなっていた。これが、あれば、今までの苦労がウソのようになくなる。盗難の心配も少なくなる。部屋を見に行った、安い部屋でも、王都の高級宿屋と同じような広さがある。安い部屋には、風呂は付いていないが、トイレは付いていた。ミドルクラスと言っていた部屋に入ると、トイレと風呂がついている。”しゃわー”なる魔道具が付いていて、ボタンを押すと、上から、水やお湯が出て来ると説明された。ハイクラスと言われた部屋は、ミドルクラスの1.5倍位の広さを持っていた。風呂とトイレが付いていて、コンロと呼ばれた魔道具が一つ置かれていて、部屋でお湯を作ったり、簡単な調理が出来るようになっていた。そして、この宿に一部屋しかないトップクラスの部屋は、ハイクラスの倍の広さを持っていて、部屋数も多い。貴族が泊まって、従者を入れる部屋があると言ってもいいくらいだ。風呂も2つある。コンロだけじゃなくて、厨房まで用意されていた。トイレも勿論ついている。そして、屋上に出られる階段を上がると、"露天風呂”なる風呂が有って、夜景を楽しんだり出来る屋外の風呂だと説明された。トップクラスには、”冷蔵庫”の魔道具もあり、冷たく冷えた飲み物を部屋で楽しむ事が出来るのだと言っていた。
カトリナさんとしては、是非この宿屋に決めてほしいと言っていた。これだけの施設の宿屋があの金額で買えるわけがないと聞いてみると、その”からくり”を教えてくれた。
なんでも、この様な宿屋が、貴族用の高級宿屋とは別に、ノース街には全部で10軒あるのだと言っていた。王都で、宿屋をやっていた人に優先して、10軒の宿屋を借りて欲しいそうだ。その理由も明確で、ノース街には宿屋がまだ少ないので、それを増やすための指標になって欲しいと説明された。
「指標?」「はい。これから、宿屋をやりたいと考えている人を雇って、教育をして欲しいのです」「え?それは・・・」「大丈夫です。教育の為に雇った人たちの賃金は、マナベ商会が持ちます。1年や2年では終わらないと思いますが、ここで教育できた人たちは、ここの”のれん”を持って、別の街やノース街の違う区域で宿屋を開いて貰います。その時に、旦那様と奥様の宿屋の手法を、真似るのですから”のれん代”として、毎月売上の中から決まった割合で、お支払を行う仕組みになります」
「え?それって?毎月お金がもらえるって事ですか?」「えぇそうなります。しかし、その為に、義務も発生します」「義務?」「そうです。しっかりと教育してもらう義務と、できれば、1年に一回程度の監査義務を設置する予定です」「監査義務?」「えぇ”のれん”分けした宿屋がしっかり、旦那様や奥様の考えた通りのサービスを実施しているかを調べてもらうのです」「あぁそういう事ですか・・・」「えぇそうです。その時に、旦那様や奥様が実際に宿屋に行ってもいいですし、従業員に行かせるのも大丈夫です。ただし、”のれん”分けした宿屋の評判が悪ければ、同じ”のれん”を使っている旦那様や奥様の宿屋の評判も悪くなってしまいます」「え?あぁそうですよね」「はい。その為に、10軒の宿屋の店主・・・旦那様か奥様には、マナベ商会への登録を行っていただきたく思います。そこで、無料の講習会への参加をお願いしたいと考えています」「あっそうそう、その講習会ですが、どんな内容なのですか?後、魔道具の修復とか?いろいろお聞きしたい事があります」
カトリナさんは、苦笑しながら、答えてくれた。講習会は、子爵が考案した料理や遊具や遊戯の試作品の説明と、宿屋で提供して評判を聞いて欲しいということだ。その為の、遊具は魔道具や食材は、優先的に提供する事になるらしい。
「ねぇあなた。ここで決めましょうよ」「奥様。少し待って下さい。まだ、見ていない物があります。それを見てからにして下さい」「え?まだあるのですか?」「はい。奥様家族の住む場所と、従業員が住む場所を見ていただいていません」「え?あぁそうですね」
それから、まず案内されたのは、従業員が住むと言われた場所だ。正直にいうと、自分たちがこっちに住んでもいいかと思った位だ。個室が15と食堂と厨房。それに、風呂は大風呂が一つと”シャワー”だけが4つ備え付けられていた。15人も雇う必要はないが、できれば、10人は雇って欲しいと言われた。うち二人は、従業員と儂らご飯を作ったり、帳簿をつけたりする裏方の人間として欲しいと言われた。それから、儂たちが住む場所を案内してくれた。貴族の屋敷かと思わず言ってしまった程だ。
1階には、大広間として20名近くが集まれる場所が用意されていた。今後の話として、"のれん"分けした宿屋の店主を集めたり、月に一度の講習会を持ち回り制にしたときの会場に使う事になるらしい。大広間に隣接した形で、厨房が用意されていた。そこから、繋がるように小部屋が幾つか用意されている。二階から上が儂ら家族の部屋になるようだ。二階から上は、宿屋と同じように、決められた魔道具を持っていないと入られない様になっているので、家族か決められた者しか立ち入る事ができない。部屋は全部で5つ。少し大きめな部屋が家族用の厨房と食卓になっていて、お風呂とトイレがある。後は、同じくらいの部屋が4つある。そして、屋根裏部屋と、カトリナさんが説明してくれたが、3階部分には、少し小さめの部屋が3つ有って、子ども部屋にでも使って下さいと言われた。
ほぼ即決に近い形で、決めた。それから、嫁と子供たちと、家に入って、必要なものがないか調べる事にした。暫く生活するのには、食料以外で困る事はなさそうだ。食料も、ゴーレム馬車で2つ先に移動した場所にあると教えられた。その通り、商店が立ち並んでいた。見たこともない食材や道具も売っている。暫く、家族が食べる分だけを買って、帰りは地上を歩いて帰った。
子供たちの学校は、いつからでも大丈夫だと言われたので、3日後に家族で見学をしてから決める事にした。ノース街の学校では、ゴーレムの操作方法を教えてくれて、卒業時に成績優秀者に、ゴーレムをプレゼントしてくれるらしい。そうでなくても、馬車の御者の仕事があるので、ゴーレムの操者は、引く手あまたらしい。子供たちも、学校には行きたいらしいので、儂としては、許可する事にした。生活が落ち着いたら、学校に通わせる事になる
あと、従業員の面接をして欲しいと言われた。言われた日に、嫁とその場所に行ったら、数名の顔なじみの奴らが居た。どうやら、奴らも宿屋をノース街で営業する様だ。ちょうど10組居る事から、ここに集まっているのが、領主の講習会に参加するメンバーだろう。見回したが、儂を含めて、まっとうな商売をしてきた人間だ。王弟や辺境伯に媚びへつらうような奴が居ない事が確認できたのは大きい。
しばらくして、現れたのは、カトリナさんと、シュロート商会の会頭だ。後、見たことがない奴が一人来ていた。名前を名乗って、解ったが、コンラートというらしい。噂では聞いていたが、初めて見る。ヘーゲルヒ辺境伯の息子だが、ライムバッハ子爵に寝返ったやつだと聞いている。子爵から、全服の信頼を得て、ノース街の代官の様な役割になっていると聞いている。
「皆さん。お集まり頂いて恐縮です。従業員ですが、一人ひとり面談していただきたいのですが、どういたしましょうか?」「俺の所は、すぐにでも営業を始めたい。雇えるのなら、すぐにでもお願いしたい」
そう口にだす者も居る。儂としては、もう少し魔道具に慣れてからでも良いと思っている。
「解りました。従業員候補は、別室におります。総勢200名です」「200?そんなにか?」
「えぇ私としては、もう少し集まるかと思ったのですが、現状200名です。集まった者達を、子爵家とマナベ商会で、一次面談をしています。その上で、厨房/宿屋フロア/経理/護衛の4部門に分けて待機させています。皆様には、部屋に行ってもらって、面談をお願いします。雇いたい者の番号を提示して下さい。相手側がOKならそれで、契約の運びとなります」
儂も、嫁と二人で、従業員候補と会って話をして、厨房に男性2名と女性1名と、フロアに女性4名と、経理に女性1名と、護衛に男性2名の合計10名を雇う事にした。驚いた事に、フロアの女性4名ともエルフ族だった。護衛の二人の男性は、熊族だという話だ。全員からOKがもらえて、今日からでも働けるという事だ。そのまま宿屋の従業員の部屋に入ってもらう事になった。厨房の3名は魔道具の研修を受けているので、問題なく使えるという事だ。フロアの女性も”ぽすれじ”の使い方や基本的な教育はできている。経理の女性などは、儂たちが難しいと考えていた税金の計算なんかも全部出来るようだ。
至れり尽くせりで、本当に大丈夫か?という雰囲気があるが、王都で顔なじみになっていた店主に話を聞いたら、同じような待遇だった。自分所だけが特別じゃないと解って、少しホッとした。皆も同じ考えだったようで、講習会の前段階として、店主同士で話し合う場所を設置する事になった。
こうして、儂たち家族のノース街での宿屋生活が開始された

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